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民主党のTPP関連マニフェストは改善されたがいま一つ迫力なし-13.06.27

<TPPに軟弱な対応という誤解を払拭する必要>
 山田正彦さんが落選してしまったので、「TPPを慎重に考える会」の会長をしている。
 12年の年末の総選挙が始まってから、安住幹事長代行のTPPを反対する者は踏絵をして公認しないという、とんでもない発言があり、相当選挙に響いた。私にいたっては、周りから公認されないのではないかと心配され、公認されると執行部の前ではTPPに賛成をすると主張を曲げた意気地なしとされ、怒りの電話やメールをたくさんもらった(「選挙戦術における2つの失敗」13.02.13)。
 政治家はいつも批判に晒されるのは宿命かもしれないが、真実は一つである。
 似たような誤解を避けるため、会長としてTPPに関する参院選用マニフェストの顛末を報告しておかなければならない。
 民主党のTPPに関する参院選用のマニフェストが6月26日公表され、「農林水産物の重要5品目などの除外、食の安全、国民皆保険の国益を確保するため、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨みます」と、自民党のJファイルとほぼ同じ表現になった。

<農業者戸別所得補償で躍進した参院民主党>
 詳細は既存ブログに譲る(「羽田元首相が予測した民主党政権の混乱」13.02.07)が、
   04年(農業再生プランのビラ110万枚を1人区中心に配り、1人区で13勝14敗と1議席差まで追い詰め、全体では50対49と初めて民主党が第一党の地位を占める)
   07年(小沢代表の強い指示により、農業再生プランの中の直接支払いを「農業者戸別所得補償」と改め、310万枚のビラを配り、非自民対自民で23勝6敗、そのうち18人が民主党と大勝)
 この2回の参院選の勝利により衆参のねじれを生み、2009年の衆議院選挙で民主党の大勝利につながったのである。このことを一番よく身に染みているのは、安倍首相であり、このリベンジ(仕返し)で、13年参院選勝利に並々ならぬ闘志を燃やしている。

<最近10年の衆参6回の選挙のうち半分の3回は農政(TPP)が勝敗を決した>
 12年末の総選挙の大敗北の根底には、民主党のだらしのない幼稚な政権運営に愛想を尽かされたという事がある。しかし05年の小泉郵政選挙と、12年の野田自爆解散と比べると、東京や千葉ではほぼ互角か改善されているが、北海道で11議席(09年は15議席)あったものが2議席、九州・四国・中国で19議席あったものが7議席に減るなど、地方で大打撃を受けている。明らかにTPPを推進などと言い出すから負けたのである。反対に自民党は、「聖域なき関税化がある限り絶対に反対」ということで選挙を闘い、地方で圧勝し294議席となり、政権を奪還している。(「民主党幹部のTPP前のめり発言で農村部・地方の小選挙区はほぼ全滅」13.02.08)
 このように最近10年の衆参6回の選挙のうち半分の3回は、農政(12年衆院選はTPP)が鍵を握っていたのだ。

<執行部は二度とも鹿野さんの主張を拒否し惨敗、鹿野さん本人も二度落選の憂き目>
 今回の参院選の争点は、憲法改正の問題がある。もう一つは脱原発である。ただこの二つについては、幸いにして民主党の考え方が国民の間に定着している。「96条の先行改正には反対」、「未来志向の憲法を構想する」(綱領)であり「2030年代に原発ゼロにしていく」ということで、自民党との対抗軸が出来上がっている。
 問題はTPPである。12年の衆院選マニフェスト末は、たった2回の全体会合でまとめてしまった。時の執行部は「TPPを推進すると言ったら同僚議員が大量に落ちる」という鹿野道彦元農相の大声の叫びを無視して暴走。鹿野さんは700票差で比例復活できなかった。(鹿野さんは05年の小泉郵政選挙の時も対抗法案を用意すべしと主張。ところが、岡田代表、仙谷政調会長、五十嵐NC総務相が受け入れず、選挙でも初の苦杯をなめた。)(「鹿野道彦さんの確かな政局を見る眼」 11.08.28)

<TPPへの態度が鍵を握る>
 こうした過去の事実関係からすると、この次の参議院選挙はどのように闘うか明らかだ。TPPについて民主党がきちんと姿勢を打ち出すことに尽きる。すなわち明確なTPP反対の姿勢を打ち出すとともに、自民党の衆院選の嘘公約とその公約違反を糾弾することである。

<丁寧な策定プロセス>
 残念ながら12年の衆院選マニフェストはほとんど顧みられなかった。マニフェストにない消費増税をやり、TPPに前のめりになる民主党は愛想をつかされている。今度のマニフェストもまじめにあれこれと細かいことを書き込み、07年同様に本体に漫画を入れ工夫はしているが、東京都議選の大敗北に象徴されるように、信用回復は簡単ではない。今回は櫻井政調会長の下、比べものにならないぐらいきちんとした丁寧なプロセスを踏んでまとめている。突然の自爆解散による衆院選と比べて時間的な余裕があったにせよ、今の海江田執行部は意見を聞いてまとめるというまともな姿勢があり、民主党が成熟しつつある証拠である。

<選挙を意識した政治的決断のできない正直政党>
 しかし、最後は政治決断が必要なのだ。ところが、残念ながら、最後のところで未熟さをさらけ出している。折しも米沢隆元議員が、民主党が選挙に勝てなくなったのは小沢さんがいなくなったから、と6月18日の朝日新聞で述べている。その通りである。自民党は白々しく、「TPPは絶対に反対」といって政権を獲ったあと、しゃあしゃあとTPP交渉に参加している。このずるさを身近で見ながら、なぜもっと野党に徹していられないのか、私にも不思議でならない。

<TPP推進議員の不可解な動き>
 私はマニフェストを議論する会合(全体会合、ネクストキャビネットの会合、経済連携PT)全てに皆勤している。その中ではたった一回、「今までの継続性があり、TPPが反対というのをだすのはあまり賛成できない」と推進寄りの発言があっただけである。他は全員TPPに反対という意見ばかりだった。
 TPPを推進する人たちはもともと、経済連携PTの会合にほとんど出てこない。時たま出席しても意見を言ってさっさと立ち去った。12年選挙の後になって超党派で「TPP交渉推進議連」ができ上がり、数人の民主党議員も参加している。超党派の会合に出ながら、党内の経済連携PTにはほとんど出ないし、出てきても意見を述べない。
 出席せず意見も出さない議員の声など聴く必要がないはずなのに、党内融和のためTPPを推進すべきという人に配慮した表現にするというのだ。しかし、残念ながらこれでは農村や地方でも民主党の本格的支持は得られない。

<参院選勝利にはTPP反対の明確な姿勢が必要>
 6月19日現在、農政連は、32選挙区しか推薦を出していない。出ているのは大半が自民党候補予定者であるが、野党では、民主党の岡崎トミ子、羽田雄一郎(2人区でダブル推薦)、舟山康江(みどりの風)、佐藤公冶(生活)と計4人だけを推薦している。つまり、農政連は人を見ながら推薦をしたのである。骨のある会長のいる佐賀は、12年9月に自民党推薦を決定したものの、安倍首相のTPP参加表明への抵抗のため、一旦白紙に戻している(「参院選と民主党のTPPへの対応」13.04.26)。この時点でもまだ推薦を決めていないというのは、民主党のマニフェストの書き振りなり約束振りをじっと見ているのである。北海道、群馬、鳥取は自主投票を決めている。そこに明確に反対していくという事を打ち出せば、次々と民主党推薦が増えるかもしれないのに、その絶好の機会を失ってしまっているのだ。これが、米沢さんのいう、大人の政党でないということである。
 よく国民の半数はTPP推進であり、反対はその半分の20数%にすぎないといわれる。しかし、フワッとした感じで、貿易を自由化していった方がいいと賛成しているだけであり、反対の20数パーセントは絶対反対なのである。民主党がTPPを反対だからと言って、そのために票を失う候補が一体何人いるだろうか。もっと言えば、TPP推進だからといって投票してくれないが、明確に反対と言えば20数%の人は投票してくれるのだ。この単純なことがわからないらしい。つまり、自民党と比べ、選挙に勝とうという意欲に欠けるのだ。
 TPP慎重会の会長として採点すると、12年末のマニフェストはマイナス100点、安住発言はマイナス200点なのに対し、60点と単位は一応もらえたというところ。できれば100点満点にしてほしかったというのが率直なところである。

<308議席を取り戻すのが再生の近道>
 民主党の一部には、民主党が再び都市政党に戻り(つまり、今のみんなの党や維新と同じになり)、再出発したいと考えている者もいるようだ。それがTPP推進議連(みんなの党)なり、96条を改正する会(維新の会)への参画に結びついている。悪く言えば連携を探るなり民主党を飛び出すキッカケを探っているのだろう。他に、規制改革、行政改革とやたら声高に叫ぶのもいる。10数年前の民主党の姿に他ならない。それでは、また振り出しに戻るにすぎない。
 しかし、都市政党に逆戻りするのは、政権交代はできても、政権運営で行き詰まったら見捨てられる脆弱な政党にしかならないという羽田孜元首相の考え方と真逆になる(「羽田元首相が予測した民主党政権の混乱」13.02.07)。308議席の民主党は、実は史上まれにみる農村政党となり、やっと1区現象から脱し総合政党になったことが忘れられている。私は308議席の大半を占めた農村・地方の議員を直ちに国政の場に引き戻せるような政策を打ち出し、そのための選挙戦術を練っていくのが民主党再生の王道であり、近道だと思っている。つまり、要は15年前に戻るか4年前に戻るかの違いであり、羽田さんの描いた総合政党への道を辿るしかないのだ。

<自民党との違いを打ち出す>
 自民党の公約は、「TPP等の経済連携交渉は、交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します」と抽象的なものになり、農民や地方の疑念を更にかき立てている。一ランク下のJファイルには、農林水産分野の重要5品目等やこれまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)を最優先し、それが確保できない場合は、脱退も辞さないものとするとある。自民党議員はJファイルも公約だと言い、高市政調会長が例によって、公約はとJファイルは違うと正直に失言し(?)、農村議員との間で揉めている。
 民主党は、一応12年末の衆院選時の執行部よりずっとましになり、かつ手続きもしっかりしてきたが、もっと明確に反TPPを打ち出してほしかったというのが本音である。当然のことだが、今回は12年衆院選と異なり、踏絵などと言い出す執行部はいないので、候補者自身がTPPについても自分の考えで政策を訴えていくしかあるまい。