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2013年03月22日

押し付けTPPの矛盾と危ういアベロ(舌)ノミクス- 13.03.22

 (今回の質問に対し、もっとじっくりやってほしかった、資料を送ってほしい等いろいろな反響が寄せられたので、かなり長くなるが一気にメルマガ・ブログでお届けすることにした)

 3月18日(月)、6年ぶりにTV中継入りの予算委員会の質問に立った。6年前もたっぷり1時間強、農業者戸別所得補償vs自民党の経営所得安定対策で、主として安倍総理と松岡農相に質問した。
 私のブラック・ユーモアを交えた質問に対し、それなりの反響があり、2人の視聴者から頑張れと献金もいただいた。2人とも同じで、きゃんきゃん言って攻め立てる民主党的質問に嫌気がさしていたが、私のような別の中身で質問する議員が民主党にいるとは知らなかったと同じような趣旨のメモが入っていた。

<野党を忘れる民主党>
 しかし、今回私は、すんでのところで質問するのをやめるところだった。見苦しいので理由をあからさまに言うのは憚るが、質問に当たり、私にとっては、とてもやっていられないと怒り心頭に発する屈辱的な言辞があったからである。しかし、なぜTPPをずっと追いかけてきている篠原が質問しないのだ、と私自身が責められていたし、TPPに反対する人たちから問題点をきちんと指摘してほしいと期待している人たちがいることを思い、じっとこらえて質問に立った。
TPPで安倍政権を責めることが、民主党が参議院選で息を吹き返すことにつながる。というより、それしか起死回生の民主党の復活の手段はないという思いもあった。私は週末もつぶし万全の準備をして臨んだ。
 ただ、前回の半分にあたる30分だけという短い時間であり、あまり意を尽くせなかったので、私がどう安倍総理の矛盾を突き、追求しようとしたか、それなりに工夫した「表現」のサブタイトルごとに説明しておきたい。
 安倍総理は、民主党政権が日米関係をダメにした、TPPを言い出しただけで何も進めなかった、誰かが農業は1.5%のGDPしか占めないと言ったとか、よくあげつらう嫌みの発言をする。そこで私も思い切り「安倍流嫌み反撃」を試みた。

<1.韓国の二番手ランナーなのに韓国の失敗の轍を踏む>
 私は2012年2月、訪韓団長として、韓米FTA阻止闘争委員会の面々とじっくり意見交換してきた。その時私は嫌味な挨拶をした。「韓国は二番手ランナーとして日本のやり方をみて、いいところを真似てまずいところは手を出さない、いいとこ取りで成功してきた。それを今回FTAでは珍しく一番手(フロントランナー)となり、どうもかなり混乱しているらしいと聞いている。日本は今、同じようなTPPに入るか迷っているところなので、教えを請いにきた。」
 これに対して、「そのとおり。今はフロントランナーになるのではなかったと深く反省している。しかし、せっかく我々が迂闊に他の国とは全く違うアメリカとのFTAなど結んでしまい、大混乱に陥り悪い見本を示しているのに、そこにノコノコ入っていこうとする日本の気が知れない。我々が一番手ランナーに慣れていない以上に日本は二番手ランナーの振る舞いを知らない」と見事に切り返されてしまった。
 後で知ったことだが、この鄭東泳(チョン・ドンヨン)委員長は、李明博と大統領を争い大差で敗れた御仁だった。ソウル大卒、英ウェールス大に留学、ロサンゼルス特派員を勤めた花形ニュース記者、金大中に請われて政界入り、岡田克也議員と生年月日が同じだという。2人とも東アジアの国に同じ星の下に生まれ、野党党首になっているところをみると、星占いもそこそこ当たるのかもしれない。ただ、私の「気が合うのか」という質問には、社交辞令もあったのだろう「どうも考え方が違う。あなたとは今日初めてだが、ずっと気が合う」と笑って答えた。昼食会は通訳なしですんだので、正式の会合の3〜4倍じっくり話すことができた。私も初対面ながら相当気脈を通ずることができたが、韓国の苦悩がひしひしと感じられた。

 これを受けて、都合のいいことばかりしかあげない姑息な官僚は、安倍総理には、韓国の混乱を伝えていないのではないかと質した。総理の答えは、韓国は輸出が増えているという、やはり都合のいいことばかりの答弁だった。

<2.押しつけ憲法はダメでも、押し付けTPPには擦り寄る矛盾>
 安倍総理は、誰しも認める保守の政治家である。石原慎太郎前東京都知事ほどではないが、自主憲法論者であり、アメリカの「押しつけ憲法」をどうしても改正すべしと強硬な発言を続けている。
 一方、アメリカはTPPをアメリカのルールを世界のルールにするための道具と考えており、気のいい日本などをISD条項で脅しながら、ルールの変更を迫ってくるのは間違いない。
 日本の伝統文化を守るという政治信条を売りにする安倍総理が、日米両国がタッグを組んで共通のルール作りをするというのだ。この矛盾に、本人も周りも気付いていないのではないか。鄭東泳ではないが、韓国がアメリカのルールを押し付けられて困っているというのに、進んでアメリカのルールを押し付けられに入っていこうとしている。ひょっとすると、8〜9割の合意ができており、日本はただただサインをするだけの余地しか残されていないかもしれない。
 憲法ではあれだけ押し付けられたものはダメだと言いつつ、一方で進んで押し付けられにいくというのだ。真正保守のすることではない。その点では、食の安全のルールなど絶対にアメリカと同じにするわけにはいかないと、TPP反対の石原議員こそ論理が一貫している。閣僚になっているが、保守の論客、稲田朋美議員なども安倍総理の大いなる矛盾を苦々しく思っているに違いない。
 私の最後の嫌みは、1947年のアメリカの善意の押しつけ憲法もTPPのはしりの日米共同作業、あるいはアメリカがほとんど決めたものに日本が乗っかった点で、何ら変わりがないのでは、ということになる。いっそのこと、憲法もアメリカと共通にしたらと言いたくなる。しかし、1947年は敗戦直後で仕方なしの面もあったのに対し、今回は自ら進んでアメリカの軍門に下っていくのだから、ずっと質が悪い。

 これにはまともな返答はなかった。とても答えられないであろう。

<3.4月28日が主権回復の日なら3月15日は主権喪失の始まりの日>
 自らアメリカに押し付けられにいくTPPの中で、最も国辱的なのはISD条項である。私は「さすが自民党、ちゃんと6項目のJファイルの中に入っている」とおだてた。李明博大統領は現代グループの社長からいきなり大統領になり、自らCEO大統領といい、韓国のセールスマンをもって任じていた。池田勇人首相がトランジスターのセールスマンと言われたのと同じだが、李大統領の場合は、政治哲学からして米韓FTAを推進するのは頷ける。
 しかし、安倍総理は日本の真の独立を願い、日本の国家主権を強く主張する政治家である。それを日本国がアメリカの企業に訴えられ、裁判が世銀の下にある国際仲裁センターで行われるという。最近、憲法改正論議で96条(改正には両院の3分の2の発議が必要)ばかりが喧伝されるが、76条(すべての司法権は日本の裁判は最高裁判所…に属する)に違反するのではないか。

 韓国でもISD条項の不平等性は、法律学者からも指摘されており、新しい朴槿恵大統領も再交渉について前政権から引き継がれており、通商担当者は再交渉すると明言している。安倍総理は、サンフランシスコ講和条約で占領から解き放たれた日、4月28日を「主権回復の日」として記念式典をするという。一緒に独立できなかった沖縄は当然猛反発である。鳩山首相を日米関係を壊したと批判するが、沖縄と政府の関係を壊すかもしれない。沖縄への配慮の欠如は明白である。
 その主権にこだわる安倍総理が、韓国が主権を侵されると問題にし、破棄も辞さないとしているISD条項を気にせず、聖域なき関税撤廃だけが格上の公約で、あとの5項目はこれから交渉していけばいいと格下に位置付けている。TPPの本質を全く理解していない証左である。このまま突き進んだら、3月15日は、10年後には主権喪失の日の始まりと称せられるようになるかもしれない。ここに安倍総理の大きな矛盾がある。安倍総理は、自ら進んでISD条項は絶対に受け入れないようにしないと辻褄が合わない。

 この件は、安倍総理は交渉の中でという以外答えられなかった。

<4.李大統領は米韓FTAへの前のめりで没落、安倍総理にも同じ予感>
 「李明博大統領の米韓FTAを巡る栄枯衰退」(前ブログ資料集参照)というA4サイズ1枚の年表を資料にしていた。前述のとおり30分ばかりなのできちんと触れられなかったが、私の意図したのは、下手にアメリカとの交渉に手を出し、不平等な条約を押し付けられると政権も危うくなりますよ、という警告である。
 李大統領は、11年10月訪米し、国賓として迎えられ絶頂期を迎えた。オバマ大統領は米韓FTA実施法も合わせて成立させて歓迎した。李大統領は、FTA大国韓国が日本を凌駕してアメリカを「先占」して「経済領土」にした、と悦に入っていた。ところが、11年11月13日のAPECホノルルでの、野田総理のTPP交渉参加表明にはびっくり仰天、慌てて11月22日に催涙弾の飛び交う中で強行採決し、国民の反感を買い没落していった。与党ハンナラ党には見捨てられ、挙げ句の果てに、竹島上陸という人気取り。それも功を奏さず、あとは完全なレイムダック状態となった。寂しい退任の後、今は逮捕も時間の問題と報じられている。韓国の政権交代時にいつも起るドタバタである。
 安倍総理も72%という高支持率で傲慢になり、野田総理が焦りまくってできなかったTPPに悪ノリした。つまり、今は絶頂期だが、後述するとおりの口先一つで景気が急に悪くなるなど、すぐ転落の落とし穴が待っているかもしれない。
 日本では、TPPに参加することで日米関係が良好になると思われているようだが事実は全く異なる。一般のアメリカ人はTPPなどほとんど知らない。朝日新聞が伝えていたが、記者たちすら無関心である。よくあることだが、日本のいや安倍総理の一人芝居が続いているのである。

<5.日本人の命を守るのは国防軍のみにあらず>
 日本の領空、領土、領海を守るとか国益を守る安全基準の死守こそ大切という気概は、何も安倍総理の特権ではない。私などもっと強く意識しているという自負がある。竹島も尖閣諸島も大切だが、国土の3%を人が住めなくし、16万人に避難を強いている原発事故による国土侵犯は許すわけにはいかない。この類似性がわからないのが、日本のニセ保守である。
 ドイツの脱原発は左翼運動の成果ではない。美しい国土とドイツ人を原発事故による放射能汚染から救うために、保守層が中心になり決断したのである。メルケル首相は、ドイツの典型的保守政治家コールに見出され、第二のサッチャーと比喩されている。つまり、左の社会民主党(シュミット、シュレーダー等)の流れではなく、保守系のキリスト教民主同盟政権が脱原発を決めたのである。日本でも保守派の論客西尾幹二や漫画家こばやしよしのりが脱原発の主張をするのは自然の成り行きなのだ。それを当面の経済成長、つまり一時の経済強国に目がくらみ、原発推進を唱えるのは、ごくごく薄っぺらな保守でしかない。
 日本人の生命を守るのが日本国のトップ安倍総理の最も重要な役割である。憲法9条を改正し自衛隊を国防軍にして日本を守るという考えもあってもよい。しかし、日本人の健康を守る食の安全基準をでたらめなアメリカの基準に下げられては元も子もない。日本人の命が外国の軍隊に攻撃されて失われる前に、いかがわしいポストハーベスト農薬、わけのからない食品添加物、成長ホルモン、遺伝子組み換え食品などで縮められてしまう。このことがわかっているのだろうか。
 事前協議(外務省はそうではないと詭弁を使い続けた)とやらで、日本の自動車の排出ガス規制を守らずに輸入できるアメリカ車の枠を拡大するという妥協が取沙汰されている。事実だとしたら許しがたいことである。中国から偏西風に乗ってくるPM2.5もきちんと中国政府にもの申さないとならないが、アメリカの輸入車に排ガスを撒き散らされてはたまらない。
 食の安全基準や環境基準は、日本が関税引き下げや除外以上に絶対に譲ってはならない分野である。基準の厳しいほうに合わせることを専門用語でハーモナイズ・アップといい、逆をハーモナイズ・ダウンという。もし本当にTPP交渉に参加できるなら、日本の厳しい安全基準に合わせるべきであり、他の国にもっと立派な基準があったら日本もそれに従うべきである。アメリカ国民のためにも世界のためにも、よりきついほうに合わせる方が良いということだ。

<6.アベロノミクスで農業は守れない>
 安倍政権になってからまだ3ヶ月、何一つ政策が具体的に実施されているわけではない。三本の矢、政治は結果だ、日本を取り戻す、自民党には交渉能力がある…美辞麗句が並ぶ。そういえば、TPP交渉に入るに当たって、美しい田園風景を守るといったことを、前任者も盛んに述べていた。口上手で切り返し嫌みが好きな点ではかなり共通点がある。お友達人事で人材活用が苦手という点も似ているし、突然に変な政権投げ出しをするという点もそっくりである。
 アベノミクスではなくアベロ(舌)ノミクスなのだ。ただ、悪いことではない。予算も使わず、ルールを変えるために法律改正に1年かけることもなく、ベロ(舌)だけで景気をよくできるなんて見事である。しかし、注意してほしい。浮かれているのは、株式相場や為替相場であり、いわば虚業の世界のことなのだ。確かに株価は上がった方がよいし、過度な円高は是正されてもよい。ただ、後者は、石油や食料品の高騰で庶民を圧迫する。それに通常は自国の通貨は強い(高い)ほうがよいのだ。
 アベロノミクスも米を何俵出荷したとか、お客が何人きたか、製品を何個作ったかといった実体経済までは動かせない。まして、「はっと息をのむ美しい棚田」(安倍総理の言)は、口先だけでは守れない。
 残念ながらこの差に気付いていない。
 アベロノミクスは、虚飾の上辺の景気をよくしているのは事実かもしれない。しかし、いつまた違う一言、ベロの一出しでガラッと変わってしまうおそれもなきにあらず、例えば、リーマン・ショックならぬ日銀ショックで日本の国債価格が暴落し、とんでもない金融危機に陥り・・といった具合である。
 TPP交渉参加表明は、地方や農民にそこはかとない不安感を与えている。つまり、公約破りのベロが災いを生み出しているのだ。いくら農業は日本の礎だから守ると言っても、コメの収量が増えるわけでもないし、牛も早く太るわけでもない。地方や農民の冷たい視線が浴びせられているだけである。

<7.オバマはTPPで200万人雇用創出なのに日本は何の数字も示せず沈黙>
 オバマ大統領は今年の一般教書演説で、今まで随所で言ってきた「TPPで輸出倍増と200万人の雇用創出」を明言した。それに対し、ブラント米国自動車政策協議会会長は、自動車関係だけで9万人の雇用を失うと、日本のTPP参加には反対している。AFL-CIO(アメリカ労働総同盟、産業別労組会議)は、TPPは雇用喪失につながるとしてずっと反対し続けている。FTAの元祖ともいえる北米自由貿易協定(1994年)で、低賃金のメキシコに近い南部諸州で数十万人の雇用が失われたことを経験しているからである。そして、今はTPPにより、上部・中間層数百万人が職を失うと憂慮している。
 ところが、安倍政権は、国民にそれこそいい加減なメリット・デメリット計算しか示していない。関税のことしか計算していないと言い訳し、参加表明の日に3.2兆円のプラス(GDPの0.66%)だとやっと公表した。国民にその都度情報を開示し、などと言っているが、参加を決断する前の約束さえ反故にしているのだから、今後の交渉内容は秘密の連続になることは目に見えている。そして突然不平等条約を押し付けられるのがオチである。
 ベロだけのアベロノミクスにより、12年度でGDP1%、13年度には2%アップするというのに、こんなに嫌われながら入るTPPが0.66%なのは、働き損のくたびれもうけである。そんなにまでして入るTPPなのかという疑問が生じてくる。
 経済界の大好きな金目で計算してもメリットが知れていることがわかっている。いくら誇大に宣伝しようにもできないのだろう。こんな状況だから雇用増の計算などできるはずがない。そして甘利TPP担当相の答えは、普通はGDPが増えれば雇用も増えるという答えにならないものだった。
 30代以下は反対が多いという世論調査の結果が気になった。若者の漠然とした将来不安に同情せざるをえない。本能的に日本の将来の危機を感じているのだろう。30代以上はもう職を得ているのに対し、これから就職しようとする世代が、ろくに情報もないのに直感でTPPを恐れているのだ。
 このままでは海外投資で製造業は海外に移転していくばかりである。TPPで何でも共通のルールにしていくというなら、いっそのこと労働条件のひとつである賃金も同じにしていったらいい。そうすれば、食べ物同様、輸送コストの比重が大きくなり地産地消(つまり最終消費地の近くで生産する)になっていくだろう。(このところはややこしいので詳細は省略)

<8.アメリカの狙いは金融、投資の自由化、そして労働法制の緩和>
 小国4か国のTPPにアメリカが興味を示したのは2008年、スーザン・シュワブ通商代表の頃であり、金融と投資を入れることが条件だった。つまり最初からアメリカの金融資本が自由に海外投資をして世界の経済を牛耳っていくためのツール(道具)にしようとしたのである。
 21分野とか23とか言われているが、そのなかのひとつに労働がある。表向きは発展途上国の長時間労働・児童労働等は人権上問題があり、アメリカ並みの社会保障なり勤務時間にするなどときれいごとを言っているが、本当の狙いは逆の可能性が強い。
 アメリカ資本(なり企業)が日本の企業を買収したりして傘下に収める。アメリカ並みの従業員など無視した経営をしようにも、日本の手厚い労働者保護規制が邪魔で自由なクビ切りができない。それをTPPでこじあけるのだ。何のことはない。日本の企業経営者が待ちに待っている解雇規制の大幅緩和をTPPという外圧を利用してやろうというのだ。韓国でも既にアメリカ企業ではなく韓国の大企業が米韓FTAを悪用し、中小企業を排除し、労働者をしいたげ始めている。日本の明日の姿なのである。このことは、拙書『TPPはいらない』のP77以下で警告してあったが、こんなに早く顕在化するとは私も思わなかった。
 ダメな産業から成長産業へ労働市場の流動化が必要だという美名の下で、クビ切を自由にできるようにしようと日米の大企業が結託し始めたのである。安倍政権は、いつのまにか日本の国家主権も大企業の特権の保護に向かってしまったようだ。そうした折も折、産業競争力会議の「雇用制度改革」分科会は、TPP交渉参加表明に併せて、経済界の悲願である「金銭解雇」の仕組創設の議論を始めた。そしてようやく連合もTPPのいかがわしさと日本経済界の魂胆に気づいたようである。
 アベノミクスの中で三重丸は、経済界への賃上げの要求である。本来民主党政権こそすべきことを安倍総理がしているのである。物価が2%上がるのに賃金が上がらなかったら、サラリーマンは困ってしまう。賃金労働者のためというよりも、鳴物入りの三本の矢の達成のためだろうが、労働者には朗報である。
 しかし、一方で安倍総理は、その政治哲学とは裏腹に日本をアメリカと同じ体質に変えんとしつつあるようであり、この辺りで歯止めをかけなければ、かつて日本型経営の根幹とされた終身雇用制度は風前の灯となってしまう。AFL-CIOがなぜTPPに大反対するかも知らず、自分たちの企業の尻馬に乗ってTPPに賛成する労組は、自分たちの身の上にとんでもない将来が待ち受けていることに気付かなければならない。

(本件は、時間が足りず質問できなかった)

<9農業の大規模化で地方に大量の日雇い労働者出現>
 安倍総理の3月15日の総理記者会見の半分以上が農業に割かれていた。そして、経済財政諮問会議や産業競争力会議から、いつもの農業の大規模化、農地所有の条件緩和といった提言が飛び出す。よほど腹に据えかねたのだろう。私の前に質問した自民党の小里康弘議員は、農政は我々に任せてほしいと釘を刺した。
 菅政権の10年10月1日の唐突なTPP交渉参加表明は、大半が名前さえ知らず党内手続きなども何もされていなかった。9月17日の組閣を終えたばかりであり、大畠章宏経済産業大臣にすら内容が知らされておらず、TPPには反対した。参院選中の消費増税発言よりもずっとひどい大失態である。つまり端的にいって、思い上がった官邸の暴走である。
 しかし、次の野田内閣と異なり、また反省し、悔い改めることも忘れなかった。すぐさま「食と農林漁業の再生推進本部」を立ち上げた。11月9日のよく出てくる「包括. 的経済連携に関する 基本方針」の原案には「農業構造改革推進本部」となっていたのを、菅総理の農政改革、農業活性化の前向きな思いを込めての命名だった。当時、農林水産副大臣だった私も、当然この動きに加勢した。全中会長、農業経済学者、流通業界代表、ユニークなところでは有機農業の親派の加藤登紀子等を委員にして農政の改革に着手したのである。
 ところが、安倍政権は、口先が先行し、農政改革には何にも着手していない。これこそ怠慢以外の何物でもない。農業関係者や農政に精通した者が誰一人と入っていない官邸直轄の産業競争力会議会合で、同じ口先だけの卓見(?)が新聞紙上を賑わせている。農家戸数を減らし、株式会社に農業をやらせるといこうとだが、そうなると農家をやめる農民はどうなるのだろうか。三井物産ならぬ三井農産株式会社の非正規雇用者、季節労働者とか日雇い労働者になってしまい、農村社会は崩壊してしまうかもしれない。
 残念ながら実物経済の典型の農業は、アベロノミクスでは動かない。いくら棚田は美しいと言っても、機械化もできず、採算も合わず、すぐ耕作放棄地化に拍車がかかる。こんなわかりきったことに何の対策も示されておらず、ますます不安が募るばかりである。それだけ農業を何とかしないとならないと言うなら、農政を改革し、農村に光を当てるべく特別の検討機関を設けるべきではないかと林農水相に応援質問をしたが、新しい会議の答えは返ってこなかった怠慢である。

<結び>
 やはりTVの影響は絶大である。電話、メール、ファックス、そして私のブログのアクセス増と反響が多い。予想した通り、TPP反対の姿勢を明確にしてないというお叱りも数件あった。視聴者の目は確かであり、しっかりと私の内面まで見られている。あとは、農業以外にあんなに問題があるとは知らなかった、説明がわかりやすくやっとTPPの内容がわかった、淡々と問題点を追及している姿勢がよいといった好意的なものが大半だった。
 民主党は野党第一党である。与党の政策の間違いを厳しく追及する野党としての存在感を示すべく、精一杯TPP参加表明の危険性・矛盾を突いた。
 私こそ、TPPを追い続ける者の1人であり、農業や農政のこと、日米共同声明のこと(2月下旬から、3月上旬のブログでいろいろ述べた)、でたらめメリット計算など山ほど質したいことがあったが、他の議員がほとんどやっているので、そうしたことには一切触れず、私独自のものにした。しかし、今回は、十分意を尽くせなかったのでその補完の為、少々長い解説をしてみた。TPPを考える素材の一つにしていただければ幸いである。

2013年03月21日

3月18日 予算委員会集中審議の資料・ビデオ

 予算委員会集中審議をご覧になられた方より、質疑で使用した資料と、ビデオの掲載のご要望をいただきましたので、こちらに掲載いたします。

米韓FTAとTPPの影響比較(表)
「李明博大統領の栄枯盛衰(表)」

長野県が長寿日本一の理由(表)

質疑の様子(動画)
衆議院インターネット審議中継 ビデオライブラリのページにジャンプします。
「発言者一覧」から篠原の名前をクリックで閲覧いただけます。

2013年03月20日

衆議院予算委員会TPP質問報告:その1【簡略版】 押しつけTPPに入る矛盾 -米韓FTAの混乱は、日本の将来の混乱を鏡で映したもの- 13.03.20

 数回のブログで、TPPの危険性について皆さんにお伝えしてきたが、3月15日夕刻、安倍総理がTPP交渉への参加を表明した。民主党が総選挙で大敗し、たった3年3か月で政権与党を自民党に奪い返された時から、うすうすこの日が来ることは感じていた。日本の国の形を変えてしまう危険なTPPに突き進む安倍総理を、今の段階では止める術がないことが残念でならない。

<与党ボケが続く民主党>
 我が党内にも、TPPにより数多くの有為な人材を失ったというのに、尚TPPへの交渉参加に賛成で、こともあろうに安倍総理にエールまで贈る議員もいる。仮に、自民党が野党のままで野田首相が同じことをしても、自民党議員はそんなことは絶対にしないであろう。それどころか、国を誤る暴挙と徹底的に攻撃するであろう。民主党は政権与党になれなかったばかりか、たった3年3ヶ月で与党ボケし、野党の何たるかを忘れてしまったようである。まさに民主党の末期症状が表れている。
 こうした中、私は久方振りに3月19日、テレビ入りの予算員会で安倍総理に直接TPPに関する質問することになった。まず簡略版をお届けし、その後に長い解説版をお届けする。

<急ぎすぎた韓国に嫌みの冒頭挨拶> 
 交渉参加表明をした今でもTPPの内容は見えてこない。当のアメリカに問うと担当者からは毎回「米韓FTAを見習ってほしい。これ以上の内容になる」と必ず返ってくる。そういうことになるなら、今韓国で起こっている混乱は、将来の日本でおこる混乱を鏡に映したものである。今、韓国は大混乱で、李明博大統領が逮捕寸前とか言われているが、その原因の一つに、米韓FTAに前のめりになり過ぎたことがあるのではないかと思う。
 去年(2012)の2月、TPP慎重会の団長として訪韓した際、韓米FTA阻止闘争委員会委員長に「韓国は長年、日本の後ろ姿を見て二番手ランナーとして経済成長をしてきた、しかし、FTAについてはフロントランナーになったがうまくいっていないようだ、それを勉強しに伺った」とちょっと嫌みの挨拶をした。

<フロントランナー韓国の日本への忠告>
 すると、「そのとおりだ。フロントランナーになるものじゃない、こんなひどいFTAとは思わなかった、今までのFTAと違う。今、我々がフロントランナーになってこんなに反省し困っているのに、ノコノコと入っていくという心境がさっぱりわからない」と返された。
 役所は総理に都合のいい情報しか上げない傾向があるが、韓国の状況は総理に伝わっているのかと安倍総理に質した。総理からは、自由貿易協定を結べば、大きく変わる分野もあるわけであり、当然、さまざまな困難に直面する方々も出てくるだろうと、TPPは棚に上げた回答。さらに、対米輸出の増加、米国からの輸入の減少による対米黒字の増加、外国人の対韓直接投資が1年間で約2倍になったなど、メリットを羅列した。予想どおりの答弁である。

<続出するアメリカの筋悪注文>
 それに対し、私は現実に起きている米韓FTAの問題点を、視聴者向けもあって説明した。「中小企業育成」、「外食産業」などを中小企業適用業種として振興しようと思ったら、不平等とクレームがついてきている。また、「医薬品」では「特許」でジェネリック医薬品にアメリカが早速クレームをつけてきて、特許期間を長くして薬価を高くしていることを挙げた。さらに、国民皆保険はもう、ほぼこじあけられており、特区で健康保険の適用除外の地域ができ、ものすごく高額な治療だけの病院ができている。日本で盲腸の手術をしたら30万円だが、アメリカは300万円を超える、そういうふうにしていいのかと例を挙げて迫った。また、私が許しがたいのは学校給食で、地産地消がアメリカの輸入農産物をやはり差別して排除しているのだから、けしからぬといわれていることだと付け加えた。
 他にも、緩和した基準は戻せないラチェット条項というものもあり、もし今度アメリカでまたBSEが発生したときに、輸入基準をきつ目にして牛肉の輸入をストップするということができない。だから、韓国は主権を大幅に制限されていると言い、先の韓米阻止闘争委員会の委員長、鄭東泳(6年前に李明博と大統領選を争った議員)は、日本のTPPへの前のめり姿勢に首を傾げる。

<押しつけTPPにノコノコ入る、押しつけ憲法嫌いの安倍総理>
 安倍総理は、保守として日本国憲法はアメリカから押しつけられた憲法だとまで言っているが、TPPは、まさにアメリカのルールを世界のルールにしていく、押しつけ憲法ならぬ押しつけTPPだ。韓国は「前払い」でもGMO、遺伝子組み換え食品の表示などしてはいけないとされ、日本でも食の安全を弱められる可能性がある。国の安全とは何も防衛だけではなく、食の安全も守らないとならない。TPP加盟は安倍総理の政治哲学、政治信条と全く違うことではないかと質した。
 安倍総理は、米韓FTAについてさまざまな課題、問題点を挙げたが、米韓のFTAは2国間だが、TPPについてはマルチの会議でありアジアの国々が多く参加するので、そういう国々と連携していくことも可能ではないかとごまかした。

<ISD条項こそ完全拒否>
 米韓FTAでの混乱の最後の質問にISDを挙げた。ISDは簡単に言うと、国家をアメリカの企業が訴えて、かつ、日本国の裁判所ではなく、世銀の下の仲裁センターで裁判が行われ、日本が負ければ賠償金を払わなくてはならない。日本が日本の法律外で裁かれ、外国の企業に賠償しなければならないと、そもそも憲法七十六条の日本の裁判は、最高裁判所以下、下級裁判所でやるという規定されていることに反するものだ。
 このISDの言いわけに、日本のEPAにも規定されていることがあげられる。全然ルールがない発展途上国と結ぶのは当たり前だが、先進国同士で結ぶ必要はなく、現に米豪FTAにはない。韓国でもISD条項の削除は朴槿恵大統領に引き継がれた一つの課題となっている。
 自民党が6項目に入れたことを評価する。関税も大事だが、これこそ安倍総理の信条からしたら、絶対にこんなことは認めないと言ってしかるべきだと思うがどうかと突っ込んだ。安倍総理は、6項目について自由民主党は、守らなければならないと考えている。しっかりとかち取るべく努力をしていきたいと思っていると答えた。

 ISDは絶対ダメだ、自民党の皆さんも頑張ってと念を押し、米韓FTAの混乱を通じての問題提起を終えた。

2013年03月15日

3/18(月) 予算委員会 TV中継のお知らせ

 いつもご支援賜り厚く御礼申し上げます。
 本日15日に安倍総理のTPP交渉参加表明が予定されておりますが、来週3月18日(月)に開かれる予算委員会で、経済対策・経済連携等の集中審議が行われ、しのはら孝が質問いたします。
 NHKのTV中継が予定されておりますので、ぜひご覧ください。

日 時:3月18日(月) 9:00~
(※しのはら孝の質問時間は11:00~11:30を予定)
番 組:国会中継 予算委員会 集中審議 (生放送)
放送局:NHK

 緊急な大ニュースが入らなければ、中継いたします。

2013年03月13日

(その6)駆け込みTPP交渉参加は何も得られずに終わる-13.03.13-

<新参国は新しい議論ができず>
 東京(中日)新聞が、3月8日 一面トップで「TPP後発国に制約、先発国の合意再交渉できず、参加条件政府公表せず」が波紋を投げかけている。11年11月のホノルルAPECの折の日本の参加の意思表明をきっかけに、カナダとメキシコが参加表明した。ところが、加墨両国に対して、「既に合意した条文を後発の参加国は原則として受け入れ、交渉を打ち切る終結権もなく再協議も要求できない」などの不利な条件を提示し、両国はそれを受け入れ、念書をかわしていたと報じている。

<92年7月の内閣官房の回答>
 「TPPを慎重に考える会」と民主党の「経済連携PT」においても6~7月にかけて、本件が真剣に議論された。我々も心配なので、政府を追求した結果、7月25日には、以下のような回答が内閣官房から提出されている。その意味では、我々民主党の関係者にはわかっていた話である。

 参加国で合意済みのルールについて再協議(リオープン)できるか否かについては、合意済みの事項をリオープンしないとの条件が、メキシコやカナダの参加に際して示されたとの情報もあるが、交渉参加9か国はコメントしないとの立場をとっている。いずれにせよ、引き続き情報収集していきたい。

 3月8日の予算委員会では、元同僚の松野頼久(維新、TPPを慎重に考える会元幹事長)と笠井亮(共産党)がこの点を突いて追及した。こんなことでは、交渉に参加しても何の意味もないからである。今後、参加するとしたら、日本も同じ条件を突き付けられるに違いない。

<日本はサインするだけしかできない>
 そこに昨日(3月11日)、「TPPを考える国民会議」の会合等に出席してもらっているアメリカのNPOから、シンガポールで開催中のTPP交渉におけるアメリカ側の重大な発言がメールで届けられた。
日本の交渉参加が決定されたが、交渉参加は早くとも9月、そして、10月インドネシアのバリのAPEC会合でサインするだけだというのだ。つまり、日本の交渉期間はわずか1カ月しかないことになる。 
 こうした短期間の交渉で、各国のEPA・FTAで例外扱いされている約850品目の例外をどのぐらい勝ち取れるのだろうか。私はほぼ不可能に近いと思っている。

<TPPは雇用を大きく喪失>
 オバマ大統領は「輸出の倍増と、200万人の雇用の創出」のためにTPPを推進すると言い続けてきている。それは、TPPの元祖とも言うべき、北米自由貿易協定(NAFTA)によりアメリカの雇用が数10万人に規模で失われていたからである。だからこそ自動車工業界と並んで、労働組合のAFL-CIO(日本の連合に当たる)も、TPPに大反対している。ところが、我が国では雇用の創出等についてはほとんど何も示されていない。言訳として内閣府が作っているG-TAPモデルという計算では雇用は一定という条件だからと述べている。つまり、日本は、雇用については何も考慮していないのである。TPPは、日本の雇用を大きく失うことを意味している。

<さっぱり出てこないメリット・デメリットの試算>
 他に、いくつもあやふやなことがあるが、その一つが日本のTPP参加のメリット・デメリットである。1年半前に内閣府と農水省と経産省がそれぞれ別々の算定をしていることは承知の通りである。そして今、損得を明らかにしてからTPP交渉への参加を決めるということから、再計算が行われている。しかし、一向に公表される気配がなかったが、最近の報道によると、安倍総理の参加表明の日に併せて公表されるという。これもまた国民に十分に情報を提供し、議論した上で結論を得ていくという約束に対する違反である。
 本来、TPP交渉の中で行われるべきものを、その前提条件とやらで、BSE、保険、自動車についての事前の交渉が行われていた。政府は、ずっと関連交渉ではあるが、事前の前提条件の交渉ではないと言訳してきたが、先日の共同声明ではしゃあしゃあと第三パラグラフに書かれている。その後、アメリカにとってはセンシティブな工業製品である自動車の関税(アメリカの場合、車2.5%、トラック25%)は、そのまま継続されることとなっているらしい。となると、日本の輸出の大体3分の1ぐらいが自動車で占められているというので、メリットはずっと少なくなることになる。更に、コメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉等の関税がそのまま維持できるとなると、デメリットの計算も農水省の計算よりずっと少なくなるはずである。しかし、あやふやな約束ではとても影響なしとはいえないはずである。
 今でもGDPが0.1%ぐらいしか増えないといわれる中で、なぜ日本社会の伝統、文化、制度をこなごなにしかねないTPPに参加するのだろうか。

<台湾の現実的対応>
 2~3日前、BSEをめぐって6年間に及び、ほぼ没交渉だったアメリカと台湾の通商交渉が行われた。その後の記者会見で、台湾は2020年をめどにTPP交渉に参加するかどうか決めるという。非常に現実的な対応である。私は、TPPは、その見本と言われる米韓FTAの結果を3~5年じっくりみてから決めればよいと思っている。なぜならば、アメリカからみれば、日本の入らないTPPはあまり経済的な意味がない。俄か仕立てで交渉に参加して何も得られないよりも、功罪をよく見極めた上で、ダメなものはダメ(国益に沿わないものは受け入れない)と明確に示した上で加入交渉をしていけばよい。

2013年03月12日

(その5)露呈した自民党の外交能力-13.03.12-

<自民党の外交交渉能力自慢>
 衆議院選挙中、自民党の安倍総裁は「聖域なき関税撤廃がある限り、TPP交渉は参加しない」と話すときに、我々自民党は交渉能力もあり、交渉に参加しても聖域を勝ち取る外交能力があるということをよく言っていた。伏線を張っていたのであろう。政権をとるやいなや、そして訪米するやいなや、オバマ大統領から聖域なき関税撤廃はないのだという言質を獲ったと嘘と誤魔化しの大本営発表をし、マスコミも動員して、もうTPPに入る環境は整ったと言いふらし始めた。

<ロンドン・エコノミストの客観的報道-政治家とメディアのホラ話>
 この点については前々回のブログで伝えたとおりである。そんな報道をしているのは日本だけであり、アメリカの新聞は、「和気あいあいとしたいいムードの会談ではあったが、具体的な成果は何一つなかった」とニューヨークタイムズが正直に伝えているぐらいである。そして、日米共同声明から10日たった3月2日、イギリスのロンドン・エコノミスト誌は「日米、ほら話(spin)と実体(substance)というタイトルの下、以下のように論説している。

日米関係:演出と実体(英エコノミスト誌 2013年3月2日号)
 米国は安倍晋三に感銘を受けるべきなのか?それとも懸念を覚えるべきなのか?
「この3年間で著しく損なわれた日米の絆と信頼を取り戻した」。安倍晋三首相は2月22日、ワシントンでバラク・オバマ米大統領との初めての会談を終えた後、こう自画自賛した。
 日本国内では、政治家やメディアが無批判に安倍首相に同調する発言を繰り返した。彼らは安倍首相が経済、外交の影響力に関して「日本は復活した」と力強く断言たことを喜んだ。
 しかし米国では、訪米の評価はかなり異なる。ニューヨークのコロンビア大学のジェラルド・カーチス氏は、安倍首相と取り巻きが今回の訪米を、「歴史的に重要な会談であるかのように」強調していたと指摘する。

 そして、安倍政権に対しては、尖閣諸島問題や歴史的認識について、あまりのタカ派的発言について危惧を抱くとともに、日本のTPPへの参加についても、交渉がむしろ遅れるのではないかと心配していると報じている。日本の真っ赤な嘘の翼賛報道振りがいかに異常かわかってくる。

<意味のない第1、第2パラグラフ>
 もしアメリカと日本の世界1位と3位の経済大国が、お互いに例外なき関税撤廃というTPPの基礎的なルールを、お互いにそんな例外はなしにしようと言ったなら一大事である。このことをアメリカだけが勝手に約束してしまったということなら、同じ農産物輸出国のカナダ、オーストラリア、ニュージーランドはカンカンになって怒っていいはずである。そうして日本はあろうことに、そうしてもらえばアメリカの工業製品についても関税撤廃しなくていいのだということを第2パラグラフに書いている。ところが各国から何の反応も何のクレームもつけられていない。つまりは、よく言われているように、すべての関税を交渉のテーブルにつけるという第1パラグラフ、同様に第2パラグラフも何の意味もないということなる。

<日米共同声明の眼目>
 それならば、共同声明の意味はどこにあるかというと、圧倒的に第3パラグラフである。小学生の低学年なら意味が分からないかもしれない。しかし、中学入試にこの共同声明が出て、一番大事なところはどこかと問うたならば、多分ほとんどの中学受験生は、第3パラグラフの保険と自動車について日本はアメリカに相当譲らなければならいという点が最も重要なポイントであると答えるだろう。その意味では、日本の主要5大全国紙の読解能力は、中学受験生以下ということになる。
 専ら日本がアメリカに前払いを約束させられた部分だけが異彩を放っているのである。つまり、安倍首相が自慢した自民党の外交能力というのはこの程度であり、一方的に追いまくられるだけ、そして妥協を重ねるだけということが早々と露呈されているのだ。この声明の狙いはただ一つ、自民党の公約を正当化するためであり、このために大きな国益を失ってしまっているのだ。
 それを9月までに大筋合意し、今年中に終了するとオバマ大統領は言っており、なかなかその通りにはいくまい。アメリカが早々と日本のTPP参加をアメリカ議会に通告し、90日の通告ルールがクリアされて日本が交渉に参加できるのは、どんなに早くても7月か8月。実質的な交渉期限まで2~3か月ぐらいしかない。 
 今までのEPA・FTAでは9500品目のうち約1割の850品目の関税が維持されていたが、この露呈した自民党の稚拙な外交交渉能力で日本の例外措置を勝ち取ることはほぼ不可能である。

<どこかも吹っ飛ぶアジアの成長の取り組み>
 そうしたことが報道される中、次々に日本の各紙も日本の大妥協振り、あるいは厳しい参加条件ぶりを報道しつつある。毎日新聞は、自動車についてはアメリカに対する関税がほとんど下げられことはないと報じた。アメリカに対して関税が下げられないということは、他の11か国すべてについての自動車の関税が下げられないと同じことである。最恵国待品というルール(1国に認められる好条件は他にも認められる)により、アメリカにだけ関税を許し、他の国には下げさせるということは認められないからである。貿易の自由化により、アジアの成長を取り込む、輸出産業をもっと強くする、そのためにTPPに入るといってきたのに、日本が自動車の輸出を増せないならGDPを上げることができなくなってしまう。

<綻びだらけの日米共同声明>
 経済界があれだけ自由化、関税ゼロといいっていたのに、自動車の関税をゼロにできないことを、よく黙っているなと不思議な思いがする。これも裏を返せば、関税だけが大事なのではないということである。嘘で塗り固められた日米共同声明、こんなところにももうすでに綻びが出始めている。つまり、自慢の文言は、実は自民党の外交能力の欠如の証であり、日本はTPPに参加する前に相当な妥協を強いられていることなのだ。

2013年03月08日

(その4)パックス・アメリカ(日米同盟、TPP)よりも PAXアジアでアジアに平和を―PAX、Park(朴)、Abe(安倍)、Xi(習)― 13.03.08

 2011年10月、野田前首相が突然APECホノルル会合(11月13日)でTPP交渉への参加表明をしたので党で議論をしてほしいということになり、経済連携PT(通称「鉢呂PT」が始まった。唐突な首相発言の合わせた形で、突貫工事で議論が進められた。このことは、当時、シリーズブログで書いたので記述は避けるが、ほとんどが反対議員ばかりで、推進しようとする議員はほんの僅かしか参加しなかった。

<正直な吉良議員の日米同盟論>
 そしうた中、緒方林太郎議員だけがずっとただ1人参加し続けた。本来中立でなければならない吉良州司事務局長が、あまりに推進派が少ないので、と言い訳しつつ議論に加わった。2人とも考え方は違うが、議員としての立居振舞いは立派であった。その吉良意見の一つが、結局は、日米同盟がありアメリカなしに中国とも対峙できないので、中国牽制のためにもアメリカの望むとおりTPPに加盟していかなければならない、というものであった。これについては、相当違う意見も出たが、TPP参加なり推進派の何人かが心の底に抱いていることである。
 安倍首相は、憲法改正し、自衛隊と国防軍と名も変え、集団的自衛権の行使も認めていくべきという典型的保守派に属する。もっとタカ派なり保守になると石原慎太郎・維新の会代表に行き着き、日米同盟から脱却して日本の真の独立をということになる。安倍首相は日米同盟を基軸として、日本の国際的地位を維持していくという通俗的な(?)考えであることがわかる。こうした視点から、吉良説のごとくアメリカの望むことには応じていかなければならないという弱腰外交が見えてくる。

<TPPと日米同盟は別に考える>
 しかし、軍事的意味合いを重視した日米同盟の深化のためにTPPに入るなど本末転倒である。自民党筋からは、3年3ヶ月の民主党政権の間にこじれた日米同盟を修複するためにもTPPに入らないとならないと、いう嫌味が聞こえてくる。しかし、安全保障なり国際政治外交上の観点から日本がTPPに入るのが当然というのは、論理の飛躍以外の何物でもない。いくら強引なアメリカでも表だってここまで露骨な要求はしていない。日本が相変わらずのお土産、忖度外交をしているだけである。

<アメリカばかりへ肩入れするのは危険>
 森・プ―チン会談もあり、北方領土問題もひょっとして急展開していくかもしれない。中国との間でこじれた尖閣諸島問題等をこのまま放置しておくわけにはいかないし、朴新大統領を迎えた韓国とも善隣関係を維持していかなければならない。日本は外交上もアメリカ1国に振り回されるTPPばかりに現を抜かしておれる状況にない。
 アメリカとはTPP以外に何も懸案はない。1980年代の後半から90年代当初にかけての通商摩擦と比べたらよくわかる。アメリカがどうしても入れと圧力をかけてきているものではなく、決めるのは日本だと言い続けている。それをBSEで譲歩し、国民の生命を危険に晒し、自動車・保険で前払いして自らアメリカの陣中に飛び込んでいくというのは、どうみても正気の沙汰ではない。

<PAXアジアこそ日本の向かう途>
 かつて麻生太郎元首相「アジアの自由と繁栄の弧」で、アジアの共通の価値観を持つ国々と協力の重要性をうたった。鳩山由紀夫元首相は、東アジア共同体構想を掲げ、アジアが手をたずさえて発展していくべきと主張した。
 アジアにヨーロッパと同じ共同体はすぐにはできない。それでも、アングロ・サクソンの新自由主義的スタイルよりはずっとアジア諸国の中の共通点が多い。ゆるやかにつながりを強めていくのが最善の道である。朴 喆熙 (パク・ チョルヒ) ソウル大学校国際大学院教授は、3月3日の東京新聞のコラムで、韓国のPark(朴槿恵・パククネ)大統領、日本のAbe、そして中国のXi(習 近平)初期の3人の指導者の頭文字をとったPAXアジアによる世界の安定と繁栄に貢献すべしと主張している。

<日本はアジアに重点を置くべき>
 それを、アメリカのルール何でも押しつるTPPに日本がお人よしにもノコノコ入っていくのは暴挙以外の何物でもない。日米構造協議以来のアメリカの世界戦略にはまるだけだ。
 中国が経済面でも軍事面でも台頭していることは事実である。それに対抗するためだからといってアメリカにだけ肩入れするのは愚かなことである。朴教授ではないが日中韓でアジア的なルールを決めたほうがずっと自然である。日本は、世界1、2の米中両大国の狭間に立って両国の覇権を牽制し、かつ両国のつなぎ役をすべきなのだ。それを、片方に全面的に妥協しながら入り込むことはない。地政学的観点からにしてもTPPへの拙速な加入は、日本の外交をしばるだけだ。
 日本は、アセアン、韓国、ロシアとも交流を深め、アジアの軸をきちんと立てた上で、どのようにでも対応できる柔らかい立ち位置を維持すべきなのだ。おそらくインドも含め、日本の周辺諸国は、そうした日本の役割を期待しているに違いない。

2013年03月07日

(その3)TPP大翼賛報道が国の針路を誤らせる-13.03.07-

 3/2(土)、私は昨年同様にほとんど誰もいない議員会館で、しこしことペンを走らせている。昨年は禁(政治家の間は本は書かない)を破って、「TPPはいらない」「原発廃止で世代責任を果たす」を執筆中だった。気分を害す同僚議員がいるかもしれないが、私は何よりも、日本の将来を危うくするTPPと原発について、同僚議員にこそ勉強してもらいたかった。だからいわゆる「励ます会」を初めて開き、お土産に本を持ち帰ってもらった。2冊となると3,200円、大半は招待で来てもらっているのでケチかもしれないが1冊にしてもらった。ところが、古い本を含め5冊持ち帰った猛者もいるという。ちゃんと読んでいてくれるなら私のかいた汗も報われるのだが、どうも耳学問だけが得意なのが国会議員、どこかの本棚に死蔵されていると思うと力が抜けてくる。
 2月上旬、民主党の再生のために年末の選挙総括を11回のシリーズでまとめたが、その間に安倍政権で、TPPの拙速な参加への動きがあったため、短いレポートとした形で数回連続して発信していくことにする。そして、その準備のため、長野のTPP交渉参加反対の大集会の後帰京し、会館で1人仕事をし始めている。地元の有権者との対話の機会が少なくなるが、秘書のいう「うちの代議士は全国区(?)」であり、TPPの行方を固唾を呑んで見守っている人たちのために。シリーズブログをお届けすることにした。

(その3)TPP大翼賛報道が国の針路を誤らせる
 戦前、政界は大政翼賛会となり、マスコミもこぞって戦争を美化し、新聞・ラジオも大本営発表の翼賛報道一色になってしまった。そしてそれが日本国民を戦争に駆り立て、日本国民の不幸を増大することになった。翼賛報道がいかに滑稽かは、北朝鮮の国営TVのあの元気のいいおばさんアナウンサーの喋り口をみるとよくわかる。北朝鮮の人々は、あの報道でミサイル発射も核実験の成功もまじめに喜び、アメリカを悪の帝国と思っているのだ。

<原発絶対安全神話も翼賛報道の典型例>
 今の日本は報道の自由があり、そんなことは全くないと思っている人が大半だと思うが、実は残念ながら我が日本国では今も全く同じことが繰り返されている。
 長く続いたことでいえば、原発安全神話であり、原子力ムラの言うことを鵜呑みにし、特に読売新聞などは、社主正力松太郎のテコ入れにより、ずっと原発推進の提灯記事を書き続けてきた。そしてあの福島第一原発事故のあとも、まだその姿勢がかわらないでいる。完全に社会の木鐸の役目を放棄してしまっている。悲しいことに、TPPについても全く同じことが言える。いやもっとひどい偏向報道がなされている。

<見苦しいTPP礼賛偏向報道>
 今原発については、東京新聞は大反対、朝日と毎日は脱原発支持:そして読売・サンケイ・日経が原発推進と分かれているのに対し、TPPについては、2010年秋以来、5大紙は理由もなくこぞって推進一辺倒なのだ。菅直人首相が10月1日に唐突にTPPを言い出した時に、全紙がそれこそ盲目的にTPP礼賛を続けている。今も内容が定かでないが、2年前にはもっと何物かわからなかったし、数紙は「太平洋版FTA」と称しつつ鎖国が開国という通俗的なスローガンだけで、推進し続けている。
 今はその雛形の米韓FTAの内容が明らかになり、その危険性も徐々に理解されつつある。それにもかかわらず、2月23日から24日にかけての各紙は安倍首相がオバマ大統領との2国間会談で大妥協をとつけたかのごとく翼賛報道である。
 東京新聞と地方紙がこれとは真逆の論を展開しており、この点が戦前の報道よりより少しましかもしれない。毎日新聞だけが、24日に「関税に「聖域」に代償」と少々批判めいた見出しにしているのが、私からするとせめてもの救いである。

<日米の報道の温度差>
 さて、この交渉始める前の異例の共同声明とやらの歴史的成果は、もう一方の当事国アメリカでは、どう報じられているのだろうか。
 そもそも日本で大問題になっていてもアメリカではごく小さくしか扱われないことが多い。逆もある。例えばかつて軍用機FSX問題でアメリカの軍事技術の日本への流出は国会でも大問題になっていたが、日本では何も報じられておらず、逆に日本では連日米牛肉・柑橘の輸入自由化問題ばかりが報じられていた。日本国民の関心も重要度も大きく異なることが多い。
 まず、「聖域なき関税化」は、eliminate tariffs with no sanctuaryと変な英語になっている。そもそもそんな言い方は11ヶ国による本家のTPP交渉では使われていない。うがった見方をすれば、今日の妥協を演出するため、世論を誘導するために造り出された言葉にすぎない。そして、安倍首相に乗せられたマスコミが聖域をなくしたと大宣伝している。
 私は、この開かれた(?)国で、こんなみえみえの茶番報道が許されていいのかと疑問を感じざるをえない。

<NYタイムズの真逆の「具体的成果なし」の小見出し報道>
 アメリカの主要各紙は一応22日の日米首脳会議で報じているが、まず中国問題や米軍普天間基地移転等外交問題を中心に触れており、TPPは後のほう扱われているにすぎない。ニューヨークタイムス(NYタイムズ)は、一応共同声明は紹介しつつ、「全ての物品が交渉の対象となる」ことに日米合意したことを伝えただけで、「具体的な結果は何も生じていない」(A meeting produces little in the way of concrete results)と言う小見出しまでつけている。それどころかミシガン州のレビン下院議員(民主党、自動車議員と知られる)の「日本がTPP交渉に入る前に、日本の政策や習慣に確かな変化をもたらすものでなければならない」という注文発言を載せている。

<冷たいアメリカの主要紙の報道>
 ファイナンシャルタイムズは、日米2国間会談に先立ち、アメリカの役人のコメント「他国が(センシティブ品目の関税を維持すると)同じような保証を求めてくる恐れがあることから、安倍は明白なものは何も得られないだろう」を引用し、更に安倍が何の拘束力もない(non-committal)声明をだらだらと説明する、とも予測した。そしてほぼその通りに進んだ。アメリカの貿易政策専門の情報誌US Trade Insideは、フォアマン(国家安全保障補佐官)がアメリカの自動車メーカー向けの市場アクセスの改善がなければ、日本は交渉に入れないと発言したこと、また、アメリカが日本のセンシティブ品目の例外扱いを許すかという問いには何も明確に答えなかったこと等、日本の報道とはかなり違うことをだけを報じている。他の主要紙をみても、日本が浮かれているような解説はどこをみても見当たらない。

<韓国の状況こそ詳細に報道すべし>
 私はまず米韓FTAで韓国がどうなるか3~5年ほど様子をみてから考えればよいと思っている。
 多分韓国はあらゆる格差が拡大し相当ギスギスしてくるはずである。3月1日(金)に宋基昊(ソンギホ)弁護士は、資料としてありとあらゆる分野で何もかも法律改正が必要とされたことを指摘した。 日本のマスコミには、アメリカを「経済領土」とし、日本に先駆けて「先占」したというFTA大国・韓国の様子こそ詳細に報じ、日本がTPPに入るか入らないかの判断材料を国民に提供することが求められている。それを、いつもながらのアメリカ偏重のヨイショ記事だけでは、読者がネットに離れていくのは仕方あるまい。
 韓国には、全国紙が8紙ほどあり、ハンギョレ新聞、京郷新聞の2紙は米韓FTAに絶対反対の立場を貫いている。前述の宋基昊弁護士は、谷岡郁子、舟山康江等が反TPP、脱原発で民主党を離党し、「みどりの風」結成したことも、これらの新聞で承知していた。ところが日本には、財界の肩を持つ新聞しか存在せず、韓国の動きをきちんと報ずる新聞が存在しない。この点では、韓国のマスコミのほうがずっと民主化されている。
 外へ拡大していくTPPを礼讃するのは、戦前日本が国際連盟から脱退し、日独伊防共協定を結び、満州へそして中国・東南アジアへと進出するのと礼讃する論調とだぶってくる。マスコミは戦争拡大を煽り、ブレーキをかけられなかったのだ。日本のメディアにもっと冷静な客観的な報道を望むのは私だけではあるまい。

2013年03月01日

(その2)60年与党自民党の悪知恵 ―安倍政権の選挙公約破りは徹底的に糾弾すべし―13.03.1

2012年末の選挙でTPPは争点にならなかったというのが、プロの選挙通の解説である。空中戦すなわち党首討論等ではでなかったものの、実際は、有権者がTPPを推進せんとする民主党に厳しいお灸をすえたことは、「民主党幹部たちのTPP前のめり発言で農村部・地方の小選挙区はほぼ全滅」(2月8日ブログ)で述べたとおりである。

<大反対は選挙のポーズだけか?>
 賢い日本の政権与党自民党は、TPPについて6項目を挙げ、その第一に「聖域なき関税撤廃がある限りTPP交渉への参加に反対」を位置付け、農村部・地方で圧勝した。その公約を履行する「TPP交渉への参加を即時に撤回する会」(森山裕会長)になんと236人(384人の61%)も加入し、安倍首相の訪米に際して、何度も会合を持ち気勢をあげていた。
 安倍訪米の一連の成果(?)報道を受け、更に頻繁に会合が開かれたが、2月26日役員会で首相一任が決まるや、27日には、外交・経済調査会(衛藤征士郎会長)が、早々とTPP交渉への参加を容認し、条件闘争に入ることになった。皮肉で言えば、お見事というしかない。

<関税だけを大袈裟に問題視>
 TPPについて推進という公約は、みんなの党と民主党の2党のみ。維新の会も適当にお茶を濁し、交渉に参加するが国益に沿わなければ撤退という中途半端なものにしていた。それに対し、自民党は大反対のそぶりを見せつつ、実は聖域なき関税撤廃さえクリアーできれば参加してもいいという余韻を残した微妙な公約だった。そして、TPPはあたかも関税撤廃だけが大問題であり、その問題がなんとかなれば参加してもかまわないという間違った認識を広めていった。そして、嘘とごまかしだらけの例の共同声明である。

<韓国の状況を見守る>
 先進国日本で、このようなごまかしが国とマスコミを総動員して罷り通ることが驚きである。私は改めて長年の政権与党の狡猾な知恵に舌を巻くとともに、これでだまされている農民・国民のために引き続きTPPのいかがわしさに警笛を鳴らし、交渉の透明性・公開性を要求性していくつもりである。
 山田正彦さんのあとを受けてTPPを慎重に考える会の会長を務めることになり、再開第1回に、岩月浩二弁護士を講師にISDのいかがわしさについて議論を行った。今日3月1日の第2回は、韓国の弁護士で早くから米韓FTAの危険性を指摘してきた宋基昊(ソンギボ)さんが来日されていたので、発効後1年強経過した米韓FTA絡みの問題点を話してもらった。

<明らかな自民党の公約違反>
 自民党の農林部会とは、私は30年の農林水産省勤務の中でどっぷりと付き合せていただいた。その縁で羽田孜元首相の勧めで国会議員になっている。自民党のもっとも自民党的な農林族の皆さんの行動は、手に取るようにわかるといってもいいぐらいだ。今やかなり引退されてしまったが、多くの重鎮の皆さんと親しく付き合せていただいた。もめる政策の落としどころを知り、そこに持って行くノウハウは、一朝一夕にできあがるものではないが、私はその過程を陰からじっくりと見せてもらってきた。
 自民党幹部と政府首脳と農林族議員の間に相当なやりとりがあったであろう。農政を一緒に推進してきた元同僚(?)の悪口は避けたいが、やはり安倍政権の重大な公約違反であり、その点は野党として厳しく突いていかねばならない。

<保利・尾辻両長老の正論>
 新聞紙上でしか知らないが、私は2人の老練な政治家が正論を述べておられることに心が洗われる思いがした。保利耕輔さんは「両院議員総会を開いた上で首相に一任するべきだ」と、私が社会保障と税の一体改革の三党合意についてしたことと同じことを主張されていた。尾辻秀久さんは「首相一任に反対する決議を行うよう」要求されたという。しかし、今や自民党もそれを受け入れる良心なり余裕が残っていなかったようだ。
 私は、2人の主張に私の姿を重ね合せた。2人とも邪念がなく、本当に日本の将来を憂い、TPPに大反対されながらもまとめていこうとされているのだ。今後、自民党の中でいい子になって出世していく必要もないため、何事にも正々堂々と対処されているのだ。私も、誰におもねることなく、私のよかれと思うことを述べていくことにしている。私は、政界での経験度合は圧倒的に少ないが、残された政界での期間は同じであり、捨て身で政治に取り組んでいる点は共通である。それに対し、中堅・若手の抵抗する迫力が伝わってこない。私が農林省に入省したての頃の中川一郎、渡辺美智雄、浜田幸一、中尾栄一等のうるさ方を懐かしく思い出した。民主党の統治能力の欠如が問われているが、自民党政治も明らかに活力を失っている。よくいわれる日本の政治の劣化である。

<民主党は反TPPで反転攻勢以外に途はない>
 民主党は政策決定システムも問題視されているが、極めていい加減なやり方でできあがった12年末のマニフェストもその悪例であり、11月16日の夕方、政調会長主催で大衆討論が行われ、19日(月)に最終回は30人で始め、最後まで残ったのは9人、大半がTPP反対だった。それにもかかわらず、TPPをすすめ政府が判断するというマニフェストになった。野田執行部の強引な政権運営、党運営が極限状態に達していたといってよい。これにより、民主党は農村部・地方で大敗した。民主党はせっかく全国に議員がいる総合政党になったというのに、元の都市政党に戻ってしまった。
今後、再び政権奪取するためには、農村部・地方の議員に復活してもらわないとならない。それを、でたらめな手法で強引に策定されたマニフェストにこだわっていては始まらない。民主党は野党になったのである。思い切った反転攻勢以外に再生の途は残されていないことを肝に銘ずべきである。そしてその一つが反TPPの姿勢であり、公約違反を追求することなのだ。

<孤軍奮闘の決意>
 2月28日午前、予算委員会が行われ、そこで前原誠司委員が「TPPには賛成だが」と言いつつ政府を追及していたという(私は忙しくて見ていなかった)。その件で視聴者から、なんと軟弱な質問かとクレームの電話をいただいた。民主党の姿勢も定まらない。
 TPP反対の民主党衆議院議員の多くは、総選挙の前に離党してしまった。その上に大半が落選し、TPPを慎重に考える会の現職議員メンバーは激減してしまった。2011年11月は反対者が上回ったのが今は様変わりである。しかし、我々は孤軍奮闘、がんばって反対の声を出し続け、TPPの問題点を指摘し続けていくつもりである。

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