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(その5)露呈した自民党の外交能力-13.03.12-

<自民党の外交交渉能力自慢>
 衆議院選挙中、自民党の安倍総裁は「聖域なき関税撤廃がある限り、TPP交渉は参加しない」と話すときに、我々自民党は交渉能力もあり、交渉に参加しても聖域を勝ち取る外交能力があるということをよく言っていた。伏線を張っていたのであろう。政権をとるやいなや、そして訪米するやいなや、オバマ大統領から聖域なき関税撤廃はないのだという言質を獲ったと嘘と誤魔化しの大本営発表をし、マスコミも動員して、もうTPPに入る環境は整ったと言いふらし始めた。

<ロンドン・エコノミストの客観的報道-政治家とメディアのホラ話>
 この点については前々回のブログで伝えたとおりである。そんな報道をしているのは日本だけであり、アメリカの新聞は、「和気あいあいとしたいいムードの会談ではあったが、具体的な成果は何一つなかった」とニューヨークタイムズが正直に伝えているぐらいである。そして、日米共同声明から10日たった3月2日、イギリスのロンドン・エコノミスト誌は「日米、ほら話(spin)と実体(substance)というタイトルの下、以下のように論説している。

日米関係:演出と実体(英エコノミスト誌 2013年3月2日号)
 米国は安倍晋三に感銘を受けるべきなのか?それとも懸念を覚えるべきなのか?
「この3年間で著しく損なわれた日米の絆と信頼を取り戻した」。安倍晋三首相は2月22日、ワシントンでバラク・オバマ米大統領との初めての会談を終えた後、こう自画自賛した。
 日本国内では、政治家やメディアが無批判に安倍首相に同調する発言を繰り返した。彼らは安倍首相が経済、外交の影響力に関して「日本は復活した」と力強く断言たことを喜んだ。
 しかし米国では、訪米の評価はかなり異なる。ニューヨークのコロンビア大学のジェラルド・カーチス氏は、安倍首相と取り巻きが今回の訪米を、「歴史的に重要な会談であるかのように」強調していたと指摘する。

 そして、安倍政権に対しては、尖閣諸島問題や歴史的認識について、あまりのタカ派的発言について危惧を抱くとともに、日本のTPPへの参加についても、交渉がむしろ遅れるのではないかと心配していると報じている。日本の真っ赤な嘘の翼賛報道振りがいかに異常かわかってくる。

<意味のない第1、第2パラグラフ>
 もしアメリカと日本の世界1位と3位の経済大国が、お互いに例外なき関税撤廃というTPPの基礎的なルールを、お互いにそんな例外はなしにしようと言ったなら一大事である。このことをアメリカだけが勝手に約束してしまったということなら、同じ農産物輸出国のカナダ、オーストラリア、ニュージーランドはカンカンになって怒っていいはずである。そうして日本はあろうことに、そうしてもらえばアメリカの工業製品についても関税撤廃しなくていいのだということを第2パラグラフに書いている。ところが各国から何の反応も何のクレームもつけられていない。つまりは、よく言われているように、すべての関税を交渉のテーブルにつけるという第1パラグラフ、同様に第2パラグラフも何の意味もないということなる。

<日米共同声明の眼目>
 それならば、共同声明の意味はどこにあるかというと、圧倒的に第3パラグラフである。小学生の低学年なら意味が分からないかもしれない。しかし、中学入試にこの共同声明が出て、一番大事なところはどこかと問うたならば、多分ほとんどの中学受験生は、第3パラグラフの保険と自動車について日本はアメリカに相当譲らなければならいという点が最も重要なポイントであると答えるだろう。その意味では、日本の主要5大全国紙の読解能力は、中学受験生以下ということになる。
 専ら日本がアメリカに前払いを約束させられた部分だけが異彩を放っているのである。つまり、安倍首相が自慢した自民党の外交能力というのはこの程度であり、一方的に追いまくられるだけ、そして妥協を重ねるだけということが早々と露呈されているのだ。この声明の狙いはただ一つ、自民党の公約を正当化するためであり、このために大きな国益を失ってしまっているのだ。
 それを9月までに大筋合意し、今年中に終了するとオバマ大統領は言っており、なかなかその通りにはいくまい。アメリカが早々と日本のTPP参加をアメリカ議会に通告し、90日の通告ルールがクリアされて日本が交渉に参加できるのは、どんなに早くても7月か8月。実質的な交渉期限まで2~3か月ぐらいしかない。 
 今までのEPA・FTAでは9500品目のうち約1割の850品目の関税が維持されていたが、この露呈した自民党の稚拙な外交交渉能力で日本の例外措置を勝ち取ることはほぼ不可能である。

<どこかも吹っ飛ぶアジアの成長の取り組み>
 そうしたことが報道される中、次々に日本の各紙も日本の大妥協振り、あるいは厳しい参加条件ぶりを報道しつつある。毎日新聞は、自動車についてはアメリカに対する関税がほとんど下げられことはないと報じた。アメリカに対して関税が下げられないということは、他の11か国すべてについての自動車の関税が下げられないと同じことである。最恵国待品というルール(1国に認められる好条件は他にも認められる)により、アメリカにだけ関税を許し、他の国には下げさせるということは認められないからである。貿易の自由化により、アジアの成長を取り込む、輸出産業をもっと強くする、そのためにTPPに入るといってきたのに、日本が自動車の輸出を増せないならGDPを上げることができなくなってしまう。

<綻びだらけの日米共同声明>
 経済界があれだけ自由化、関税ゼロといいっていたのに、自動車の関税をゼロにできないことを、よく黙っているなと不思議な思いがする。これも裏を返せば、関税だけが大事なのではないということである。嘘で塗り固められた日米共同声明、こんなところにももうすでに綻びが出始めている。つまり、自慢の文言は、実は自民党の外交能力の欠如の証であり、日本はTPPに参加する前に相当な妥協を強いられていることなのだ。