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日本人船員、日本国籍船をとりもどせ-09.04.30-

国会質問報告 海賊・テロ対策
 
 数年前、ウオールトディズニーが、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」をモチーフにした映画、「パイレーツ・オブ・カリビアン」を公開した。そもそも海賊といえばこの映画のように、髑髏マークの船で近寄り、海賊刀片手に乗り込んでくるイメージであったのだが、昨今、ソマリア沖で高速小型船に乗り込み、ロケット砲を片手にした海賊が暴れており、そんなノスタルジックなイメージも一転させられた。
 各国は自国の船舶、物資の輸送を守るため護衛艦を派遣し、日本も3月14日に「さみだれ」「さざなみ」の2隻の護衛艦をソマリア沖に派遣した。国会でも、この派遣に呼応し、「海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会」と少々長い名前の特別委員会が設置され、私は4月15日に質疑立った。ここにその要旨を報告する。

【蘇るシーレーン防衛】
 最近聞かなくなったが、シーレーン防衛という言葉がある。鈴木善幸内閣の時に始まり、それを引き継いだ中曽根総理が1983年レーガン大統領と会談した時に、これを裏打ちし、日本を不沈空母と例え世論より大批判をかった。そのシーレーン防衛も、東西冷戦も終わり、なくなったように思える。
しかし、今回の海賊対処法第一条は目的「海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い・・・・・・海上輸送の用に供する船舶その他の海上を航行する船舶の航行の安全の確保が極めて重用であること、並びに海洋法に関する国際連合条約において・・・」とある。海賊行為対策だけならこの「並びに」の後だけで充分なのだ。この前段はまさにシーレーン防衛の復活ではないかと思う。
 私は、どこへでものべつ幕なしに派遣するのではない、日本の懐に深く関わるところに限定するのだという意味でこの前段をつけたと答弁すれば納得すると質した。現に、期間も限定されていない、場所も限定されていない。この法案が端緒となり、海上自衛隊が海賊退治と称して世界中の海に出かけて交戦するようになるのだけは避けてもらいたい。

【桃太郎の鬼退治・海賊退治を好む日本人】
 海軍はそもそも自国の貿易を守り、海運業を守るために出来ている。はるか昔から、自国の軍隊を出す口実として使われるのが「賊退治」である。かつて満州、中国に進出したとき、馬賊・匪賊から日本人を守るために関東軍が必要なのだといわれた。
 内閣府の3月14日の世論調査によると63.2%もの人が海賊対策の派遣を行っていいと答えている。インド洋の給油、イラク派兵、アフガン対応などと比べると相当高い支持率である。これは、我々が子供の時からずっと桃太郎の童話を聞いて育ち、鬼退治、海賊退治といえば、いゃあ格好いい、やってくれと言うのが深層心理にあるからかもしれない。こうした日本国民の正直な正義感に乗じてか、麻生内閣は強引にこの法案を通さんとしている。

【激減した日本籍船と日本人海員】
 新聞は日本に守ってほしいといって手を挙げてきた船が2,595隻と報じているにも関わらず。日本関係船(という変な用語)の内訳がはっきりしていない。日本籍船数よりも外国籍船数が大幅に上回ってきているからである。この外国籍船というのは、パナマ船籍のような、日本の海運会社が運航しているが、外国の船籍になっているもので便宜置籍船と呼ばれる。
 海運先進国である日本は、1990年は日本籍船・外国籍船の比率は半々であった。ところが今は、日本籍船はたったの4%。船員も、10年前には1万5千人と日本人ほうが多かったのが、今はたった3千人の8%である。ほとんどが、フィリピン人、インド人、中国人なのだ。国際競争に勝つためには、少しでも税金を安くし、低賃金労働力を使わないとならないというのが理由である、グローバリゼーションの馴れの果てが、海運空洞化にも顕著に現れている。

【国籍問題にうるさい日本が、船籍にはルーズ】
 そもそも、日本は、国籍には非常にうるさいく、親子を引き離してでも強制送還する程の国なのだ。永住外国人の地方参政権についても、日本で働き税金を納めているのに与えるべきでないといわゆる防衛族、タカ派は主張する。そのスタンスならば、日本船籍を離脱し、日本人を雇用しない船など守ってやらなくてよいはずである。
 ましてや海洋法条約上は旗国主義が原則だ。ソマリアに護衛艦を派遣している17カ国はどの船を優先的に守るのかというものを取り決めている。例えばロシアなら、1番に戦略物資輸送船 2番にロシア籍船 3番にロシア関係船としている。ところが、日本は、日本にかかわりある船全部といっている。日本に税金を払うのがいやだからといって外国に船籍を置いた船を、日本国民の税金で守るのは甚だしい矛盾である。これではいくら桃太郎にほだされて鬼退治が大切だと言っていても、国民感情として許されないに違いない。この機会に、ちゃんと日本船籍にして、日本人船員を使う方向にしていかなければならないのではないかと質した。

【安全保障はパラレルに考えるべき】
 軍事・食料・運輸・エネルギーなど安全保障はパラレルに考えるべきである。しかし、日本の安全保障は軍事ばかり突出しすぎである。前述の日本の税金を払う永住外国人と税金逃れをしている便宜置籍船の扱い同様、日本人は論理的に考えるのが苦手なのだ。
 今、海洋国家日本の自国船籍率は4%、日本人船員率は8%、騒がれている食料自給率でさえ40%なのにそれ以下である。いざという時には、外国人船員はとっとと日本から逃げ出し、日本人で船をちゃんと動かせる人がほとんどいなくなり船は動かなくなる。護衛したくともする船がなくなるおそれもあるのだ。まさに本末転倒である。
 米、英、仏等はさすが自国籍船率を5割に保っている。特にアメリカにはジョーンズ・アクトというものがあり、内航海運はすべてアメリカ国内で造られている。また、アメリカでは船員の賃金は陸上の1.5倍高い。海運の自由化を訴える動きもあるが、戦争遂行のために自国に船舶技術を残しておかなければならないと頑として聞き入れないでいる。民間の船といえども、いざというときに軍事調達が出来るよう残しているのだ。

 今回の件を奇貨として、日本も軍事面だけの安全保障を突出させるのではなく、運輸安全保障の底上げにも勤めるべきである。まずは日本船員の増強、そして日本籍船舶にさせることであると締めくくった。

【元 商船大学の方からの感想メール】
 この質問を衆議院TVでご覧になった、東京商船大学 OBの方より“この法案審議の中で、安全保障の観点から日本人船員と日本船籍の強化を主張されたのは、法案のことのみにとらわれる委員が多かった中で一段と光って見えた。政治家はこうあるべきだと感銘を受けました。”との励ましのメールを頂戴した
 毎回、質問は資料を取り寄せ、文章を組み立てるなど前日の夜中までの作業をして臨んでいる。しかし、その模様はインターネットの衆議院TVで放送されるが知る人は少ない。お叱りも含め時々メールをいただく。一段と身を引き締めて質問しないとならないと肝に命じた次第である。