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道路特定財源を森林環境税に(篠原試案)08.2.27

 道路特定財源について議論が沸騰しています。与党と野党が、がっぷり四つに組んで譲る気配がありません。しかし3月31日をめざして何らかの修正協議をして成案を得なければなりません。が、農林水産省の行政というのは、米が余ったといってはしかられ、足りないといってはしかられ、あっちの先生はこう言い、こっちの先生はこう言いというので、典型的な足して二で割る行政でした。落としどころを探して妥協する。そういった行政を経験してきて、知らず知らずのうちに両者の主張をみとめることを真剣に考える癖がつきました。
 今それをあてはめて考えた場合どういうふうになるか、あまり試案というのを出すのはよくないのかもしれませんけれども、幸いなことに私は元代表でも何とか大臣でもありませんので、私の見解を述べさせて頂きたいと思います。今まで2年から5年しか暫定期間を伸ばしてこなかったのに、このいろいろ議論があるときに10年間暫定値を続けるというのは、悪乗りであり暴走している法案というしか言い様ありません。それに対して民主党の一般財源化というのは非常に理想的です。私はこれには反対するわけではありませんが、なかなか理想どおりには進まない。このねじれ国会ではやはり着地点探しが必要ではないでしょうか。ちょっと長くなりますが、皆さんに私の案をお送りいたします。
前からいろいろ考え検討してきましたが、2月23日山岡賢次国対委員長をお迎えしての研修会で、下記の資料を配布して道路特定財源について議論しました。それを皆様にお送りします。
最後に政府案、民主党案、篠原試案の功罪を表にしました。PDF形式でご覧ください。

(記)
                                        2008.2.23
                                          篠原孝

Ⅰ 道路特定財源の問題解決に当たって考慮すべき基本原則

 1.<国民のために> 国民の目線に立った改革とする(→地方自治体の首長の声は必ずしも国民の声ではない。)
 2.<行政の安定> 地方自治体の行政に混乱を生じさせない(→あまりに急激なものは実現が困難)
 3.<財政再建> 長期的には国の税収を確保する(→減税のみで終わるのは無責任)
 4.<地方活性化> 何よりも疲弊した地方への援助を優先する(→地方の納めた税金は地方へ戻す)
 5.<時代の要請> 時代に合ったものに改革する(→今までの惰性の10年の延長ではダメ)
 6.<使途の合理性> 石油からとる税金であり、使い道は、理屈に合ったものでないとならない(→いきなり一般財源は理解しにくいのでは?)
 7.<地球環境> 国際的に通用するものとする(→京都議定書、洞爺湖サミットを意識して環境問題を加味する。)


Ⅱ 具体的提案

A 長期的には森林環境税
 ○ 揮発油税等(走行段階の課税)は、環境税(地球温暖化対策税)が必要という考えもあり、少なくとも暫定分はCO2の排出者がその吸収者である森林に回すという「グッド減税、バッド課税」の理屈にあう森林環境税に衣替えする。
   暫定税率分は、例えば森林面積に応じて各都道府県に配分する。これにより森林の多い地方の県に多く回る。
 ○ 但し、使途を森林整備だけに限定することをせず、森林の多い地域(ex 山村振興地域、過疎振興地域)の生活道路、林道・作業道等今まで手が
   つけられなかった地域の「地方道(県道、市町村道)」には自由に使えるものとして、どれに使うかは地方自治体に任せ裁量権を広くする。
 ○ 道路特定財源の一般財源化は、今日の社会経済状況からみれば理想ではあるが、激変を避けるため、とりあえず森林整備に関係するものに広く使える、半一般財源化(自主財源化)にとどめ、まずは、地方(特に疲弊の最もひどい中山間地域)の活性化に役立てる。
 ○ 本則も含めた道路特定財源制度については、環境税への移行を中心にして数年かけて検討する。ただ、その場合でも森林環境税は、荒れた森林を整備することにより地球環境を守り、山間地を活性化するために必ず残す。
   さもないと、中山間地域や森林はますます疲弊し、荒れ果ててしまう。

B 短期的には1年間暫定税率廃止
 ○ 公共交通機関もなく車なしでは生活できない地方の困窮を救うため、それこそ一時的(暫定的、1~2年)に暫定税率を廃止し、(1~2年後に)Aに移行。森林環境税に衣替えして再スタートする。


A 長期的には森林環境税

 (1)理由を箇条書きにすると以下の通り
  1.揮発油税は1954年に始まり、1974年に暫定税率が設定されたが、34年も暫定が続き、いつまでも道路特定財源を道路にのみ使うのは時代錯誤、国民を欺きすぎ。
  2.道路特定財源、今までの期間は5年、2年なのに、10年延長はあまりにも突出しており、認められない。
  3.道路特定財源は余りつつあり、他に用途を考えるいい機会。
  4.だからといって、34年も続いた暫定税率をいきなり廃止するのは、過激すぎて地方自治体等は簡単には受け入れられない。
  5.地方自治体関係者が道路特定財源の維持を叫ぶのは、三位一体改革で6兆円近く財源が削られ、道路特定財源なしでは予算が組めないからであり、この事情をある程度考慮する必要がある。
  6.車の台数が多い地方が、少ない都市部より多く納めている。(自家用車:中野区0.288台/世帯対愛知県飛島村2.916台/世帯(約10倍)、茨城県旧千代川村3.93台/世帯(約14倍))(家計の自動車維持支出:東京都区部9.8万円対町村27.8万円(2.7倍))また、所得が低い地方が多く納めており、きわめて逆進性が高い(cf 東京479万円/1人(1位)、長野 284万円/1人(19位)、沖縄202万円(47位))(世帯収入:東京都区部507.6万円、町村456.1万円)。
    地方は自分たちの納めた税金は、自分たちの為(つまり今のところ道路)に使われるべきと主張。これは一理あり、考慮する必要あり。
  7.地方(行政担当者)を納得させるには、所得が低いのに多くの自動車関係税を納めている地方に道路特定財源がより多くいくことが必要。
  8.ところが、それを道路のみで押し通そうとするから国民的コンセンサス、特に道路の足りた都市部の支持を得られない。
  9.今まで、都市間を結ぶ高速道路等が中心で、費用対効果(B/C)の低い地方道は後回しになっていた。やっと地方の道路に回ってくると思っていたのに、財源がなくなるのは、あまりに酷ではないか。後回しにされてきた地方の声にも耳を傾ける必要あり。
  10.バッド(Bad(すなわちCO2を排出している))をしている車(ないし石油、ガソリン)がそれを吸収して帳消しにするグッド(Good)をしている森林に回すのなら誰しも納得する。
  11.一方で環境税(地球温暖化防止税)の必要性が叫ばれており、環境を重視する洞爺湖サミットの議長国としても、何らかの対応が必要。
  12.しかし、民主党の主張のように一度暫定税率をなくしてしまうと、その後に新しい税を導入するのはなかなか難しい。
  13.財界(産業界)は新しい税の導入はいやがるが、今まで納めている揮発油税等が環境税に代替するのには反対しずらい。
  14.ヨーロッパのガソリンは大体200円/ℓ、日本は、アメリカ、カナダに次いで低い価格であり、今の150円/ℓを維持しても(あるいは上げても)国際的にはおかしくない。
  15.日本の木材は戦後の拡大造林された木が伐採期になっているのに、作業 道がなく、間伐代さえ賄えないことから放置されている。これでは、宝の持ち腐れ。
  16.こうした実情を改善せんとして半分以上の県が県レベルで森林環境税を導入しているが10億~数十億では、とても森林の有効利用までには回らない。国も責任をもって森林の有効活用を支援すべき。
  17.中山間地地域は限界集落が多く、崩壊集落寸前といえる。鳥獣被害もあり、条件の悪い農業ではとても立ち直れず、身近にある地域資源である森林をよみがえらせるのが最も有効な地域再生策。
  18.ふるさと納税は悪くないが、所詮施しで地方の対面を傷つけている。緑の保全、CO2の吸収等の多面的機能を評価する森林環境税による援助が最も合理的。

 (2)関係者の利害得失とその反応
 <一般>
  国民一般:道路特定財源だけでなく、森林環境税にだんだんシフトしていくことは許容する。
  都市住民:道路のみに使われるのは問題視しても、森林に使われるなら許容する。
  地方住民:公共交通機関がなく、一家に3台に車という家も少なくないことから、多くの揮発税等を納めている。その負担が少なくなり、かつ、それが地方に戻ってくるのは歓迎。
  自動車ユーザー:いきなり一般財源化には疑問を抱くも、車の排出しているCO2を吸収をする森林に使うことに納得する。

 <首長、行政関係者>
  貧しい地方が納めた税が地方に戻るのは歓迎。森林整備のみでなく、地方道路に使えるのも歓迎。半分以上の都道府県が森林環境税により、森林を間伐をせんとしており、国からの援軍は大歓迎

 <関係業界>
  トラック業界:負担が減るのは歓迎、道路に戻らないのは不服としつつも、基本的に自動車ユーザーと同じ。
  農林漁業者:地方に戻ってくるのは歓迎、但し、環境にGoodをしているものにより多く戻ることを主張するはず
建設・土木業者:大きな道路にはそれほど造られなくても、生活道路、林道・作業道等で仕事があり、影響は少なく大きな不満は出ない
森林・林業関係者:森林整備にも、森林整備がらみの道路にも使え歓迎。

 <役 所>
  財政当局(財務省):理由はどうあれ、税収が確保されるのは歓迎

  国土交通省:道路特定財源が減り自分たちの権限が少なくなるので不満

  環境省:道路特定財源がCO2の吸収源である森林に使われるのは大歓迎。洞爺湖サミットを迎え、国際的にも面目を保てる
  農林水産省(林野庁):森林整備と林道・作業道の整備につかえるので大歓迎
 <政 府>
  福田総理:総裁選当時より、道路特定財源は一般財源化するよりも環境税(森林税)にと言っている


B短期的には1年間暫定税率を廃止し、1年後にはAに移行

 (1)理由を箇条書きにすると下記の通り
  1. 民主党の主張と全く同じ。
  2.今、石油価格が高騰し、地方が困っているのであり、まずは応急措置として地方を援助すべき(つまり真の意味の暫定)。
  3.ショック療法でとりあえず、ガソリンの価格を下げて、国土交通省や道路族の度肝を冷やしておいてから今後を考える。
  4.Aに至る議論をする時間をとる必要があるが、1~2年ぐらいの猶予期間が丁度いいのではないか。
 (5.ガソリンの価格が下がっては混乱が大きすぎるので、逆に1年今のままにしておいて、じっくり議論すべしという案が与党から出ようが、関係者はなまくらになり、本気で改革に取り組まないので、ダメ)

 (2)関係者の利害得失とその反応
 <一般>
   国民一般: ガソリン代が安くなるので歓迎。

   都市住民:車を持つ割合が少なく、あまり関心なし。

   地方住民:車に依存せざるをえず、ガソリン代の高騰に悩まされる折、大いに助かる。大歓迎。
   自動車ユーザー:とりあえず、ガソリンが安くなり歓迎。

 <首長、行政関係者>
   都道府県知事、市町村長、地方自治体関係者:ねじれ国会下にもかかわらず、予算が通る前に見込みで予算編成したため、多少混乱あるも、国が地方分を手当てすればさほど混乱無し。
 <関係業界>
   トラック業界: 大歓迎

   農業者:大歓迎

   建設・土木業者:当面のコストダウンは歓迎するも、仕事が減るのではという不安(地方道整備は必要である。それほど影響なし)
   森林・林業関係者:一般国民と同じく歓迎

 <役 所>
   財政当局(財務省): 1年間の税収不足は困るものの、全面廃止とならず一息

   国土交通省:10年間延長で突破しようとして、首長を大動員したのに実現せず。地方の信用を失い立ち上がれず。道路だけに固執するのをあきらめて、総合的交通体系の確立に向けて頭を使い出すのではと期待
   環境省:一年後に期待をかけ、遅ればせながら環境税化に向けて活動開始することを期待
   農林水産省(林野庁):一年後の森林環境税に向けて真剣に取り組むべきだが、素早く対応する気配なく心もとない。

   
 <添付資料>道路特定財源の改革案の評価(PDF形式)http://www.shinohara21.com/blog/archives/pdf/080223douro.pdf