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党議拘束違反で分裂、離党の大騒ぎは日本のみ―アメリカに党議拘束などなく、ヨーロッパ諸国には造反者への処分もなし― 12.07.17

(日本だけの何でも党議拘束)
 国会改革のたびに、日本のきつい硬直的「党議拘束」が問題になる。旧民主党は、党議拘束をなくすと宣言したと記憶しているが、今回発足した「国民の生活が第一」も党議拘束をかけないことになった。英断である。
 日本ほど議員個人の見解を無視して、党あるいは「会派」で賛否を決めている国はない。本会議20分前に代議士会が開かれ、賛否を確認して本会議場入りする。内容をよく理解してなくとも、党の方針に従って立ったり(賛成)座ったままだったり(反対)、白票か青票を投ずれば役目を果たすことになる。つまり、個人個人が考えなくても済むのだ。国民も国会議員もこれが当然と思い込んでおり、極めて異常なことなのだ。これが都道府県議会、市町村議会にまではびこり、知事や市町村長べったりの会議が議会の審議を空虚なものにしている。

(アメリカにはない党議拘束)
 アメリカでは、民主・共和の二大政党制であるが、国自体が様々な民族、支持層を含有することから、個々の個人の議員の判断や意見を尊重するという原則があり、政党の規律は緩い。個々の法律について大まかな対処方針は示されるが、日本のような処罰を伴うような「党議拘束」は存在しない。 
 その代わり、その判断は議員個人のものとなり、すべて、地方紙といえる新聞が、どの法案に賛成し、反対したかを詳細に報じ、それをもとに有権者が次の選挙で審判を下すことになる。それに対して、何でも党で決める日本では、意に反したことでも、あるいは有権者の意向に背いても「党の決定だから」と逃げられることになる。そして、日本では「党で決めたことを守らないとはケシカラン、一致団結できない者は厳重に処罰するか除籍してしまえ」という声が大きくなる。更に、それに乗じて、苦渋の選択をした造反議員の処分をきつくしてほしいと押しかける短絡的議員が出現する。こうした騒ぎを裏で操っている幹部もいるとなると、民主党の堕落も極まれりの感がある。
 造反により党員資格停止、除名そして分裂騒ぎと移っていくことに、アメリカ人やアメリカの国会議員はびっくり仰天し、とても理解してもらえないだろう。

(イギリスの党議拘束と造反)
 議院内閣制の国イギリスでは、法案は四段階に分かれ(①出席不可欠②ペアリング(与野党同数で欠席)がなければ欠席できず③出席推奨④自由投票)、最近は、拘束力の強い第一段階は約20%にすぎない。閣内に入っている100名近くの議員はフロントベンチャーと呼ばれ、反対することはない。そうでない300名余の与党議員はバックベンチャーと呼ばれ、法案の内容も知らされておらず、造反することもある。
 かつては内閣提出法案が例外なしに可決され、ほぼ100%与党議員が賛成していた。党議拘束がなかったのは、古くは死刑廃止法案や妊娠中絶法案などで議員個人の良心や宗教に関わる内容のものが多い。1971年には、EC加盟法案が自由投票となっている。 最近では、03年のイラク問題(139人が造反)がある。日本では、私の9年間の議会活動の中で、臓器移植法案だけが党議拘束なしであった。
 若くして政界に入り、党内出世を図る政治家は、政府に従った投票行動をとる。西郷隆盛ではないが、「名もいらず、官位も金もいらぬ始末に困る」(?)政治家は、自ら判断して反対することもあるのはいずこも同じである。

(造反者への処分はほとんどなし)
 イギリスでも、近年は造反が頻繁に起こるようになった。例えば、与党が圧倒的多数を占めたブレア政権下では、規律がかえって緩みがちとなり、法案採決の5回に1回ぐらいは造反がでていたという。しかし、労働党も保守党も処分はほとんど行っていない。
更に候補者決定は、各選挙区の党組織の権限なので、造反したからといって次の選挙で不利益を被ることもない。つまり、アメリカ同様、採決の賛否は原則個人が決めることであり、処分など考えられないことなのだ。

(仏・独にも党議拘束違反の処分はなし)
 大統領もいて首相もいるというドイツやフランスでは日本やイギリスと比べ、政府と与党がそれほど密着していない。従って、与党内議論など行われておらず委員会審議が初めての審査であり、予め党の拘束など行えないことになる。
フランスでは、上院と下院では同じ党でも方針が異なることもあり、造反者への処分など全くといっていいほど問題にならない。ドイツでは党議拘束と呼べるものはなく、造反者への処分もない。
 日本の党議拘束そしてその造反への厳しい対応は、世界では極めて特殊なのである。このことを国民は知らないでいる。そして、造反者への処分、特に鳩山元首相への処分が甘く腰がひけていると批判されている。造反者を離党勧告したり党員資格停止などと感情的になっている国は日本だけである。

(きつすぎる日本の党議拘束、造反者への処分)
 私は、日本のように過度な党議拘束、そして造反者へのヘンチクリンな処分にはかねがね疑問を持ち続けてきた。今回もその延長線上で、「法案に反対したからといって、除名(除籍)という厳しい処分をすべきではなく、まして離党する必要はない。」と主張し続けた。
 例えば、加藤学議員には「堂々と反対してもいいが、離党はするな」と伝えていた。そして途中までは、私のアドバイスどおり行動していた。

(二大政党制が定着し、政党が増える理由)
 日本独自のシステムはあってもよいが、このまま造反→離党を続けていたら、日本にはいくつ政党があっても足りなくなってしまうだろう。
 小選挙区制は、政権交代の可能な二大政党制を確立するために導入され、現に2009年政権交代が実現した。前述のとおり、アメリカのような完全な二大政党制の下では両党の考え方の差がなくなっていくという。日本で今回三党同意が成立したのも、政党間の差異がなくなってきた証左かもしれない。
それにもかかわらず、相変わらず厳しい党議拘束をかけ、造反者を次々除名していたら、重要法案の採決の度に大量の離党者を生み、新たな政党が造り出されることになる。郵政民営化法の時の国民新党、そして今回の「国民の生活が第一」党である。皮肉なことに二大政党制が定着しかかり、政権交代が実現したのに政党の数は、13にまで増えてしまった。そこに大阪維新の会、減税日本、石原新党と続いている。

(もっと自由な採決、審議が必要)
 党は一体何を拘束すべきなのか。欧米では党の綱領に真っ向から反するものでものでない限り、政党が過度に議員を拘束すべきでないとされている。民主党にはがっしりした綱領はないにもかかわらず、日頃の議員活動全般を拘束しようとする傾向が強い。悪例が、平智之議員が反原発だからといって、質問させなかったことである。
本来国会で行われるべき審議が、与党内で事前に処理されてしまっているのは、やはり国会軽視であり、透明性に欠ける。少しでも国民が法案の決定過程がわかるようになるためにも、委員会での審議は個人の意見で自由にしたほうがよい。

(TPPは典型的党議拘束のない案件)
 ある程度は党議拘束が必要なことは認めるが、必ずしもあらゆる案件について党が統一行動をとる必要はない。そもそも党内の全議員がどの案件でも同じ意見というのはありえない。
私は、TPPには絶対反対で政治活動を行ってきている。民主党も意見が分かれているが、自民党も公明党も同様である。各党で意見が分かれる問題ではなく、まさに個人個人の価値観、世界観に由来して対応が異なってくる。仮にTPPへの日本参加が決定し、数年後に批准のために国会に提出され採決されるとなると、これこそ党議拘束なしとすべき案件である。イギリスのEU加盟案件と同じである。多分、相当の差で否決されるだろう。 

(党議拘束なしが、日本の政治を安定させる近道)
 だとすれば、社会保障と税の一体改革関連法案も、各党で同一歩調をとれるものではなく、個々の議員の判断と信条を尊重し、そもそも党議拘束なしで採決されるべきものだったかもしれない。そうすれば、こんな分裂騒ぎも起きなかっただろう。日本の歪んだ党議拘束と信じがたいきつい処分が、日本の政界に混乱をもたらしたのである。我々はこの欠点に気づき対策を急がないとならない。
党議拘束をかけないとなると、議員個人が判断しなければならなくなることになり、各々の議員の質を高めることにもつながっていく。少なくとも、党議拘束を楯に政争の具にして反対者を追い出すような卑劣な政局はご免である。