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2007年3月1日予算委員会「地域間格差問題」集中審議報告(その6)07.03.23

その6:食料安全保障と軍事安全保障

<大豆ショックと安倍・バッツ協定>
農村地域社会の崩壊は、食料安全保障の崩壊につながる。
食料安保については、安倍首相の父、安倍晋太郎農林水産大臣の直前に象徴的な出来事があった。1973年の「大豆ショック」である。冷害、かんばつによる世界的な穀物の不作や、えさ需要で代替関係にある魚の不漁等により、大豆需給がひっ迫し、価格高騰がインフレを加速すると判断されたためたため、アメリカは、大豆の輸出を突然禁止した。他国の食料安保よりも自国の物価の安定を優先したのである。すでに大豆の自給率が3%に落ち込んでいた日本は、輸入の9割をアメリカに頼っており、豆腐の値段が一気に上がり、その影響は極めて深刻だった。
 これではいけないと、食料の安定供給のために、日本は各国と協定を結ぼうとした。ところが、カナダとオーストラリアはすぐに応じてくれたが、アメリカは、応じず、1975年、「安倍・バッツ(農務長官)紳士協定」で対日安定供給に努力するということで、お茶を濁されている。ある意味では、アメリカは、正直な国である。再び同じような事態になっても、自国の都合を最優先するので、本物の協定での約束を拒んだのだ。つまり、食料については、それぞれの国できちんと責任を持てと突っぱねたのである。

<食料自給率と貿易交渉>
 2006年の食料の供給に関する特別世論調査(内閣府)によると、国民の76.7%が我が国の将来の食料供給に不安を持っており、64.1%だった1984年に比べ12%増えている。この間、食料自給率は、53%から40%に下がり続けている。
 農水省は、2月26日の経済財政諮問会議のEPA・農業改革作業部会で、農産物の国境措置を撤廃した場合、食料自給率は12%に落ち込み、食料安全保障が崩壊するという報告をした。オーストラリアとのEPAやFTAで、そのようなことが絶対にないようにするのか、麻生外務大臣に質問したが、オーストラリアとの交渉の文書には「センシティブ」という語が16か所も出てくると答弁し、「貿易拡大には犠牲が伴う。犠牲の内容はよくよく検討せねばならぬ。日本は農業を踏まえて対応したい」と答えたものの、短い答弁中にも「センシティブ」が3回出てくる回りくどい答弁で、日頃の軍事安保に関する発言に比べ、ずいぶん歯切れが悪かった。
 
<軍事安保と食料安保比較>
 日本の自衛を核保有の議論も含めてすべし、と発言している自民党タカ派(代表は、中川昭一政調会長)は、一方で小沢一郎代表の食料の完全自給を目指すという政治目標に対しては不可能だと批判している。自国は自国の軍隊、武器で守るべきだとして、核保有の可能性についても議論していくべきだということと、食料自給率40%という低さは問題であり、国として自給を目指すべきだということが、何事も自立を目指すべきだという点で全く同じことに気づいていないのだ。
 アメリカの核の傘などに頼るべきでないという理屈と、アメリカからの食料輸入に頼るべきでないというのは、考え方としては論理が一貫している。しかし、日本のタカ派は、軍事的には自国でと言いつつ、食料は外国から輸入しても仕方ないと平気で言う。
 世界の常識では軍事的タカ派は、必ず食料自給論者である。一方、反核、軍縮、反原発といった平和主義者、エコロジストも食料こそ身近で自給すべしと考えている。日本では、作家の野坂昭如がこれに類し、自ら食料生産を行っていた。このように、安全保障や平和の問題を真剣に考える人は誰しも食料安保を重視しているのだ。ところが、日本では、タカ派は、非武装中立論は空論と片付けているのに、食料安保の分野の非武装中立論ともいうべき、「自由貿易の下、国際分業で備えれば十分」という考えを当然と考え、食料自給は不要と考えている人が大半である。かくして世界でただ一国、日本の食料安保観は全く歪んだものとなり、現在、他の先進国は皆食料自給率を上げる中、日本だけが異様に下げても平気でいられるノーテンキな国になってしまっている。

<総合安全保障>
 軍事、食料、エネルギーの安全保障をみると、先進国の中で、いずれも日本の自立度合が一番低い。食料自給率の低さが話題になるが、エネルギー自給率はそれ以下である。石油・天然ガスや原子力燃料のほとんどを海外依存し、自然エネルギーの利用も非常に遅れている。
日本では、軍事的な安全保障の議論ばかりが先行しているが、エネルギー安保、食料安保、人間の安全保障、地球環境といった総合的視点から安全保障を考えなければ、全く意味のないものになる。論理的思考ができず、情緒的になり、ひたすら金儲けの方を優先する日本の悪癖が、この分野に最も如実に表れてしまっている。どうやらタカ派を売り物にする安倍総理も、その日本人の一人のようである。危険を感じざるをえない。