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日米並行協議はやられっぱなしの譲歩の連続 -「やられたらやり返す、倍返しだ!」の気概の一かけらもなし― 13.08.23

 安倍首相は、民主党政権は外交力が拙いが、長年与党の自民党は外交能力があり、TPP交渉もうまくやると豪語していた。しかし、今の現実をみると全くの逆だとしか思えない。

<嘘宣伝は2月の日米共同声明から始める>
 既にブログで論じたので(「露呈した自民党の外交能力(13年3月12日))詳しくは触れないが、2月のやっと実現した訪米後のいかにも立派な成果をあげたという共同声明が皮切りである。朴槿惠大統領がアメリカに国賓として招かれて丁寧な対応をされたのに対して、1月訪米を断られ、やっと実現した訪米も昼食を挟んでたった1時間45分。日本側が懇請した内容の共同声明は、日米の解釈が違うのはいつものこと。オバマ版と安倍版があり、それぞれが都合よく国内向けのアピールをしている。その内容は、日本側がTPP交渉に参加する前に、日米二国間の懸案事項を譲りに譲らなければならないという、とんでもない屈辱的な内容だった。それにもかかわらず、日本の全五大紙が大成果と翼賛報道した。3月2日のロンドンエコノミストが誇大広告振りを正確に書いている。

<日本の金に目をつけたアメリカ金融業界>
 その後の交渉なり、日本側の対応は予想した以上のあまりの妥協の連続である。
 4月12日、かんぽ生命保険のがん保険参入など、新商品は当分認可しないと麻生副総理円財務・金融相が表明した。アメリカの引き続く圧力を受けてのものである。アメリカは、保険について互助組合とか協同組合を一切認めず、すべて民営化しなければならないという姿勢を崩していない。日本の郵政の300兆円、農協の100兆円を自分達の思いのままにしたいというとんでもない野望を持ち続けているからだ。

<アフラックのがん保険が郵便局で売られるという大妥協>
 そして、次は7月26日に発表された日本郵政とアメリカンファミリー生命保険(アフラック)の業務提携である。アメリカはずっと日本政府が全額出資する日本郵政下のかんぽ生命保険は公正な競争をしていないとして、日本郵政を攻撃し続けてきた。そのアメリカの強硬姿勢を和らげるためなのだろう、日本郵政はとんでもない妥協をしでかした。今まであれだけしつこく民業圧迫を批判してきた日本郵政に、2万もの郵便局でアフラックの保険を扱わせるというものだ。つまり、日本郵政の特権として攻撃してきたものを、自分にその特権を使わせろというのだ。しらじらしいにも程があり、つじつまが合わないこと極まれりである。たった1社のためにも露骨な要求をするアメリカ外交の典型である。

<やられっぱなしで倍返しできない日本>
 こんな妥協を繰り返す日本も日本だが、それをしゃあしゃあと受け入れ、それでもまだ民間企業との対等な競争条件という一見もっともらしい大義名分をまくしたて続けているアメリカの厚顔無恥ぶりに呆れて物が言えない。官邸や外務・経産両省の米側への交渉態度の軟化という淡い期待は無残にも打ち砕かれた。よくいうやられっぱなしである。この交渉には、高視聴率TV番組半沢直樹の「やられたらやり返す、倍返しだ」の気概のひとかけらもみられない。ここまでアメリカのご機嫌取りをしてTPP交渉で得るものがあるならいいが、後述のとおりその見通しはゼロに近い。
 自民党を分裂させ、最後は野党転落という高い代償を払って実現した郵政民営化だったが、その結果が、かんぽ生命や郵便局が自ら商品開発できず、アメリカの保険会社の単なる窓口になり下がるというのは、あまりに無惨である。これがフランスなら、まず政府がこんな譲歩は絶対にしない。よしんば政府が折れても、郵便局長も局員も抵抗のストを連発して、アメリカの保険商品を売ることはない。日本の大樹の会やJP労組は一体この信じ難い妥協にどう臨むのだろうか
 自動車貿易での安全基準や環境基準についても、一応は日本側がアメリカ側の勝手な要求を突っぱねてはいるが、今後はかんぽ生命に次ぐ妥協が繰り返されるに違いない。日米並行協議は史上空前の敗北となる経済交渉としか思えない。

<5品目の例外は全く協議されていない>
 それでは一体日本の主張の眼目である、例の「5品目」の例外の交渉はどうなっているのであろうか。こちらは、TPP交渉本体に任されており、日本は主張の場すら設けられていない。最近の情報では関税引き下げ交渉は11ヶ国の間では2日間で相当進められているものの、アメリカの砂糖やカナダの乳製品といった日本のコメ並みの際どい品目の扱いについては交渉が進んでいないという。
 日米並行協議とは名ばかりで、アメリカにとられるものはいいように取られ、日本のTPPから得ようとしているものは本交渉任せで、置いてきぼりをくっている片側交渉(?)である。もし並行協議というなら、日本の主張も事前の並行協議で交渉し、日本がかんぽ生命で譲ったから、例外5品目でアメリカが譲るというのが世界の交渉の常識である。それを日本は一方的に差し出しまくっているばかりである。こんな屈辱的外交が、本当に長年与党にいた政権党のすることだろうか。ダメの烙印を押された民主党の3年3カ月のほうが、まだアメリカに対して毅然とした態度を取っていた。

<秘密交渉を楯に交渉内容は全くわからず>
 4月に日米並行交渉で決めた自動車貿易での合意内容はTPP協定に盛り込まれ、両国間でのみ発動することが決められている。私にはそもそもこんな先行協議を他の加盟国が認めていること自体がおかしいと思うが、どうなっているのか不明である。
 こうしたあやふやな状態で、7月24・25日の2日間だけマレーシア・コタキナバルで日本が交渉に参加した。ここではじめて1000ページ以上という協定文を入手でき、ようやくスタート地点に立ったが、今の協定文の内容なり交渉状況は一切外には出てこない闇の中である。そして、今までまとまったことは、受け入れるだけで再交渉できないというのに喜んで参加しているのだ。
 アメリカの言いなりになる並行協議の一方で、日本は一体TPP交渉にどのように参加できるのだろうか。
 一方、政府は国民に情報を提供しということをいつも言っていたが、交渉が始まった途端秘密交渉だからといって何も語らない。国益に反するとんでも内容が知られては、後から鉄砲で撃たれかねず、交渉内容を逐一公表をできないことは一応理解するが、あまりにもひどい情報開示である。与党自民党でも、保利耕輔、尾辻秀久、細田博之等もののわかったベテラン議員があまりの独善的交渉に怒りを爆発させている。

<TPP特別委の設置で国会で審議が必要>
 このままいって、はい国会で承認してくれというのはあまりにひどすぎる。この点は、公明党の山口那津男代表はかねてから、TPP特別委員会の開催による国民への交渉内容の説明の必要性訴えていたし、谷垣禎一自民党代表も野田総理に党首討論で、TPP特別委の設置を迫っていた。当然のことなのだ。政権奪取した安倍自民党政権は、手のひらを反して特別委の設置を渋っている。公約の嘘に続いて、ここでも嘘つきがバレバレになっている。何もかも前代未聞の恥ずかしい交渉となっている。

<5品目は留保という日本提案はどこまで通用するか>
 8月中旬、日本農業新聞等一部のマスコミ報道によると(これが政府の途中経過説明でないのがいつもながら釈然としない)、日本は、来るブルネイ会合で貿易自由化率を85%とし、5品目については留保するという提案を行う予定という。日本が今まで結んできたFPA、FTAと同じ率である。アメリカその他の国は、95%以上の提案をし、日本にも同等の率を求めてくるに違いない。関税を下げたことのない940品目の中に、5品目に係る568品目があり、これらをすべて例外扱いするのは、そもそも認められていない。アメリカは9月にならないと関税引き下げの提案はしないという。日本側には年内妥結は無理との憶測もあったが、フロマン新USTR代表は、来年の中間選挙前の実績造りもあり、10月のAPEC会合で閣僚会合、その後12月に結着という目標に向け動いている。
 USTR代表のフロマンは、英米の3つの有名大学で学び、ホワイトハウスやシティグループの勤務を経て、ハーバード大ロースクールの同期生だったオバマ大統領に請われ国際経済担当の大統領次席補佐官を務めていた。80年代日米通商交渉のまっただ中でUSTR代表だったヤイターを彷彿させる剛腕の交渉相手である。日本はいいようにひねられてしまう恐れもある。

<最初で最後の関税交渉になるかもしれないブルネイ会合>
 8月22,23日、ブルネイで関係閣僚会議が開かれ、甘利担当相が参加する。その後、政府間交渉が開催される。7月は自民党議員団が4名コタキナバル入りしていたが、我が民主党は派遣していなかった。今回は、私が民主党経済連携PTの派遣という形でブルネイに出向くことになった。
 1990年12月、ウルグアイラウンドの予定された最終決着の閣僚会合がブリュッセルで開催され、私は農水省始まって以来の大型代表団のロジ(日程や食料(?)の調達等の総務)責任者として、ブリュッセル入りしていた。最後は決裂し、最終決着は1993年12月となったが、この1週間、完全徹夜が数日続き、私はなけなしの体重を更に3kg減らし、その回復に5年もかかっている。当時の与党自民党は農林8人衆(羽田孜、加藤紘一、鹿野道彦等)を派遣した。社民党は、村沢牧、山下八州夫の2人が同行していた。
 私はこれらの議員団への説明者・場所の決定等の裏方を務めていた。今回は逆の立場で行くことになった。交渉担当者に迷惑をかけないように配慮しつつ(?)、激励し、かつ安易な妥協をさせないように監視してくるつもりである。