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靖国参拝のツケをTPPで払う安倍政権の堕落-14.04.21-

 4月23日のオバマ大統領の訪日を前にして、日米で突貫工事よろしくTPP2国間交渉が行われている。愚かである。日本側は口癖のように「期限を切って交渉することはない」と言っていたのに、オバマの訪日を前にお土産作りに必死なのだ。相変わらず屈辱的外交がそれこそハナバナしく行われている。日本の国益を損ねる許し難い外交だ。

<TPP国会決議の原形となった日豪EPA国会決議>
 話は、第1次安倍政権にさかのぼる。教育改革に熱心だった安倍首相が、06年12月ハワード豪首相が訪日を機に突然日豪EPA交渉を開始した。オーストラリアにとっては願ってもないことであった。この時に衆参農林水産委員会でかなりどぎつい決議が行われている。私は農林水産委員会の野党民主党の筆頭理事としてこの決議に深くかかわった。重要5品目除外又は再協議、脱退(交渉中断)等、今のTPPに対する決議の原形をなすものだった。

<頼もしかった西川公也議員は今は大変身か?>
 通常はここまできつく政府をしばる決議は政府が嫌がり、それを受けて与党(自民党)も躊躇する。ところが、この時の西川公也農林水産委員長は、名うての強硬な農林族議員。農民の立場に立って決議を認めてくれたのだ。あれから7年余、西川議員はすっかり柔らかくなってしまった。そして今は先頭に立って妥協に動いている。
 この時に、はじめて関税ゼロにした場合の影響評価を行った。この時の計算がこれまた後のTPPによる影響試算のひな型となった。

<オーストラリアは2番目の安保協力国>
 安倍首相が、なぜ初の農産物輸出大国とのEPAをアメリカ、カナダ、NZではなくてオーストラリアにしたのか論じられたことはない。しかし、私はこの頃に急遽に進んだ日豪の防衛協力と無縁ではないと思っている。
 日本はイラクのサマワへの自衛隊派遣に当たり、憲法9条の制約から自衛隊員には武器を持すことができなかった。復興支援に全力投入し、オランダ軍とオーストラリア軍に守ってもらいつつ任務を遂行している。つまり、ともに協力して復興活動に当たった仲間だった。07年3月ハワード豪首相が来日し、日豪防衛協力が本格化した。オーストラリアはアメリカに次いで2番目の安全保障の協力国になったのだ。
 しかし、不運にも安倍政権は07年夏の参議院選挙で、民主党の農業者戸別補償により1人区6勝23敗と大敗し、1年で交代してしまった。それとともに日豪EPAは片隅に追いやられ、進展することはなかった。

<日米TPP交渉の足を引っ張る日豪EPA大枠合意>
 それから7年近くの歳月が流れた。その間も地道に政府間交渉が続けられてきた。そして、今年になり、停滞するTPPを尻目に西川TPP対策委員長の政府をさておく議員外交により、急転直下、日豪EPAの大枠が固まった。皮肉なことに再び安倍首相である。
 私は4月10日の農林水産委員会で「米、麦、砂糖は決議を守ったが、牛肉と乳製品は明らかに守っていない」と政府を追及した。政府自民党は、アメリカの妥協を引き出すためのきっかけになる、などと気楽な仮定の下、判断は議会で、と逃げの答弁に終始した。残念ながら、アメリカはそんなやわな国ではない。オーストラリアと一緒に扱われてたまるかと、かえって反発して態度を硬化させ、TPP交渉の合意の道は遠のいている。

<日韓・日中関係の改善を望むアメリカ>
 日豪EPAが、日豪防衛協力とセットで進められたと同様、今回もまたもや日米軍事同盟を慮って、TPPがそして日本農業が犠牲にされかかっている。歴史は繰り返しているのだ。これをもったいぶって国益のためにある程度の犠牲は仕方がないと説明する。
 最近になって、外務省は突然、日韓で局長級の協議を始めている。中国とも大した重要人物ではない胡徳平(胡耀邦元主席の長男)を招き、会話を始めるポーズをとっている。いずれもオバマ訪日に備え、日中、日韓とも友好関係回復に乗り出している、という証しを見せるための「おべっか外交」、「いい子ぶりっ子外交」である。 
 アメリカは安倍首相の12月26日の靖国参拝に対し「失望した」という前例のない強烈なコメントを出して、不快感を露わにした。私が年頭のブログ『極東の「イスラエル化」する日本』(14年1月10日)で書き、2月27日の予算委で指摘したとおり、日本はイスラエルと同様に周辺諸国と敵対関係ばかりを作り「極東のイスラエル化」しているのだ。アメリカは近隣の中国、韓国と険悪な関係を造り出してしまった安倍政権には不安を感じながら困っている。そうしたことを反映し、オバマはアジア歴訪から日本をはずすことを考えていたようだ。辛うじて1日滞在することになったが、それを日本が、国賓待遇したいのでせめて2泊してほしいと、それこそおねだりしての訪日になったという。

<TPPがオバマ「おもてなし」の道具に使われる>
 となると、せっかく忙しい合間をぬって2日も滞在してくれるオバマに対してもっといい子ぶらなければならない。とうとうTPPを「おもてなし」の道具にせんとし出したのである。つまり、靖国参拝のツケをTPPの妥協で払おうとしているのだ。これが、日米TPP交渉の卑しい背景である。おもてなしは、2020年の東京オリンピックに向けてすればいいのであって、日本の農業を壊してしまうTPPですべきものではない。
 例によって秘密交渉とやらで、我々国会議員にも国民にもどれだけ妥協しているのかさっぱりわからない。憲法、アベノミクス、原発輸出等では安倍首相は能弁である。しかし、うまくいってないTPPについては仕方のない国会答弁以外触れることはなかった。ところが珍しく、17日のシンポジウムでオバマ訪日を前に「高い観点で結論を出していきたい」と言い出した。気がついてみたら、TPPしか適当なお土産がなかったのだ。悪いことに、憲法改正も含め、「決めるのは私だ」と意気軒昂で、自ら決断する美学に酔いしれている。TPPもその対象にしかねないおそれがある。

<安倍首相の靖国参拝の負い目>
 安倍首相は3月のハーグ・サミットで、アメリカに日米韓の3者会議をセットしてもらったので、少しは恩返ししないとならないと思っているのかもしれない。その代わりに3者会議後、安倍首相は訪日前にTPPで妥協するようにオバマから釘を刺さされているとも言われている。
 この結果4月18、19日の週末に甘利TPP担当相がフロマン代表に呼びつけられる形でワシントンD.Cに交渉に出向いている。
 日米同盟関係をこじらせたのは、一にも二にも安倍首相の靖国参拝である。それをなんとTPPで妥協することによって挽回しようとしている。こんなことのために犠牲を強いられる農民はたまったものではない。損なわれる国益は計り知れない。

<TPPは農産物関税だけではない>
 やってますよ、という過剰な演出をするためなのか、今度は21日(月)から東京でオバマ訪日直前の交渉がおこなわれるという。国民の目には、TPPは農産物の関税交渉かと勘違いされている。他にISD、国民健康保険、特許等重要なことが目白押しなのに、また、農民だけが抵抗していると思わせている。これも農民にとっては迷惑なことである。TPPはもっと広い内容が含まれており、あちこちに大問題が山積しているのが、奇妙に隠されている。私はこれが一番心配である。

<両首脳のいかがわしい思惑>
 外交は内政に直結する。オバマはシリア問題、クリミア問題等の対応が芳しくなく、中間選挙を前にして早くもレイムダック状態である。これといった成果の期待できない今回のアジア歴訪の中で、TPPは願ってもない目玉として残っている。雇用の拡大につながるTPPの大枠合意をしてきたと国民に見せつけたいだけなのだ。
 一方、安倍首相は、今まで順調だった金融・財政に続く三本目の矢がさっぱり見えてこない。悪いことに、何か変わるかもしれないという期待感だけで、今やTPPが三本目の矢の中心になっている。このように、日米双方にとってTPPが国民の目眩ましにピタリという点で利害が一致している。

<繰り返される2国間のゴマカシの共同声明>
 例によって政府与党にベッタリの読売新聞が4月20日の朝刊で(他紙が何も触れていないのに)一面トップに「牛肉関税9%以上、TPP日米歩み寄り」とかなり詳細に伝えている。
 これが事実だとしても、TPPの合意とは程遠い。なぜなら、TPPは12ヶ国の交渉なのだ。同じ農産物輸出国のNZ等の各国が認めないだろう。どっちにしろ、そう簡単にまとまらないのだから、適当なことを紙に書いて得点捻出をしているだけだ。また、関税ゼロでないとアメリカの農業団体が受け付けないだろう。何よりもアメリカ議会はTPAを通しておらず、承認はしない。二人とも国内向けのパフォーマンスだけに血道を上げている。その結果、昨年2月と同様に、それぞれの国民向けに、ありもしない外交的成果を発表することになる。
 安倍首相も本当の保守ならば、もうアメリカ大統領が訪日するからといって、忖度外交に明け暮れ、アメリカのご機嫌伺いをするのはやめるべきだ。もう国益に反するアメリカの要求など受け入れず、国会決議に則り、交渉から脱退するしかない。