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生産調整の廃止と農政―石破農相vs篠原シンポジウム―-09.06.22-

シンポジウムの篠原代議士の発言はこちらでご覧いただけます

<石破農相と農林族の争い >
 古い話になるが、代表選の前日5月15日、私は日本財団(東京財団)の主催による、農政のシンポジウムに出席した。あわただしい中での会合であったが、出席者が石破茂農林水産大臣、生源寺眞一東京大学農学部長、私という、多分今の日本の農政を語る上でこれ以上の設定はないという布陣だった。
 石破農相は非常に慎重な言い回しであったが、思いのたけは述べていた。今農政は自民党の中で相当もめている。何故かというと、石破農相がいってみれば民主党の言ってきた政策をそのまま横取りするかたちで言い出し、それに反発した自民党農林族との間で相当のせめぎあいがあるということである。
2点で対立している。一つは米が余りだしてから、農林水産省が緊急避難的と称してずっと続けている生産調整の問題、それから、農業者戸別所得補償の対象の問題である。

<民主党農政その1―生産調整廃止>
 我々民主党は、私が民主党に参画して以来、直接支払い(小沢代表の時に農業者戸別所得補償という名前に変えさせられた)を農政の柱の中心に据え、農林水産予算の3分の1の約1兆円をあてるということをずっと主張し続けている。私は冗談半分に、党首は5人も変わったけれども、農業者戸別所得補償を中心に据えた民主党の農政は微動だにしていないと言っている。生産調整は廃止し、米も対象にするという基本も貫かれている。
 農水関係者以外の皆さんには分かりづらいかと思うので、少々解説を要する。
生産調整というのは米が余りすぎているので米を作らないでくれということで、政府農林水産省はなんだかんだ理由をつけ、名前も変えてきているがお金を出し続けてきている。それに対して我々はそういった生産調整は廃止すべきだと提案している。ただ、この生産調整の廃止については自民党のほうからもクレームがついている。なぜかというと、07年の参議院に提出された農業者戸別所得補償法案においては、生産数量目標を各県、市町村でつくりそれを農家に示し、それに従って作った人たちに所得補償するというかたちになっているからである。その前の、06年に衆議院に提出した農政改革基本法の時にはそういったややこしい仕組みにはなっていなかったが、参議院での法制化の段階で、生産数量目標というのが法定化されていた。これを称して生産数量目標をつくるのなら生産調整をしているのと同じではないかと言われている。
しかし、基本的内容は変わっていない。ややこしい専門的なことになるが、これについては以下のとおりである。

<他の作物を優遇>
政府の生産調整は米をともかく作らなければいいという生産調整である。それに対して我々は米以外の自給率の下がってしまった土地利用型の作物、すなわち麦、大豆、菜種、飼料作物、雑穀といった作物をきちんと作る人たちには少なくとも米並みの所得は補償します、それによって日本の自給率を高めますというものである。副次的効果として、遊休農地が減少する。またこれらの作物は中山間地域でも簡単に出来るものであるというメリットがある。つまり、政府が米を少なくすることだけに重点を置いているのに対し、他の作物を作ることに重点を置いているのだ。これは、自給率の向上という意味合いで消費者を含めた日本国民のコンセンサスを得られている。したがって、生産数量目標といっても、自給率が0に近い菜種や、15%ぐらいしかない小麦や大豆と米とでは全く異なる。その結果、米の場合、作り過ぎると対象にしないということも考えられる、それが今、巷間、選択制と呼ばれている。つまり、きちんと米を減らす人には所得補償し、減らさない人には所得補償しないということである。

<民主党農政その2-米も直接支払いの対象>
次に大事な相違点は、我々は米を対象にし、政府は対象にしないことである。我々は、米は減らしてもらわなければならないが、だからといって米をないがしろにはできない。日本農政の問題は米をあまりにも重視しすぎてきたことにある。それを一挙に他の作物並みにしてしまったことにまた混乱の原因があると私は思っている。

<米への直接支払いは徐々に減らす>
したがって、米作農家もやっていけないので、農業・農村全体を活性化するためのセーフティネットとして直接支払いを農村全体に行き渡らせる。そのためには当然米も対象にする。04年に既にその表は作成してあるが、政権奪取1年目、X年後、Y年後、直接支払いをどの品目にそれぞれどのくらいかというのが書かれている。米については初年度5000億、X年後3500億、Y年後3000億とだんだん下げていくという表を作成している。かつ最初から規模について差をつけ、大きな農家にはたくさん直接支払いし、Y年後には50アール以下の農家には直接支払いしないという行程表まで示している。つまり、米については当面の措置として直接支払いするが、その他の自給率が本当に下がってしまって採算が合わないためほとんど輸入に頼っている作物は、復活させるべく直接支払い(戸別所得補償)を続けるというものであった。

<防衛オタク、農政オタクの石破農相>
石破農相は防衛族と思われているが農林族でもある。私が勤めた農林水産政策研究所の農業総合研究という雑誌を読んでいるという農政オタクでもあった。農政と防衛と二つの分野を熱心のやられる人は自民党に多い。書いたことがあるが、玉澤徳一郎さん、中川昭一さん、赤城徳彦さん、そうした人たちと並んで、石破さんも入っている。首相は総裁選に出て立派だからという理由で農林水産大臣にしたのではない。石破さんが農政に並々ならぬ情熱を持っていることを承知の上で指名したヒット人事の一つであった。
その石破農相が、民主党の農政と同じく、生産調整の廃止、米も所得補償の対象とすると言い出し、慌てたのは自民党農林族である。私は、できれば早く政権交代し、民主党で政策を実行したいと思っているが、農家・農村が疲弊しきっているので、自民党政権の時に農家・農村が元気になるのであれば、早いにこしたことはない。

<関心を持たれた石破・篠原対談>
シンポジウムは、主催者の東京財団に言わせると、相当申し込みがあり、瞬く間に満席になったという。顔ぶれをみると、かつて知ったる農政通の辣腕記者、あるいは大学の先生、経済評論家等、壇上から見ているとそうそう顔ぶれの人たちに興味をもって出席していただいていたことがわかった。約2時間のシンポジウムであったが、コーディネーターがベラベラ喋り捲り、会場から私に対して、早く話をやめさせろという目配せをする人が数人いた。私もじっと堪えていただが、お目当ては一に石破農相、そして次は民主党農政であり、二人のやりとりに関心が持たれたのだ。隣に余計なお喋りはやめろとメモを差し入れた。
もう一つ余談になるが、そのあと、主催者の加藤秀樹さんも交えて、皆で中華料理を食べながら農政論議の続きをした。石破農相は農林族との論争に少し疲れているのか会場では慎重であったが、中華料理屋の場ではそれこそ闊達に話していた。

<総選挙の争点となる米の生産調整>
自民党は14兆円の補正予算のうちの1兆3千億円を農政につけた。これを88兆に置き換えると、6兆円か7兆円になる大型予算である。あきらかにこの1兆円というのは民主党の農業者戸別所得補償の1兆円を意識したものだと思われる。07年の参議院選挙では、民主党の農政が支持され、大逆転、1人区で23勝6敗となった。自民党は総選挙に向けて必死で奪われた農民票を奪い返そうとあの手この手のことをしだしている。我々民主党もすでに石破農相に公開討論を申し出た。なぜかというと、自民党の食料戦略本部が石破農相に公開討論をしようと申し出ているからだ。ところが、石破農相の返事は自民党との調整がついてからということになっている。かくなる上は、自民党と民主党との農政についての公開討論を申し出るつもりである。ささやかであるが、米を巡る農政が次期衆議院選挙の争点の一つとなりつつある。