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2014年1月26日

細川・小泉 脱原発連合を勝手に応援-14.01.26

<猪瀬退陣という予期せぬ出来事>
 政治は、一寸先は闇である。猪瀬直樹東京都知事の辞任がなければ今の選挙はない。猪瀬さんは、長野高校の2年先輩であり、田中康夫知事退任の後の知事に意欲を示したこともあり、私はその時に多少なりとも関わった。「二代続けて作家知事は無理」ということで断念したが、その後、石原東京都知事のオメガネにかない、東京都副知事になり、運よく東京都知事となった。
5000万円問題が生じ、退陣に追い込まれた。政治は本当に一寸先は闇であり、何が起こるかわからない。

<大歓迎の細川出馬>
 私は今回の細川・小泉連合を組織的勝手連だか何だかしらないが、一生懸命応援している。なぜならば、この76才・72才の二人のコンビは、人生の最終局面に差し掛かり捨て身で本当に日本の国の将来を考えて立ち上がってくれたからである。二人とも総理を経験した人である。それにも関わらず、日本の将来を心配し、一刻も早く原発ゼロにしなければ日本が潰れてしまう、という危機感から純粋に連帯して日本を救おうと決意したのである。
 私は、ずっと前から原発には疑問と感じ、密かに原発をウオッチし続けてきていた。そして2年前、『原発廃止で世代責任を果たす』(2012年)という本も書いている。そして私は2人と多少の接点がある。

<文明論的アプローチで原発に反対する細川元首相>
まず、細川さんである。陶芸に勤しみ十数年。その趣味からしてもナチュラリスト、エコロジストであることがわかる。もう一歩遠く、文明論的な観点から原発は相容れないと考えているに違いない。細川さんは、今の生活スタイル、産業の形が長続きするはずがなく、これを変えていかなければならないと考えているはずだ。なぜならば、細川さんは私が農林水産省時代に書いた『農的循環社会への道』(2000年)に興味を示し、どこかのホテルで弁当を食べながら2時間近く二人で話し込んだことがあるからだ。細川さんの出馬を機に、先日久しぶりに本をひもといたところ、2003年に第4刷となっていたので、まあそれなりに読まれたのであろう。その読者の一人が細川さんだった。

<熊本県知事時代に熊本有機農業宣言を企てる>
私の本は、タイトルからも推察されるように、資源を大量に消費し、やたら消費を煽っていくこの社会は先が見えており、循環社会に変えていかなければならないという内容のものであった。帯が過激で、「余計な物は作らず、物の移動は最小限に」つまり、私の「地産地消」・「旬産旬消」という考えを食べ物だけでなく、全ての社会に当てはめたものである。他に落日の工業国家体制、加工貿易立国の限界といったサブタイトルも並ぶ。
普通ならこんな過激なことに興味を示さない。まして政治家である。しかし、この国をどうしたいという基本的価値観が似かよっていたのである。熊本県知事時代に熊本有機農業宣言をしようとし、熊本県庁の役人たちにそれこそ「殿ご乱心を」と止められている。有機農業がまだ市民権を持っていない頃のことであり、ここに細川さんの先見の明をみることができる。
細川熊本県知事と武村正義滋賀県知事の首相・官房長官とのコンビは、元知事ということでアメリカ的政治家の誕生ともいえた。もう一つほとんど知られていないが2人とも有機農業シンパであった。つまりエコロジストコンビが非自民政権を担っていたのだ。政治家も基本的にその人の持つ価値観で結びつく。これが、今回の細川・小泉連合にもあてはまる。

<オンカロ視察の前に原発に見切りをつけていた小泉元首相>
もう一人の小泉さん。フィンランドの使用済み核燃料の処分場、オンカロを見学し、それにいたく動かされて、最終処分場のない日本に原発は無理だと言い出したと言われている。国民の声もその方向に向いていることもあり、直観力に優れた小泉さんが突然原発廃止を強引に言い出したというのか一般の評価である。しかし、小泉さんはずっと前から原発のことを考えていたのだ。
今から、2年余前の2011年11月、私は野田首相がTPPに参加すると言い出し、原発を再稼働させんとしていることに苛立ち、TPPと原発両方ダメだという本を執筆し始めていた。それをどこかで聞いたのであろう、小泉進次郎議員が本会議場で私のところに近づいてきて「父が篠原さんが書いている脱原発の本を早く読みたいと言っているのですが、いつできるのですか」と尋ねてきた。当然、書き終えたときに直ちに小泉さんに届けている。従って、少なくともその時、2011年秋には、小泉さんはもう原発はダメだと考えていたことは明らかである。そして今回もタイミングをみて、一気に動き出したのである。

<日本の政治も変えられる東京都知事>
自民党幹部は、原発は国の問題だなどとまことしやかなことを言うが、とんでもない。福島も新潟も東京電力の原発である。地方にツケを回す政策の典型なのだ。過疎地に札ビラを切って大規模原発を建て、大都市に送電させ大都市の国民がオール電化とやらの便利な生活を享受している。このシステムは何よりも大災害に脆いことは一目瞭然である。原発廃止に使う電力料金の値上げも考えてもらわないとならない。これにより、いつまでも止まらない一極集中への歯止めのきっかけなるかもしれないのだ。人口1329万人の東京都民がこのからくりに想いを馳せ、考えてもらうことが大切なのである。
東京都は東電の大株主(1.2%)でもある。どのようにでも注文をつけられる。現に都知事選における原発問題の争点化をおそれ、政府はエネルギー基本計画の閣議決定を先送りしている。出馬しただけなのにもう既に政府の政策に影響を与えているのだ。細川東京都知事の誕生は、我が国のエネルギー政策・原発政策を大きく変えることになるのは目に見えている。そして我々野党陣営が期待するように日本の政治をも変えるかもしれないのだ。

<東京を世界一のエコ都市に>
東京は国にたとえても、オランダに匹敵する14番目になる巨大なGNP大国であり,13兆円という潤沢な予算を持っている。ドイツなどと比べて大きく遅れをとる再生可能エネルギーへの転換を東京がリードして、日本が世界に見本を示すこともできる。ゴミ発電や巨大ビルの屋上を利用した太陽光発電、スマートグリットの導入等何でも可能なのであり、東京を思い切った環境都市、再生可能エネルギー都市にもできる。
原発にしがみつく日本は、オリンピックの開催地にふさわしくない。もし大地震でもう一度原発事故が起きたら東京オリンピックも返上しないとならなくなる。この矛盾がわかっていない。東京オリンピックの成功のためにも脱原発が必要なのだ。

<地方の代表東京が政策をリード>
特定秘密保護法と同様、国民の声を全く無視して強引に進められる原発の再稼働、外国への輸出について徹底的に議論する場が設けられるのは大歓迎である。いくら強引な安倍政権でも日本の10分の1の人口を占める東京都民を無視するわけにはいくまい。
美濃部都知事は高齢者医療の無料化を国に先駆けて実施した。石原都知事も「東京から日本を変える」と言い、現に国より厳しいディーゼル車の排ガス規制を導入し、国の政策を変えている。もっと悪い皮肉を言えば、政治の右傾化も石原-安倍と受け継がれ、東京が先行したのかもしれない。そして今度は脱原発政治への転換も東京から始めることになるかもしれない。嘉田由紀子滋賀県知事だけではパワー不足なのだ。
地方自治の専門家によると知恵の枯渇しつつある日本のシンクタンク霞ヶ関は、今や地方の政策を国の施策にすることがやたら多くなったという。今や地方から国を変える時代に突入したといえる。

<政争の道具はご免こうむる>
 ずるい自民党は、やれ都知事は都民のための政策を論ずべしと正論を言う。
 それは、東京オリンピック・パラリンピックの準備もあるし、首都直下地震に備える防災都市造りもある。急激な高齢化も迎え、福祉問題も重要である。争点にしたらいい。しかし、これらを手を抜くという候補者はいない。政策的には同様とみてよい。違いは一にも二にも原発政策である。
 舛添要一さんをかつて除籍処分にした自民党が、いとも簡単に支援に回る。我が陣営は、こうしたことにあまりに拙いが、60年与党はあまりにご都合主義である。進次郎議員の「舛添支援に大義なし」こそ、ど正論である。その根底には、被災地に一番出向いている復興担当政務官として、福島県民の気持も考えずに原発再稼働などありえないという義憤が渦巻いているに違いない。
 それなら宇都宮さんも同じ主張ではないかと言う人もいるが、政治家としての実績を考えて欲しい。熊本県知事も経験済の元首相に旗振りを任せた方がいいに決まっている。民主党や他の野党も、これに乗じての野党を再編し、一強多弱体制を切り崩すなという余計なことは後回しにすべきである。そんなことよりも日本国が存続できるかどうかの瀬戸際なのだ。一致団結して細川知事誕生を目指すしかない。

<二人に最後のご奉公の場を提供>
 日本国民は、12年末の衆議院選挙も13年夏の参議院選挙も原発を争点とせず、ダメ民主党を捨て、経済ばかりに目がいき自民党を圧勝させた。安倍政権は経済活性化のために原発を再稼働し、輸出を増やすために原発を輸出せんとしている。そして、原発をやめたら日本が潰れてしまうと国民を脅かしている。それに対し、原発なしでもやっていけると立ち上がったのが細川・小泉ご両人である。
 長谷川閑史経済同友会代表幹事は、原発ゼロで化石燃料を4兆円も多く投入しているというが、原発事故が再び起こったら何10兆円の損失を被るかもしれない。
地震大国日本には原発適地はない。この二人の元首相の日本国に対する熱い想いを受け止めて、是が非でも細川護熙東京都知事誕生させ、原発ゼロでも日本が発展できることを世界に見せてやらねばなるまい。二人とも最後のご奉公をせんとしているのである。

2014年1月10日

極東の「イスラエル化」する日本 -安倍政権の暴走を押さえるのが野党民主党の役目- 14.01.10

 安倍首相の突然の靖国神社参拝に対し、アメリカ大使館及びアメリカ国務省が相次いで失望の意を表明した。あまりあり得ないことだという。安倍首相は日米同盟の重要性を常々説いているが、そのアメリカから何をやっているのか、ときつい刃を突き付けられたのである。合祀されているA級戦犯は、日本の軍国主義の象徴であり、アメリカにとってもサンフランシスコ講和条約に始まる戦後秩序の否定につながるからだ。

<アメリカに当初からあった安倍政権への懸念>
 安倍首相は憲法改正、自衛隊の国防軍化、集団的自衛権行使の容認といったタカ派的な主張を掲げており、このようなトラブルは安倍政権誕生の時からそこそこ予想されていた。一般的にはアメリカはタカ派を歓迎していると勘違いされている。しかし、事実は逆であり、アメリカは当初から、安倍首相は中国や韓国に対して何をしでかすか分からないと危険視し非常に心配しながら様子を見ていたのである。そこに突然、中韓両国を逆撫でする靖国神社参拝をしたのだから、黙っているはずがなく「失望」を表明したのである。
 ただ、アメリカはサンフランシスコ講和条約の締結時にダレス国防長官がわざわざ竹島領有問題をぼかして日韓の対立関係を残したといわれている。つまり、アメリカにとっては日露・日中・日韓ともそこそこ対立関係があったほうが、3ヶ国が束になってアメリカに対立してくるよりましだという冷徹な考え方も存在する。

<オバマの冷たい態度と見抜いたロンドンエコノミスト>
 13年2月24日の日米共同声明は、元々日本側がアメリカ側に懇請して、自民党の聖域なき関税化が条件であるかぎりTPP交渉に参加しない、というウソ公約を破る口実に作られただけであった。TPPに関する日米共同声明に関し、五大新聞はそろってオバマ大統領に聖域を認めさせた安倍外交の勝利と提灯記事を書いた。それに対しロンドンエコノミストは当初から日本のマスコミの反応を冷ややかに見ており、アメリカは安倍のタカ派的な態度を心配していると見抜いていた。
 だから新任の朴槿恵大統領は国賓として招かれ晩さん会が行われているのに対し、安倍首相の1月訪米は遅れ、かつ、やっと実現した日米共同声明の記者会見の前の握手すらなかった。
 このように案に相違して、日米関係は安倍政権発足以来ずっとギクシャクし続けていたのだ。もっと言えば、その安倍首相から外交下手と酷評されていた民主党政権のほうが、少なくとも危ういことはしないと安心されていたのだ。

<世界のトラブルメーカーは中東(Middle East)のイスラエル、極東(Far East)の日本>
 イスラエルは中東の言ってみればトラブルメーカーである。周辺のアラブ諸国といつも揉め事を起こしている。これによりアメリカの中東政策のみならず、世界の外交戦略が相当歪められている。アメリカにはユダヤ系の人たちが多く、その経済力にまかせて盛んにロビー活動をしているため、アメリカの中東政策はいつもイスラエルよりになる。その結果、アメリカ側が中東で度々間違いをしでかすことにつながった。
 そして今、日本は安倍首相の靖国参拝により中国とも韓国とも険悪な関係になり、安倍政権発足以来初の首脳会談という空気はふっとんでしまった。比較的良好な関係だった台湾からもブーイングが起きており、なんとEUやロシアからも懸念が伝えられている。つまり日本の極東におけるイスラエル化である。日本もイスラエルも何かとアメリカと共同歩調をとる同盟国であるにもかかわらず、いつ不始末をしでかすか分からない危うい国になってしまったのだ。
 残念ながら、アメリカにユダヤ人系のロビイストと同じように動く日本びいきのロビー活動は存在しない。かくして、日本はアメリカからも見放される可能性が出てきた。この入り組んだ二国間関係は、とてもケネディ新大使の笑顔で解決できることではない。

<アメリカに依存する日本が好都合>
 アメリカの日本に対する外交の基本は、何事もアメリカの都合の良いように考える露骨なものである。よく、アメリカが周辺の脅威から日本を守ってくれるから、沖縄に基地を提供するのだ、と言われるが、アメリカの軍事戦略の一環として日本を味方に付けていかなければならないという限りにおいて守るだけであって、心底から日本人の生命や日本の国土を守ろうという気はない。アメリカの日本に対する態度はアメリカの世界戦略の中で冷酷に考えられているだけである。アメリカが多大な犠牲を払ってまで日本を守るなどということは端から念頭にない。対中国で日本に味方してくれるというのは米ソ冷戦時代の発想であり、アメリカへの過剰な期待というしかない。米中関係は経済は濃密に結びついており、日本が考えるほど対立していない。
 アメリカにとっては、日本がアメリカに依存せざるをえない忠実な同盟国であり続けることがベストであり、それで十分なのだ。それ以上の煩わしい存在になってほしくないのが本音なのだ。

<アメリカが警戒する日本の軍事大国化>
 そういった観点からすると、アメリカが最も恐れるのは日本が戦前のような軍事国家に戻り、軍事大国になっていくことである。つまり、アメリカにとっては安倍首相のように、ひたすら右方向に突き進むのは迷惑千万であり、最も警戒していることである。日本がいつまでもアメリカの軍事力を頼りにしなければいけないと引け目を感じながら、そこそこの軍事力を持ってアメリカの世界戦略を補完する今の状態が、アメリカにとって一番都合のいいことになる。いつまでも脅しがきくからだ。
 だから、日本が核武装などと言い出すと大慌てすることになる。この過去10年の間にも中川昭一と麻生太郎が日本も核武装を考えても良いというような事を言い出し、アメリカをギョッとさせている。中川昭一は政調会長の時に訪米したが、ほとんど要人とは会えないという強烈な拒否反応に出くわしている。

<損なわれた外交関係は元に戻りにくい>
 尖閣諸島の問題を巡って日中間に非常に緊張関係が続いているが、アメリカは事を起こしてはならないと、中国にも日本にも警告している。アメリカとて極東の軍事紛争は望んでいない。シリアイラン北朝鮮等で手いっぱいである。世界に二つの紛争が起きても対応できる、いわゆる二正面作戦は予算の圧縮から不可能になりつつある。そこに中国を刺激しないではおかない、安倍首相の靖国神社参拝である。アメリカが異例の失望のコメントをするのは頷けることである。
 景気対策などの国内政策は、国内で自由に変えられる。政権が変わったら政策も変わる。例えば、私が深く係わっている農業者個別所得補償はほとんど内容が同じでも、名前がすぐに経営所得安定対策に変えられた。2年続いたが、今年は中味も変更しつつある。所詮国内問題であり農民の犠牲のもと何とかなっていく。
 しかし外交関係は全く異なり、一旦壊れた信頼関係は中々取り戻せない。回復には時間がかかり、首相の交代や政権交代しか解決の糸口はなくなってしまう。

<安倍政権の暴走を押さえるのが野党民主党の役目>
 この靖国神社の参拝、安倍首相が敢えてこの時期に隣国を逆なでするようなことをする必要性は全くない。一国のトップは自分の趣味などを抑えなければならない日本の最高権力者なのだ。
 10月21日の予算委員会で私が、慢心が過ぎると安倍首相に忠告したが、どうもあまり受け入れてないようである。これ以上外交関係もこじらせないよう、我々民主党はよほどしっかりと暴走を押さえないと、日本は大変危険な方向に進んでしまう。
 年頭に当たり、野党民主党がしっかりせねばと決意を新たにした次第である。

2014年1月 5日

情報は国民のもの‐悪法特定秘密保護法は廃止すべし‐ 14.01.05 (「長野経済新聞」新春特集号への寄稿文より)

 小泉首相はこの程度の公約を守れなくともたいしたことないと嘯いて、国債発行費30兆円の上限(公約)を破った。そして世間も所詮選挙のための約束だから守らなくとも仕方がないと大目に見てくれた。しかし、民主党が政権に近づいた頃から、マニフェスト・公約の重味が増した。
 民主党政権の普天間基地の県外移転、TPP、消費増税はすべてマニフェストにないことであり、民主党は国民の信用を失い、3年3ヶ月で政権の座から下ろされてしまった。安倍首相はTPPの名残の聖域なき関税化については、日米共同声明という大演出で、聖域が認められるとして、12年末の総選挙の公約を破ってTPP交渉に参加した。そして、今(12月10日時点)、その公約が守り切れなく、TPPについては全く触れず、沈黙を守っている。
 一方、公約にも何もないものを突然ゴリ押ししたのが、特定秘密保護法である。直近の13年参院選の公約を見てもどこにもみつからない。そもそも13年秋の臨時国会は、成長戦略実行国会にするという振れ込みであり、アベノミクスの3本目の矢を射る法案の審議が集中するものと思っていた。ところが、出てきたものは、とんでもない代物だった。
 これこそとんでもない公約違反である。そもそも臨時国会とは、前通常国会で通すべきものをいろいろな事情で遅れてしまった法案とか、急に生じた問題を解決するのに緊急を要する法案が審議される場である。それを何の緊急性もなく、安倍首相のそれこそ「趣味」にすぎない法案を、国会のルールを無視した突貫工事で通すことになってしまった。私は霞ヶ関30年、永田町10年と計40年近くで国会を見てきたが、これほど強引で雑な国会はなかったと思う。これが「決める政治」だとしたらとんでもない決め方である。これで「日本取り戻し」たというなら、元の自民党に戻っただけにすぎず、法の内容たるや戦前の暗い時代へ逆戻りしただけなのかもしれない。
 また、これだけ全国民に反対が広まったのも珍しいことである。特にマスコミがこぞって反対した。公務員だけでなく取材する側も罰せられ、知る権利が著しく制限されるからである。原発・TPPに続いて反特定秘密保護法のデモも整然と行われた。
 巷間、3年間選挙がなく日本国民は忘れっぽいのだから、今のうちに好き勝手してしまおうという魂胆があるといわれている。だとしたら、日本国民も舐められたものである。3年間忘れずに覚えていて、しかとお灸をすえなければなるまい。

2014年1月 4日

秘密を独占する罪のほうが大きい 14.01.04 (「長野建設新聞」新年号への寄稿文より)

 特定秘密保護法では専ら秘密を漏洩する者を罰することに関心が集中した。これも大事な問題だが、私はもう一つ、逆に政府が大事な情報を隠し、国民が被害を受けるケースこそ問題だと思っている。
 
 1945年8月25日、満蒙開拓団の高社郷の皆さんが集団自決された。終戦後10日も経っていたのに、終戦の事実を知らされていなかったのである。
 日本帝国もわかっていたのであろう。南の農民を満州の北の果てに送ることはせず、寒さに強い長野県から最も多くの開拓民が送り込まれ、かつ最北の地(ソ連国境に近い所)に入殖させられた。中学生ぐらいの少年義勇軍も派遣された。そして、ソ連の突然の参戦、それを察知した関東軍は、密かに自分たちの家族を早めに逃がし、終戦の時には部隊そのものがもぬけの殻だったという。この辺の悲惨な状況は偶然、幸運にも生き残った高山すみ子さん(木島平村)の『ノノさんになるんだよ』に詳しく書かれている。

 ヤルタ会談以降のソ連の参戦の動き等は重要な軍事機密であり、今でいえば特定秘密になる。それを知った高社郷のすぐ近くにいた部隊のある一等兵が義憤にかられ、脱走し馬を駈けて最北の開拓農民に早く逃げろと告げ回ったとしよう。この心ある一等兵を罰するのが特定秘密保護法である。
 誰もがこの矛盾に気づくであろう。罰せられるべきは何も知らない開拓農民を尻目にこっそり逃げ帰った軍部であり、国家なのだ。こんなことすら律することなく、一方的に秘密を漏らした公務員やそれに近づいた記者・国民だけを罰する特定秘密保護法は廃止すべき悪法である。

2014年1月 1日

無責任な日本と10万年後にも責任を持つフィンランド 14.01.01 (「北信タイムス」新年号への寄稿文より)

 私は13年9月、環境委の海外視察でフィンランドの使用済核燃料処分場オンカロを訪れた。
 原発後に残るプルトニウムの半減期は1万2000年、10分の1の放射線量になるのに約10万年もかかる。フィンランドはそれを約500mの深さに埋め(いわゆる直接処分)、完全に埋め直し、10万年間生物界との接触を完全に断つというのである。使用済核燃料はフィンランドには僅か1,600tしかないのに、日本はその10倍の19,000tもある。それを日本ではいまだ最終処分の方法も場所も定まらないのに、平気で原発を続けようとしている。こうした彼我の差に愕然として、原発をゼロにすべきと叫び始めたのが、我々より一足先にオンカロを視察した小泉元首相である。今、使用済核燃料は原発に併設されている燃料プールで保管されているが、いずこも貯蔵量の限界に近づいている。それにもかかわらず、安倍政権は平然と再稼働を急いている。
 私は、超党派の高レベル放射線廃棄物最終処分議連の事務局長として、この問題に本格的に取り組むことになった。放射線の汚染のツケは絶対に後世代にまわしてはならないからだ。原発を即ゼロにしても、処分の問題は生じてくる。
 しかし、今を生きる我々も原発とは覚悟して臨まなければならない。すぐ近くの柏崎刈羽原発は、世界最大の原発であり、冬に事故でも起きると、北信一帯は福島の飯館村と同じになってしまう。我々は一丸となって、「被害地元」とならないように原発の再稼動を阻止しなければならない。

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