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真正保守は反TPP・反原発が当然 -日本の保守が反TPP・反原発にならない不思議- 12.10.19

<日本社会を壊し画一化するTPP>
 私がTPPに絶対反対するのは、何も農産物の関税がゼロになり、日本の農村、地方がズタズタにされるということだけではない。かねてから言われているように、国民皆保険も危うくなるなど、医療、保険、金融、郵政、物流等ありとあらゆる制度がアメリカと同じようになり、日本的な文化、日本社会が根底から覆されていくことを心配しているからである。
 例えば、その一つに、日本中に全国チェーン店のスーパー・コンビニが跋扈し、商店街がシャッター通り化し、食堂も同じように全国チェーン店が席巻していることがあげられる。
 30余年前の留学時にアメリカをグレイハウンドバスで横断した時に、丸一日乗って着いた町も前の町と瓜二つ、また元に戻ったのではないかと錯覚したことを思い出す。それほどいずこも同じ何の特徴もない街並みだった。それよりもひどいのが、どこでも同じのどうしようもなくまずい料理だった。旅の楽しみの「食べ歩き」など夢のまた夢で、「どれだけまずいか試してやろう食べ歩き」しかできなかった。私は支持者訪問の傍ら、夕食・昼食をほとんど外食ですませるが、道路沿いにある全国チェーンの食堂には余程でないと入らず、地元の業者の食堂に入ることにしている。少しでも地元の料理店を応援したいからだ。
 日本の街並みが全国チェーンのスーパー、コンビニ、ホテルが所狭しと並び、食事も全国画一の大手チェーン食堂でしかできなくなるとしたら、それこそ味も素っ気もない国になってしまう。こんな事態は絶対に阻止しなければならない。

<TPPを推進する民主党保守の論理矛盾>
 一般的には反TPPが左翼的な人たちに主張されているが、本来は保守の方から出てこなければならない。日本の文化伝統を守るためには、TPPは百害あって一利なしだからだ。その意味で、保守的主張を繰り広げる中野剛志等が、TPPに反対なのは当然のことである。日本の保守政党、自民党はTPPに加盟して、僅かに経済成長するよりもずっと大切なことがあるのに気づいたのか、先の総裁選では5候補こぞってTPPには反対しだした。
 ところが民主党内の自称保守派が、日本の経済力を高めるためにTPPを推進しなければならないとし、挙句の果てに日米同盟による対中包囲網だなどと言い出している。アメリカに追随していれば日本は安泰だと勘違いしている。しかし、日本の右傾化を喜ぶアメリカも、尖閣問題等あまりに配慮に欠ける対応に懸念を抱き始めている。

<本当の保守とニセ保守>
 北方四島を返せ、尖閣列島や竹島は日本の領土だとナショナリズムが盛り上がりつつある。ただ、日本を守るのは、何も領土を守るばかりではなく日本人の気風を守る事であり、それには、そうした日本人を形作る社会を維持しなければならない。東日本大震災の折、日本人の落ち着いた行動や地域の絆が世界から絶賛されたのは、日本的なものが最も根付いている東北だったからだ。こう言うと叱られるかもしれないが、地域の絆が失われつつある大都会、東京では同じようなわけにはいかなかっただろう。日本の淳風美俗を守るためには、TPPなど厳然と拒否しなくてはならない。さもなければ、日本の独特の文化は滅んでしまう。
 さすが、TPPのいかがわしさがわかるのか、いつもは声高に自由貿易なりグローバリゼーションを叫ぶ経済学者、評論家も、本まで書いてTPP加盟を主張するものはいない。日本にほとんどメリットがないことがわかっているからである。これに対し、前述のように保守派の論客は鈍感な政治家と異なり、大半が反TPPの立場をとる。

<真の保守は放射能汚染から美しい国を守る>
 原発についても同じようなことが言える。
 原発は左翼的な人たちだけが反対していると勘違いされがちだが、官邸前で毎週金曜日に繰り広げられるデモは、全く異質のものである。子どもを抱えた普通の主婦や団塊の世代を含む、退職した一般の人たちが、日本の国土を汚(けが)されるのを嫌って立ち上がり、自らの意思で脱原発の主張を始めたのである。
 ところが、TPPのいかがわしさに気づいた自民党も、原発では維持推進派ばかりである。5人の総裁候補は、民主党の掲げる30年代の原発ゼロはあり得ないと否定している。そして民主党ニセ保守は、これまた安い電力を提供する原発なしに日本経済は成り立たないと、原発再稼働や新設に固執している。TPPなしで日本の国際競争力が維持できないとする論と同じである。更に、原発を持ち、いつでも原爆を造れる状態にしておくことにより、日本が潜在的核保有国として核抑止力を発揮できる、という古色蒼然とした論まで出現する。これではまるで、昔の「富国強兵」に戻るがごとく時代錯誤である。

<長期的視点に立つドイツの保守政党>
 安倍総裁の誕生も、尖閣における日中間のトラブルにより、右よりの候補がよりよく見えたことも要因になったと思われる。その意味では自民党自体が相当右傾化している。安倍総裁は、「日本の美しい海、領土が侵されようとしている」と長野駅前の街宣で訴えていた。私にも日本の美しい国土と伝統文化を守るという保守の強烈なDNAは流れており、異論はない。ところが、中国、韓国、ロシアという外敵の前に、内なる放射能汚染により、その美しい国土が汚されていることに何も疑問を感じないというのは理解できない。
 今まで原発を推進してきたのは自民党政権だという後ろめたさがあり、また財界の顔色を伺うのだろう。ドイツのメルケル保守政権と比べると腰が据わらず、脱原発への切り替えができていない。原発の事故により3%の国土に人が住めなくなり、16万人も避難を強いられているのである。この美しい国土がセシウムやプルトニウムで汚染されていることをなぜ問題にしないのであろうか。これも論理的矛盾以外の何物でもない。勿論、ドイツの脱原発は緑の党などのエコロジストの動きにもよるが、それだけではない。ドイツの美しい国土を守らんとする、CDU(キリスト教民主同盟)の保守政権こそが脱原発を決定したのである。

<環境保全・脱原発こそ人類の生存と国家の存立に不可欠>
 こうした論理から、ゴア元副大統領は、核軍縮に取り組む軍事の専門家から地球の生命を危険に晒す環境の専門家になっていった。つまり軍事的タカ派が核戦争と環境破壊と同列の人類の危機と捉え、エコロジストとなり、2007年には『不都合な真実』でノーベル平和賞ももらうことになったのだ。日本の情緒的タカ派政治家で、環境汚染により人や国土が危険に晒されることを問題にし、原発反対を唱えるようになった者を、寡聞にして知らない。おかしいのは、保守派の論客でも西尾幹二を除けば、沈黙しているか、平然と原発推進せんとしていることである。あれだけ大きな事故を起こしながら、また謙虚になれずにいることに驚くばかりである。
 ゴアの気にする地球温暖化もさることながら、放射能汚染も重大な環境破壊であり、国や人類を滅ぼすかもしれないのに、日本のニセ保守政治家や保守派の評論家は呑気なものである。

<経済大国のために国を歪める危険>
 それを日本の保守は靖国神社に参拝しながら、TPP加盟、原発推進を唱えて何も疑問を感じないでいる。英霊は、日本の伝統文化が滅びゆき、国土が汚染され子供たちの体が蝕まれていくことを許さないはずである。

 (私は、本ブログを書いた後、保守派の論客のTPPと原発についての論調をみた。前述の中野は強烈な反TPPだが、原発を是とし、田母神俊雄は、 反TPPながら、原発は放射能を危険でないとまで言い切り、推進派である。そうした中、西尾と竹田恒泰は脱原発を明確に主張し、TPPにも反対している。そうした中、2冊の著書(漫画)で双方とも駄目だとしているのが小林よしのりである。それに対し、外交・安全保障問題や日本の立ち位置に関し共感できる論陣を張る女性評論家が、双方とも推進しているのは意外な感がある。また、都知事を辞し、新党で国会に戻らんとする今をときめく保守の頭目石原慎太郎は、アメリカからの自主・独立の立場からTPPに反対し、原発は容認している。海を愛する石原はエコロジストのはずであり、原発に危惧を持っているとは思われるが、福島も柏崎刈羽も東京のための原発であり、口が裂けても原発はいらないとは言えない苦しい立場と推察する。)

 健全な保守は、確実に反TPP・反原発でなければならない。反TPP・反原発を主張し続け、民主党のあまりにナマクラナな政策に業を煮やして離党し「みどりの風」を結成した4人の女性参議院議員こそ、真正保守なのかももしれない。ところが、日本の歪んだ保守は、日本の経済だけの大国を守り、「原発は安全」という崩れた神話を守るのを保守と勘違いしているのか、どうもトンチンカンな主張ばかりを続けている。
 日本国をどういう方向に持って行くのか、しっかりとした議論が必要である。