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2013年10月29日

10/30(水)20:00~プライムニュース出演のお知らせ

 今月24日、政府はコメの生産量を抑え価格を維持する生産調整や、しのはら孝本人が奔走し実現化した、農業者戸別所得補償制度(現 経営所得安定対策)などの見直しを始めました。
 政府は、TPP(環太平洋経済連携協定)を睨み、日本農業の国際競争力の強化を目指すといいますが、小規模農家に大きな打撃となることが予想されます。
 今回、なぜ今、農業政策の大転換が必要なのか、農政大転換で日本のコメはどうなる?『安倍政権の農業政策を考える』のテーマで、篠原孝が語ります。

日 時: 10月30日(水)  20:00~21:55
番 組: プライムニュース (生放送)
放送局: BSフジ
※デジタルチューナー内蔵テレビ、各地ケーブルテレビ、スカパーにて視聴可能です。
テーマ: 『TPP協議大詰め 安倍政権の農業政策を考える』

ゲスト:大泉一貫氏(宮城大学教授、産業競争力会議・農業分科会メンバー)
       篠原 孝  (元農林水産副大臣)    ほか

2013年10月25日

予算委員会報告1-予算委員会を終えて 13.10.25

 10月21日、予算委員会のテレビ中継入りの基本的質疑で質問した。
 今まで集中審議のテレビ中継入りでは質問したことがあるが、多くの視聴がある一日目というのは初めてだった。持ち時間が30分だけということもあり、政策よりも安倍総理の政治姿勢を取り上げ、現下の非常に重要な課題「憲法改正」「原発」「TPP」について、いかがわしいやり方を問い質すことにした。
 いつもの通り冗談や皮肉を交えながら追求した。質疑応答の雰囲気は委員室にいた人たちにはきちんと伝わり、テレビあるいはラジオをよく見ていた人たちにはそれなりに伝わったと思う。誰と誰が仲違いしたとかばかりに興味がいく政治部の記者の皆さんには、どうも別のことが気になったようである。STOP! TPPネクタイや、終わったあと総理に呼び止められ雑談をしたこと、そして、私の最後の発言「安倍総理が慢心で民主党的総理になっている」といったことばかりが取り上げられた。残念ながら、肝腎の質問内容がほとんど報じられていなかった。
 しかし、世の中にはしっかり私の意図をわかってくれる人がいるのである。メールなり、ご自身のブログで私の質問に対して非常に好意的に、私の意図したことを完璧にお分かりいただいている方がいる。また一方で、非常に厳しいメールも一通だけだがいただいた。
 今回の持ち時間は、30分で各論に突っ込んでいくには十分な時間がなかったが、次回個々の政策について質していきたいと思っている。

衆議院議員 篠原 孝

これ以降、いただいたメール・ブログのご紹介

〇篠原事務所より
 今回、テレビ中継で初めて篠原孝代議士の質問をご覧になられた方から、さまざまなメールを頂戴しました。頂きましたメールは、しっかりと篠原自身が拝読させていただきました。
 賛否両論ございましたが、改めて感謝申し上げますとともに、ここに頂きましたメールの一部をご紹介させていただきます。

<長野1区の方より>
☆ 歯切れの良い篠原先生の質問や本音かブラックジョークかと思わせる内容と硬軟合わせた、素晴らしいご質問でした。次回が楽しみになりました。
☆ 篠原孝議員の質問、初めて目の当たりに拝見、聞き入りました。堂々として、いつもの通り自然体で、それでいてみんなが一人残らずしーんと話に吸い込まれていて、首相もたじたじ、えらいのが出てきたな…て感じでいるようでした。
☆ 分かりやすく、なおかつ、核心を突いた素晴らしい質問だったと思いました。安倍総理に少し慢心が見えると言われましたが、納得です。……
最後に総理が篠原さんのところへ行きTPP反対のネクタイですか?の話をされているところを、今見ました。安倍総理のこの辺の率直さと言うか自然さと言うか、そんなところが国民にも受けるとこなんでしょうね。

<全国からのメール>
☆ LIVEで見ている我々が恥ずかしいくなる内容。貴重な税金をお支払いさせて頂いておりますので、十分に学習されまともな質問をされます事を国民を代表してお願い申し上げます。自ら質問内容を再確認されお恥ずかしくありませんでしょうか。(唯一の苦情メール)
☆ 78歳男性です。質問の鋭さと共に、素晴らしいお人柄もにじんでいて感銘を受けました。先生のような政治家がもっと増えると日本もよくなると思います。
☆ 先生の原発に関しての質疑応答には、感銘いたしました。先生の仰る通り、福島の原発事故原因が明確に総括されていない中で原発を他国に輸出するなどは、以ての外と思っております。安倍総理は、福島で経験した高い日本の技術力を基に輸出すると言っておりますが、福島原発の総括がなされていない中で、高い日本の技術力を基に輸出するという事が言えるというのが何とも不思議です。
☆ 貴殿のような代議士がいらっしゃるとは、露ぞ知りませんでした。民主党もまだまだ可能性がありますね。昨年12月の解散は、野田自爆解散ではなく、集団無理心中解散でした。
☆ 本日の国会予算会議での質問を拝見していて、胸がすっきりする思いがしました。…TPPのこと、原発のこと、憲法改正、特定秘密保護法案のことなど、篠原議員の仰ることに大いに共鳴いたしました。また、あのような質問の場で、ユーモアと皮肉をたっぷり込めながら行われる様子が素晴らしいと思いました。
☆ たまたまラジオで聞いていました。聴き流していたのですが、「おもしろいことを言ってる人だな」と思わず聴き入り、「誰?」と新聞の番組表を確認したら、篠原さんでした。…
☆ TPPにかかわる昨日の予算委員会質疑を視聴しました。ウェブサイト上でのISDS条項ご意見も拝見しました。的確なご認識に感心しました。
☆ 国会中継で篠原さんの事、初めて知りました。民主党にもこんな立派な方がいらしゃることに安堵しました。選んだ長野の人は偉い。逆風の中、小選挙区で勝ち上がった人が本物。…
☆ 予算委員会での質疑、なかなかよかったと思います。いまの民主党ではああとでも攻めるしかないでしょうし、安倍総理の痛いツボを押さえていたと思うのですが、どうでしょう。ちなみに「反TPP」のネクタイというのは、NHKは敢えて画面に入れませんでした。なので、翌日の新聞を読むまで、私は篠原議員が何を示して、ああも総理をタジタジとさせていたのかわかりませんでした。総理の地元、JA山口県の売っているネクタイなんですね。また「真正保守」なら、反TPP・反原発だろうという攻め方はうまい、と最近かなり「保守派」になってきた私は思います。

【一般ブログより抜粋】
(天空のブログ)http://blogs.yahoo.co.jp/jigenryu007/68704925.html
民主党にも「まともな議員が居た」野党再編は急務「自民政権に怨嗟の声」高くなる!!
注目したのは長野県選出の「篠原孝議員の質問だった」内容には触れないが安倍政権に三つの課題(憲法改正、原発、TPP)を突き付けて追及した。…
「鳩山・菅・野田」の民主政権時にもこの様な議員が民主にも居たのかと驚いた。
特別饒舌という訳ではないが・・・聞いていて実に分かりやすくユーモアもあり「安倍政権」の問題点《核心を突いていた》・・・この様な議員が政権時に表で活躍したなら民主党政権も今しばらくは続いたものをと残念だ・・・と考えた所だった。
数を頼りのお友達内閣「少数野党」が光って見える今国会《民主の轍を既に踏んで進む》傲慢与党!!
昨日・今日と国会の各野党議員の質疑を見て安心した。…
最後に昨日取り上げた民主党の篠原(質問)議員の《慢心に成りすぎて失敗した。民主党の轍を踏まない様に》とユーモアを交えて(安倍首相に)戒めの言葉を送った・・・篠原氏の・・・秀逸な質問風景を読売が今日改めて記事として取り上げていた

(ナガマツのブログ)http://ameblo.jp/mahasattva/entry-11649182525.html
美しい国へ
政治に関心が向かなくなって久しいのだけど、先日たまたま見た予算委員会で篠原孝さんという方が話しているのを聞いて妙に納得し、やはり議論は大切だと思ったので記しておきたいと思います。
私はそれまで篠原孝さんという政治家やその信条を全く知らなかったのですが、ボソボソと話しながらも、その示した内容は、今の時代を俯瞰したかのようで、一つの真理でした。絶大な人気を誇る安倍首相も思わず苦笑いしておられました。
議論は、いいですね。建設的な議論、つまり目的を同じくしている双方が、恣意を廃して、お互いを尊重しつつ行われる議論は、本当に大切です。ディベートの虚しさとは隔絶しているものです。篠原氏は、アイロニーを含みながら、それでも穏やかに、安倍首相を尊重しつつ話していました。
首相は『美しい国へ』『新しい国へ』を著しておられる、私も読ませていただいた、美しい国、誰もが求めるところ、しかも、利益ばかりを追求する国や社会ではなく、もっと別の尊い価値観によって、この美しい国土や国民を守らなければならない、と述べている。しかし、この「美しい国」の理屈と、福島第一原子力発電所の事故、汚染水の問題、東京電力の問題は、整合性が取れているのか。日本の、経済的な利益が優先され、風評被害を恐れるあまり、正確な情報もなかなか開示されず、美しい国土が汚されたままになり、当該地域に住んでいた国民が苦しんだままになってはいないのでしょうか、と問いかけた。
また、現行の憲法が、占領統治下にあって主に米国から押し付けられた憲法であるから、改正して独自の憲法を制定せねばならないという強い信念と、ほぼ米国が経済的に圧倒的な力を持ち、ルールメーカーになり得るTPPという枠組みに参加して、日本のルールを国際社会の関係性の中で変えてゆかなければならないという判断と、整合性があるのでしょうか、と問いかけたのでした。
とっても深い話だと感じました。


お取り上げくださりありがとうございました。

2013年10月24日

TPP交渉の行方シリーズ13「「TPPと労働」の隠された真実‐日本企業を買収したアメリカ企業が自由に解雇することを狙う-」13.10.24

 拙書『TPPはいらない!』で、数々のTPPの危険性、欺瞞性を指摘したが、一つ力点を置いたのが、労働分野であった。なぜならば、TPPの極端な秘密主義により、ほとんどの人たちが気づいてなかったからだ。実のところ、今でも私も全容はよくわからない。
 しかし、2つの過去の事実、今漏れてくるTPPの内容、日本で先行しているひどい状況等からわかってきた労働に関する、もう一つのTPPのいかがわしさを指摘しておきたい。

<アメリカが労働にこだわる理由>
 4つの小国(シンガポール、ブルネイ、NZ、チリ)ののどかな地域協定が、08年シュワブUSTR代表が加入の動きを始めてから様相が一変した。金融・投資ばかりでなく、労働と環境を加えることを条件としたからである。前者はウォール街の強欲資本主義の考えを入れ込もうとしていることは容易に理解できる。それを、アメリカがなぜ労働と環境かは疑問がつきまとった。
 アメリカは新興国のいい加減な労働条件、環境規制の下、競争条件が有利となり、安い製品を輸出されてはたまらないからだと説明した。いわゆるソーシャルダンピング、エコダンピングを許さないということである。労働でいえば、長時間労働、児童労働、婦女子労働、社会保険制度の不備等を世界の共通ルールにすることが目的だというのだ。

<アメリカの労働団体がTPPに反対する理由>
 しかし、それなのにアメリカの労働組合組織AFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)は、TPPに反対し続けている。AFL-CIOは、NAFTA(1994、北米自由貿易協定)で雇用の場が失われて大打撃を受けたからである。アメリカの労働者は、外国の労働者がアメリカと同じ労働条件で働くようになり、低賃金等により労働集約的な製品の新興国からの輸出洪水を止める、それによりアメリカの製造業を守れるという論理を全く信用しなかった。
 それにもかかわらず、日本では輸出しやすくなるという一点にだけに魅かれたのか、大方の輸出関係企業労組も賛成している。私は、それでいいのかとずっと警告を発し続けてきた。

<労働と貿易のクロス・リタリエーション>
 ブルネイでもバリでも、労働は市場アクセス(関税交渉)、国有企業、知的財産権、環境の4大難問に入っていない。しかし、労働条件が劣悪な国に対しては輸入制限をするという、アメリカの提案に対して、マレーシア、ベトナム等が猛反対しているということが伝えられている。日米通商摩擦の頃の言葉でいえば、クロス・リタリエーション(違った分野で制裁)である。これと同じことが環境分野も問題になっているという。何でも貿易に絡めるという悪いアメリカの癖が出てきているのだ。

<アメリカの隠された標的は日本の労働法制(解雇規制)>
 しかし、アメリカの本当の狙いは、別のところにあるというのが私のかねてからの懸念である。そもそもアメリカでTPPを強烈に突き進めているのは、多国籍企業であり、ウォール街の金融資本である。
 アメリカの大企業が日本に投資したり企業買収したりするのは、あくまで金儲けのためである。日本でじっくり企業活動する気などもともとない。そして、投資ないし買収した企業に見切りをつけ、企業を縮小したり撤退したりする時に困るのが、従業員、労働者の解雇である。
 幸いにして、日本にも伝統的に労働者を守るルール(例 解雇規制)がある。そして、これがアメリカの投資家や多国籍企業からすると目の上のタンコブになっていた。このことからわかってくるのは、TPPと労働の隠された標的が、実は日本の労働法制だったのである。

<利害が完全に一致する日米企業経営者>
 30年前は、終身雇用、年功序列の日本型経営が日本株式会社の成功の源ともてはやされた。ところが、この2~30年で、相当労働環境が変わり、今や非正規雇用者が雇用者5,142万人の36.7%に当たる、1,887万人に達している。
 
 東南アジアや中国、韓国が低賃金を一つの武器に日本に追い着き追い越さんとして猛追し、賃金を下げなければ会社経営が成り立たなくなってしまったからだ。その結果、またたく間に正社員と非正規社員とに分かれ、年収200万円に満たない労働者が大量に生じている。今や日本の企業にとって、終身雇用、年功序列が足かせになってきたのである。そして行き着いた先が、自由に解雇できるような労働法制が一番都合がよいのではないか、という結論なのだ。
 そこにアメリカからも年次改革要望書等で同じ要求が出てきており、日本の企業にとっては渡りに舟だった。いわゆる外圧を利用しての改革である。

<ブラック企業と呼ばれるユニクロ、ワタミ>
 世界にはばたくユニクロ、ありがとうを売物にするワタミは、柳井正と渡辺美樹と2人のカリスマ経営者をいただき、就職活動をする大学生の人気企業であった。
 ユニクロは、3年間離職率が50%を超え、マクドナルドで問題になった「名ばかり管理職」が残業手当ももらえないと、その厳しい労働条件が問題にされている。ワタミでは、女性新入社員が、入社して僅か2カ月後に飛び降り自殺をしてしまった。入社直後の5月に、1カ月の残業時間が140時間を超えていた。
 すべてではないだろうが、急成長を遂げている企業にこのように、労働条件に限りない「黒い部分」があるのはどうもいただけない。誰がつけたか言い得て妙な「ブラック企業」である。日本では、30年前の社員を大事にする余裕がなくなり、アメリカ並みの成果主義なり競争原理が一気に高まっているのである。そして、不幸を生んでいる。これが進歩なのか、退歩なのか、考えてみたらすぐわかることである。

<限定正社員、金銭解雇、解雇特区>
 民間企業では、生き残りのためには背に腹は代えられないと、労働条件は我々が想像する以上に大きな変化を遂げている。
 そこにしゃしゃり出たのが政府である。もともと、6年前の安倍政権では「労働ビックバン」というスローガンの下、ホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ)なる言葉が流布していた。そして今、更に限定正社員、金銭解雇といった耳慣れない言葉が聞こえ出した。
 一連の労働条件のルール改正により、雇用も流動化が促され、労働者も採用されやすくなるという触れ込みである。挙句の果てに、そうしたことを自由にできる「解雇特区」を設けるというのだ。つまり、自由に雇い自由に解雇できるシステムにしていくというのだ。日本に無法地帯ができるのと同じである。
 さすが、解雇特区は見送られたが、当然のことである。そして、気をつけなければならないのは、これらがTPPの露払いのような形で進んでいることである。だから、私は、“NO TPP”のバッジをつけ、“STOP TPP”のネクタイをしめた、TPP反対の論陣を張っている。
 願わくば、手遅れにならないうちに、連合にそして労組・組合員に気づいてほしいものである。数年後に泣きをみても遅いのだ。今体を張って阻止しなければ、日本は潰れていってしまう。

2013年10月22日

TPP交渉の行方シリーズ12「TPP関税(市場アクセス)交渉に関連した農産物関税基礎知識―西川発言を検証する―」13.10.22

 政治的ショーともいえるAPEC首脳会合(バリ、10/7,8)は、オバマ大統領も欠席したため、関税(市場アクセス)交渉は予想通り(?)先送りされた。もし、本当に年内妥協にするとしたら、残された期間は30~40日しかなく、いまだかつてない突貫作業が強いられる。
 私は、かねてから木材の関税ゼロ(1951年丸太、1961年製材)により、林業・山村の崩壊が始まり、限界集落が生まれたと指摘し、農産物関税ゼロにより地方が限界市町村ばかりになると警告してきた。10月2日の日比谷野外音楽堂集会で、石破幹事長は重要5項目を絶対死守すると宣言したが、その舌の根も乾かないうちに、西川公也自民党TPP対策委員長は、10月6日バリで重要5項目をえり分けて一部の加工品はゼロにする作業が必要だと発言した。自民党は3回目の大嘘で、聖域をなし崩しにする魂胆である。
 今回は関税関係の基礎資料をお届けする。

1.<緒についたばかりの関税交渉>
  まず、バンダルスリブガワン(ブルネイ)、ワシントンで行われた関税交渉を整理しておく(カッコ内は推測)。バリ島のAPEC随行のTPP首席交渉官会合・閣僚会合・首脳会合の詳細は公表されず、具体的進展があったかどうかは全く不明。しかし、ほとんど具体的な調整は進展せず、先送りされたのではないか。
(1) ブルネイでは6か国に関税オファーしただけ(相手国は不明なるも、日本がEPAを結んでいる国にEPAそのままの税率をオファーしたものとみられる)
(2) (相手国は少しも評価せず、一応聞きおいただけ)
(3) アメリカとオーストラリアはブルネイでは関税オファーせず
(4) ワシントンでは、11か国すべて交渉を開始
(5) 豪、NZ、シンガポール、チリの4ヶ国は100%関税ゼロをオファー
(6) バリのAPEC担当関係会合、首脳会合で決着することはなく、その後の会合に先送りされる。

2.<関税交渉の対立点>
(総論)
(1) 各国別の関税表にするか(日、米、加)、統一した関税表にするか(豪、シンガポール、NZ)
(2) 既存のFTAの国同士の関税はそのままにする(米)、すべてゼロにする(豪)
(3) 大枠合意に何を含めるか、きちんとした工程表を作るか、2国間交渉に任せるか
(4) 12月の年内妥協(米、日?)。それではまとまらないので、大枠合意のみで後は先送り(マレーシア、ベトナム、メキシコ、日?)
(5) 関税撤廃の例外を認める(日、米、加、マレーシア)。認めない(豪、NZ、チリ、シンガポール)
(6) 原産地規則で域外(例:中国)原料を使った製品をどう扱うか。アメリカは域外を除外、ベトナムは除外せず(例:ベトナムが中国産の布で衣類を作りアメリカに輸出)

(各論)他国の主なセンシティブ品目
(1) アメリカ:砂糖(→豪)、乳製品(→NZ)、自動車(→日)、衣類・履物(→ベトナム)
(2) カナダ:乳製品(→豪・NZ)、卵・鶏肉(→米)

   3.<先行する他国のFTAの現状>
(1) 米豪FTAでは、米96%関税撤廃、残りは砂糖、シロップ等。豪は99.9%で、例外は中古車に対する従量課税
(2) 米韓FTAでは、米99.2%、韓98.2%(米関係16タリフラインのみ例外)で数年後は関税撤廃
(3) 中韓FTAは第7回交渉で90%の関税撤廃に同意
(4) EUは、チリとのFTAで90%台前半、韓国とのFTAで90%台後半の関税撤廃
(5) 日本は、TPP参加国11ヶ国のうち、米・豪・NZ・加の4か国(いずれも農産物輸出国)とのEPAなく、他の7か国とはEPAあり。

4.<TPPに関連した日本の農産物関税の現状>
(1) 日本の関税品目 9018品目(タリフライン)
(2) うち農産物 834品目、鉱工業品(皮革製品、酒類)95品目(全品目の1%弱)計929品目は関税を撤廃したことなし
(3) 日本の13ヶ国との既存EPAの自由化率84.4% ~ 88.4%(フィリピン)で大半が80%台。最も高い自由化率は88.4%のフィリピン
(4) 従って、日本にとって90%台なり、95%や98%はかなり高いハードル

5.<西川発言、安倍内閣のTPP対応の問題点>
 (自民党・政府の一連の動き)
・10/6 西川TPP対策委員長がバリで、586項目を選り分けて、ある程度妥協していく準備をしないとならない旨発言。その際586品目以外にも重要な項目があり、それも合わせて検討が必要と付言。
・10/8 甘利TPP担当相は、自民党がコメなど「重要5項目」について関税撤廃・削減が可能か検討作業に入ることについて触れ、「党の作業を見守り、しっかり意思疎通を図りたい」と述べ、政府として党と連携する姿勢を示した。
・10/10 自民党TPP対策委員会、経済連携本部合同会議で、「重要5項目」を細分化した586品目について、11月中旬をめどに関税撤廃可能な品目があるか判断し、関税の必要性を検証することを決めた。安倍首相も、与党の作業を見守りたいと発言。

 (国内での問題)
×① 重大な公約違反で有権者・国民を愚弄している
×② 本来政府が妥協するのを止めるのが役割であるところ、先に妥協案を仄めかすのは異例。
    政府・与党の役割が逆転し、今後の政策決定が妥協に向けてなし崩しになるおそれ大。
×③ 農家・地方の不安が更に増大し、農業後継者が農業から離反していく恐れ
×④ 加工品・調整品は今のところ輸入が少なくとも、今後、低関税(ゼロ)に乗じて輸入が拡大し、悪影響が拡大する恐れあり。(例:米調整品と分類して米粉として利用)

 (国際交渉上の問題)
×① 日本が譲歩し始めたというシグナルを出してしまい、今後の交渉に不利
    (⇔アメリカは、国有企業についてマレーシア・ベトナムに譲る用意が出来ていても、一切妥協の方向は示していない。最後の切り札にするつもり)
×② 影響の少ないものは、それほど輸入が増えないもので同義であり、見かけ上自由化率を高めても実益が少ないため、各国は満足せず
×③ 仮に、各国ごとに自由化(関税ゼロ)品目を変えたとしても(例:農業生産のほとんどないシンガポールには100%関税ゼロ)、抜け穴の迂回輸出(入)が予想され影響大。従って原産地規制にも目を光らせる必要あり。

6.<西川発言に関連した農産物関税の現状>
(1) 日本は、5項目(米、小麦・大麦、肉(牛肉・豚肉)、乳製品、砂糖)は586品目(別表参照)で、6.5%、それ以外の項目は93.5%、従って聖域をすべて守ると93.5%の自由化率。
(2) その他に関税を撤廃したことのない農産品等は、こんにゃく3、雑豆16、水産品91、合板34、その他(繭、生糸、落花生、鶏肉、パイナップル、トマトピューレ・ペースト、植物性油等)104と計248品目あり、これを586品目と合計すると834品目となる。これをすべて聖域とすると自由化率は92.5%。
(3) 更に鉱工業品95品目も関税を撤廃したことがなく、これを加えると929品目となる。これらすべてを除くと、自由化率は89.7%となる。
(4) 仮に95%の自由化率にするとしたら、451品目しか守れず、聖域のうち135品目は関税ゼロにしないとならない。96%だと225品目を関税ゼロにしないとならず、98%だと180品目しか守れず406品目を関税ゼロにしないとならない。

(別表)日本の重要5項目の品目数"PDF


7.<公約違反も逃げの体制に入った政府・自民党>
 10月21日予算委員会のTPP絡みの質問で、自民党の白々しい言訳が明らかになった。
 私はパネルで、西川発言は「公約違反か?」と示したが、次の大串さんがTPPを重点的に質問するので甘利TPP担当相に質問をし、安倍総理への追及は彼に残しておいた。
 ところが、大串質問に対する安倍総理の答弁は、ごまかしの連続だった。総務省に提出した自民党の公約は「守るべきは守り、攻めるべきものは攻める」だけで、「農林水産分野の重要5品目の聖域の確保」は、J-ファイル(総合政策集)にすぎず公約ではないというのだ。つまり、5項目(品目)に当たる586品目の関税をえり分けてゼロにするものがあってもよいというのだ。
 国民も農民もそんな技術的なことは関知していない。国民に自民党のお歴々が語り、日米共同声明で仰々しく公約破りをして、アメリカの認めた聖域は守ると約束してきたのである。
 これこそ唖然茫然である。私はTPP特別委員会で質していくべきことを強調して、この件の質問を終えた。

2013年10月21日

TPP交渉の行方シリーズ11「国家の主権を損ねるISDSは絶対拒否すべし-ISDSで世界はアメリカ多国籍企業の管理体制下におかれる-」―13.10.21

<真正保守はTPPはTPP反対のはず>
 TPPは日本の国の形を変えてしまういかがわしい協定である。だから、保守的な考えの者こそこぞって反対するのが筋である。現に保守論客はこぞって反対している(小林よしのり⇒真正保守は反TPP・反原発が当然 -日本の保守が反TPP・反原発にならない不思議- 12.10.19 参照)。ところが、日本の伝統的文化、社会、制度をアメリカと同じものにしかねない危険なTPPを、自らもって保守とか右翼と悦に入っている安倍首相が積極的にTPPに参加するというのは大きな矛盾である。本人はそんな大矛盾に少しも気づかず、アメリカでも「軍国主義者の右翼と呼べばよい」と開き直っている。

<ISDSに反対する韓国>
 ISDSは安倍首相が、アメリカが作ったから嫌いで改憲するという日本国憲法第76条(すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する)に違反する。日本のもめ事はすべて日本の裁判所で決しなければならないのに、外国企業が関係するからといって世銀の下にある国際投資紛争解決センターの一審だけで決するというのは、まさに主権の侵害である。だからこそ先行する韓国では裁判官、弁護士が、米韓FTAが不平等条約だと問題にした。

<ISDSは新興国間の規定>
 この制度は、不安定な国に投資した企業の救済のためにあるのはよくわかる。せっかく投資したのに、政権が交代したりクーデターが起ったりして、ルールを振りかざされて経営権を奪われたら大損だからだ。念のためということだろうが、日本の結んだ13のEPAでも、フィリピンを除いてISDSが盛り込まれているし、その他の投資協定にも含まれている。それでもただの一度も紛争解決に持ち込まれたものはないという。
米豪FTAでは、豪は先進国であり新興国並みに扱われるのはもってのほかと拒否し、ISDSはない。この論理で行くと、日米間にも不必要ということになる。

<TPPはアメリカの世界改造戦略の最終到達点>
 TPPは、アメリカが1989年はじまった日米構造協議以来、自分のルールを世界中に広める膨大は計画を実行しているにすぎない。モノ造りを忘れた、あるいは不得意になったアメリカは、金融、投資、サービス、特許等で設けていかないと国がなりたたなくなり、まず87年から始まったガット・ウルグアイラウンドで新分野(サービス(GNS)、知財、海外投資)を重視して、世界のルールにしようとしたが、あまりうまくいかなかった。95年からOECDの下で始めた、MAI(多国間投資協定)もフランスの大反対により成立せず、01年から始まった中南米34か国とのFTA交渉も頓挫したままである。そこで目をつけたのがTPPなのだ。

<事前の前払いでまず最初の実利>
 日本の例でみると、まず第一の矢でTPPに入れてやるということで、入場料・頭金で自国のルールを押し付ける。BSEで30カ月の牛肉の輸入も認めさせ、かんぽに新商品を造らせず、自動車でいろいろ難癖をつけている。これだけども日本は相当変なルールを押し付けられている。
 次に、第二の矢は本番のTPPでがんじ絡めにしてくる。この計り知れない影響は、いくら警告しても推進派にはよくわかってもらえない。

<際限がないISDSが日本の政策立案を奪う>
 しかし、最もどうしようもなく悪影響があるのが、アメリカが邪魔だと気付いた日本の制度や新しく導入しようとする制度が、ことごとくISDSの対象とされるということである。この三番目の矢の問題は、際限がないということである。
 大半の人は、訴えられて賠償金を支払わされるのが困ると考えているが、賠償金はまだ序の口の問題にすぎない。深刻な問題は、ISDSの乱発により、日本国政府が新しい制度を導入するのをためらうことになることである。いわゆる委縮効果である。これが度が過ぎると、アメリカ企業の顔色を伺い、政府や議会の政策立案能力がそがれ、政府の政策遂行能力もそがれることである。つまり、日本国の外の司法権に物事を決められ、国は国際企業の前に無力化してしまうのだ。こんなことを許す政治家が保守を標榜するのは滑稽以外の何物でもない。
 第一の矢(日米TPP併行協議)で問題にされている軽自動車への優遇税制が、第三の矢(ISDS)で問題にされ、敗訴したら財務省は同種の税制を導入できなくなるのである。
 TPPを推進している官僚は、自らの政策立案の範囲をせばめられていることに気づいていない。

<オーストラリアで現実化するISDSの弊害>
 この件で有名なのは巨大タバコ企業フィリップ・モリス社が、タバコの箱に印刷する健康への警告を不満として、ウルグアイとオーストラリアで、この規制は投資に悪影響を及ぼし、利益を損ったとして国内で訴えていた。しかし、2012年オーストラリア連邦最高裁判所は、規制は正当なものであり、公衆衛生に係わる規制なので、フィリップ・モリス社は賠償を受けられないという判決を下した。すると、フィリップ・モリス社は、豪香港二国間投資協定におけるISDSを通じて、数10億ドルの補償を求めて、投資紛争解決国際センターに提訴した。今後どうなるかしかと見届けなければならない。

<アメリカの企業は勝訴、アメリカ政府は敗訴なし>
 ISDSのはしりは、NAFTA(北米自由貿易協定)である。今まで(2013年初)米加墨ともそれぞれ(5件ずつ計45件提訴されている。そのうち米の企業が提訴したのが29件、加15件、墨1件とアメリカ企業は2/3も訴えている。そのうち投資家が勝訴したのは7件で、全てアメリカの企業である、アメリカ政府が敗訴しているのは一度もない。訴訟になれた(訴訟社会の)アメリカ企業がISDSをフル活用していることがうかがえる。また、2011年以来450件のISDSの訴訟が報告されているが、大半が企業が新興国を訴えているものである。
 政情が不安定で、海外から投資してもらえない発展途上国は、ISDSで裏打ちしないと投資してもらえないおそれがあり、投資の促進のためには必要かもしれない。しかし、先進国同士では不必要である。

<新興国がこぞって反対するISDS>
 ISDSは、マレーシア、ベトナムが大反対し、シンガポールもブルネイも組している。政権が労働党から自由党に代わったオーストラリアはあまり反対しなくなったとの情報もあるが、一方で貿易協定にISDSは組み入れない方針だとも言われている。新興国は裁判になどで争わず、安定した政府を造り、インフラを整え、国民の教育を高め、社会制度を安定させてことに意を注ぐのが先であろう。
 アメリカのFTAを拒否した、ボリビア・エクアドル、ベネズエラ等は、投資協定を破棄し、国際投資紛争解決センターの枠組みから離脱した。アルゼンチンは、補償金の支払いを拒否したという。他の分野でもそうだが、先進国(アメリカ)対新興国の対立構図は、ドーハ―ラウンドと変わらない。そして、彼らは必死で理不尽な大国アメリカと闘っているのである。日本こそアメリカと闘うべきなのだ。

<ISDSこそ絶対拒否すべし>
 ISDSに、国の身を任すのはあまりに危険である。逆に言うと、TPPに任せ、ISDSに任せていたら、社会の安定というなによりも大切な国の基盤を失い、国が衰退していってしまう。
 日本社会あるいは日本の企業社会を、アメリカの濫訴社会代えられてはたまらない。こうしたことからも日本はやはりTPPには入るべきではなく、アメリカに対してISDSは絶対に拒否すべきである。
 
 そうした中、暫定予算の不成立により一部の国家機関が閉鎖されてオバマ大統領がTPP首脳会合に出席できなかったのは、TPPの前途多難を象徴しているかもしれない。超大国アメリカ政府の不始末(政府の債務上限認定も規制と言えば規制である)により、会合どころではなく世界全体のビジネスが迷惑を蒙った。これこそ他11か国がISDSで賠償を請求してもよいことかもしれない。しかし、国家公務員に給与を支払えない国は、外国企業などにはビタ一文支払えないのは自明の理である。私のいつもの嫌味な皮肉である。

2013年10月18日

10/21(月)予算委員会 TV中継のお知らせ

来週10月21日(月)に開かれる予算委員会で、しのはら孝が「憲法」「原発」「TPP」について質問いたします。
NHKのTV中継が予定されておりますので、ぜひご覧ください。

日時: 10月21日(月)13:00~
※しのはら孝の質問時間は15:30~16:00 を予定

番組: 国会中継 予算委員会 (生放送)
放送局:NHK

緊急な大ニュースが入らなければ、中継いたします。

2013年10月11日

TPP交渉の行方シリーズ10「大枠合意もできず破綻するアメリカの世界改造計画-アメリカの制度(ルール)は世界の見本たりえず」―13.10.11

10月8日記(10月11日加筆)
 私は今バリ島のグランドニッコーホテルの315号室で怒りに震えながらこの原稿を書いている。第一に、また逆戻りした政府・自民党の騙しの政策変更、第二に、アメリカの傍若無人な世界改造計画、そして第三に思い出すのが、自民党と民主党の成熟度合の差である。

<繰り返される「出来」レース>
 民主党がボロ負けした、12年末の野田自爆解散の時の自民党の公約、「政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する」は、自民党政治の最高文学の一つだというのは、私の40年来の畏友、手嶋龍一の至言である。政権交代を見込み、聖域でなくせば(つまり、例外が認められれば)TPPに参加できるという言訳を残しながら、農民や地方を欺いたのだ。
 TPP首脳会合でも、予想された数分野の合意やアメリカの望む、大枠合意すらできなかった。西川公也TPP対策委員長のフェイント発言「重要5項目について、例外の対象から抜くか抜かないか検討はしなければならない」という、完全に昔に逆戻りした自民党政治の復活である。今や大半の人が忘れているが、安倍自民党は「日本を取り戻す」という意味不明のキャッチフレーズを多用した。アメリカでも「Japan is back」とやら述べたが、自民党のずるい政治は完璧に取り戻している。

<民主的な安倍首相の馬鹿馬鹿しい「ドリルの刃」発言>
 安倍首相がスピーチを英語で行うのはなかなか大したものである。ただ、公式のスピーチと民間団体の非公式のスピーチを分け、前者は日本語で後者は英語にしていることがうかがわれる。バリ島のAPECのCEOサミットは、後者に属すると思いきや、日本語だった。
 民主党三代の首相は軽い首相だった。野田首相はその風貌から重々しいと勘違いされているようだが、いつも格好いい言い回しをしようとする姿勢は、あざとい方便としか映らなかった。安倍首相も、大衆受けのすることを言おうとしている点では、まるで民主党の首相のようであり、特に口先の言い回しで世の中の関心を得ようとしている点では瓜二つに映る。
 菅直人首相は、「平成の開国」「第三の開国」とダボス会議でも大見得を切った。日本が閉鎖的な国だと言わんばかりの抜けた発言である。安倍首相は、岩盤のような規制を打ち砕く「ドリルの刃」の役割を果たすと変な譬えを述べた。日本にはあたかも規制すなわち、非関税障壁だらけだと宣言していると同じなのだ。こんな自(国)虐的首相ばかりを抱える日本も大変である。

<TPP交渉を透明化し、注文をつけていく以外に是正の途はなし>
 かくなるうえは、一刻も早くTPP特別委員会をつくり、問題点を洗い出し、国益に反するなら脱退していくべきである。12年の総選挙では、政治を知らない民主党は、TPPを推進する、と愚かな公約に掲げ、農村部で大敗北を喫した。しかし、13年夏の参院選では、自民党も民主党も国益に反する場合は、脱退も辞さないと同じような公約を掲げている。国益に反するかどうか国会の場で明らかにしていくしかない。
 バリで英語のニュースを見ていたら、何かの問題で“The process is more important than the result. (過程が結果より大事だ)”という解説者がいた。TPPにも全く当てはまることだ。こんなやり方でまとめたTPPが、まっとうな協定であるはずがない。

<日本改造計画から世界改造計画に進むアメリカ>
 アメリカのTPPの狙いは、日本大改造計画だと拙著『TPPはいらない!』に書いた。1989年の「日米構造協議」以来、「日米包括経済協議」(93年~)、「年次改革要望書」(94年~)、「日米投資イニシアティブ」(06年~)、「日米経済調和対話」(10年~)と名前を変えつつ、日本に制度変更を迫ってきた。
 世界でも、北米自由協定(94年)を結び、国際投資協定(MAI)を画策し失敗、中南米に貿易・投資の自由化を迫り、また失敗と、同じことをしてきている。そして、そのとどのつまりがTPPなのだ。つまり、アメリカは、それこそしつこく自国のルールを世界のルールにして、世界中を自らの意に添うように操ろうとしているのだ。

<アメリカのルールは世界のルールたりえず>
 しかし、そのアメリカがうまくいっているのだろうか。答えは否である。オバマ大統領は、自ら議長を務め、大枠合意を取り付けようとしたTPP首脳会合にも出席できず、所期の目的を達成できなかったのである、
 原因を辿ってみると思わぬ皮肉に突き当たる。アメリカは、お互いに助け合う互助組合を認めず、保険はすべて民間に任せるべきと主張し、上記の一連の日米協議でもかんぽや共済を攻撃し続けている。そうした中、クリントン政権からの悲願である国の医療保険制度の第一歩がオバマ政権下で始めんとしている。ところが、その「オバマケア」が、自由を標榜する共和党の大反対にあい、暫定予算すら成立しないでいるのだ。
 医療保険については、日本からアメリカも日本の制度をまねたほうがうまくいく、と声をかけてやるべきかもしれない。ところが、外交手段にたけているという自民党安倍内閣は、TPPでもアメリカにただただ追従するだけで、そうした気配はどこにも感じられない。「攻めるべきは攻め、守るべきは守る」というが、どこを攻めているのか(どういう日本提案をしているのか)さっぱり伝わってこない。

<新興国の台頭で変わる世界の交渉>
 20年前は、米、EU、日、加の4か国が話をすれば大体の国際会議は決着した。そのため、ウルグアイ・ラウンドの折には、年に数回四極通商会議が開かれ、私もカルフォルニアのナッパバレーとカナダのニューファンドランドの会合には出席した。また、オーストラリアを加えた五か国農相会議も開かれて、妥協の途を探った。極端な言い方をすれば、アメリカとEUが手を握れば、大半のことはまとまっていったのだ。たぶん、その最後が1993年のウルグアイ・ラウンドの妥結だったのかもしれない。
 しかし、BRICSと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国、南ア等が力をつけ、これらの国々が納得しないと国際会議は動かなくなった。そこで新たに生じたのが先進国と新興国の対立である。その結果、まとまりかけたドーハ・ラウンドは農産物の輸入が急増した時に輸入を止めるセーフガードを巡り、土壇場で中国とインドが了解せず決裂し、今日に至っている。

<昔の夢を見続けるアメリカ>
 世界は、アメリカの思うとおりには動かなくなりつつあるのだが、それに当のアメリカがしっかりとは気付いていない。それにもかかわらず、TPPを使ってアメリカの意を通そうと悪巧み始めたのだ。
 P4は小国であり、そんな交渉能力はない。オーストラリアとNZは気心知れた英連邦諸国である。ベトナムは、中国との対立という安全保障上の理由でアメリカ側につかざるを得ない…と、たかをくくっていたに違いない。しかし、そうは問屋が卸さなかった。マレーシアとベトナムは国有企業でアメリカ案には反対し、繊維製品や履物ではベトナムが一歩も引かない。シンガポールもブルネイもアジアの小さな隣国が味方をする。といった具合で、ここでもアメリカ等先進国対新興国の対立構図が浮き彫りにされ出した。ナジブ・マレーシア首相は、年内妥結は急ぎ過ぎだと公然と述べている。
 そこに、言い出しっぺのオバマ大統領が首脳会合に欠席しては、どうあがいてもTPPアメリカの思い通りには進まなくなった。シリア問題で一旦振り上げたこぶしを下ろせなかったのと同様に、経済外交でも汚点を残しつつある。
 圧倒的な経済力を背景にした軍事力で、まさに世界の警察官をもって任じてきたアメリカだが、国力の元の経済力に弱まりがみられ、その延長線上で、政治・軍事の面でも思い通りにいかなくなりつつある。それに気づいた各国は、新興国でさえアメリカに対して公然とモノを言い始めているのに、日本ただ一国だけ、相変わらず追従的でしかない。

<したたかな韓国>
 毎度お馴染みのきれいごとの羅列の首脳声明に、おやと思われることが二つあった。
一つは、TPPに将来参加する可能性について関心を表明する他のAPEC諸国と接触している、というくだりである。日本を過剰に意識する韓国が、TPPへの参加を仄めかしているそうであり、その受け皿の文言を設けたようだ。韓国にしてみれば、TPPの見本の米韓FTAで苦しめられている中で、それならいっそのことTPP本体に参加した方が、緩い協定になるのではないかという思惑もあるのだろう。また、ISDSを巡り、再交渉せよという国民の言のある中で、他の国々と一緒だというのは言い訳に使えることになる。やはり韓国のほうが、FTAについては一歩上手の交渉をしている。

<秘密交渉の是正も虚しく響く>
 二つ目は、ステークホルダー(利害関係者)との協議を更に強化するという表現である。
 アメリカでも、あまりの秘密振りと大企業ベッタリ(600人のアドバイザーは逐一相談)であることが問題にされている。その不満を拭い去るべく一文を付け加えたのであろう。
 オバマは正直に自らの不参加はまずかったと述べている。
 ただオバマケアについては、アメリカ国民は支持しており、予算を盾に抵抗する共和党は支持率を下げている。オバマのAPEC・TPPを犠牲にした大博打は、国内政治ではうまくいくような気もする。しかし、TPPはおいそれと進まなくなったと見るべきだろう。
 そんな中で、腰砕けの586品目のえり分けを言い出し、3度目の騙し(1度目は「TPP断固反対」という選挙公約、2度目は何もないのに大宣伝した日米共同声明)に乗り出した自民党のTPP対応は許し難く、臨時国会で糾弾していくべきである。

2013年10月08日

TPP交渉の行方シリーズ9「オバマが欠席するバリTPP首脳会合-TPPがドーハ・ラウンド化するおそれ」-13.10.08

 10月7日(月)私はTPP交渉の絡みで再び海外(インドネシア バリ島)にいる。8月末のブルネイは、国有企業やISDS(投資家国家間訴訟)等に強力に反対するマレーシアの国会議員やNPOとの意見交換で大忙しであった。ところが、今回はAPECの合間に開催されるTPP閣僚会議、TPP首脳会議であり、いたって静かである。観光客用の豪華なホテルの一室で、TPP関連の最近の動きを伝える新聞等のコピーを熟読している。

<予想されたオバマの欠席>
 私が日本を発った5日(土)に、オバマ大統領が予算未成立による、国の機関問題という失態のため国内にとどまると発表された。APEC後予定されていたマレーシアとフィリピンの訪問は既に中止されていたが、TPPの年内妥結のため、アメリカは何としてもオバマに首脳会議の議長を務めてもらいたかったが、国内のがたつきのために断念したのである。

<TPP併合会合を嫌ったインドネシア>
 インドネシアの新聞報道をみたいところだが、残念ながらよくわからない。しかし、ホッとしているのではないか。
 なぜならば、インドネシアはもともとTPPに参加していない。というより、TPPを嫌がっている。人口2億4千万人と世界4位、順調に経済成長を続けているのだ。前世紀末のアジア経済危機でアメリカの金融資本の酷さを知ったからである。タイ、フィリピンも同じ態度をとっている。

<インドネシアはAPEC一色>
 デンパザール空港からホテルまで20数分というのに、厳戒体制下の交通規制のため車の大渋滞で、1時間半はゆうにかかってしまった。お蔭で、バリ島の有様を車の中からゆっくり見ることができた。観光用の道路や橋は立派であり、インフラの整備が進んでいることがわかる。ただ、一歩目を奥の通りに移すと、貧しさが垣間見えてくる。沿線はAPEC歓迎(Welcome APEC)の旗がそこら中に立てられていた。環太平洋の首脳が一堂に会する大会合であり、インドネシアにとって誇れることであり、成功させたいという国家の強い意志が伝わってくる。
菅直人首相は、10月1日の所信でAPECで格好のいいことを言いたいという邪念で、何も内容も知らずに、「TPP交渉参加の検討」に言及し、その後ずっとTPPをめぐる混乱が続いている。私にとってAPECは忌々しい存在である。

<政治ショー化するAPEC>
 1989年から2年は、私は農林水産省対外政策調査室長として、ごく初期のAPECを担当していた。将来はアジアのOECDにするという触れ込みだったが、回数を重ねるうちに、諸々の分野での議論は形骸化し、首脳会合だけがクローズ・アップされる歪んだ会合になりつつある。つまり、形式なり主要国のトップの2国間会談のほうが、アジア太平洋地域をどのようにしていくかという議論よりも大切になってしまったのだ。当然OECDのような事務局はできていない。
菅首相は、国のかたちを変えるのを知らず、TPPを目玉にせんとしたが、ユトヨノ大統領は2030年の大目標を打ち上げんとしているようだ。まさに政治ショー化しており、危険な徴候である。

<強運安倍首相と悲運のオバマ大統領>
 安倍首相は、高支持率の上に2020年雄東京オリンピック開催も決まり、意気揚々とバリ島入りする。シリア軍事介入が腰砕けになり、予算が成立せずに来れなくなったオバマ大統領とえらい違いである。ツキまくる安倍と悪いことが重なる悲運のオバマというところだろう。
 安倍首相は、日本版NSC、秘密保護法、集団的自衛権の行使、憲法改正と趣味を出し始め、この分野では暴走気味である。消費増税も予定通り進めることになり、原発の再稼働と原発輸出もやめようとしない。
 あくまで強気に語り突っ走っている。しかし、大きな矛盾と壁に突き当たるのではないかと心配である。

<安倍首相が口をつぐむTPP>
 そうした中で、TPPについてだけは口をつぐんで何も語らない。参院選の折、私は鹿野さんの応援で山形に駐留(?)していたが、舟山康江候補(みどりの風)に負けそうだった自民党の女性候補の応援に来た安倍首相は、山形では確実に争点となっていたTPPについて言及は避けていた。その後もほとんど語っていない。理由は、日本の思うようには進んでいないからだろう。誰しも都合のいいことは大声で喋り、都合の悪いことは語ろうとしない。政治家は特にその傾向が強く、何事も強気の安倍首相はそれが際立っている。その点では正直なのだ。
 しかし、今回はTPPについて語らざるをえない。8日の首脳会議に何をどういうか気になるところである。

<約束しないことに血道をあげて崩壊した民主党政権>
 民主党政権は、仰々しいマニフェストを掲げて政権の座に就いたが、実行できたのは農業者戸別所得補償などごく一部、公約にない普天間基地の移転(鳩山内閣)、TPP・消費増税(菅・野田内閣)と固執し、政権を崩壊させた。鳩山首相は、民主党政権維持のため小沢幹事長を道連れに退陣し、菅首相に引き継いだ。ところが謙虚さを失った菅首相は参議院選挙中に消費増税を言い出し、それにも懲りず、前述のTPPまで言い出し、農民が離れていった。野田首相に至っては、自らの実績造りのために消費増税ばかりか、TPP交渉まで参加せんとしていた。挙句の果てに、政権維持と多くの同僚をほったらかしにし、党勢を5分の1に減らしている。約束を守らず、勝手な事ばかりした民主党に国民がノーを突きつけたのである。

<自民党こそ嘘公約で断罪されるべし>
 政治は、政権公約を守ることから始めなければならない。民主党内閣は自惚れてそれを怠り、国民のしっぺ返しを受けた。ところが不思議なのは、安倍自民党が聖域なき関税化があるかぎりTPPには参加しないと公約したのに、舌の根も乾かないうちに、TPPに参加表明した。普通ならこれこそ大嘘つきで少なくとも農民は見捨てていいはずなのに、今のところ重要5品目は守るということに引っ張られてか、反乱がおきていない。10月2日の日比谷野外音楽堂の集会でも、石破幹事長は、公約(?)は絶対守ると大声で叫んでいた。私も本心からそうあってほしいと願っているが、8日の首脳会合、そして、12月末の妥結に向け、どうなるか予断を許さない。

<TPPのドーハ・ラウンド化は目前か>
 日本では多分APECなどそっちのけでTPPばかりに関心が移っているが、こちらはAPEC一色である。冒頭述べたとおり、もともとインドネシアはTPPを併せた会合を嫌がっていたようだ。12月にはWTOの関係閣僚会議も開かれ、再びこの間にTPP関係閣僚会合を開く動きがある。しかし、今度はインドネシアは相当難色を示しているという。他人のふんどしで2度も相撲をとられてはたまらないということだろう。
それよりも何よりも、TPPは全く進展がみられないドーハ・ラウンドと同様になりつつあるかもしれないのだ。世界のNPOの間では「TPPのドーハ・ラウンド化」と呼ばれている。

<アメリカが尻をまくって逃げるかもしれず>
 アメリカのTPA(貿易促進権限法)は通っていない。政権が予算で躓いている。議会、業界も反対し、特に業界は安易な妥協を嫌がっている。アメリカがTPPをほっぽり出す条件は揃いすぎるぐらい揃っている。つまり、戦前の国際連盟、そして最近の京都議定書のように、言い出しっぺのアメリカがいざとなったら入らないという悪い前例もあり、TPPが同じ運命を辿る可能性がなきにしもあらずだ。
 日本は、TPPに心してかからねばならない。

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