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TPP交渉の行方シリーズ9「オバマが欠席するバリTPP首脳会合-TPPがドーハ・ラウンド化するおそれ」-13.10.08

 10月7日(月)私はTPP交渉の絡みで再び海外(インドネシア バリ島)にいる。8月末のブルネイは、国有企業やISDS(投資家国家間訴訟)等に強力に反対するマレーシアの国会議員やNPOとの意見交換で大忙しであった。ところが、今回はAPECの合間に開催されるTPP閣僚会議、TPP首脳会議であり、いたって静かである。観光客用の豪華なホテルの一室で、TPP関連の最近の動きを伝える新聞等のコピーを熟読している。

<予想されたオバマの欠席>
 私が日本を発った5日(土)に、オバマ大統領が予算未成立による、国の機関問題という失態のため国内にとどまると発表された。APEC後予定されていたマレーシアとフィリピンの訪問は既に中止されていたが、TPPの年内妥結のため、アメリカは何としてもオバマに首脳会議の議長を務めてもらいたかったが、国内のがたつきのために断念したのである。

<TPP併合会合を嫌ったインドネシア>
 インドネシアの新聞報道をみたいところだが、残念ながらよくわからない。しかし、ホッとしているのではないか。
 なぜならば、インドネシアはもともとTPPに参加していない。というより、TPPを嫌がっている。人口2億4千万人と世界4位、順調に経済成長を続けているのだ。前世紀末のアジア経済危機でアメリカの金融資本の酷さを知ったからである。タイ、フィリピンも同じ態度をとっている。

<インドネシアはAPEC一色>
 デンパザール空港からホテルまで20数分というのに、厳戒体制下の交通規制のため車の大渋滞で、1時間半はゆうにかかってしまった。お蔭で、バリ島の有様を車の中からゆっくり見ることができた。観光用の道路や橋は立派であり、インフラの整備が進んでいることがわかる。ただ、一歩目を奥の通りに移すと、貧しさが垣間見えてくる。沿線はAPEC歓迎(Welcome APEC)の旗がそこら中に立てられていた。環太平洋の首脳が一堂に会する大会合であり、インドネシアにとって誇れることであり、成功させたいという国家の強い意志が伝わってくる。
菅直人首相は、10月1日の所信でAPECで格好のいいことを言いたいという邪念で、何も内容も知らずに、「TPP交渉参加の検討」に言及し、その後ずっとTPPをめぐる混乱が続いている。私にとってAPECは忌々しい存在である。

<政治ショー化するAPEC>
 1989年から2年は、私は農林水産省対外政策調査室長として、ごく初期のAPECを担当していた。将来はアジアのOECDにするという触れ込みだったが、回数を重ねるうちに、諸々の分野での議論は形骸化し、首脳会合だけがクローズ・アップされる歪んだ会合になりつつある。つまり、形式なり主要国のトップの2国間会談のほうが、アジア太平洋地域をどのようにしていくかという議論よりも大切になってしまったのだ。当然OECDのような事務局はできていない。
菅首相は、国のかたちを変えるのを知らず、TPPを目玉にせんとしたが、ユトヨノ大統領は2030年の大目標を打ち上げんとしているようだ。まさに政治ショー化しており、危険な徴候である。

<強運安倍首相と悲運のオバマ大統領>
 安倍首相は、高支持率の上に2020年雄東京オリンピック開催も決まり、意気揚々とバリ島入りする。シリア軍事介入が腰砕けになり、予算が成立せずに来れなくなったオバマ大統領とえらい違いである。ツキまくる安倍と悪いことが重なる悲運のオバマというところだろう。
 安倍首相は、日本版NSC、秘密保護法、集団的自衛権の行使、憲法改正と趣味を出し始め、この分野では暴走気味である。消費増税も予定通り進めることになり、原発の再稼働と原発輸出もやめようとしない。
 あくまで強気に語り突っ走っている。しかし、大きな矛盾と壁に突き当たるのではないかと心配である。

<安倍首相が口をつぐむTPP>
 そうした中で、TPPについてだけは口をつぐんで何も語らない。参院選の折、私は鹿野さんの応援で山形に駐留(?)していたが、舟山康江候補(みどりの風)に負けそうだった自民党の女性候補の応援に来た安倍首相は、山形では確実に争点となっていたTPPについて言及は避けていた。その後もほとんど語っていない。理由は、日本の思うようには進んでいないからだろう。誰しも都合のいいことは大声で喋り、都合の悪いことは語ろうとしない。政治家は特にその傾向が強く、何事も強気の安倍首相はそれが際立っている。その点では正直なのだ。
 しかし、今回はTPPについて語らざるをえない。8日の首脳会議に何をどういうか気になるところである。

<約束しないことに血道をあげて崩壊した民主党政権>
 民主党政権は、仰々しいマニフェストを掲げて政権の座に就いたが、実行できたのは農業者戸別所得補償などごく一部、公約にない普天間基地の移転(鳩山内閣)、TPP・消費増税(菅・野田内閣)と固執し、政権を崩壊させた。鳩山首相は、民主党政権維持のため小沢幹事長を道連れに退陣し、菅首相に引き継いだ。ところが謙虚さを失った菅首相は参議院選挙中に消費増税を言い出し、それにも懲りず、前述のTPPまで言い出し、農民が離れていった。野田首相に至っては、自らの実績造りのために消費増税ばかりか、TPP交渉まで参加せんとしていた。挙句の果てに、政権維持と多くの同僚をほったらかしにし、党勢を5分の1に減らしている。約束を守らず、勝手な事ばかりした民主党に国民がノーを突きつけたのである。

<自民党こそ嘘公約で断罪されるべし>
 政治は、政権公約を守ることから始めなければならない。民主党内閣は自惚れてそれを怠り、国民のしっぺ返しを受けた。ところが不思議なのは、安倍自民党が聖域なき関税化があるかぎりTPPには参加しないと公約したのに、舌の根も乾かないうちに、TPPに参加表明した。普通ならこれこそ大嘘つきで少なくとも農民は見捨てていいはずなのに、今のところ重要5品目は守るということに引っ張られてか、反乱がおきていない。10月2日の日比谷野外音楽堂の集会でも、石破幹事長は、公約(?)は絶対守ると大声で叫んでいた。私も本心からそうあってほしいと願っているが、8日の首脳会合、そして、12月末の妥結に向け、どうなるか予断を許さない。

<TPPのドーハ・ラウンド化は目前か>
 日本では多分APECなどそっちのけでTPPばかりに関心が移っているが、こちらはAPEC一色である。冒頭述べたとおり、もともとインドネシアはTPPを併せた会合を嫌がっていたようだ。12月にはWTOの関係閣僚会議も開かれ、再びこの間にTPP関係閣僚会合を開く動きがある。しかし、今度はインドネシアは相当難色を示しているという。他人のふんどしで2度も相撲をとられてはたまらないということだろう。
それよりも何よりも、TPPは全く進展がみられないドーハ・ラウンドと同様になりつつあるかもしれないのだ。世界のNPOの間では「TPPのドーハ・ラウンド化」と呼ばれている。

<アメリカが尻をまくって逃げるかもしれず>
 アメリカのTPA(貿易促進権限法)は通っていない。政権が予算で躓いている。議会、業界も反対し、特に業界は安易な妥協を嫌がっている。アメリカがTPPをほっぽり出す条件は揃いすぎるぐらい揃っている。つまり、戦前の国際連盟、そして最近の京都議定書のように、言い出しっぺのアメリカがいざとなったら入らないという悪い前例もあり、TPPが同じ運命を辿る可能性がなきにしもあらずだ。
 日本は、TPPに心してかからねばならない。