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TPPシリーズ5.郵政民営化とTPPの類似性-11.11.4

 TPPの議論は佳境を迎えている。政府と与党民主党幹部の不規則発言の中、我々は粛々と議論を重ねている。学校給食へのパン食の導入、大店法の改悪による地方商店街のシャッター通り化に次いで、第3弾として、それこそアメリカの言いなりになった郵政民営化の悪例を示す。
 TPPの中身の一つが郵政民営化だが、TPPはその数倍の内容の重さであり、日本のよさの大半を失わせてしまう危険性を秘めている。

(郵政民営化とTPPの違い)
 小泉首相は郵政を民営化するとわめきちらして解散まで持ち込んだ。国民がほとんど関心を持っていなかったものをシングル・イッシューに仕立て上げ、解散総選挙をやるというのも大変な博打であるが、日本の国民は完全に乗せられてしまった。
アメリカの金融資本が日本の郵便貯金226兆円、簡易保険119兆円と、300兆を超える資金に目を付け、それに手を付けさせろという要望が1995年の第2回の「年次改革要望書」に出され、1999年版には、Kampoと名指しして簡易保険を攻撃した。2004年には小泉の構造改革、郵政民営化の動きと呼応して、保険、銀行、宅配便に攻撃を仕掛けてきた。そして、それに応える形で郵政民営化が行なわれた。この場合は、アメリカの業界団体、金融資本がぜひそうしろという姿勢を示していたのである。
しかし、今回はアメリカの諸々の団体が日本をTPPに入れろとか、ここを直させろと声高に言っているわけではない。もちろん、例えば医薬品業界のようにアメリカの医薬品がもっと日本に入りやすくするようにという要望はあるにせよ、どうしてもTPPに日本を入れ込んでやろうということまで言っていない。あまりにも扱う範囲が広すぎてよくわからないのだ。専らオバマ大統領の再選に向けた格好付けが主目的で、それに日本政府が付き合わされているに過ぎない。

(劇場型一人芝居は全く同じ)
 ところが郵政民営化との大きな類似性は、アメリカのそこはかとないプレッシャーに負けて、TPP交渉ぐらいは参加しようとしていることである。菅前総理も野田総理も気が付いていないが、結局、日米同盟が基軸だが、普天間問題で少々ぐらついているので、アメリカの困っていることは聞いてやらなくちゃいけないというような態度を知らず知らずのうちにとっている。
 アメリカがそれほど要求していないものを、日本国内でやたら農業と輸出産業界との対立を煽るような形にして、劇場型にしているという点では、郵政民営化と全く同じことである。自らAPEC前に決断などというのは、自分で自分を追い込むばかりで、自虐的ですらある。
 外務省は、早速、医療制度や保険制度は今回の対象には入っていないと適当なことを言ったが、アメリカは次々と要求をし続ける国である。

(しつこく繰り返す郵政民営化要求)
 TPPの24分野で、アメリカが一番力を注いでいるのはサービス(金融)と投資の2つの分野であり、郵政なかでも特に保険についてのアメリカの強烈な要求が続けられている。農協に興味を示すのも共済に関心があるからである。
 2011年9月17日に公表された米日経済協議会の「TPPへの日本の参加の実現に向けて」で、日本郵政などの国営企業が公正かつ対等な競争条件が満たされない状態で国内外の民間企業と競争することを引き続き実施している、と批判している。ゆうちょ銀行とかんぽ生命を合わせた世界最大の金融機関(300兆円を超える)は、100%国有であり、政府の支配下にあり、日本政府により様々な優遇措置を享受していると指摘している。
 執拗な要求はまだ終わっておらず、TPP交渉に入ろうとすれば、またまた無理難題を押しつけてくるのが目に見えている。アメリカの得意分野は、金融・サービス、投資、知的財産、そして農業、高性能武器くらいしかないのだ。

(狙いは金融と共済)
 我々は外国との交渉を終えると一区切りでホッとする。しかし、アメリカという国はすぐまた次の注文を言ってくる。郵政分社化の後は、同じく金融と共済を持つ農協に目を付け、それを分社化しろという要求である。それを受けて宮内義彦オリックス会長を議長とする政府の規制改革・民間開放推進会議が提言しようとした内容がひどいものだった。日本の軟弱な対応にほくそえんだアメリカは、貯金76兆円、共済41兆円と、郵貯・簡保に次ぐ巨大な117兆円の農協資金に目を付け、農協を信用、共済、経済(購買・販売)の3つに分けろというものである。農協の大事な営農技術指導など端から念頭になく、まさに農協の解体である。しかし、農協では、営農指導員が一斉貯金日には各農家を回り貯金集めを手伝う。また、お金を貸すときは、営農指導員が融資担当者に農家の能力を見極める大事な情報を提供する。一人が何人分のあるいは何種類の仕事をし、人と人とのつながりでもっている。
 もちろん、こんな無鉄砲な案は最終提言には残らなかった。しかし、アメリカの外国貿易障壁報告書には、正直に、共済に関する規制や監査を競争相手である民間企業と同じ条件にすべきと明確に書いてある。これが、TPPで白日のもとに晒され、県民共済、全労済にも拡がっていく。それを、連合はなんと考えているのか、TPPに参加すべきと言っているのは、外務省の情報開示が足らないばかりではあるまい。

(郵政分社化が山奥の絆まで奪う)
 長野県の私の選挙区内等では、郵便局が各地方自治体と契約を結んで、自治体の情報を提供するサービス、産業廃棄物の不法投棄に関する情報提供、徘徊シルバーSOS、お元気訪問、道路の損傷等の情報提供、土砂災害防止協定、三次災害防止協定等、各種のいろいろな仕事(施策)を実施していた。何のことかおわかりだろうか。人のあまりいない山間部で郵便配達の折、道路の傷み具合を見て報告したり、一人暮らしの高齢者がちゃんと元気でいるかどうかを回ってきたりしているのである。また、分社化前の郵便局では、郵便配達人が時に年老いた一人暮らしの老人に頼まれて貯金を下ろしてくることもできた。
 こういったサービスは、郵政の三分社化でできなくなっている。山奥に培われた郵便配達人とお年寄りの絆を郵政分社化・民営化がこわしているのだ。

 私はこのようなアメリカの内政干渉を許すわけにはいかない。TPPには、このような日本のよき社会システムをこわしてしまう種が目白押しだということを肝に銘じておかなければならない。