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アベノミクス農政批判シリーズ5 「規制改革会議提言逐条(項目)反論コメント1」 14.07.10

 私は1982年から3年間農林水産省大臣官房企画室に在籍した。主な仕事の一つが土光(敏夫)第2臨調の後を受け当時華やか(?)だった経済界(経団連・経済同友会等)の素人的農政提言に対し、すぐ反論を書き、コメントを作成することだった。もちろん行政管理庁(当時)の規制改革に関する指摘もあり、その反論もさせられた。経団連事務局の相手方が 今 人事院人事官の立花宏であり、経済同友会の責任者が故小島慶三(参議院議員)だった。やりとりが頻繁で、付き合いが濃密だったこともあり、すっかり親しくなりその後もずっと交流が続いた。

<昔とった杵柄で逐一反論>
 経済界は巧妙になった。提言が実は自らに都合のいい我田引水的なものになっているのを恥じたのかもしれない。今は自らの提言は控え、国の機関である規制改革会議の衣を繕って注文をつけ出した。それが今回の農協・農業委・農業生産法人に対しての提言である。
 ところが、世の中が少々変わり、恐れ多い内閣府の機関の提言のせいか、農林水産省は少しも反論していない。へたに咬みついたりすると、例の内閣人事局(官邸)から睨まれることになり、自らの人事に差し障りが出ては大変とおじけづいているのかもしれない。これが今霞が関を覆っている暗雲である。そこで野党議員という自由の身の私(?)が、怖気づいた与党議員や官僚に成り替わって30年前の昔とった杵柄で逐一反論してみた。かなり荒っぽいと思われるが、今後のあり方の検討の一助にしていただければ幸いである。(便宜上の②農業委員会をシリーズ5とし、それ以外をシリーズ6としてお届けする)

(注)×は反論、〇は妥当、◎は私の提言

②農業委員会等の見直し

ア.(選挙・選任方法の見直し)
a.公選制の廃止
 ×選挙以上に透明なプロセスがないのに、透明なプロセスにするために選挙制度を廃止するのは本末転倒
 ×農業委が名誉職となり選挙をやらないので、市町村長の選任にするというなら、報酬が少なく無投票が多くなった市町村議会議員も市町村長の選任にしてよいのか。選挙で選ばれることになっていることが、民主的なプロセスを担保している。
 ×一般人が対象の教育委員会と同レベルで考えられているが、私有財産である農地の権利に係る業務を行う農業委員は、市町村長の選任に馴染まない。それでは職員と変わらないのではないか。
 ×選ばれる農業委員も責任と自覚を持つが、選挙で自らえらぶからこそ選んだ者である農業委員の決定に従ってきたと思われる。市町村長が勝手に選ぶとなると、この選ぶ側の責任がなくなり混乱が生じるのではないか。

b.構成員の限定
 ×地域の自主性を重んずると言いつつ、農業委員の選挙は認定農業者の中からの選任せよというのは新たな規制の導入であり、自主性を削ぐことになる。自己矛盾
 ×農地の集積には貸し手(出し手)と借り手(受け手)の双方があり、受け手の大規模農業者や認定農業者ばかりだと調整が進まない。
 ◎むしろ大多数を占める出し手(零細兼業農家)の代表こそ多く入れておくべきではないか。
 ×利害関係なく公正な判断が出来る者とは具体的に何を指すのか不明であり、上記同様に大きな介入ではないか。 
 ×むしろ市町村長の息のかかった不正な者ばかりが論功行賞的に選任されてしまうのではないか。農地調整に公平性を欠き、農業委員会が役割を果たせなくなるのではないか。
 ○女性・青年農業委員を増やすのはよいが、これと認定農業者が過半数とは矛盾するのではないか。

c.人数の半減
 ×今、農業委員の数が多すぎて問題なのか。農業委員の人数を減らせば、機能的に対応できるという論理は理解できず。
 ×農業委員の数も半分。農業委員の半分を認定農業者にと、この提言は、根拠がなく、半分が多いが、どういう基準から「半分」を出してくるのか。
 ×農地利用の最適化や遊休農地対策等の強化といい、業務が増えるのに、人数を削減して業務を遂行できるのか。
 ◎平成の大合併により、地域との密着度合い薄くなっており、今は逆に100~200haの集落単位ごとに農業委員を配置することを基準にして数を増やすべきではないか。
 ○(月3万円程度の)報酬を引き上げるのは当然。多様で精神的にも疲れる業務に対しあまりにも薄給すぎる。

イ.(農業委員会事務局の強化)
 ○人事のサイクルが短く、現場の行政のプロが育っていないのは、農政分野に限らずどこの市町村(ないし都道府県)でも共通、従って複雑な農地問題についても人事サイクルを長期化し、プロを育成すべし。
 ×平成の大合併により、細やかな対応ができていない。大きな市になり過ぎたところも多くのそんな市は共同設置など不要。
 ◎もし、本当に共同設置するなら、各市町村の事務局を農業会議の下部組織とし、複数の市町村にまたがる事務局を各県に5から10置くことで効率化できるいのではないか。
 ◎農地行政のプロの育成を行い、人事も農業会議を中心にしてやったらどうか。

ウ.(農地利用最適化推進委員の新設)
 ×農地利用が大切と言いつつ、格下げした農地利用最適化推進委員に担当させるのは矛盾ではないか。恣意的に選任した農地利用最適推進委員のほうを思いのままに使うとしたら、とんでもない改悪。
 ×農業委員を減らしておいて、新たな農地専門の委員を創設するのは、屋上屋を重ね煩雑になるだけ。(農地が活用されていないことをあぶり出して、民間企業に最適利用させたいとする意図だけが先行、具体的提言の中で最も卑しい拙劣な提言)。
 ×農業委員ですらなり手がいないのに、一体いくら報酬を出して何人設置するのか。
  (企業の意見ばかりを代弁する者を多く任命し、農地を好き勝手に所有しようというのか)
 ×選挙で選ばれた農業委員ですら、個人の私有財産に絡むことには入りにくいのに、格下げされた農地利用最適化推進委員はなおさら入りにくく、業務は少しも進まないのではないか。
 ×不耕作地の増大は、農業委員や農地利用最適化促進委員により防げるのものではない。(農業自体の活性化により、儲かるようにすれば、自ずと農地を耕すことにつながる。)

エ.(都道府県農業会議・全国農業会議所制度の見直し)
 ×同じ趣旨と思われる(農協)中央会制度の廃止と比べ、何をどう進めるのか全く理解できず。ごちゃごちゃ難癖つけているだけで、今の仕組みの何がいけないのか、今後どう進めていくのか全く読み取れない。
 ×イの提言にある複数の市町村による事務局が県レベルに達したのが都道府県農業会議ではないのか。
 ×農業委員はせいぜい数年交代し、かつ行政事務は経験不足。こうした集団にしっかりした事務局が必要なのは常識。それをネットワークだけですますなどというのは全く的はずれ。
 
オ.(情報公開)
 ×今でも業務量が多いのに、農業委員を半減し、事務局を縮小して農地の利用状況調査を十分にできると思っているのか。
 ×新規参入する企業がたやすく農地情報を得たいがために、農地の利用状況を調査し、公表しろというのか。
 ×農業委員会にろくな報酬も与えず、監査だけ強化するというのか。

カ.(遊休農地対策)
 ×域外参入や農外企業だけを特記し、農業委員会をそのために働かせようとしている。
 ×農地中間管理権というわけのわからない新しい用語を作って複雑にするべきではない。
 ×利用意向状況調査とは何か。耕作する者がない農地をあぶり出して、早くはき出させるための資料作りをさせるのか。(悪い意図があまりに露骨に出すぎている。)

キ.(違反転用への対応)
 ◎新規参入者・農外企業が転用違反する可能性が高いので、これこそ重点調査し、利用状況の報告義務を課すべし。
 ◎農業委員会自体が原状回復の指導・勧告や処置を行えるようにして、即応できるようにすべきではないか。
 ×国や都道府県がさぼっているのに、その監視役を農業委員会に押し付けるつもりか。
 ◎国と都道府県が各地にみられる農外企業の産廃処理への違反転用の原状回復命令を強化させるべきではないか。
 ◎農業委員会の仕事をこれ以上増やすべきではない。増やすとしたら人数も増やすべき。

ク.(行政府への建議等の業務の見直し)
 ×農業委員会は農地問題だけを扱う機関(農地委員会)ではない。
 ×農民がますます少なくなる中で建議をやめたら、農業現場の声が届かなくなり、霞が関農政に堕していってしまうのではないか。
 ◎商工会議所にも、同様の役割があるのは、わざわざ法律からなくすことはない。

ケ.(転用制度の見直し)
 ×今までも十分円滑に転用が行われすぎたのではないか。(もっと言えば、野放図に転用されてきた)その結果、先進国ではまれにみる虫食い状態になってしまったのではないか。
 ◎ヨーロッパ諸国は転用が日本とは比較にならないほど厳しく規制されている。むしろ、転用規制を強化すべき。
 ◎狭小な農地の日本は、農地を守ることを最優先し、農業関連施設は、農地でなくなった遊休地に造るようにすべし。

コ.(転用利益の地域農業への還元)
 ○欧米では転用利益(capital gain)は個人の所有者にいかず、地方公共団体や国の収入となり、すべて公的に使われることになっている。つまり、農地(土地、海等のの自然)は万人のものであり、転売から利益を得ることは厳しく制限されている。
 ○農地は耕されてこそ農地であり、耕されなくなったら、別の耕作者に渡るので、ヨーロッパには原則として遊休農地(不耕作地)は存在しない。