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安倍政権下で国立追悼施設の建設を -集団的自衛権の行使や憲法改正より国益にかなうー 予算委員会報告9 14.03.20

<ロンドンエコノミストの炯眼>
 安倍首相は、野党自民党時代、民主党が日米同盟関係を粉々にしていると非難していた。60年以上政権の座にある自民党政権には、外交のノウハウがあると自信満々だった。そして歴代政権がそうしているように政権についてからすぐアメリカ訪問しようとしたが、どうも歓迎されず、ようやく年が明けた2月になって訪米した。12年末の総選挙時の選挙公約では、TPPに断固反対するという、いわゆる「政策ポスター」を貼りまくったのにかかわらず、コメなどの聖域が認められるからTPP交渉に参加するという日米共同宣言を外交上の勝利と大見得を切った。日本の重要5項目の聖域を、交渉によっては認められることにしたのは安倍外交の成果である、とメディアも提灯記事のオンパレードだった。
 それに対して、ロンドンエコノミスト(13年3月2日)はそもそも安倍政権のタカ派的な姿勢がアメリカ政府を悩ましている、とその当時から警告を発していた。ロンドンエコノミストの指摘が顕在化するのは13年12月26日政権1年目の節目の靖国神社参拝である。安倍首相本人のみならず周辺の人たちの歴史認識、特に従軍慰安婦問題に関するタカ派的発言が重なり、中国・韓国との関係はそれこそ冷え切っていた。

<外交上の大失敗>
 今も政権発足後1年以上経ているのに両国首脳の二国間会談が行われていない。七年前はアメリカよりも中国、韓国訪問を先にしたのと大違いであり、異様な隣国との関係が続いている。私は2月27日の予算員会で「極東の『イスラエル』化する日本」の表を示し(予算委資料15)(14.1.10ブログ)「本当に日米同盟関係なり、外交関係は回復したのか。もっとひどくなっているのではないか」と問い質した。安倍首相は他の質問者への対応と異なり、私の質問に対してはあまりいきり立たない。この時も素直にその非を認め、「外交問題になっているのは大変不幸だ。まだまだ私の努力も足りないと認識している」と答えている。

<警告を発し続けたアメリカ>
 アメリカは確かに勝手な国である。南京大虐殺、従軍慰安婦等歴史認識問題をいろいろあげつらいながら、片一方で、国際法上も許されない広島・長崎への原爆投下、その他東京大空襲等の非戦闘員への爆撃について頬被りして何も語らない。後述する安倍政権の偏った人事で選ばれた側近(?)が、この件について過激な発言を繰り返すが、一理あることである。お互いに批判は控え、逆に非は非として認め合う度量が必要である。靖国神社への参拝のどこが悪いといった開き直りは、一国のトップとしては絶対にやってはならないことである。
 安倍首相の靖国神社参拝へのこだわりは予想されたことから、2013年秋に訪日したケリー国務長官とヘイゲル国務長官はそろって千鳥ヶ淵戦没者墓苑に参拝し、靖国神社に参拝すべきでないというアメリカの意志を明確に伝えていた。それにも関わらず、安倍首相は敢えて参拝したのである。

<安倍お友達人事は失敗の連続>
 この時期での靖国神社への参拝は、いくら安倍首相が二度と戦争を起こさないと誓うためとか、お国のために生命を捧げた人たちに手をあわせてどこが悪いと取り繕っても、明らかに外交関係を損ね国益に反する。籾井勝人NHK会長、百田尚樹、長谷川三千子の両NHK経営委員、衛藤晟一首相補佐官、そして本田悦郎内閣参与等側近ら、安倍首相の色がついた人たちの一連の発言が、これに追い討ちをかけている。日中関係のみならず、安倍首相が殊更重要視する日米同盟関係も相当ギスギスしたものになってしまった。ただ、今更参拝すべきでなかったと嘆いても始まらない。

<安倍首相にしかできないこと>
 我々はここからいかに各国との関係を修復していくかを考えなければならない。
 逆説的になるが、私は安倍首相こそ隣国との関係をこじらせる靖国神社問題を解決する絶好のポジションにいると考えている。世の中では同じことをしようとしても、あの人が言うなら仕方ないということがよく言われる。遺族会や靖国関係者の信頼が厚く、保守派の代表的政治家と目され、なおかつ現職の内閣総理大臣として靖国神社参拝を敢行した安倍首相にしかできないことがある。靖国神社に参拝し続けた小泉首相ですらできなかったことである。
 それは靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑の関係を明確にし、日本の国立戦没者追悼施設問題を解決することである。これは靖国神社を大切にし続けてきた安倍首相にしかできないことなのだ。私は予算委員会でもこの点を指摘し、安倍首相の行動を促した。マスコミはどこもこの点を取り上げなかったが、視聴者の中にすぐ気付いた人もいた。実は、今回の質問の中でこの点こそ私が最も訴えたかったことである。

<タカ派のレーガン大統領だからこそ軍縮交渉に成功>
 予算委員会で私はレーガン大統領の核軍縮を例に挙げた。レーガン大統領はアメリカを象徴する威勢のいい、明るいトップリーダーであった。冷戦時代のまっただ中、デタント(緊張緩和)の必要性が叫ばれていたにもかかわらず、ソ連を「悪の帝国」と名指しで非難し、タカ派路線を突っ走った。「力による平和」が必要だとしてソ連との軍拡競争に明け暮れていた。しかし、一方で米ソ核軍縮交渉を始めることになった。
 1985年ゴルバチョフという相手に恵まれたこともあり、精力的に2人の会談がもたれ、1987年12月、中距離核戦力全廃条約が成立した。皆がそんなことができるのかと見守る中、2692基の核弾頭、弾道ミサイル、巡航ミサイルが廃棄されたのである。長い間の米ソ冷戦から脱却する第一歩となった。こうしてレーガンは歴史にその名をとどめたのである。

<レーガン大統領と安倍首相の共通項>
 これが軍をないがしろにし、軍縮を主張していた大統領であったらできなかったことである。アメリカの強烈な産軍複合体、軍部OBその他がこぞって反対するからである。それに対して、名うてのタカ派の軍備拡張論者、レーガン大統領が軍縮を言い出しても、仲間のタカ派、軍関係者、軍事産業関係者も文句を言えないことになる。
 それと同じことが、安倍首相の靖国神社の対応にも言えることになる。日本がいつまでも靖国神社にこだわっていては、中韓はもちろんのこと世界各国との友好関係は保てなくなってしまう。死者に対する文化の違いから、いくら説明しても説明しきれるものではない。

<A級戦犯の合祀が問題の靖国神社>
 1978年、国神社の宮司が突如A級戦犯14名を合祀したことから靖国神社問題が始まった。それまでは、天皇陛下や歴代首相も参拝し、何も問題はなかったが、東京裁判でA級戦犯とされた人たちを祀ったことから、以降天皇陛下は参拝せず、1985年に中国、ついで韓国があれこれ言うようになった。中韓2国の主張は誇張しすぎ、執拗すぎ不愉快ではある。しかし、高社郷の開拓農民人を集団自決に追いやるような無謀な戦争を遂行した責任者をも一緒に祀ることには釈然としない。罪は罪であり、責任をとるべき者はとらなければならない。
 誰かがこのややこしい靖国神社問題を解決しないとならない。今までも何回もこの問題を解決しようと試みられたが、全て頓挫している。一番最近では、2001年12月福田康夫内閣官房副長官のもと、「追悼・平和祈念のための記念碑等施設のあり方と考える懇談会」も設けられた。そして2002年に「国を挙げて追悼・平和祈念を行うための国立無宗教の恒久的施設が必要であると考えるに至った」と結論されたが、実現には至っていない。

<誰もがわだかりなく参拝できる施設が必要>
 日本には軍人を祀る靖国神社はあっても、満蒙開拓でソ連軍の侵攻により命を失った人たち、東京の大空襲の犠牲者、原爆投下で亡くなった人たち等、民間人を含めたすべての戦没者を祀る施設がないのは不平等でしかない。軍人以外でも祖国の礎となって命を捧げた人々に感謝してお参りし、それこそ二度とこのような愚かな間違いをしないための誓いをする施設が必要なのだ。アメリカのアーリントン墓地の無名戦士の墓、イギリスのトラファルガー広場の戦没者慰霊塔、フランスの凱旋門の無名戦士の墓に並ぶ日本の国を代表する追悼施設ができれば、中韓を含む世界の首相も何のわだかまりもなく参拝し、日本の首相であろうと誰であろうと参拝してもとやかくいわれなくなるのだ。
 いかなる国家も、国家のために命を捧げた戦士に対して敬意を払う権利と義務がある。そして、その対象は軍人に限られるべきものではなく、あらゆる戦没者としなければならない。

<禍(靖国参拝)を転じて福(中韓との良好な関係修復)と為す>
 今、安倍首相はこの点では絶好のポジションにある。外交上相当の国益を冒し、靖国神社に参拝したのである。この安倍首相が靖国神社のA級戦犯合祀問題を解決し、中国・韓国、あるいは欧米にもとやかく言われない国立の追悼施設をまとめると言い出しても文句のつけようがない。靖国神社をお参りし英霊に対し最大限の敬意を表した安倍首相が言うのであるから、日本遺族会も靖国神社もそう簡単に反対できまい。靖国神社で会おうといって散った英霊をないがしろにするものではないからだ。
 これは、ハト派政権には絶対出来ないことであり、歴代自民党首相でも安倍晋三だけしかできないことなのだ。ピンチはチャンス、禍を転じて福と為す典型にすることが出来るのだ。
 これを解決すれば、近隣諸国とのいざこざが一挙に減ることになる。これは安倍首相が目論む、集団的自衛権の行使を認め、国防軍を作ることより、ずっと外交的な成功として歴史に名が残ることになる。私は安倍首相に、本当に心から靖国神社問題を解決してもらいたいと思っており、それが靖国神社に眠る英霊たちの願いでもあると確信している。もし本気で安倍首相がこれを解決するためならば長くやってもらってもよいと思っている。