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アベノミクス農政批判シリーズ2「血迷うアベノミクス農政 -規制改革会議提言は支離滅裂-」14.06.06

<TPPから目をそらすための7500円への減額>
 農政改革は突然始まっている。昨年13年秋、TPP交渉がうまくいかないことから目をそらすためであろう。突然農業者戸別所得補償による米作農家への直接支払いを、10㌃あたり1万5千円から7千5百円に引き下げることを決定した。農家は行方の分からないTPP交渉より、実害のあることに愕然とした。
 一見大胆だが何のことはない、ただ直接支払いの単価を下げるだけもので、不信をかっているTPPから目をそらすためなのは明らかである。そして数年後に「減反を廃止」し、自主的な生産調整に任せると打ち出し、安倍政権の農政大改革と銘打っている。ところが、それを担う全国農協中央会から法律的な指導や調整の権限を奪おうとしている。全く整合性のとれないニセ政策である。

<農業者戸別所得補償の目指した緩やかな生産調整からの脱却>
 民主党農政も、生産調整はもともと廃止する方向で考えていた。麦、大豆、なたね、飼料作物、その他一旦輸入に任せ切って捨てた他の作物も回復することによって自給率も向上させていけば、自ずと生産調整も不必要になっていく。その点では民主党農政と何も大きく変わることはない。ただ、農家を混乱させ、いかにも大胆な改革ということを演出しているだけである。

<安保法制懇は専門家だけで「空疎な」議論を排したと開き直る>
 それから、始まったのが二つの歪んだ、産業競争両会議や規制改革会議による農政提言である。5月14日に規制改革会議の農業ワーキングチームによる提言が公表された。
 安保法制懇は、普通の審議会と異なり全く同じ意見の人たちだけを選んで議論をしている。このことについては、私は予算委員会で指摘をしたところ、安倍首相は「空疎な議論を排すために専門家だけで議論した」と開き直り答弁をしている。

<専門家のいない「デタラメな」議論ばかりの産業競争力会議・規制改革会議>
 産業競争力会議は安倍首相を議長に、財務相や経済相等関係大臣が入っているが、林農相はメンバーではない。他の民間議員にも、こちらも農業関係者は一人もいない。そして、分科会である農業ワーキンググループには、新浪剛史(ローソン代表取締役社長CEO)、秋山 咲恵(サキコーポレーション社長)の2人だけで、農業の専門家は誰もいない。
 規制改革会議も農業関係者らしいといえるのは、浦野光人 ニチレイ相談役だけである。
さすが、専門家を加えて「農業ワーキングチーム」中心に議論しているが、やたら財界寄り(?)の農政論を振りかざす学者や日本の平均とはいえない企業的農家など、これまた偏ったメンバー構成である。
安倍首相の言葉をもじると、産業競争力会議は、専門家以外の空疎な議論を超えて「デタラメ」この上ない議論をしているとしか言いようがない。

<中央会の農政活動をやめさせたい安倍政権>
 特徴的なことは、農業委員会と農協中央会に対して同じ性格のものが散見されることである。
その一つが全国団体の廃止(中央会制度の廃止、全国農業会議制度の廃止)である。何のことはない農政提言活動をやめろということである。市町村の農業委員会や地域農協は存在してもいいが、その全国団体は地方の自主性を損うので、必要ないというのだ。農業委員会法には行政庁への建議の義務があるが、これを削除するとなると、農家人口は急激に減少している中、ますます農民の声が政府に届かなくなってしまう。
 6/4の農水委で明らかになったが、規制改革会議では、中央会の廃止がまともに議論されたこともなく、突如提言に入れ込まれたという。また県レベルの中央会についても何も議論されていないのに、廃止の方向だという。まさに専門家がいないだけでなく、審議自体が行われずいきなり提言が出てくる「デタラメ」な手続きしか経ていないのだ。

<何でも民間という狂った価値観に惑わされる日本>
 アメリカは長年に及ぶ年次改革要望書において、相互扶助のための組合といったことを認めず、全て民間にせよと要求してきている。協同組合というものの意味を全く理解しておらず、考え方が根本的に違うのだ。地域が寄り添い、関係者がお互いに助け合うなどというのはまかりならんというのだ。その一つ、例えば山岳会の遭難救助のための共済制度や小中学校の教職員共済制度等日本にはいろいろ互助組合があるが、その存続自体を認めずすべて民間の保険会社にやらせろというのだ。TPPもこの延長線上にある。
 小さな農家が一人一人で売ることはむずかしいので、それを肩代わりし販売するのが農業協同組合である。その上部団体である全農だけを株式会社にするというが、それならば、地域の農協も県の経済連も株式会社にさせないと辻褄が合わない。利益を追求するあまり、中山間地域は真っ先に切り捨てられるのは目に見えている。
 農林中金をメガバンク、JA共済連を大手保険会社、そして全農を商社と同じようにしようとしているのである。まともな論ではない。JAの総合事業等の廃止、准組合員の利用規制等いずれも協同組合の本質と農業の現場からかけ離れたものである。地域を支えるといった協同組合精神は吹き飛んでいる。

<理事や委員の選び方まで注文をつける思い上がり>
 理事の見直しも振るっている。農協の理事に民間経営者などを入れなければならないと提言している。これは経団連の役員に消費者を入れろと言っているのに等しい。地域の自主性の妨げになる中央会は廃止すると言いつつ、新たに誰を理事に選ぶかタガをはめるというは自己矛盾でしかない。理事は組合員により自主的に選ばれているのだ。協同組合というのはそういうものなのだ。
 農業委員会も公選制をやめ、市町村長が選任しろという。通常はまともな市町村長が大半だろうが、突飛な市町村長も多い。やはり皆の意見できめなければならない。

<相変わらずの「企業の農地所有」要求>
 競争力会議は、日本の競争力を高めていくと謳っている。たった日本のたった1.5%しか占めていない農業の規制をなくし、どうやって経済全体を活力あるものに出来るのだろうか。それを規制改革の対象を農業、医療、雇用に偏っているのは血迷っているような気がしてならない。
 また中央会制度の廃止等が農業者の所得は上による地域活性化の3本柱の一つというのは、あまりにも中央会の力を過大評価(?)しているのではないか。目標である農家所得の増大には、もっとほかの農政こそ優先されるべきである。
 企業の農地所有を求めて、農業生産法人の要件緩和を言い出すに及び、我田引水振りが極限に達する。後述するように世界の農政改革に、企業の農地所有など出てくることはまずありえない。もともと禁止されている国が多いが、その前に農地の借地で十分やっていけるからだ。日本の企業がここまで農地所有に抱泥するのは、農業経営に乗り出すとは名ばかりで、実は土地転がしや産廃施設への転用等悪意を持っていると断ぜざるをえない。他の国にはそんな要求は一切ない。高額の農地の購入代金に匹敵する収益は上げにくいからだ。
 大半の者は気付いていないが、高邁な理想の下に作られた農地中間管理機構は、農業に参入した企業に、散々集積型農業を行い、農地をズタズタにして逃げ出された時の尻拭いをさせられる可能性が高い。

<家族農業こそ農業の本流>
 今年(14年)は国際家族農業年であるが、政府は行事を何もしていない。国会でも2回追及しているが全く反応がない。世界中が、農業はやっぱり家族農業であると、その良さを見直していこうという年なのである。
 企業農業の見本は皮肉なことに共産主義国家の、旧ソ連のコルホーズ・ソホーズ、中国の人民公社と全て失敗している。いやアメリカにあるではないかといわれるが、正確には存在していない。そもそも日本と同じく企業の農地所有が許されていないからだ。カルフォルニア・フロリダの柑橘農業等にメキシコ人の低賃金労働者(チカーノ)が雇われ、劣悪な労働条件の下で働かされている。農業労働には季節性があり、バスで移動させられ定住もままならない。まさに「ブラック農業」である。
 国際家族農業年に、あろうことに企業の農業参入や農地の所有が農業の改革の根本などと、浮世離れした農政論議をしている国は日本だけである。企業に農地を持たせたら、投機に使われ、買占めが始まるに違いないからであり、世界は認めていない。自ら耕し、汗をかく者が農家であり、農業経営者なのだ。そして彼らを支援するのが政府の役目なのだ。

<国際協同組合年の意義がわからない規制改革会議>
 もう一つ12年は、国際協同組合年であった。これまたいろいろな問題を身近な協同組合で取り組んでいかなければならないという考えを、世界が理解し始めたということである。特に介護などはお金だけでは解決できず、身近な人々に頼る協同組合で相互に助け合うことが必要なのだ。農業や農政の素人ばかりの産業競争力会議と規制改革会議の委員・議員に、国連の定める「年」の意義を少しは理解しているのだろうか。日本農業は中央会制度をいじったところで大きく変わるはずがない。農政の本質に関わる提言をなぜできないのだろうか。
 そういう点では、私は安倍農政は方向が間違っているとしか思えない。家族農業に見向きもせず、協同組合による助け合いをないがしろにして、何でも競争原理で民間がよく、株式会社にすればよいというのだ。こうした考え方に立つ規制改革会社の報告は、世界の潮流と全くかけ離れた提言である。国際協同組合同盟(ICA)が、日本の農協と家族農業を脅かす改革と、グリーン会長の談話という形で見解を表明している。

<政治と行政の劣化現象>
 安倍政権は思い上がりが甚だしく、自民党は傲慢になり過ぎている。私が農林水産省の政務三役だったら、こんなメンバーで何が議論できるかと内閣府なり官邸に怒鳴り込んでいき、是正させているだろう。また、現役の農水省の官僚だったら、体を張って徹底的にこのような愚かな提言に修正を迫っていただろう。しかし、そのような動きが与党の中からも農水省幹部からも見られないのが不思議である。
 官邸主導の内閣人事局による初人事に怖れをなしての沈黙だとしたら、日本も行政もとことん腐りつつあると言わねばなるまい。TPPで農民の不安をかき立てた上に、デタラメなアベノミクス農政で日本農業を沈没させられてはたまらない。No TPPバッジとStop TPPネクタイに加えて「Save 農協」(農協を救え)の何かをまといたくなった。