« 自民党時代の総理の条件 -当選10回 60歳前後 党三役1回 閣僚3回(うち1回外務か大蔵)-  11.8.23 | メイン | 鹿野さんと農業者戸別所得補償 -民主党政権交代のキッカケは鹿野NC農水大臣から- 11.08.27 »

米・仏にみる国のトップの資格と選び方-米の州知事,仏の政治学院・ENA(国家行政学院)出身-11.08.23

<アメリカの厳重な選抜方法>
アメリカはNYやCAのように大きな州もハワイやアラスカのような小さな州も上院議員は2人(任期は6年)、まさに合衆国である。下院議員は任期2年で完全な人口比例。大体、議会制度は似ているが、アメリカの大統領の選び方はユニークである。
 共和・民主の2大政党制がまず大統領候補選びをする。今、各地で予備選が行われているが、ここで相当ふるいにかけられる。この期間約1年である。従って、いい加減な候補はとても生き残れない。ここで相当国民、マスコミのチェックを受ける。そして各党の大統領候補が決まってからも約1年かけて熾烈な大統領選挙が行われる。

<あまりに拙速な日本の選び方>
今、民主党の代表すなわち日本の総理がいとも簡単に10日ばかりで選ばれんとしているのと大違いである。いくら大統領制と議院内閣制の違いといっても少々差がありすぎる。執行部は、やれ今国会中に選ばないとならないだとか予算編成等の政治・外交日程上やむをえないとか言い訳しているが、あまりにも拙速である。少なくとも党員・サポーターにはきちんと説明してしかるべきであり、政策論争や人物見定めの期間がもう少し必要である。

<州知事でトップマネジメントを経験>
日本の総理の条件は前号で当選10回60才前後・・・と紹介した。アメリカにはそのような政界の不文律はないようだが、やはりどういった政治家が選ばれるかという傾向はみられる。例えば、最近ではカーター以来知事経験者が4人と一番多い。それまでは、やはり上・下院議員がほとんどである。最近は州知事としてトップのマネジメントを身につけた上で大統領になっているケースが多いことがよくわかる。州の運営と国の運営は大きさの違いで共通なのだ。

<短い政治暦>
別表1のようにしてみてわかったことだが、政界の重鎮として副大統領になり、大統領の辞任により大統領になった2人(ジョンソン、フォード)を除けば、政治家歴が20年を越えた者はいない。例えば、ケネディ14年、ニクソン18年、クリントン11年、オバマ11年と大体15年前後である。当然のことだが、対立候補も共和党、民主党の区別なく、大体同じ様な経歴である。ただ、政治家や行政官としての経験が10年未満の者などいない。

別表1(歴代アメリカ大統領の前歴、職歴)

<2期8年は5人のみ、43才のケネディから69才のレーガンまで年齢はさまざま>
日本と比べて任期が4年と決まっており、大体2期8年が普通と思われているが、戦後トルーマン以来12人のうち2期を全うしたのは5人だけにすぎない。やはり政治はめまぐるしく動くのだ。
就任年齢でみると、ケネディが43歳と最年少で40代がオバマ、クリントンの3人。レーガンが69才と最年長で、60代が5人、50代が4人、平均56才となっている。これは、日本の63才と比べて7才若い。世界を相手にする超大国アメリカのトップは体力も必要とされるからだろう。
国会議員ではいの一番に私の初選挙にかけつけてくれた中村敦夫は、政治も演技が必要であり、芸術家と同様旬は10年ぐらい、長くやってはならないと私に注意した。緊張感を持って当ればとても20年はやっていられないとも言った。アメリカの政治は、中村の言うとおり日本のだらけた政治と異なり長くはやっていられない厳しさがあるにちがいない。

<日本に似るフランスのトップの経歴と就任年齢>
次にフランスのド・ゴール(第5共和政)以来と比べてみる。
別紙2の通り59年以来50年余で大統領は僅か6人。ミッテラン14年、シラク12年、ド・ゴール10年と、10年以上が3人もいる。任期が5年ないし7年と決められているからであるが、それだけ選りすぐられた政治家がなっているからでもある。平均就任年齢は59歳である。また、大統領になるまで平均25年近くの中央政界政治暦があり、日本と非常に近い。ド・ゴール、ポンピドゥー、シラクの3人は首相経験者でもある。
一方、首相はとみると、大統領が気軽に(?)任命できるためか、意外と在職年数が短く平均2~3年であるが、そのほとんどが国務大臣を数ポスト経験している。平均就任年齢は、ミッテランが37歳のファビウスを抜擢したのを除き、大体50代で平均53才である。

別表2(歴代フランス大統領・首相の学歴・経歴) PDFファイル

<ねじれ国会も当然の保革共存政権>
今、ねじれ国会が法案を通らなくなり諸悪の根源のようにいわれているが、フランスは大統領の任期が長く、選挙はもっとずっと頻繁に行われるので、大統領と首相が違う政党となるケースがよくあり、コアビタシオーン(保革共存政権)と呼ばれている。
私はパリのOECD代表部に91年7月から3年勤務したが、大統領は社会党のミッテランの2期目の後半で、93年3月には保守系の共和国連合バラデュールが首相となり、典型的保革共存政権になった。しかし、だからといって国会が大混乱したなどということは聞いたことがない。整然と議論が行われていたのである。議論好きの成熟した国と議論下手の日本の差であろう。

<ENA卒業生が政界にも進出>
フランスの大統領、首相については経歴のほかに学歴も比べてみた。なぜかというと学歴こそ非常に似通っているからだ。74年のジスカールデスタンからサルコジまですべて国立行政学院(ENA)かパリ政治学院のどちらか1つを卒業している。首相も同様の学歴であり、同じ期間14人のうち10人が政治学院、ENAの卒業生である。
フランス人は個人主義的であり、政府に対する注文もうるさい。ルールを決めてもなかなか従わない。官なり政に対して厳しい目があるが、一方で、反発しつつも優れたリーダーに国を託すという気持ちも持っていることが感じられる。日本はどうも国民もマスコミも揚げ足取りが多すぎるような気がする。

<尊敬される大統領>
国民は、重々しい雰囲気を持った哲学者的なミッテランや、芸術も愛し日本の相撲も趣味の教養人シラクを愛し尊敬していたのである。そして、よく見ていると国民自身も将来トップリーダーになる政治家を、暖かい目で見て育成しようとしていることがうかがわれる。
 例えば、シラクはジスカールデスタン大統領の下、41才の若き首相となり、その10年後ミッテランの下でも首相となり、パリ市長も務めている。国民はシラクはいつかトップにと思いつつ、鍛えていたのかもしれない。そして62才で満を持して大統領になっている。フランスでは経験の浅い政治家が大統領選に出るといっても、まず同僚議員がとりあわず、マスコミも国民も相手にしないだろう。日本はその点どこかおかしい。

<首長と国会議員の兼職の意義>
シラクの例にみられるとおり、国会議員が首長(市町村長)してもよいことになっている。ベレゴヴォワ首相(名前から明らかなとおりウクライナの移民の息子で、国鉄の職員から社会党の政治家になり、ミッテラン政権下で首相に任命された。別表のとおり高学歴でない数少ない首相である)は、総選挙で日本のリクルート事件と同じような金銭スキャンダルにより歴史的敗北を喫し、責任をとって首相辞任した直後、自ら長を務める田舎町でピストル自殺している。
アメリカの州知事経験者と同様、地方のトップとしてマネジメントを経験しているのである。

<若き次次期大統領候補ル・メール農相(42才)にみるトップ育成の政治システム>
この6月、私はパリのG20農相会議に参加した。例によって国会中ということで、鹿野大臣の出席が野党の了解が得られず、急遽の代理出席である。
若干42才のル・メール農相が会議を主催し、2国間会議でも私のカウンターパートになった。経歴を見ると、エリートコースの典型で政治学院・ENA出身で外務省入り、ド・ビルバン首相の補佐官を経験した後、パリ郊外の選挙区をあてがわれ国会議員っている。フランスの政界に詳しい人によると、将来の大統領候補の一人だという。つまり42才の若き有望株は着々と政治の経験を積み重ねており、国民も同僚政治家もいつか大統領にと期待しているのである。

<日本にも必要なトップリーダー育成システム>
民主党は脱官僚を標榜して政権交代し、官僚を遠ざけている。しかし、それでは国は成り立たない。フランスの政治は優秀な官僚をフルに使い、政治にも取り込んでいる。つまり、国家という大組織の中で、行政経験を積み重ね、マネジメントのノウハウも身につけた政治行政のプロを要所要所に配置しているのである。日本はこうした点でフランスにもならうべきだろう。日本の場合、政権交代は出来たが、トップのリーダーを育てる仕組みが確立されていないということが一つの不幸であり、今の混迷の原因である。