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(その1)何の意味もない画期的な共同声明―当たり前のことを大袈裟に演出し、自動車・保険で大妥協の愚―13.2.27

 2月22日、安倍総理とオバマ大統領の首脳会談が行われ、聖域なき関税化の撤廃はないということが確認されたので、TPP交渉に参加してもいいという報道が各紙とも一斉になされている。短い日米共同声明を見ると、このことがいかに噴飯もの・嘘・ごまかしであるかよくわかる。外務省の記者発表にそのまま乗せられて、その通りにしか書かない大新聞の情けなさを改めて痛感した。
共同声明仮訳(外務省ホームページ)

<当たり前の確認>
 共同声明は3つに分かれている。第1・2パラグラフで「日本には、一定の農産品、米国には一定の工業製品というセンシティビティが存在する。全品目を交渉対象とする。ただ、最終的に関税を撤廃するかどうかは交渉次第で、あらかじめ約束するものではない」ということがうたわれている。何一つ新しいことはない。こんなことは交渉ごとでは当たり前のことであり、もともと交渉参加する前からすべての関税ゼロにしないとならないなどとは言っていない。だから、アメリカとオーストラリアの間で、巷間伝えられているように砂糖の関税撤廃の有無をめぐって交渉が行われている。カナダも乳製品等について一応俎上にはのせるけれども、国内には絶対に例外として守るということを約束し交渉中のはずだ。
 しかし、22日の夕刊から23日の朝刊にかけては、大本営発表(外務省・官邸)どおり、これでTPP参加の条件が整ったと絶賛している。日経が24日(日)の朝刊で、恥ずかしそうにこの当たり前ということの説明を書いているが、見出しはあたかも重要な約束がされたようなものばかりが並んだ。

<大演出のための国益を損ねる大妥協>
 そんな当たり前のことすら民主党政権でできなかったではないか、と推進派の方から反論が返ってくるだろうが、こんなものは大々的に共同声明にする必要のないものである。そして、何より悪いことに、大袈裟な演出のために大妥協をさせられている。
 問題は、第3パラグラフであり、この共同声明をどうしても出させてくれと日本側が懇請して、それに対して米側が強引な主張を書き込ませるという妥協の上に、やっと出来上がったのだろうことが伺える。日本は、格好付けの共同声明の見返りとして、「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項ばかりではなく、その他の非関税措置に対処し、そしてなおかつTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了する」と約束させられている。後者については、アメリカ側にも必要なことかもしれないけれども、明らかに自動車、保険を名指しされたことは、日本が交渉に入る前にかなりの妥協をしてお土産を差し出すことを約束した証である。

<3分野がいつの間にか事前協議になるごまかし>
 ここまで言われるなら、日本のセンシティビティ品目「コメ、砂糖、牛肉、乳製品等を名指しで配慮すべし」と記述するのが対等の共同声明である。この共同声明は日本の義務だけが明確になった、片務的声明にすぎない。これは、私のようにこの問題にかかわっていた者にしかわからないが、外務省は牛肉、保険、自動車の交渉は、TPPの事前の協議ではないし、交渉参加の前提条件とはしないというまやかしの説明をし続けた。ところが、政権交代の機に乗じていつの間にか、日本がTPP交渉に入らせてもらう条件になってしまった。安倍首相は、保守派の代表とみられており、日本人や日本国を守ることの重要性について力説してやまない。その一方で、BSE牛肉の輸入条件を緩和して、日本人の生命を危機に晒している。この矛盾をどう思っているのだろうか。
 政府の二枚舌も極まれりである。交渉は政府の専権事項と言い訳するが、私はこのような国民をごまかした交渉は絶対許されるべきものではないと思っている。

<TPPは物価上昇2%目標を損ねる>
 経済界は成長戦略の起爆剤としてTPPへの参加表明が必要だ、と言っているが、未だもってどれだけ日本の経済成長に資するのか甚だ疑問である。逆に関税がゼロになり、安いものがどんどん入ってくれば、さらにデフレを促進することになって、物価上昇2%という目標も頓挫する可能性もある。

<「日本をアメリカに売り渡す」TPPの始まり>
 もし画期的な共同声明なら、日米両大国にお互いの例外を認める約束をしていてけしからんと他の参加国からクレームがついてくるはずである。ところが、当たり前のことであり、他の参加国は静観している。それだけ何の意味もないことなのだ。五大紙は、2010年10月以来、終始一貫してTPPをヨイショし続けており、この流れを加速しようとしているのだろうか、各紙ともTPP交渉への参加は既定の方針のように報道している。第二パラグラフを出すために、第三パラグラフで大妥協をしており、安倍首相は「日本を取り戻す」と言う標語とは裏腹に、「日本をアメリカに売り渡す」第一歩になってしまっている。TPPに加入するとこうしたアメリカのゴリ押しが日常茶飯事になり、日本の仕組みがことごとくアメリカに都合のいいように変えられていくことが明らかな中、もう加入前から図星のことが、しゃあしゃあと行われているのである。

<注目すべき自民党の対応>
 それにしても、農産物への関税をTPPの象徴に仕立て上げたが、他の5分野についてはいったいどうなっているのだろうか。保険制度、食の安全その他のことも、自民党の5項目になっていたはずである。日本を壊すおそれのあるTPPをどうしてこんなにまでして急ぐのか、私には全く理解できない。安倍首相は、選挙中にも「民主党政権には交渉能力がない」と批判してきた。事実かもしれない。しかし、安倍自民党政権が「国民をごまかし、アメリカにこっそり大妥協する能力にだけは非常に長けている」ことだけは認めざるを得まい。
 60年与党自民党は、党内調整力には長けている。236名もが加入している「TPP参加の即時撤回を求める会」を中心にどのように対応していくのかしっかりと見守っていく必要がある。
 また、我々民主党は従前どおりきちんと厳しく対処していかなければならない。