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アベノミクス農政批判シリーズ1「傲慢なり安倍官邸(自民党)、哀れで悲しき全国農協中央会 -農業界のTPP反対に対し、農協解体で恫喝する安倍官邸の驕り-」 14.06.06

<TPP反対集会から野党議員を締め出す愚>
 5月14日、何回目かのTPP反対集会が日比谷野外音楽堂で開催された。私は、そこにいつもどおり出かけて行った。ところが、会場に着くと、旧知の全中幹部が「いやいや、与党だけですみません。会場の長野県の場所にご案内しますから」といって、壇上には上がらせなかった。そういえば、日本農業新聞で、全中主催の集会が報道されるのに、私に案内が来ないのは不思議だなあとは思っていた。
 この日は、昼休みにすぐ近くの航空会館で長野県農協中央会主催の長野県選出全国会議員団との会合が開かれ、その直後に前述の反対集会が開かれた。私の秘書は、私と同様何事にも前向き(?)である。長野県農協中央会からの案内には、「14:30から日比谷野外音楽堂で国民集会が開催されますので、参加につきましてご配慮願います」と書いてあった。秘書は、「配慮」を「絶対に遅刻せずに来てほしい」と受取り、私の予定に入れた上、絶対に遅れないようにと注意していたのである。

<出元は安倍官邸か?>
 このような会合に与党議員だけというのは前代未聞である。例えば、5月27日農業委員会会長が集まる会合が日比谷公会堂で開かれている。全議員に招待状が送られ、出席している国会議員の名前が次々呼ばれ、手を挙げる光景が繰り返された。これは、国土交通省関係の会合がよく開かれる砂防会館でも同じである。それを現下の大きな課題であるTPPの反対集会だけが、いびつな形になっている。
 安倍官邸が傲慢にも与党しか呼んではいけないと命令しているのではないか。タイトルに(自民党)としたのは、自民党が圧力をかけたにしても、ルーツは安倍官邸にあるという意味合いである。思い上がりの甚だしい安倍政権は、農政改革やTPP交渉でも集団的自衛権にみられる強引なやり方を始めたのである。

<三本目の矢の目玉TPPへの焦り>
 その根底には2つの理由があると思われる。
 1つは、鳴物入りで始めたTPP交渉がうまくいっていない。嘘に嘘を塗り固め、2回にわたって騙している。つまり12年の選挙において「絶対にTPP交渉に参加しない」といって295議席を確保し、舌の根も乾かない2月にオバマ大統領との直談判で、5項目の聖域は、絶対守ると約束をとりつけたとして、TPP交渉に参加した。ところが、米・麦・砂糖はそこそこ約束を守れても、牛肉・豚肉、乳製品に関してはベタおりらしい。当然のことだが、農民や農業団体から、「これでは約束が違う。公約違反であり国会決議違反だ」と反対されており、このままいったらTPP交渉はとても妥結できない。
 アベノミクスの代表的政策「三本目の矢」、経済政策の目玉が何もない。第一弾の薬の通信販売・インターネット販売の解禁だけではどうしようもない。そこで超目玉になってきたのが、ふわっとしてわけのわからず、さしたる効果がないと思われるTPPである。TPPへの期待感だけで、高支持率も高株価も維持しようという悪い魂胆が見え透いている。安倍官邸は全中がその大事なTPPに絶対反対していることに対して、イライラが高じているのであろう。

<23(18)勝6敗から2(0)勝28敗へ大揺れする参議院一人区>
 2つ目は、うがった見方になるが、民主党を一旦は支持した農業界に対する報復があるかもしれない。07年参議院選挙に大敗し、退陣のきっかけとなったことについては相当恨みに思っているようだ。安倍首相は政権復帰してからも、参議院選挙に勝たなければ死んでも死にきれないと発言している。
 07年の選挙は、非自民23(民主18)、自民6という惨憺たる結果だった。民主党自体も忘れているが、これは農業者戸別所得補償に期待した農民が、民主党に投票してくれたからである。かつて、自民党の金城湯池と言われたのが、農村が多い参議院地方区の一人区であり、例えば01年の選挙は、非自民2(民主0)だった。それが10年には非自民12(民主12)、自民17となり自民が復調し、13年にはまた非自民2(民主0)、自民28と01年並みに戻ってしまった。靖国神社といい参議院選大勝利という、安倍首相は思いを遂げたのである。強運の人と言わねばなるまい。

<安倍首相の執念深い仕返し>
 敬愛する池田元久(元民主党衆議院議員、元NHK政治部記者)は、07年参院選を「篠原君、日本の農民が真っ先に民主党に政権を獲ってほしいというシグナルを送ってくれた。かつ政策で選んでくれたのが07年の選挙で、珍しい選挙だった」と分析した。私には気付かなかったが、これが的を射ているのかもしれない。
 民主党政権下では、公約どおり農業者戸別所得補償を実行に移し、それが今、自民党農政に受け継がれている。TPPが俎上に上がってからも、農村地域を選挙区とする議員を中心に必死でその阻止に動いてきた。野田政権もしきりに交渉に入りたがったが、少なくとも我々民主党が与党の間は、入れさせなかった。
 そういう意味では、恨み骨髄に達しているのが、07年に自分を退陣に追い込んだ農民であり、その司令塔の全国農協中央会である。安倍首相は、口では「ハッと息を呑むような美しい田園風景は守らなければならない」と農業に対し情緒的賛辞を述べつつも、いつか懲らしめてやろうという執念深い魂胆があるのかもしれない。つまり、自らを発掘してくれた小泉首相の、敵をわざと作って世間受けする強硬姿勢を演出する方法である。一種の目くらましであり、正攻法とはいえないあこぎなやり方である。

<農政に与野党なし>
 悲しいのは、野党をTPP反対集会から締め出すという安倍政権のそれこそ理不尽な要求を、おめおめ受け入れる全中である。党派性を超えて農家のために尽くさなければならない全中のすることではない。そもそも農政では、国内農業を大切にという点で与野党の差がないのは世界共通である。それが、一党の言うことをそのまま聞き、集会に与党しか呼ばないというのは考えられないことである。自民党と公明党の集会ではないのだ。
 もともと60年に及ぶ自民党長期政権のために、日本の業界団体のほとんどは全て自民党を支持となっている。これがそもそもおかしいのだ。そして、これに風穴を開けられたのが、前回の政権交代であった。我々民主党はただの一度も野党自民党・公明党を集会に呼んではならないなどと全中に注文をつけたことなどない。当然のことである。もし、自民党(農林議員)が、この何とも言いようがない愚かな与党だけの集会を命じているとしたら、責任与党とはいえない。そして、卑屈なことをする安倍官邸は、衆銀に295議席もありながら、懐の狭い政権でしかない。

<中央会いじめを誘発する愚かな行動>
 与党議員しか呼ばないという卑屈な全中は、とても全農民の代表であるとは思えない。かねてから現場との距離感が問題にされてきた。規制改革会議であれこれいわれることは、先刻承知の事であり、与党への擦り寄りがその典型かもしれない。その挙句、中央会制度廃止等農協解体につながる答申を出されようとしている。哀れを感じざるをえない。つまり、安倍官邸は目障りな農政運動や農政要望をしてはならないという強圧的姿勢を打ち出したのである。
 都道府県の農協中央会が、当然だが与野党問わずに集会に出てほしいとしている中で、その上部団体である全中のみ時代錯誤な対応をしている。これでは「地域の自主性をそぐからいらない」という、まさに存在理由を否定される理由を地で行っている。長野県農協中央会をはじめとする地方の声を踏みにじって、与党にだけなびいている姿はまさに批判のとおりであり、この卑屈な態度をまず改めなければならない。どのような政権だろうと、農民の声に謙虚に耳を傾け、農業協同組合の精神に則して活動することが求められているのである。
 もし、こうした常識はずれの対応を続けるとしたら、中央会制度廃止という声が出ても自業自得としか言えまい。安倍官邸には「驕る平家は久しからず」と警告し、全中には猛省を促したい。