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2012年05月27日

「将来世代にツケを回さないために-TPP、原発、消費増税をセットで考える-『TPPはいらない!』~グロバリゼーションからジャパナイゼーションへ~」日本評論社出版あとがきから

 二〇一一年秋、私は、TPPを議論する会合に続いて、社会保障と税の一体改革の会合にも出席した。しかし、議論を聞いているとTPPの会合に比べ空虚であった。消費税を上げるかどうかについては、大半の者がいずれは上げなければいけないだろうと考えていた。
ただ、今この復旧・復興の時に必要なのか、他に先にやることがあるのではないか、ということで対立が生じているだけで、消費増税絶対反対と絶対増税とに真っ向からの対立はなかった。
 私は、TPPには絶対反対だが、消費増税には反対していない。一内閣一仕事、我々が選んだ野田総理である。少々疑問符がついても、総理の力を入れる目玉政策は、党を挙げて取り組まなければならない。
 しかし、どうも本気で支援する気になれない。理由は、調子がよすぎて辻褄が合わないことばかりだからだ。例えば、既にユーチューブで流され、代表質問でも糾弾されたが、森山浩行議員の応援演説で、「マニフェストに書いてあることは命がけで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールです」と力説したこととの整合性である。

<代表選ではTPPに一切触れず>
 消費増税は、財務相から温めてきた政策であり、総理になったので目玉政策として実行するというのはもっともである。しかし、マニフェストにないどころか、代表選で一言も触れていないTPPを突然進めるというのは、自らの街頭応援演説にも大きく反する。それだけではない。対抗馬の海江田候補は、経産相としてずっとTPP推進を謳ってきたにもかかわらず、代表(総理)になったら推進しないと明言している。会場から失笑が漏れたが、この正直な決意に敬意を表してか、無所属となった松木謙公は首班指名において、海江田万里と書いている。
 それに対し、野田候補はTPPには一切触れず、逆に富山県の農家の六男坊と千葉の農家の十一番目の娘の間にできたのが自分だ、と農業へ縁を仄めかしている。しかし、農業には全く冷たい対応である。
野田総理は、慶応大学の講演で、苦しまぎれなのだろう、書いてなくてもやらなくてはならないものがあり、東日本大震災対応がそれだと言及している。TPPはこの屁理屈にも全く該当しない。弁が立ちすぎるのか、このような言訳ばかりが目立つ。

<民主党の八割が反対のTPPを進める矛盾>
 消費増税は、大半の民主党員は納得しているが、TPPは反対の方がずっと多い。そして、手続き的には東日本大震災で完全に死んでいたものである。「書いてもない」し、「言ってもない」TPPを突然やると言い出した。かつ党の意見を聞くと言っておきながら、党の八割が慎重に対応すべしという結論なのに、尊重している気配は感じられない。
 消費増税に反対する小沢代表に対し、岡田副総理と仙谷政調会長代行は揃って、党内で議論して決めたことだから従うべきと、主張している。野田総理も、自分の可愛い消費増税については、党首討論で51対49の党内世論でも、手続き得雄踏んで決めたら、みんなで頑張っていく、と都合のいいことを言っている。それなのに、党の八割以上の結論を無視して前のめりの外交交渉を続けている。国内でも共同通信主催のシンポジウムに古川国家戦略担当相等閣僚まで出席し、TPPの都合のいいことをPRして歩いている。言っていることとやっていることがここでも大きく違う。
 斉藤恭紀と中後淳は、経済連携PTに毎度出席し、TPPに反対の意見を整然と述べていた。それが、その後の野田総理の記者会見と消費増税の強引な進め方に嫌気がさして離党したのである。党の議論が無視されていることに失望したのである。それを岡田副総理は、会合に出て発言していないと言い、野田総理は、選挙応援に行ってやったのに絆が足りなかった、などと冷たいことを言っている。自らの政権運営、党運営の拙さを棚に上げ、反省の色がない。党内世論を把握していない。

<付け焼き刃の行政改革調査会>
 消費増税に政治生命を賭けるというなら、政権の座に就いた時から専心していいはずだ。それをTPPなどと言い出し、数カ月何も進めなかった。「社会保障と税の一体改革」の議論が始まり、行政改革が進んでいないと指摘されると慌てて、十二月十四日になって行政改革調査会を設置している。岡田調査会長は、行政改革調査会への出席者が少ないのは、消費増税に反対のための口実に使っているだけだからだというが、誰が年末になって付け焼刃でできた調査会に出席するか考えたらよい。得意の突貫工事なのは見え見えであり、かつ解散風を総理自ら吹いたのでは、一期生議員など東京に居られたものではない。消費増税を是非成し遂げたいというなら、政権の座に就いた直後から取り組むべきは、TPPなどではなく、公務員給与の削減、国会議員定数の削減等の行政改革だった。それをTPPに一カ月半近く費やした。やることがチグハグなのだ。

<原発事故による放射能汚染こそ後世代にツケを回す>
 十二月二九日、野田総理は社会保障と税の一体改革会合に自ら出席し、欧州の財政危機を例にとり、将来世代にツケを回さないために消費増税は不可欠だと力説した。
国家の破綻(デフォルト)は絶対回避しなければならず、日本の財政再建は急務である。例によって用意した冒頭演説はうまい。しかし、その後の誠意にかけるありきたりの答弁は、かえって反対者の感情を逆撫でした。
 一方で忘れているのが、原発事故による放射能汚染である。欧州の財政危機の二の舞をしないということを力説するならば、片方だけ学ぶというのはあまりにも都合が良すぎる。ドイツ、スイス、イタリアの脱原発の方針にも学ぶべきである。それを本家の日本が、また再稼働だ、原発輸出だと昔の夢を追い続けている。
 借金はデフレを脱却し、景気が良くなれば数年で解消できるかもしれない。それに対して原発こそ不始末をしでかせば、何十年、何百年、あるいは何万年に渡って子孫にツケを回すことになる。
 野田総理は、TPPに入っても日本の美しい田園風景は守るというが、福島県双葉郡は、人も住めなくなっている。将来世代にツケを回さないというなら、脱原発こそ先にやらなければならないことは明らかである。消費増税だけ急ぎ、脱原発をほったらかして輸出までするのは、大きな矛盾である。

<原発輸出はエコダンピングの悪例>
 学ぶのだとしたら、両方お互いに学びあわなければいかない。原発事故を起こした本家本元の日本が、平気で再稼動をするのは、あまりにも勝手である。更に、自国で造るのを断念しているものを、儲けのために外国に輸出するのは、どう考えても卑劣である。典型的なエコダンピングだからだ。東芝、日立、三菱重工が潤う代わりに、もしも原発事故が起きたら、ベトナムやヨルダンの将来世代にツケを回すことになりかねない。何と罪作りなことだろうか。世界からエコノミック・アニマルならぬ、ニュークリア・アニマルと呼ばれ、環境団体等から蔑視の対象になることは間違いない。
 先の臨時国会で衆・参議院の三~四十人の議員は、ベトナムやヨルダンへの原発輸出の前に必要とされる原子力4協定の承認に賛成しなかった。まさに良識の発露である。


 隣の国、韓国では今、アメリカにしかけられた時限爆弾、すなわち韓米FTAで大揺れである。二〇一一年十一月二二日、催涙剤がまかれた国会で強行採決されたものの、内容がやっと国民に知れ渡り大騒動になっていることは第4章で詳述した。韓国の制度や仕組みをメチャメチャにし、とても受け入れられるものではないと、国会承認が終了したのに、国会議員に三分の一が署名してオバマ大統領に再交渉を迫っている。外交上の原発事故に相当する。つまり、韓米FTAこそ、国民皆保険や韓国ポストもうちこわし、将来世代にツケを回すとわかったからである。
 一万km離れたドイツのメルケル首相は、かつて原発推進論者だったのに、福島原発事故の悲惨さを見て、一八〇度転換して二〇二二年までの全原発の廃止を決定した。国家の方針を定めるに敏な名宰相である。片や日本は、韓EUFTA、韓米FTAを見本にと、突然TPP暴走を始めた。ところがその韓国が悪い見本を示してくれ、同じ轍は踏むなと警告を発してくれているというのに、逆にTPP交渉に前のめりになっている。日本も野田政権もあまりにも鈍感である。
 消費増税は、誰しもいつかはしないとならないと思っているのに対し、TPPは絶対反対が半数以上いる大問題である。将来世代にツケを回さないためにも、直ちに、TPPは撤退すべきである。今はまだ交渉参加国ではない。いつでも引き下がれる。交渉に参加し、既にできあがっているルールを押し付けられ、日本の社会システムを壊されてからでは遅いのだ。

<もっと謙虚に粛々と進める>
 どうも、消費増税を大政策のように勘違いしている人が多く、歴史的な政策だと舞い上がっている人もいる。はじめて導入するのではなく、税率を五%上げるだけであり、そんなに大騒ぎする話ではない。国の仕組みを変えるTPPこそ大きな話である。消費増税など所詮、ゼニ金の話、つまり予算のやりくりの延長の小さな話でしかない。
 それだけ税収を上げる必要があるなら何も消費税だけにこだわらず、所得税や法人税等他の税率アップでもよい。それを法人税は下げている。仏大統領選で社会党のオランド候補は、富裕層への所得税を現行四一%から七五%に上げると公約している。対するサルコジ大統領は、付加価値税を一九.六%から二一.二%に上げる考えである。直接税と間接税を同じレベルで論じている。日本も何も消費税だけを特別扱いすることはない。
 このことにマスコミも当の財務省も気づいていない。もっと粛々とやればいいものを、自分達が騒ぎを大きくしてしまい反感を買っている。いくら不退転の決意ばかり強調しても、はたから見ると空回りばかりで、党内でも国民にも賛同は得られまい。
もっと謙虚に、いってみれば竹下登流にやらないとならない。
 消費増税は、全く「理」も「利」もないTPPをやめ、脱原発の道筋を示してから手をつけるべきことである。今は、何よりも東日本大震災、特に福島原発事故からの復旧が最優先課題である。本当はそれ以外に手を広げている余裕などない。一内閣一仕事なのに、野田総理は、多弁を弄し、欲張り過ぎである。

2012年05月17日

篠原孝出版記念パーティー(東京)のお知らせ

『TPPはいらない!~グローバリゼーションからジャパナイゼーションへ』(日本評論社)と『原発廃止で世代責任を果たす~放射能汚染は害毒、原発輸出は恥』 (創森社)の出版記念パーティーを下記のとおり開催します。

1 日時  平成24年5月22日(火)18:30 (受付18:00~) 

2 会場  ザ・キャピトルホテル 東急 1F「鳳凰」
       東京都千代田区永田町2-10-3

お問い合わせは、篠原孝国会事務所
電話 : 03-3508-7268まで

2012年05月10日

5月13日(日)エントロピー学会シンポジウム

5月13日の午後、大阪で開催されるエントロピー学会のシンポジウムにパネリストとして参加します。
シンポジウムは一般公開されておりますので、お近くの方は是非お出かけください。

エントロピー学会2012年春の研究集会
公開シンポジウム「「歴史的転換点としての『福島』」
5月13日(日)13:30 ー17:00
【会場】関西学院大学大阪梅田キャンパス 10F

詳細はエントロピー学会ホームページをごらんください。
http://entropy.ac/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=631