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舵を変な方向に切った農地法改正 -09.06.21-

 今国会で、農政の根幹をなす農地法の改正が行われた。改正とは言うが実態はまるで新法のようであった。民主党もいろいろ意見を申し述べ、他の省庁の法律が民主党からの修正案を取り入れているのと同様、野党民主党の要求を取り入れ大幅に修正されて衆議院を通過し、参議院でも賛成多数で可決された。

<自作農主義から耕作者主義へ>
農地法は長らく自作農主義というのを標榜してきた。しかし、途中からその考え方が変わってきた。詳しいことは避けるが、今回の改正は耕作する人を擁護するということを前面に出した法律改正である。何も目新しいことはなく、今実態がそうなっているのを追認した法律にすぎない。しかし、問題もいっぱい孕んでいる。

<標準小作料も消える>
古ぼけた法律になっていたことは確かだ。例えば、今回の改正で、小作という言葉が一切この法律から抜けた。確かに、もう小作人、地主という言葉は農村地域でも聞かれないので、その実態に合せた改正である。ただ、それと同時に標準小作料という制度も完全に廃止された。ただ、この標準小作料や農作業標準賃金等は私の地元のローカル紙、北信タイムスや北信ローカルに毎年きちんと公表される。これが、農村の賃金料や労働力のやり取りの時の基準とされる。小作という言葉はなくなっても、ある程度の相場を示さないといけないと思うが、競争原理を重視し、自由に決めていいという方針の延長線上で、廃止されてしまった。農村に住んで生活をしたことがない霞ヶ関の役人が考えるちゃちな机上の空論に基づく改悪であり、現場は多分いくら地代を払い、いくら賃金を払うかを自分自身が決めなければならず混乱するのは目に見えている。

<まかり通るおせっかい政治>
そもそも論で言えば、私がかねてから言っている役人のおせっかい、政治家のおせっかい、そういった類の典型的な法律改正あるいは立法である。つまり、国民なり、農民が要望などしていないにも係らず、勝手にこれがいいんだ、これが正しいのだといって押し付けた法律を作る類の典型的な例である。憲法改正、教育基本法改正、そして私が大反対して潰したサマータイム。こういったことは国民が知らない間にかってに進んでいることである。この農地法の改正も全く同系統に属する。

<農地法が悪くて農家・農村が疲弊したのか>
 もっともおかしなのは、今の農政のなかで、農地法の改正がそれだけ喫緊かという事である。農地法の改正によりあたかも農業・農村がバラ色になってくるように言われているが、農地制度が問題で日本の農業・農村が疲弊しているのではない。農村は農産物価格が下がり、一生懸命働いても食べていけない、生活していけないから疲弊しているのであって、この点を直さずに農地法を直したところで、何の意味もないことである。後継者が安心して農業に取り組めるようにすることが先決であり、そのために、まずはセーフティネットとして、農業者戸別所得補償により農業・農村全体の底上げをすべきだというのが民主党農政の根幹である。
原因でもないことに手をつけてやったやったと騒いでいるのが今の政府の実態である。現実には今でも企業は農業に十分参入できるのだが、それをしないというのは儲けにまったく繋がらないからである。

<遊休農地解消のツケを農業委員会に回す>
もう一つ、非常の禍根を残す内容が含まれている。
遊休農地の解消に一生懸命にならなくてはならないという気持ちはよくわかる。しかし、これまた、その原因は農地制度にあるのではない。それにもかかわらず農地制度にあるかごとく決め付け、なんと農業委員会にこの遊休農地の解消のツケを回す形になっている。
我々民主党は2004年の農業再生プランで、市町村長が遊休農地については有効活用すべしととりあえず所有者に勧告し、その所有者がそれに従わない場合は、所有権はいじらないが、利用権については、市町村長が、例えば隣でまじめにやっている農家に耕させるといった命令を下す提案をした。政府はそれを中途半端に真似て都道府県知事にする改正を行った。ところが、都道府県知事は現場を知らないし、一度もその法律が動くことはなかった。

<農業委員には重荷の権限>
馬鹿みたいな話であるが、政府も市町村長にしようとしたが、市長会・町村長会からそんな悪い役割を我々にされては次の選挙は持たないという反対理由により潰されたと聞いている。もしこれが事実だとしたら噴飯ものである。地方の首長としての気概も何も感じられないということになる。
今度は、実質的にはほとんど選挙も行われず、地区の推薦でなっている農業委員の皆さんに、この辺の農地を耕さないのはけしからん、そうじゃなかったらどこにどうやって貸すか我々が決めるぞということをさせるわけである。農業委員にとっては残酷な法律改正である。

<企業は農業にまじめに取り組むか>
私は今回の農地法の改正、悪いことばかりではないないと思うが、いろいろ問題を孕んでおり、単純に喜べないでいる。最もおかしいのは、繰り返しになるが、農地制度が癌ではないのにあたかも農地制度が癌であるかのようにいい、農地法を改正している点にある。これで企業参入とかで一時的に農村に踏み込まれ、採算が合わないとなるや、やーめたとさっさとほったらかしにして去っていく姿が見えてくる。どさくさに紛れて悪い方向に向き出した観もある。