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アベノミクス農政批判シリーズ4「安倍政権の〇〇会議は利益相反だらけ -企業に大甘の政策決定プロセス-」14.07.01

<20年前は農水省のOBばかりの〇〇審議会>
 各省庁には、何々審議会がある。農林水産省には、1996年19の審議会があった。自社さきがけ政権が出来た時に、やはり自民党政権では全く手が付けられなかった改革が行われた。その一つに審議会改革があり、女性委員を1/3以上にするとともに、座長あるいは会長をその担当省庁のOBにしないことということである。その後、省庁のOBを一人も入れてはいけないことになった。御用審議会批判に応えるものであった。
 恥ずかしながら、調べてみてびっくりしたことがある。農林水産省19の審議会中、獣医師審議会を除いて、18の審議会のすべてが農林水産省のOBが座長あるいは会長になっていた。そういえば、農林水産省OBの小倉武一さんが大蔵省の税制調査会の会長を何年もやり、内村良英さんが関税率審議会の会長をやっているのを不思議に思っていた。大蔵省(現財務省)は自主的に自省のOBを座長にするのを避けていたのである。自分の省庁OBが座長では客観的な答申とはならないという、世間の目を気にしてのことだった。それに対して、何事も閉鎖的で普通の流れからちょっとずれがちの我が農林水産省はそうしたことに全く無頓着だったのだ。

<審議会から締め出された〇〇省OB>
 私は当時、農林水産省で最も重要な海洋法条約の批准、200海里排他的経済水域の設定、海洋生物資源を保護する法律等を総括する水産庁企画課長だった。そして、もう一つ当時沿岸漁業等振興審議会(現水産政策審議会)を担当しており、座長を元水産庁長官のOBから、小野征一郎東京水産大学教授に変えざるを得なかった。小野教授は嫌がられたが、国のルールだからと何度も懇願しなっていただいた。何回か続けるうちに立派な座長になっていかれた。やはり地位は人を創るのである。
 日本の役所はまじめである。私の知る限りでは、それ以降、ずっとこのルールがほとんど守り続けられてきた。
 その後私が知っているルール違反は、民主党政権時代の規制改革会議の下部組織にみられた。水産庁OBで過激な論陣をはるAの小松正之氏が委員になり、彼の書いたペーパーが突然全体の方針となって出てきた。私はこのルール違反を指摘し是正させた。もう一つは、今経産省は、総合資源エネルギー調査会の本委員に内藤正久元局長を入れ、分科会の委員に豊田正和元審議官を入れているぐらいである。


<アメリカのルール、利益相反>
 アメリカではもう一つ全く違った形のルールが存在する。アメリカでは民間企業の利益があるような場合、その政策決定プロセスにその企業の者が関わることを厳に禁じている。「利益相反」と言われている。要するにレフリーがプレーヤーを兼ねることは厳に戒められているのだ。
 日本でいえば、鳩山邦夫総務相のときに、オリックスの宮内義彦氏が「総合規制改革会議」の議長であり、その提案により郵貯の「かんぽの宿」が赤字続きなので売り渡すと決め、オリックスのグループに極めて低価格で一括譲渡されることになった。当然世間から問題視されたが、鳩山大臣の一言でストップされた。最近では通信販売の楽天の三木谷浩史氏(産業競争力会議)が薬のインターネット販売を緩和するということについての関与も指摘された。

<問題ある竹中平蔵氏の〇〇会議入り>
 労働法制を改める審議会の委員に、人材派遣会社のパソナの竹中平蔵会長が入っており、これも利益相反だと糾弾されている。公式の肩書は慶應義塾大学教授となっているが、パソナの会長でもあることはよく知られている。経済財政諮問会議や産業競争力会議は、関係閣僚も委員となっており、竹中氏のような民間の委員は「民間議員」と呼ばれている。役所OBを完全に排除しながら、労働規制緩和で利益の上がるパソナ会長が堂々と入り、労働移動支援の助成金の大幅アップ等の意見を述べ、それが実現されているのである。日本も利益相反こそ問題にしないとなるまい。つまり、〇〇会議には竹中氏のような者は一切入れず、まじめな学者等に限定すべきなのだ。

<今もあるちゃっかり政商>
 明治政府時代に政治と結びついた商売が公然と行われ、彼らは「政商」と呼ばれた。そして三井・三菱・住友等の財閥もすべてこの政商に端を発している。
 ところで、最近では政商の類は一切なくなったようにみえるが、巧妙になり、少々質(たち)が悪くなっているように思えてならない。その典型的例が今回の規制改革会議にみられる。座長の岡素之住友商事相談役は農業ワーキンググループの議論にも参加している。その住友商事は秋田の米や鹿児島の野菜に手を出している。そこが農協の役割を小さくし、企業の農業参入を増やすべしと提言している。正義の味方を装いつつ、実はちゃっかり自分の会社に有利な提言をしているのだ。利益相反に厳しいアメリカの基準に照らせば、ありえないことである。
 
<国民に支持された土光・本田コンビ>
 1980年、土光敏夫経団連会長を会長とする臨調は、82兆円に膨らんだ財政赤字(今は1100兆円)を是正すべく、国民的人気のある本田宋一郎氏を副会長にして、3K赤字(国鉄、国民健康保険、米)の改革に取り組んだ。土光家のメザシの朝食が放映され、その清貧振りにも尊敬の眼差しが向けられた。この結果、国民の広い支持を得て国鉄の民営化が進められた。
 そこには利益相反のひとかけらもみられず、公明正大な議論が行われている。それに比べ、財界首脳も小粒になり、卑しい決め方が横行しており、嘆かわしいかぎりである。これでは国民の理解は得られまい。

<目を疑う民間企業からの出向者ばかりの規制改革推進室の陣容>
 もっと許しがたいのは、内閣府の規制改革推進室の陣容である。役所側は、庶務を担当する内閣府4、行政改革の担当の総務省6、その他、関係省庁(農水省等)が9名なのに対し、何と民間企業からの出向者が17名を数えている。つまり、政策を担当する実働部隊は、役人よりも民間人が多くなっている。参考までにその企業を一つ残らず上げておく。
 IHI、NTTデータ、アサヒグループホールディングス、アステラス製薬、キャノン、新日鐵住金、住友商事、大和証券、トヨタ自動車、日本政策金融公庫、東日本旅客鉄道、みずほ銀行、三井住友海上火災、三井住友信託銀行、団体では、21世紀政策研究所、関西経済連合会、経済同友会 各1名の17名である。

<企業の言いなりに決められる提言>
 これをみたら、農業の企業参入や薬の規制の緩和等にどの企業が関心を持ち、その意を呈した提言の素案がどのように決められたか一目瞭然である。一度も議論されず、議事録を隈なくみても議論された形跡もない「中央会制度の廃止」が、なぜ突然提言に出てくるのか。原因は議員(委員)の偏りばかりでなく、事務局にもあるのだ。つまり、それぞれの企業が「農業生産法人の見直し」等で自分の都合のよいように提言を書いているということになる。つまり政府の政策決定が、企業にハイジャックされつつあるのだ。
 この提言が、次期通常国会の法律改正で実現し、上記の企業が利益を得て、その功績により経団連が政治献金関与を復活するとしたら、国民はとても目をつぶっているわけにはいくまい。企業の利益相反について日本はもっと厳しい態度をとっていかなければならないのではないかと思っている。

<民間委員より役所のOBのほうがまだまし>
 日本社会は、役人に対して冷たく前述のとおり、中央官庁のOBを審議会委員に絶対してはいけないとルールを造り上げた。確かに、20~30年前のように、審議会の委員の1/3近く担当省庁が役所のOBというのでは、いかにも手前味噌な議論が進み、御用答申しか行われないということで排除する必要がある。しかし、ゼロというのはいかがなものかと思う。
 私は、若い現役役人の頃、秘かに早くOBになって自由に意見を言える〇〇審議会の委員になりたいと思ったことがある。OBが、経験を踏まえてなるほど肯ける意見を述べているのに感心したからである。天下りの規制は当然として、そのものズバリの業界団体に天下っていない担当省OBまで完全に締め出すのはあまりにも行きすぎである。少なくとも、関連業界や団体が何のチェックもなく委員になっているのと比べ、バランスを欠いている。
 女性の1/3目標と同じく、1/5までは許すといった合理的なルールに戻すべきである。折角長年霞が関で官僚として経験を積んだ有識者の意見を活用できないのは宝の持ち腐れである。

<安倍首相の自虐規制史観>
 安倍首相は日本を世界で一番ビジネスをしやすい国に変える、自分は岩盤規制を打ち砕くドリルの刃になると大見得を切ってきた。菅直人首相が、「第三の開国」などとダボス会議でいったことに対し、自らの国が閉鎖的だと外国でいうなど、外交のイロハを知らないと批判した。そのとおりである。しかし、安倍首相も自分の国が規制だらけで、企業が仕事をしにくいと世界に告白している点で、菅首相と全く同じ間違いをしている。私は予算委員会で、安倍首相の口癖をもじって「自虐規制史観」ではないかと嫌味をぶつけた。
 安倍政権は、農業・医療・雇用を三大ターゲットにした規制改革で日本経済を活性化するという。あたかも規制が日本経済の「失われた20年」の元凶のような言い種である。私のみならず、他の誰もが原因は別にあると思うのが普通ではないか。第三の矢はもっと核心をついた正当な政策でなければならない。