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日本の団体推薦の見本、長野県農政同友会 (12年総選挙総括・民主党再生シリーズ その7)13.02.11

<日本の片寄った団体の推薦>
 参議院選挙を前に、与党だった民主党から各種の団体がなだれをうって自民党に復縁していると報じられている。政権交代が生じてしまった今は仕方ないとしても、団体推薦のあり方はよくよく考えておかないと日本の政治を歪めることになってしまう。
 日本は60年に及び自民党が与党であり続いたことから、すべての業界団体が自民党支持となっていた。それが2009年秋の政権交代を境にして、多少変わってきた。典型例が日本医師会(連盟)で、原中勝征会長(茨城県)が大胆にも民主党支持を表明した。他に日本歯科医師会(連盟)も加わり、2010年の参院選では、西村まさみが民主党公認で当選している。3年前には石井みどりが自民党公認で参議院議員になっており、戦国時代の真田家よろしく二股かけてどちらが政権の座についていても、政治的影響力を行使できるように巧妙なバランスをとっている。二大政党による政権交代が本格化していくとなると、当然出てきてよい動きである。ただ、日本看護連盟や日本薬剤師連盟のように、民主党が与党になろうが構わず一貫して自民党と友好している団体もある。余程信念のある(?)団体かもしれないが、これでは政治は変わらない。

<金権体質が強まるアメリカ政治>
 アメリカは選挙あるいは政治が、ここ10数年とてつもなく金権体質が強まりつつある。アメリカは民主主義国の象徴のように思われているが、今や金融業界が政府を相当動かしており、TPPもその延長線上にある。2010年最高裁の判決により、企業・団体の資金提供の制限がすべて撤廃され、企業・団体の献金はますます日本とは桁違いの大きさになった。大統領選に集まる膨大な資金量をみればよくわかり、オバマ陣営は10億8千万ドル(約918億円)、ロムニー陣営が11億3千万ドル(約960億円)を集めている。その意味では、民主主義も資本主義も相当歪み始めているといえる。日本の政党助成金総額(12年約320億円)や政治資金総額(11年2,219億円)と比べるとその巨額さがよくわかる。

<アメリカは政党ではなく個々の議員を推薦>
 ただ日本と違うことは、一つの団体が全国津々浦々まで一つの政党だけを支持するといったことがない。つまり二大政党制が完全に確立し、政権交代もほぼ2期8年ごとに行われることもあり、どの団体も民主・共和両党に、自分たちの意向を汲んで動いてくれる議員を作っている。例えばアメリカ大豆生産組合なる団体は、それぞれの議員を個別にみてイリノイ州では共和党の候補者を、隣りのオハイオ州では民主党の候補者を支持しているという具合である。

<日米で推薦先が党と個人分かれる理由は党議拘束の有無>
 アメリカの新聞は、NYタイムスもニューヨーク州の地方紙であり、そうした地方紙が自分の州の関係議員の各法案の採決の賛否を刻明に報告しており、団体も国民も判断材料には事欠かない。
 根底には、日本と異なり党議拘束などなく、個々の国会議員が自らの識見により賛否を決めているという違いがある。日本は自動的に党議拘束がかかり、党で賛否が決定され、個人で判断ができない仕組みとなっている。こうしてみると、日本の企業・団体が全国一本でどの党かで推薦・支持を決めるのは、硬直的党議拘束があるかぎり致し仕方ないことともいえる。(本件については、12年8月7日のブログ「党議拘束違反で分裂・離党騒ぎは日本のみ」を参照)

<アメリカに近づきつつある日本>
しかし、今回は少し様相が違ってきた。なぜならば、社会保障と税の一体改革を巡って民主党では多くの造反者(反対者)や棄権者が出て、更にそれが多くの離党者につながったからである。誰がどのような採決行動をとったかわからなくなったので、気付いた一部のマスコミは主要法案について、個々の国会議員の投票行動を一覧表に示して報じた(東京新聞2012.11.25 前衆議院議員 主な投票行動)。その点で日本の国会も一歩前進したといえる。党議拘束に反して投票し、離党や党員資格停止というひどい処分をされたので、この矛盾がわかったのか、「生活」は党議拘束をなしにすると決めている。

<長野県農政同友会の先進的な推薦>
 全国的には全く知られていないが、今回長野県農政同友会(農協の政治団体、各県で名称は異なる)は、非常に先進的なアメリカ的推薦をやってのけた。
 よく知られているとおり、農協をはじめとする農業団体は60年与党にある自民党を一貫して支持し、その所属議員を推薦してきた。ところが、農政同友会も、一時は加藤紘一とともに自民党農政のドンとして2度も農林水産大臣を務めた羽田元首相については、自民党を離れても推薦してきた。その強い勧めで国政に参画した私も、お裾分けにあずかってか推薦してもらってきた。ただ、極めて日本的で、アメリカではありえない自民党候補とのダブル推薦である。私が政界に入ってからのことしか知らないが、民主党の衆議院議員で推薦を受けているのは、他に玄葉光一郎と鉢路吉雄がいるくらいだった。かつて、玄葉の相手は選挙のたびに替わる『日替り』ならぬ『選挙替り』候補であり、民主党ではただ一人単独推薦だった。ただ、さすがに今回は外相としてTPP前のめり発言の片棒を担ぎ続けたことから推薦されなかった。
 長野は5区に分かれているが、今回、農政同友会は私の他に、4区後藤茂之(自)、5区宮下一郎(自)の3人だけを推薦し、他の候補は推薦していない。つまり、候補者の「政治活動の実績」をみて、差をつけたのである。

<時代錯誤な九州の農政連>
 ところが、九州では相変わらず時代錯誤で、「TPPを慎重に考える会」の会長として先頭に立ち続けた山田正彦や体を張って反対し続けた川内博史すら推薦しなかったのだ。二人とも5期維持した議席を失っている。今回も、九州の民主党候補はただの1人も推薦されず、自民党候補ばかり自動的に推薦された。また、野田内閣の農林水産大臣として、TPP交渉参加を実質的にくい止めた大恩人の鹿野道彦を推薦しない山形も、九州並みである。どうも各県の成熟度の違いがあるようである。
 ただ、救いは全国農政連が一律に決めるのではなく、各都道府県に判断を委ねていることである。念のために全国を調べてみると、民主党では私の他に宮城の石山敬貴、茨城の福島伸亨、香川の玉木雄一郎の3人が推薦を受けている。また、千葉県ではきちんと政治活動を見て、野田首相の党の提案を無視したTPP前のめり発言に我慢ならずに真っ先に離党した「未来」の中後淳、内山晃等をきちんと推薦していた。農政連は長野県だけでなく個々人の政治活動に応じた推薦もしつつある。

<羽田元首相の懸命な努力>
 もともと長野県の農業団体が民主的だったのだろうが、民主党が政権の座に就いた時に丁度よく茂木長野県農協中央会長が全中の会長に就任していた。その折、羽田元首相と北沢元防衛相と私の3人で二度ほど茂木全中会長に、個々の議員ごとに推薦してほしいと逆に陳情(?)した。長野県と比べ全国の農政連はあまりに頑なだからだ。しかし、長野県以外にも個々の議員の政治活動をみて推薦を決めることが広まっているのは喜ばしい限りである。
 羽田元首相が政権交代後1回目の総選挙に勝利することが最も大切、と何度も力説されていた理由がよくわかる。8年なり2期を民主党が与党でいたならば、長野県農政同友会並みになる県がもっと増えたかもしれないからだ。

<党から政治家に変わりつつある推薦>
 日本医師会(連盟)は、原中勝征会長時代は明確に民主党を支持した。その前に地元の茨城県では09年選挙において一歩先んじて民主党議員を推薦し、全員を当選させていた。
 その後、中立を標榜する横倉義武会長となり、11年11月21日に記者会見し、各政治家の考えを聞いて、地方組織の意向に従って小選挙区ごとに推薦候補を決めていくことになった。
 長野1区では、私の相手は自民党も維新の会も医師。TPP反対を巡り「TPPを慎重に考える会」や「TPPを考える国民会議」で共闘してきたが、私の考えは全く聞かれた覚えはなく、横倉会長の言葉どおりには動いていない。しかし、推薦方式が全国団体一本でなく、「政治家」ごと、「地方組織」ごとに変えていく気運は生じつつある。今後はこうした動きが他の団体にも広がってほしいものである。これが、ひょっとして日本の政治を変える一つのキッカケになるかもしれない。