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極東の「イスラエル化」する日本 -安倍政権の暴走を押さえるのが野党民主党の役目- 14.01.10

 安倍首相の突然の靖国神社参拝に対し、アメリカ大使館及びアメリカ国務省が相次いで失望の意を表明した。あまりあり得ないことだという。安倍首相は日米同盟の重要性を常々説いているが、そのアメリカから何をやっているのか、ときつい刃を突き付けられたのである。合祀されているA級戦犯は、日本の軍国主義の象徴であり、アメリカにとってもサンフランシスコ講和条約に始まる戦後秩序の否定につながるからだ。

<アメリカに当初からあった安倍政権への懸念>
 安倍首相は憲法改正、自衛隊の国防軍化、集団的自衛権行使の容認といったタカ派的な主張を掲げており、このようなトラブルは安倍政権誕生の時からそこそこ予想されていた。一般的にはアメリカはタカ派を歓迎していると勘違いされている。しかし、事実は逆であり、アメリカは当初から、安倍首相は中国や韓国に対して何をしでかすか分からないと危険視し非常に心配しながら様子を見ていたのである。そこに突然、中韓両国を逆撫でする靖国神社参拝をしたのだから、黙っているはずがなく「失望」を表明したのである。
 ただ、アメリカはサンフランシスコ講和条約の締結時にダレス国防長官がわざわざ竹島領有問題をぼかして日韓の対立関係を残したといわれている。つまり、アメリカにとっては日露・日中・日韓ともそこそこ対立関係があったほうが、3ヶ国が束になってアメリカに対立してくるよりましだという冷徹な考え方も存在する。

<オバマの冷たい態度と見抜いたロンドンエコノミスト>
 13年2月24日の日米共同声明は、元々日本側がアメリカ側に懇請して、自民党の聖域なき関税化が条件であるかぎりTPP交渉に参加しない、というウソ公約を破る口実に作られただけであった。TPPに関する日米共同声明に関し、五大新聞はそろってオバマ大統領に聖域を認めさせた安倍外交の勝利と提灯記事を書いた。それに対しロンドンエコノミストは当初から日本のマスコミの反応を冷ややかに見ており、アメリカは安倍のタカ派的な態度を心配していると見抜いていた。
 だから新任の朴槿恵大統領は国賓として招かれ晩さん会が行われているのに対し、安倍首相の1月訪米は遅れ、かつ、やっと実現した日米共同声明の記者会見の前の握手すらなかった。
 このように案に相違して、日米関係は安倍政権発足以来ずっとギクシャクし続けていたのだ。もっと言えば、その安倍首相から外交下手と酷評されていた民主党政権のほうが、少なくとも危ういことはしないと安心されていたのだ。

<世界のトラブルメーカーは中東(Middle East)のイスラエル、極東(Far East)の日本>
 イスラエルは中東の言ってみればトラブルメーカーである。周辺のアラブ諸国といつも揉め事を起こしている。これによりアメリカの中東政策のみならず、世界の外交戦略が相当歪められている。アメリカにはユダヤ系の人たちが多く、その経済力にまかせて盛んにロビー活動をしているため、アメリカの中東政策はいつもイスラエルよりになる。その結果、アメリカ側が中東で度々間違いをしでかすことにつながった。
 そして今、日本は安倍首相の靖国参拝により中国とも韓国とも険悪な関係になり、安倍政権発足以来初の首脳会談という空気はふっとんでしまった。比較的良好な関係だった台湾からもブーイングが起きており、なんとEUやロシアからも懸念が伝えられている。つまり日本の極東におけるイスラエル化である。日本もイスラエルも何かとアメリカと共同歩調をとる同盟国であるにもかかわらず、いつ不始末をしでかすか分からない危うい国になってしまったのだ。
 残念ながら、アメリカにユダヤ人系のロビイストと同じように動く日本びいきのロビー活動は存在しない。かくして、日本はアメリカからも見放される可能性が出てきた。この入り組んだ二国間関係は、とてもケネディ新大使の笑顔で解決できることではない。

<アメリカに依存する日本が好都合>
 アメリカの日本に対する外交の基本は、何事もアメリカの都合の良いように考える露骨なものである。よく、アメリカが周辺の脅威から日本を守ってくれるから、沖縄に基地を提供するのだ、と言われるが、アメリカの軍事戦略の一環として日本を味方に付けていかなければならないという限りにおいて守るだけであって、心底から日本人の生命や日本の国土を守ろうという気はない。アメリカの日本に対する態度はアメリカの世界戦略の中で冷酷に考えられているだけである。アメリカが多大な犠牲を払ってまで日本を守るなどということは端から念頭にない。対中国で日本に味方してくれるというのは米ソ冷戦時代の発想であり、アメリカへの過剰な期待というしかない。米中関係は経済は濃密に結びついており、日本が考えるほど対立していない。
 アメリカにとっては、日本がアメリカに依存せざるをえない忠実な同盟国であり続けることがベストであり、それで十分なのだ。それ以上の煩わしい存在になってほしくないのが本音なのだ。

<アメリカが警戒する日本の軍事大国化>
 そういった観点からすると、アメリカが最も恐れるのは日本が戦前のような軍事国家に戻り、軍事大国になっていくことである。つまり、アメリカにとっては安倍首相のように、ひたすら右方向に突き進むのは迷惑千万であり、最も警戒していることである。日本がいつまでもアメリカの軍事力を頼りにしなければいけないと引け目を感じながら、そこそこの軍事力を持ってアメリカの世界戦略を補完する今の状態が、アメリカにとって一番都合のいいことになる。いつまでも脅しがきくからだ。
 だから、日本が核武装などと言い出すと大慌てすることになる。この過去10年の間にも中川昭一と麻生太郎が日本も核武装を考えても良いというような事を言い出し、アメリカをギョッとさせている。中川昭一は政調会長の時に訪米したが、ほとんど要人とは会えないという強烈な拒否反応に出くわしている。

<損なわれた外交関係は元に戻りにくい>
 尖閣諸島の問題を巡って日中間に非常に緊張関係が続いているが、アメリカは事を起こしてはならないと、中国にも日本にも警告している。アメリカとて極東の軍事紛争は望んでいない。シリアイラン北朝鮮等で手いっぱいである。世界に二つの紛争が起きても対応できる、いわゆる二正面作戦は予算の圧縮から不可能になりつつある。そこに中国を刺激しないではおかない、安倍首相の靖国神社参拝である。アメリカが異例の失望のコメントをするのは頷けることである。
 景気対策などの国内政策は、国内で自由に変えられる。政権が変わったら政策も変わる。例えば、私が深く係わっている農業者個別所得補償はほとんど内容が同じでも、名前がすぐに経営所得安定対策に変えられた。2年続いたが、今年は中味も変更しつつある。所詮国内問題であり農民の犠牲のもと何とかなっていく。
 しかし外交関係は全く異なり、一旦壊れた信頼関係は中々取り戻せない。回復には時間がかかり、首相の交代や政権交代しか解決の糸口はなくなってしまう。

<安倍政権の暴走を押さえるのが野党民主党の役目>
 この靖国神社の参拝、安倍首相が敢えてこの時期に隣国を逆なでするようなことをする必要性は全くない。一国のトップは自分の趣味などを抑えなければならない日本の最高権力者なのだ。
 10月21日の予算委員会で私が、慢心が過ぎると安倍首相に忠告したが、どうもあまり受け入れてないようである。これ以上外交関係もこじらせないよう、我々民主党はよほどしっかりと暴走を押さえないと、日本は大変危険な方向に進んでしまう。
 年頭に当たり、野党民主党がしっかりせねばと決意を新たにした次第である。