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2014年02月03日

原発と東京オリンピック 予算委報告1 -14.02.03-

<森元首相のいつもの大きな失言>
 森喜朗東京オリンピック組織委員長が、東京都知事選で原発問題が争点となっていると捉え、原発ゼロなら電力不足で東京オリンピックを返上しなければならないととんでもない発言をし出した。森元首相は小話の上手で聴衆を笑わせるコツを心得ている老練な政治家であり、愛すべきひとだ。しかし、「神の国」発言ではないが、少々度が過ぎることがある。今回もその類のものであり、また言っているとの感が拭えない。
 また、「原発がないと日本はやっていけない」という大合唱が電事連(電力業界)、財界から聞こえてくる。火力発電用の化石燃料の輸入が3.6兆円増えているというデマも盛んに流している。森発言は、それに追い打ちをかける大嘘の脅し発言である。

<数字を出したがらない経産省>
 私はこんな馬鹿げた発言は、予算委員会のTV中継の前できっぱり否定してもらうしかない、と思って予算委の基本的質疑の中で質すこととした。
 ところが、これに対する抵抗が見苦しかった。政府(経産省・資源エネルギー庁)、財界、メディアが一体となって「脱原発」へのネガティブキャンペーンに大忙しだが、その一端を具体的に紹介しておきたい。
 まず質問に当って経産省への資料要求である。
 東京電力には今原発が一基も稼働していなくても余剰電力がある。どんなにオリンピックの試合が集中的に開催されるにしても、使用電力は僅かである。13年1月に招致委員会がIOCに、その旨を報告している。こうしたことを経産省からきちんと資料提出させ、茂木経産相から明確に答弁させるつもりだった。
 ところが事務方から、さっぱり数字がこず、次々言訳が寄せられる。「森元首相の発言は関知しない。招致委の数字もあずかり知らぬこと。東京オリンピックは先のことでどれだけの電力を消費するか不明なので、原発なしで賄えるかどうか明確にはいえない。」
 それに対し、「そんなに正確でなくてもよい。いくら大きな催し物があってもそれほど電力消費が増えることはないのではないか。真夏の甲子園の準決勝が週末に当った時とかでピーク電力を計算しているではないか」。

<オリンピックでは東京電力の余剰電力の100分の1しか使わず>
 そしてやっと予算委の当日(1/31)の朝6時29分にFAXで招致委の提出した余剰電力の焼き直しが届いただけだった。つまり、パネルの資料に使えない時間になってからの資料提供である。それに加えて茂木経産相はグダグダ長口説を並べるだけで、少しも明確に応えずじまい。
 IOCが電力供給のことを懸念したのに対し、13年1月の段階で、招致委は五輪開催に伴う電力の追加需要は東電の供給能力の約0.1%にすぎないと見積っていた。13年夏に引き移すと、東京電力の供給能力は5494万kWを超え(最大需要5093万kW)、その0.1%は5万kW、小さな火力発電所1基分でしかない。真夏のピーク時(8/19)でも予備電力が401万kWあり、5万kWなど簡単に賄える。森元首相の発言はまさに妄言でしかない。

<原発事故こそ東京オリンピック返上の原因>
 13年9月、IOC総会の記者会見で、日本への6人の記者の質問のうち4人が原発に絡むものだった。福島第一原発の汚染水漏れが問題になっていた時と重なったからである。安倍首相は、under control といって切り抜けたが、日本は小さな国で東京のすぐ近くに福島第一原発があると勘違いされている(もっと大きい国からすればすぐ近くかもしれない)。
 もし、日本に原発事故が再び起きたなら、各国とも大切な自国国民、なかんずく国を代表するオリンピック選手を放射能の危険に晒すことは絶対に認めないであろう。即刻東京オリンピック返上である。森元首相の言に反し、東京オリンピックを成功に導くためにも原発は廃止していかなければならない。

<発電用化石燃料の輸入金額を水増し>
 次に言われるのが、化石燃料の輸入に27.4兆円払い、原発停止で3.6兆円も多く支払っており、このままいくと貿易赤字が増すばかりだという原発必要論である。
 発電用の化石燃料の輸入、いわゆる「焚きまし」が増えていることは紛れもない事実である。原発が動いていた10年11月と停まった13年11月を比べると、輸入額は63.4%増え、2兆2574億円。そのうち火力発電に使うLNGの輸入量は115.8%増、石炭は8.9%増となっている。ただ、輸入数量は輸入金額ほどに伸びていない。茂木経産相は、1日1人当たり3万円と「子ども手当より多い」という変な答弁をしていたが、貿易赤字や化石燃料の輸入を原発停止のせいにだけするには、はじめから無理がある。
 一連の数字にもすぐ誤りとわかる大きなまやかしがある。つまり、ガソリンに使われる原油の輸入も含めた輸入金額増で、大きく水増ししているのだ。例えば、液化天然ガス(LNG)は7~80%が火力発電に使われるが、原油の大半はガソリン用であり、発電用はせいぜい6~7%にすぎない(精製後の重油が発電用として使われるが、直接発電用ではない)。ちなみに、石炭は約30%が発電用である。それを化石燃料全体の輸入27.4兆円がすべて発電用のごとく誤解を与えている。

<円安で輸入金額が増加>
 輸入量は、石炭は原発事故前と比べてほぼ同じ。LNGは相当増え、原油は微増にとどまっている。金額の伸びは、ドルの為替レートが、安倍政権の発足で73円から103円と30円も円安になったことで、円換算が30%近く伸びている部分がかなりある。
 こうしたことを専門家に計算させたかったが、逃げまくられ出てこなかった。仕方がないので私がざっと計算すると、発電用の輸入全体額は12年で5.7兆円、10年(3.0兆円)との比較で2.7兆円増にすぎない。もっと正確にわかっている数字で推計すると、12年11月1ドル=79.84円、13年11月98.43円と23.3%も円安になっている。円換算の価格を23%も押し上げている。ここから円安の押し上げ分を除くと、せいぜい2兆円弱にすぎないのではないかと思われる。それを原発停止を悪玉に仕立てたいマスコミ各紙は、総合エネルギー調査会の3.6兆円をさらに上積みして4兆円の赤字が原発停止で引き起こされていると報じている。原発絶対安全神話に懲りたはずなのに、今日、原発日本経済復活必須論ばかりになってしまっている。

<海外移転が輸出停滞の要因>
 ついでに貿易赤字にも触れておく。
 13年に輸出が69兆7877億円と3年ぶりに増加(9.5%)したが、数量は3年連続減少。輸入は81兆2622億円と過去最大の輸入額(15.0%増)となり、数量も4年連続増。貿易収支は11兆4745億円の過去最大の赤字(65.3%増)。輸入増の要因として、①内需の拡大、②燃料費の輸入増、③円安の3つが考えられる。前述の計算からすると②の燃料費分が4兆円だとすると、残り7兆円が①と③ということになる。
 ここで注意すべきは、円安の追い風でも輸出は伸びなかったことである。原因は為替レートの変動を避けるためもある工場の海外移転が進み、円安で輸出が増えるという過去の常識が当てはまらなくなったのだ。日本の景気というよりも輸出先国の景気が日本の輸出が増えるかどうかの鍵を握ることになる。ところが今は新興国の経済情勢が芳しくなく、これが輸出の停滞につながっている。

<日本も双子の赤字に悩むことになるおそれ大>
 つまり、アベノミクスによる円安で輸出増となり景気が上向いているとよく言われるが、実態はそれほどではないということである。よく考えてみるとこの結果は、アベノミクスの当然の帰結かもしれない。なぜならば、3本の矢は輸出拡大よりも内需の拡大を目指したものであり、そのとおりに動きつつあるということだ。スマートフォン等の電子部品が37.4%増となり、衣類も中国からの輸入であり、内需が拡大すればするほど貿易赤字が拡大することになる。
 アメリカは1980年代以来経常赤字と貿易赤字の双子の赤字に悩まされ続けてきた。一方日本は同じ時期、慢性的貿易黒字を攻められ続けてきた。しかし、このままいくと貿易赤字がいつの間にか経常赤字となり、とっくの昔から大問題になっている財政赤字とあいまって、第2のアメリカになるおそれも大きいといわねばならない。根本的な産業構造、社会構造の改革が必要な時にきている。

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