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2012年7月25日

社保・税一体改革への篠原の関与(最終場面中心)-12.07.25

 社保・税一体改革への篠原の関与について、時系列でまとめました。

PDFでこちらからご覧ください

悲しむべき三人の女性参議院議員の離党-12.07.25

<舟山さんの離党の予兆>
 7月17日午後1時、谷岡郁子、舟山康江、行田邦子の3人の女性参議院議員が離党届を掲出した。この3人のうち、谷岡さんと舟山さんは私の親しい同僚議員、TPPに反対し、原発の再稼働に慎重、そして原発はなるべく早くなくすということでずっと活動してきた同志である。私が、両院議員総会の署名を集め、党の分裂を防いでいる最中、舟山さんは、私に向かって、「篠原さん、そんなことをしても、この党は立ち直れないし、無駄じゃないの」という厳しい言葉を投げかけていた。予兆は十分にあったが、非力な私には止めようがなかった。
 小沢グループの造反者に対してまで、党にとどまるように説得したのに、なんでかつての部下の舟山さんを説得しようとしないのか、なぜ説得できないのか、と愚痴る者もいたが、舟山さんは、何事も1人でさっさと決めて活動する強い女性である。とても優しい男(?)の私に説得できる相手ではない。

<舟山さんの人生を変えたのは私のお節介>
 舟山さんのことは、私の古いブログを見ていただけるとわかるが、(しのはらブログ 舟山康江応援演説冗談編(舟山康江紹介編)07.07.31)私が、農林水産省国際部対外政策調整室長をしている時に、1年生として入ってきた、なかなか活きのいい、張り切った新入生だった。その後、仕事で同じ局になったりすることはなかったが、強い印象として頭に残っていた。風の便りに、農水省を辞め予備校時代の同級生と結婚し、夫の故郷の山形の田舎町に住んでいると聞いていた。
 ちょうど折しも、参議院選挙の候補者選びを、私の身近な人、堀込征雄選挙対策委員長代理(当時)がやっており、これまた深く関わっていた民主党NC農林水産大臣の鹿野道彦・山形県連会長も適材不足で困っていた。そこで私が困っている2人の先輩に見かねて、舟山さんの存在を教えてしまった。それがきっかけで、舟山さんは、それこそ青天の霹靂で参議院議員になった経緯がある。つまり、政治家になりたくてなりたくてなった○○政経塾出の議員とは、政治に対する姿勢が根本的に異なる。私も偶然なっただけなので、その点は共通である。

<成長著しい政治家舟山康江>
 彼女はそれこそ小気味いい活動をしていて、ほれぼれする議員に成長した。こんなことを言っては悪いが、いろんな会合でろくに意見も言えず、ただ拍手をしたり、つまらないヤジを飛ばすだけの議員が多い中で、谷岡さんと舟山さんの発言の質の高さと意欲的な活動が群を抜いていた。
 この片鱗は、舟山さんについて出馬した時から見えていた。民主党の某幹部は、舟山さんの選挙応援に来た時に、日本のサッチャーになれる女性だとほめそやした。菅代表(当時の)は、「出藍の誉れですね」といって私に嫌味を言った。党本部は、当選が間違いない羽田雄一郎議員の応援はする必要ないとのことで、私は山形メトロポリタンホテルに常駐し、舟山選対本部長を務めていた。私が手塩にかけて造り上げた舟山参議院議員だが、立派に育っていったのは、彼女の素質の賜物である。
 サッチャー云々と激賞した幹部は、舟山さんの予想に反し、原発再稼働を急ぐキーマンになっている。谷岡さんとセットで文字通りくってかかっている姿を私は何度も垣間見ている。理は舟山さんたちにあり、一度もまともな返答がなかった。信念の政治家と権力を握り、それに酔ってしがみつく見苦しい政治家の差は歴然としている。

<捨て身の政治活動>
 この強力な2人が「民主党は、かつての民主党にあらず。新自由主義に浮かれすぎている。1に原発再稼働、2にTPP、そして3に消費増税における不透明な政策決定、強引な政権運営には許しがたい。とても一緒におれない」と民主党を離党してしまった。新聞報道では、野田首相に近い議員が「三人そろって来年の改選を迎える。このままでは当選できないから離党」と、愚かにも全く真逆の解説をしている。三人とも、この次の選挙のことなど考えないからこそ、こういう行動をとっていることをわかっていない。その野田側近こそは、党内出世と次の選挙のことしか考えていないから、見当違いのことを言い出すことになる。政治に対する純な姿勢が彼らにはわからないのだろう。
 舟山さんは、私に常々言っていたことがある。「篠原さん、いろいろ世話を焼く人がいるんですよね。私なんか、この次の選挙の事を考えて、発言を控えとかそんな気ないのに、そういうことばかり言う人がいるんですよね」。つまり彼女は、この1期6年間、政治の機会を与えられたので、思いっきり自分の思いのたけをぶつけていこうとしているだけである。そして、残された1年の任期期間を、民主党に迷惑をかけずに心おきなく、自分の理想の政策を追求するために離党したのである。もっと言えば、社保税関連法案に反対して離党するのではなく、反対なので離党して反対するという筋を通しているのだ。
 谷岡さんも、みんなが知っている女子レスリングのメッカ、中京女子大学の学長の娘であり、カナダに留学したことから英語もでき、その度胸のある発言ぶりは私も舌を巻くぐらいである。行田さんは、予算委員会の質問で、林業問題について聞くというエコロジストである。共通しているのは、今の民主党は5年前、自分たちが参議院議員になったときの民主党ではない、と失望していることである。

<盟友、松井孝治参議院議員のこれまた悲しい決断>
 そこに、7月19日になって、また私にとって衝撃のニュースが伝えられた。松井孝治参議院議員が来年の参議院選挙には出馬しないと表明をした。松井さんは、経産省の役人時代から仕事で付き合いがあり、私が民主党に後から参加した時に、大歓迎してくれた一人である。彼は、引退表明文の中で、初当選の時に、2期と考えていたと言っているが、今の民主党の混迷ぶり、違ってしまった民主党の方向、これらに失望して出馬をしないことを決めたのだろう。「政治は本質的に『輪番』であるべき」とダラダラと政治稼業にしがみつく先輩同僚に警鐘を発している、潔い引き際である。
 私は、この4人の気持ちが手に取るようにわかる。民主党は11年前、あるいは5年前の民主党ではなくなっているからである。あまりに変質が激しく、ついていけなくなったのだろう。9年前に民主党入りした私にも、その事は手にとるようにわかる。新自由主義に走る小泉政権を批判して有権者に選んでもらったのに、その権化のTPPに前のめりになっている。どう考えても、環境にずっと配慮する党だったし、国民の安全を重視する党だったのに、原発再稼働に暴走している。あまりの激しい変質である。

<対照的な、厳正処分要請議員の言い訳>
 私は、例の官邸に「厳正な処分」をと要請に行った一期生の女性衆議院議員と赤坂宿舎からのバスに乗り合わせた。私はこうした悩み抜いて離党を決意した議員の心情を思い、この議員に世話を焼いてしまった。
 しかし、残念ながら、「私には私の事情がある」とか「厳正な処分とは言ってない、早い処分を、と言っただけだ」とか言って、決して反省の色を示さなかった。何でも党議拘束がかかり、その造反者に離党勧告とか党員資格停止とかに処分をしている国は、日本しかないことを知らないのだ。(しのはらブログ 党議拘束違反で分裂、離党の大騒ぎは日本のみ―アメリカに党議拘束などなく、ヨーロッパ諸国には造反者への処分もなし―12.07.17)志の高い議員が民主党を一人また一人と去っている最中に、それに追い打ちをかけようとする人がいることに慄然とせざるを得ない。それにしても冷たい党であり、愚かなことこの上ない。

<「みどりの風」が日本の政界に涼風をもたらす>
 舟山さんたちのグループは「みどりの風」といういい会派名になった。冗談半分で、「篠原さんのことも考えた名前だから、いつでも無審査ですぐ受け入れる」といって、舟山さんから強烈な誘いの手を差し伸べられている。女性からこんなに誘惑(?)されたことはいまだかつてない。政策的には、ほとんど一致するからである。
 前述の野田総理側近が「ただの『緑のおばさん』の乱だ。大勢に影響はない」などと甘い見通しをしているが、輿石幹事長が「党は危機的な状況、政権が崩壊しかねない」という危機感を示すほうが的を射ている。小沢グループの離党と違い、政局の匂いなど一辺もない。野田政権のあまりに暴走についていけなくなったが故の良心の発露以外の何物でもないからである。
しかし、私は民主党に残り、この民主党をかつての理想をかかげた民主党に戻すことに全力をあげるしかないと思っている。それが308議席に期待をしていただいた国民、有権者に報いることだからである。

2012年7月17日

党議拘束違反で分裂、離党の大騒ぎは日本のみ―アメリカに党議拘束などなく、ヨーロッパ諸国には造反者への処分もなし― 12.07.17

(日本だけの何でも党議拘束)
 国会改革のたびに、日本のきつい硬直的「党議拘束」が問題になる。旧民主党は、党議拘束をなくすと宣言したと記憶しているが、今回発足した「国民の生活が第一」も党議拘束をかけないことになった。英断である。
 日本ほど議員個人の見解を無視して、党あるいは「会派」で賛否を決めている国はない。本会議20分前に代議士会が開かれ、賛否を確認して本会議場入りする。内容をよく理解してなくとも、党の方針に従って立ったり(賛成)座ったままだったり(反対)、白票か青票を投ずれば役目を果たすことになる。つまり、個人個人が考えなくても済むのだ。国民も国会議員もこれが当然と思い込んでおり、極めて異常なことなのだ。これが都道府県議会、市町村議会にまではびこり、知事や市町村長べったりの会議が議会の審議を空虚なものにしている。

(アメリカにはない党議拘束)
 アメリカでは、民主・共和の二大政党制であるが、国自体が様々な民族、支持層を含有することから、個々の個人の議員の判断や意見を尊重するという原則があり、政党の規律は緩い。個々の法律について大まかな対処方針は示されるが、日本のような処罰を伴うような「党議拘束」は存在しない。 
 その代わり、その判断は議員個人のものとなり、すべて、地方紙といえる新聞が、どの法案に賛成し、反対したかを詳細に報じ、それをもとに有権者が次の選挙で審判を下すことになる。それに対して、何でも党で決める日本では、意に反したことでも、あるいは有権者の意向に背いても「党の決定だから」と逃げられることになる。そして、日本では「党で決めたことを守らないとはケシカラン、一致団結できない者は厳重に処罰するか除籍してしまえ」という声が大きくなる。更に、それに乗じて、苦渋の選択をした造反議員の処分をきつくしてほしいと押しかける短絡的議員が出現する。こうした騒ぎを裏で操っている幹部もいるとなると、民主党の堕落も極まれりの感がある。
 造反により党員資格停止、除名そして分裂騒ぎと移っていくことに、アメリカ人やアメリカの国会議員はびっくり仰天し、とても理解してもらえないだろう。

(イギリスの党議拘束と造反)
 議院内閣制の国イギリスでは、法案は四段階に分かれ(①出席不可欠②ペアリング(与野党同数で欠席)がなければ欠席できず③出席推奨④自由投票)、最近は、拘束力の強い第一段階は約20%にすぎない。閣内に入っている100名近くの議員はフロントベンチャーと呼ばれ、反対することはない。そうでない300名余の与党議員はバックベンチャーと呼ばれ、法案の内容も知らされておらず、造反することもある。
 かつては内閣提出法案が例外なしに可決され、ほぼ100%与党議員が賛成していた。党議拘束がなかったのは、古くは死刑廃止法案や妊娠中絶法案などで議員個人の良心や宗教に関わる内容のものが多い。1971年には、EC加盟法案が自由投票となっている。 最近では、03年のイラク問題(139人が造反)がある。日本では、私の9年間の議会活動の中で、臓器移植法案だけが党議拘束なしであった。
 若くして政界に入り、党内出世を図る政治家は、政府に従った投票行動をとる。西郷隆盛ではないが、「名もいらず、官位も金もいらぬ始末に困る」(?)政治家は、自ら判断して反対することもあるのはいずこも同じである。

(造反者への処分はほとんどなし)
 イギリスでも、近年は造反が頻繁に起こるようになった。例えば、与党が圧倒的多数を占めたブレア政権下では、規律がかえって緩みがちとなり、法案採決の5回に1回ぐらいは造反がでていたという。しかし、労働党も保守党も処分はほとんど行っていない。
更に候補者決定は、各選挙区の党組織の権限なので、造反したからといって次の選挙で不利益を被ることもない。つまり、アメリカ同様、採決の賛否は原則個人が決めることであり、処分など考えられないことなのだ。

(仏・独にも党議拘束違反の処分はなし)
 大統領もいて首相もいるというドイツやフランスでは日本やイギリスと比べ、政府と与党がそれほど密着していない。従って、与党内議論など行われておらず委員会審議が初めての審査であり、予め党の拘束など行えないことになる。
フランスでは、上院と下院では同じ党でも方針が異なることもあり、造反者への処分など全くといっていいほど問題にならない。ドイツでは党議拘束と呼べるものはなく、造反者への処分もない。
 日本の党議拘束そしてその造反への厳しい対応は、世界では極めて特殊なのである。このことを国民は知らないでいる。そして、造反者への処分、特に鳩山元首相への処分が甘く腰がひけていると批判されている。造反者を離党勧告したり党員資格停止などと感情的になっている国は日本だけである。

(きつすぎる日本の党議拘束、造反者への処分)
 私は、日本のように過度な党議拘束、そして造反者へのヘンチクリンな処分にはかねがね疑問を持ち続けてきた。今回もその延長線上で、「法案に反対したからといって、除名(除籍)という厳しい処分をすべきではなく、まして離党する必要はない。」と主張し続けた。
 例えば、加藤学議員には「堂々と反対してもいいが、離党はするな」と伝えていた。そして途中までは、私のアドバイスどおり行動していた。

(二大政党制が定着し、政党が増える理由)
 日本独自のシステムはあってもよいが、このまま造反→離党を続けていたら、日本にはいくつ政党があっても足りなくなってしまうだろう。
 小選挙区制は、政権交代の可能な二大政党制を確立するために導入され、現に2009年政権交代が実現した。前述のとおり、アメリカのような完全な二大政党制の下では両党の考え方の差がなくなっていくという。日本で今回三党同意が成立したのも、政党間の差異がなくなってきた証左かもしれない。
それにもかかわらず、相変わらず厳しい党議拘束をかけ、造反者を次々除名していたら、重要法案の採決の度に大量の離党者を生み、新たな政党が造り出されることになる。郵政民営化法の時の国民新党、そして今回の「国民の生活が第一」党である。皮肉なことに二大政党制が定着しかかり、政権交代が実現したのに政党の数は、13にまで増えてしまった。そこに大阪維新の会、減税日本、石原新党と続いている。

(もっと自由な採決、審議が必要)
 党は一体何を拘束すべきなのか。欧米では党の綱領に真っ向から反するものでものでない限り、政党が過度に議員を拘束すべきでないとされている。民主党にはがっしりした綱領はないにもかかわらず、日頃の議員活動全般を拘束しようとする傾向が強い。悪例が、平智之議員が反原発だからといって、質問させなかったことである。
本来国会で行われるべき審議が、与党内で事前に処理されてしまっているのは、やはり国会軽視であり、透明性に欠ける。少しでも国民が法案の決定過程がわかるようになるためにも、委員会での審議は個人の意見で自由にしたほうがよい。

(TPPは典型的党議拘束のない案件)
 ある程度は党議拘束が必要なことは認めるが、必ずしもあらゆる案件について党が統一行動をとる必要はない。そもそも党内の全議員がどの案件でも同じ意見というのはありえない。
私は、TPPには絶対反対で政治活動を行ってきている。民主党も意見が分かれているが、自民党も公明党も同様である。各党で意見が分かれる問題ではなく、まさに個人個人の価値観、世界観に由来して対応が異なってくる。仮にTPPへの日本参加が決定し、数年後に批准のために国会に提出され採決されるとなると、これこそ党議拘束なしとすべき案件である。イギリスのEU加盟案件と同じである。多分、相当の差で否決されるだろう。 

(党議拘束なしが、日本の政治を安定させる近道)
 だとすれば、社会保障と税の一体改革関連法案も、各党で同一歩調をとれるものではなく、個々の議員の判断と信条を尊重し、そもそも党議拘束なしで採決されるべきものだったかもしれない。そうすれば、こんな分裂騒ぎも起きなかっただろう。日本の歪んだ党議拘束と信じがたいきつい処分が、日本の政界に混乱をもたらしたのである。我々はこの欠点に気づき対策を急がないとならない。
党議拘束をかけないとなると、議員個人が判断しなければならなくなることになり、各々の議員の質を高めることにもつながっていく。少なくとも、党議拘束を楯に政争の具にして反対者を追い出すような卑劣な政局はご免である。

2012年7月16日

社会保障・税一体改革関連法案採決、その後の離党・処分の補足説明 その④ 12.07.16

引き続きお送りします。

Ⅴ 「ガス充満」の両院議員総会と新しい政策決定システムの構築

(ガスが更に「充満」した両院議員総会) 
 7月13日、私の署名集めで要件を満たしたにもかかわらず、一向に開催されなかった両院議員総会が、6月15日の提出後約1ヶ月して開催された。分裂を防ぐための手段だったのに全く役に立たず、51人が離党してしまった。野田代表の責任は重大である。一つだけ嬉しいことに、北沢俊美倫理委員長が、処分の審査のついでに重大な瑕疵を特別に指摘してくれたことである。
 開催に当たっても相変わらず野田総理からは詫びの言葉がなかったが、私はもう意見を言う気力も失っていた。新聞紙上でも報道されたとおり、「ガス抜き」だけの何の意味もない会合となった。
 特に舟山康江参議院議員の、例の参議院総会よりも11人1期生厳正処分要請を重視、そして原発再稼働反対要請者には会わない面会格差(前回ブログ参照)について、いろいろグダグダ言訳し、最後に「他意はない」と結んだ。私も思わず大声を出しそうになったが、押えてやめた。
 野田総理の相変らずの誠意に欠ける答弁、そして決してすまないと言わない強情な姿勢は、ガスを「充満」させただけであり、今後の「爆発」すなわち「離党」が十分予想されるものとなった。どうしてもっと素直な党運営が出来ないのか不思議でならない。
 

(有識者から評価される棄権も有権者からは叱責が大半)
 本件で、私は有識者からは、私のとった行動は絶賛される一方、有権者からは訪問の際に罵倒されることもあり、また、メールと電話でも相当なきつい意見をいただいている。私のとった政治行動であり、批判は受けて立つしかない。
 昨週お会いしたベテラン議員は「篠原君が両院議員総会開催要請の署名を集め始めたと聞きホッとした。これがうまくいけば分裂は防げると期待したのに」と残念がっておられた。しかるべき党議拘束は、党内で議論が尽くされ、党内手続きも踏むこと、すなわち、党内民主主義が貫かれていることが前提である。今回は、前者は時間をかけた点ではクリアーされても、後者は全く不備であり、党議拘束をかける資格のない法案であった。もし、きちんと手続きを踏んでいたら、造反は少なく、分裂などに至らなかったのは確実である。
 ところが、信毎の記事をさらっと読んでいるだけの皆さんには、どうも私の「棄権」は敵前逃亡と映っているらしい。消費増税に賛成の者からも反対者からも叱られることになる。決まり文句は、「男らしく反対しろ」か「党で決めたことは守れ」であるが、いくら党できちんと決めてないと説明してもわかってもらえない。

(党の政策決定システムの構築)
 こうした中、輿石幹事長が明確に与党としての党の政策決定システムの構築を約束してくれたのが、せめてもの救いである。何でも両院議員総会にかけるわけにはいかないのはわかる。やはり、自民党の総務会のような組織が必要であろう。できることならば、私も積極的に関与していくつもりである。二度と愚かな分裂騒ぎをおこさないようにしないとならない。詳細は、次回にゆずるが、何よりも改善すべきは「党議拘束」と日本だけ異様な処分である。党議拘束違反で除名か党員資格停止だと騒いでいる国は日本しかないことが知られていない。

2012年7月12日

社会保障・税一体改革関連法案採決、その後の離党・処分の補足説明 その③ 12.07.12

引き続きお送りします

Ⅳ野田首相の問題ある面会格差

<ルールなき面会仕分け>
 団体や地方自治体の陳情は、幹事長室を通すという面倒くさいルールができあがり、それに従って地元議員が立ち合ったり、政務三役の陳情に同行したりしている。ところが、首相への直訴なり面会は、かなりでたらめである。何しろ、党規約も平気で破る党の政権である。ほとんど明確なルールはなく、官邸の窓口の気まぐれで処理されているようだ。
 いくら消費増税に政治生命をかけるといっても、消費増税法案に賛成した11人の1期生には喜んで会い、脱原発の要請には会おうとしない勝手な振る舞いが目につく。同僚議員に厳正処分を、などと薄情なことを言いに来る1期生に会う野田首相の気が知れない。有無を言わせず突っ返すのが、党の代表のすることである。

<毛嫌いされる脱原発面会要請>
 私の知る限り、嫌な脱原発の面会要請には、ほとんど応じていない。
まず、4月、増子輝彦参議院議員等福島県選出の6国会議員が、4月に「原発再稼働は慎重に」と申し入れるため面会を求めたが、会おうとしなかった。6月に入り、5日には荒井聡原発収束PT座長が、関電大飯原発の再稼働に慎重な判断を求める120人の署名を官邸に持参した。この時も斉藤勁官房副長官しか対応せず「120人の国会議員の首相宛ての署名なのに無礼だ」と荒井座長代理は怒りを表している。6月25日には、江田五月元参議院議長ら、「脱原発ロードマップを考える会」のメンバー6人が、2025年までのできるだけ早い時期に原発をゼロにするよう求める提言書を届けたが、やはり藤村官房長官しか対応していない。
 同僚国会議員に対してもこの閉鎖的差別的態度だから、再稼働を心配してツイッターで官邸前に集まる国民の声など届くはずがない。毎週金曜日の夕方、官邸に何万人と押しかけられるようになるのも当然のことかもしれない。非はあげて党内世論や国民世論を寄せ付けない。執行部、政権中枢にある。

<耳の痛いことにこそ耳を傾けるべき>
 野田政権執行部には、党内の様々な意見には耳を傾けるという姿勢が、徹底的に欠如しているのだ。もし野田首相自身が、自分の政策に賛成する者を選んで会い、反対する者と合わないという趣味を全面に出しているとしたら、一国のリーダーとしての自覚に欠ける。また、もし何人もいる政治家のスタッフ(官房長官、副長官、補佐官)や事務方が、波風の立たないことばかり考え、耳触りのいいことしか首相に伝えないとしたら、自らの役目を果たしていないことになる。そして、こうしたことの積み重ねが政権を危うくすることになる。鳩山政権でも菅政権でも繰り返されてきたのだろう。党と政権との意思疎通のまずさである、党に不満ばかりが高まっていった。

<参議院議員総会の軽視>
 首相の動静で見ると、野田総理が11人の1期生議員と会ったのは、国会内で開かれた参議院総会を途中退席した直後である。私は、内容をすべて把握しているわけではないが、大量造反の後、かなり殺気立ったやりとりが行われたはずである。その場にいて党内の意見を聞くのと、出過ぎたことをし出した1期生議員と会うのと、どっちが党代表(総理)の責務なのだろうか。些細なことだが、野田政権の何とも言いようのない身勝手な体質が如実に表れている一件である。
 私は今回、大切な法案に棄権し、「厳重注意」を受けた身ではあるが、民主党あるいは野田政権の行方を案じる一議員として、関係者に厳重注意したい。こうしたことを続ければ、民主党政権は国民に見離される。
 このメルマガ、ブログを書いている間に、米長晴信参議院議員が離党してしまった。その前に、彼が問題にしていたのは、この案件だった。それだけ問題になる間違った姿勢だということだろう。

<頭が高い野田総理・岡田副総理>
 委員会で私の隣の隣の席が渡部恒三大先輩であり、審議の合い間にいろいろ教わることが多かった。さすがの私も、渡部さんとなると聞き役になるが、さんざん話した午後、突然差し替え(交代した代理の委員)ばかりが座ることになった。吐血し入院されたのである。私は渡部さんの昔話をもとに、1時間の質問時間の最後に以下のような嫌味な指摘をした。
 渡部さんに言わせると、「竹下旦さんの兄さんの竹下登首相は腰が低かった。消費税導入のため根回し、調整に頭を下げてばかりいた。それにひきかえ野田君や岡田君は頭が高いなあ。理屈で法案を通せると思っているという」ことだった。それに対し私は、「一昔前にもっと頭の低い人に丹羽兵助さんがおられた」。と応じた。弱小派閥三木派・河本派に属していたが故に、政策実現のため、自民党内でも野党にもいつもお願いして歩く「おじぎ3人衆」(丹羽、森山欽司、毛利松平)といわれた。
 ところで、野田政権を支えるグループには、いろいろまくしたてる「生意気3人衆」みたいな者ばかりいて、全く逆になってしまっている。理屈だけで政策を実現するのではなく、もっと謙虚になって社会保障と税の一体改革を成功裏に導いてほしい、と結んだ。
 
<必要な謙虚な姿勢>
 この政権は、何事につけ、党内の意見に広く耳を傾ける姿勢がみられない。高飛車にとってつけたような政策だけを強引に推し進め、都合の悪いことや異なる意見からは逃げまくっている。党内議論の出来レースばかりでなく、官邸の首相の面会もお友達内の出来レースばかりになってしまっている。これでは党内に亀裂が生じ、308人の衆議院議員がいつの間にか250人に減ってしまっても仕方あるまい。
 こんな状況になってしまったのだから、党内融和に気を遣い、社保税一体改革法案の成立に全力を挙げてしかるべきだが、TPPの反対者が多く離党したし、勢いに乗ってTPP参加宣言をすべきだといった記事が新聞紙上に踊っている。「頭の高い」執行部が「図に乗り過ぎ」である。

 これ以上仲間を失わないためにも、もっと謙虚な姿勢が必要である。

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