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TPPシリーズ8.韓国と日本の大きな違い-11.11.7

(したたかな韓国、出遅れる日本)
 財界、経産省、外務省はなにかにつけて韓国のFTAを絶賛・推奨し、だから日本はTPPに入らなければいけないと言う。いわゆる「韓国脅威論」である。何を言っているのか、私は理解に苦しむばかりである。百歩譲って韓国を見本とするなら、米等重要品目を例外とするEPA・FTAをEUやアメリカと結べばいいのであって、関税ゼロを前提とするTPPなどは全く方向が違っていることである。
 日本の財界は、韓国の米・EUとのFTA締結という矢継ぎ早の自由貿易への転換に浮足立っている。EUとの関税 自動車10%、薄型液晶14%は大きいかも知れないが、それ以前に韓国には追い越されているのだ。2010年にトヨタは欧州で初めて販売台数で現代に追い抜かれているし、世界最大の市場中国でも現代に及ばない。関税をゼロにすればいいというほど単純ではない。

(貿易依存度のバカ高い韓国)
 それよりも何よりも、日本と韓国の違いは国の大きさである。人口は、日本は、1億2700万人、韓国は、4000万人強、約3分の1である。また、韓国のGDPは10,145億ドルと日本の5分の1強にすぎない。韓国は小さい国内市場だけでは生きていけず、グローバル化が必要なのだ。そして、国民がある程度その考えを受け入れていることだ。
 次に違うのは輸出依存度が、韓国は43%(GDPに占める輸出入総額は82%)なのに対し、日本はわずか11%にしか過ぎない。日本より低いのは、アメリカ(7%)とブラジル(10%)ぐらいしかない。韓国はWTO交渉が停滞する中、日本やアメリカのように国内市場だけで成長できる国ではないことから、2国間のFTAに活路を求めたのだ。
 日本は加工貿易立国であるといわれてきたが、実は違う。日本の成長は確かに一時は輸出が支えたこともあったけれども、基本的には団塊の世代を中心とする内需が支えたのである。これは三種の神器なり、3Cなりを国民がこぞって買い、内需を拡大することによって、日本の産業界を潤わせてきたことを考えると一目瞭然である。日本は幸いなことに、大国になり過ぎたのであり、韓国の5倍のGDP5.5兆ドルの国が輸出拡大を図るとすれば嫌がられるのは当然である。米議会が米韓FTAは許しても日米FTAをおいそれと認めることはあるまい。その延長線上で、私は米議会が日本のTPP入りをすんなりと認めるとは思えない。
 となると、日本もまたぞろ外需すなわち輸出に頼るのではなく、今度こそ内需拡大で日本を活性化していくべきなのだ。それも乗用車とか家電製品といった特定の製造業に偏りすぎず、食品産業や木材産業等の地場産業の振興に努めるとともに、介護、医療、教育といった新しい需要に向けていくしかないのだ。これらの新しい分野にこそ、新しい雇用の場なのに、TPPに入り、介護や医療の分野まで外国に開放せんとするのは、愚かとしかいいようがない。

(韓国の危険な試み)
 韓国は、盧武鉉政権の時の1997年の財政危機を契機に2004年チリとのFTAを皮切りに、通商国家体制に大きく舵を切った。李明博政権はそれを引き継いで加速させている。日本と違って人口は4000万ほどで国内市場は限られている。北朝鮮という危うい隣国を抱えている。そうした中でのやむにやまれない方向転換かもしれないが、非常に危険な試みであると思う。
 EUとのFTAが2011年7月発効、アメリカとのFTA交渉も2007年には米の16品目を除き、牛肉、豚肉等の重要品目の関税撤廃も受け入れ、合意にこぎ着けている。韓国はかなりアメリカに妥協していて、今後のTPPを占う参考になることが多い。例えば、郵政の保険関係では、新商品を販売しないと約束し、特区内での自由診療拡大、営利病院の許可を明文化している。日本が今、何の情報もなくTPPに入ったら、すぐさま同じ要求を突きつけられ、受け入れざるをえなくなる可能性が強い。
 アメリカは外交交渉においては、本当にしつこい勝手な国である。次々と新たな要求を出してくる。2009年1月オバマ大統領は「米韓FTAについて見直しが必要」と発言。韓国は「再交渉はあり得ない」と主張したが、事実上再交渉させられた。その結果、韓国産乗用車に対するアメリカの関税撤廃時期の5年先延ばし、米国産乗用車に対する韓国の安全・環境基準の緩和という妥協を強いられている。日本のTPPに入ればなんとかなるという楽観主義者には、この際限なきアメリカの要求はどう映るのだろうか。

(羨ましく映る韓国をじっくり観察)
 延び延びになっていた米議会の米韓FTA実施法の承認も済み、両国が目指す2012年1月の発効に一歩近づいた。しかし、一方で、韓国の批准となるとそう楽観視できない。韓国内には妥協しすぎの政府に対し、野党は反発を強めている。今まで韓国がどれだけ妥協したか国民には明らかにしていないようだが、やはり、政治は一寸先もよくわからない。
 2011年10月26日のソウル市長選で野党連合が支持した無所属候補朴元淳が当選、一度は農畜産業の追加補償策などで妥協が成立したが、毒素条項(ISSID)すなわち投資家が不利益を受けた際には、相手国を訴えることができることに対し、韓国に不利な「毒まんじゅう」と反発している。やっと危険性に気付き始めた野党民主党は、FTA問題は4月の総選挙で国民の意見を聞いてから処理すべきだと越年論議も辞さない構えとなっている。医療や食品の安全性等について、アメリカの要求を相当のまされたことが明らかになれば、激しい韓国の民衆が大騒ぎしてくる可能性もある。BSE牛肉を危険にだとして小・中学生まで参加して100万人デモをする国なのだ。
 日本は韓国の先行をうらやまし気に見ているが、ことはそう簡単に進みそうにない。やっとTPPの全容に気づいた農業関係者の不安も高まっている。日本は焦ってTPP交渉に入る前に、韓国がどうなるかじっくりと見極める必要がある。

(日本がTPPに現を抜かす間に韓中が接近中?)
 TPP推進論者が、二言目にはアジアの成長を取り込む必要があるというが、TPPは中国も韓国も入っておらず、ASEANの主要国も全く入っていない。ベトナムはあまりの中国進出に恐れをなして、かつてあれだけ痛めつけられたアメリカにすり寄っているにすぎない。他のASEAN諸国は、胡散臭い目で見ているのだ。中国はアメリカへの対抗上TPPを無視、韓国は米韓FTAで精一杯で、今更関税ゼロが原則のTPPなどにかまける余裕はない。
 しかし、中韓二ヶ国は北朝鮮をはさんではいるものの隣国に等しい。普通に考えるならば急接近してもおかしくない。日本は中韓と三ヶ国のFTAについて共同研究中だが、そんな呑気なことをいっておられないかもしれない。もしも、本当にアジアの成長を日本に取り込みたいなら、中韓とこそFTAを締結していくべきなのだ。三ヶ国ともアメリカのように押して押して押しまくり、次々と青天井の要求をしてくるようなえげつない国ではない。お互いの痛みを分かち合える国である。
 受け身の盲目的TPP入りではなく、前向きに東アジアの仲間造りをしていくべきなのだ。韓国は、似た構造の日本とのFTAは難しいが、中国となら補完関係を作れると踏んでいるはずである。日本はむやみやたらにアメリカに追随するのではなく、近くの隣人を大切にしていくべきなのだ。日本は中国をとるかアメリカをとるかの二者択一で、単純にアメリカになびいているようだが、韓国は北朝鮮もあり、アメリカと同盟関係を維持しながら、中国とも接近をすることは間違いない。それが大国の狭間にある小国の生きる唯一の道なのだ。
 日本も韓国にならい、米中両国と平等につきあっていくべきであろう。