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TPP交渉の行方シリーズ21 アメリカでは無視されるTPP ―重鎮はTPPは死んだも同然と指摘― 14.09.12

<最終処分場の目学問は世界一>
 私は、9月6日、2週間に及ぶ、独・スイス・アメリカの放射性廃棄物の最終処分場視察から帰国した。国会議員になって10年余、党や議会の援助なしで海外出張したのは、三原朝彦議員の強い勧めで日米韓国会議員会議で近くの韓国に1回行っただけだったが、今回は私費による世界一周の長期出張となった。経費は百万円を軽く超える。地元の活動を圧倒的に優先して、他は節約してきた私にとっては史上最大の出費(?)である。
 別稿で報告するが、世界中どこも最終処分場を造らずに原発を稼働させており、世界が考えなくてはならない大問題である。少しでも先をいっている国々の状況を見て歩き、政策立案の糧にするための必要経費である。私は、今回の出張で多分同行した増子輝彦参議院議員(民主党)と富田茂之衆議院議員(公明党)に次ぎ、世界の現場を最もよく見知る国会議員となった。

<民主党の重鎮大物議員のTPP見通し>
 その最後の視察地、ハンフォード最終処分場(ワシントン州)は、私の留学地シアトルから行かねばならず、留学(ワシントン大uw)の地への4回目の訪問となった。この機会をとらえて民主党の重鎮議員で、日米韓議員交流会議のアメリカ側の会長を務める、ジム・マクドーモット民主党下院議員(ワシントン州の第7地区)とTPPについて意見交換をしてきた。12年4月、櫻井充経済連携PT座長と吉良州司事務局長とともに訪米・加した際にシアトルに立ち寄って以来、2年5ヶ月ぶりの訪問だった。McDermott.jpg
 マクドーモット議員のTPPについての見通しは以下のとおりだった。

〇アメリカでは11月の中間選挙がありTPPは15年1月まで何も動かない。
〇それ以降もほとんど動かないだろう。なぜならば、オバマ大統領は政策を実行する力が残っていないからだ。
〇共和党は、オバマの得点になるようなことは絶対に認めない。なぜならば、15年にはもう16年の大統領選を見据えた政治になるからだ。

<先を急ぐ日本の愚かな理由>
 これに対し私は、「日本では安倍首相が第3の矢の目玉として、TPP交渉の妥結を急いでおり、必死だ。TPPがまとまれば経済成長するとして、国民に期待感を持たせて高い支持率を維持せんという思惑がある。9月4日に内閣改造が行われたが、担当の甘利大臣は留任し、農林水産大臣には自民党のTPP対策委員長として政府寄りの妥協を重ねた西川公也氏が就いた。日本は合意したくてうずうずしている」と述べた。

<安倍首相は米議会に影響なし>
 しかし、マクダーモット議員は全く取り合わなかった。
〇甘利TPP担当相も安倍首相もアメリカの議会には何の影響力もない。民主党議員もTPA(貿易促進権限授権法)を通す気はほとんどない。
〇TPPを政府間で年内合意とかしてもアメリカ議会は通すことはない。
〇あなたのバッジとネクタイが効いているのか知らないが、TPPはもうアメリカ議会ではどうにもならない。
 もしマクダーモット議員のいうとおりだとしたら、我々が頑張って反対してきた甲斐があったというものである。私は、最後に例の“Stop TPP”ネクタイをプレゼントして、記念写真をとった。 私が、エンジ色なのに対し、紺をあげたところ、行政色が違うのかと問われたので、「残りが多かっただけだ」と答えると、「せっかくだからオバマにプレゼントするか」と冗談を返してきた。

<秘密交渉で何も伝わってこない理不尽>
 アメリカ議会では全く無視されているのに、日本の新聞は、9月のハノイの首席交渉官会合、10,11日の日米実務者協議、事務レベルの協議が行われるとか、11月のAPEC前の合意だとか、いろいろ記事になっている。しかし、国民にはその内容が少しも伝わってこないので関心の持ちようがない。政府からすれば、秘密交渉にして経過を全く知らせないことが功を奏していることになるが、国民からするとたまったものではない。日本には特定秘密保護法ではなく、重要政策情報公開法こそ必要なのだ。
 日本の国会議員は静かだが、アメリカの議員は黙っていない。この秘密交渉にもカンカンであり、これもTPAを通さない大きな理由の一つになっている。

<ムダが多いTPP交渉、進まぬ合意>
 安倍首相は地球儀外交とやらで、1ヶ月に1回以上海外出張し首脳外交を楽しんでいる。肝心の中国と韓国は相変わらずほったらかしで、難問を抱えない国だけに愛想を振りまいている。原発輸出といういかがわしい「死の灰のセールスマン」をやっている。モラルの点からも経費の点からも首をかしげざるを得ない。しかし、それよりももっともったいないのが、進めているという格好付けのために繰り返されるTPP交渉である。
 9月10日の東京新聞では、1面トップで「TPP交渉で旅費3億5000万円、 会合頻繁に、妥結見えず膨張」と報じている。ただ、この情報開示も日本が本格参加した2013年の7月から14年の3月までの8ヶ月余のことだけで、事前の情報収取会合や4月以降の6回会合(例えば直近のハノイの首席交渉官会合)は入っていない。かつ外務、経産、農水、内閣の4府省だけの合算である。
 日本はいつも大交渉団を組んでいくが、大半は随行・お付である。1人あたり平均60万円近くかかり、最高は日米首脳会議随行の農水省幹部の米・蘭出張の283万円で、甘利大臣の84~163万円を上回ると指摘されている。これこそ壮大なムダである。
 かくいう私も13年8月にブルネイ、10月インドネシア(バリ島)、14年2月シンガポールと3回も党派遣で行っている。こちらもきちんと交渉を進めているかどうかの監視役と各国議員団との意見交換ぐらいで、交渉進展に役立っているわけではなく、我ながら忸怩たるものがある。これに農業関係団体・マスコミ等の出張旅費を加えると、ますますこの額は膨らんでいく。日本の大代表団という悪弊は是正していかなければならない。

<弱者の味方の民主党重鎮>
 ここで、マクダーモッド議員を紹介しておかなければならない。その経歴、そして日本びいきの理由に感心するからである。
 マクダーモッド議員は、アメリカでは珍しく医者議員である。日本では、医師は落選しても食べていける自営業者でもあり、最近とみに増えているが、アメリカではそんなに多くない。
 マクダーモッド議員は、シカゴ生まれ、家族の中で初めて大学に通い、イリノイ大とuwの医学部で学んだ。その後、海軍に入りベトナム戦争から戻った兵士の精神科医として働き、1971年ワシントン州の議会議員、上院議員となり、1987年には再びザイールに従軍医師として赴任している。その後1988年シアトル(第7区)から下院議員に立候補して当選、以後13期26年務めている。下院のThe House Ways and Means Committeeの重鎮であり、常に弱者の味方に立つ典型的民主党議員である。

<親日派の理由>
 その他に特筆すべきは、日系アメリカ人への贖罪意識に端を発する支援である。
 イリノイ大の医学部時代の同期に親しい日系人がいた。卒業間近になって、その日系人学生から戦争中の強制収容所のことを聞かされ愕然とした。それ以来こんな愚かなとことをしたアメリカは、日系人に罪滅ぼしをしなければならないと心に決めた。
 日本の政治家の中で、似たような事例を探すと山中貞則衆議院議員にたどりつく。本土の犠牲になり焦土化し、その後も米軍基地の大半を受け入れている沖縄に対し、山中議員はずっと心血を注いで罪滅ぼしをし続けていた。
 この親日の延長で、日米間の議員交流に力を注いだ。そして、上記の日米韓議員交流のアメリカ側の会長を務めている。シアトルの選挙区では、日系人の催し物には必ず顔を出している。2年前に行った時にちょうど桜の頃で日本祭りが開かれており、二度三度マクダーモッド議員と顔をあわせることになった。

<日米韓国会議員交流会合への厳しい出席命令>
 その時に、私はワシントンで開かれる上記の日米交流の議員会合になぜ来ないのか、と叱られてしまった。実は、私は日本で開かれる時は大体出ていたし、前述のとおり、韓国にも行っている。しかし、お金のかかるアメリカには一度も行ったことがなかったからだ。
 それに対し、マクダーモッド議員は、①政権与党になったのに民主党の参加が少ないのはよくない。②日本のアメリカでの存在は影が薄くなっているのでこの交流を大事にしろ。③大体、民主党からは見識のある政治家があまり参加していない。④松田 岩夫(元参議院議員)や大野功統(元衆議院議員)のように毎回参加しろ、と厳命されてしまった。
 私は、日米関係のつつがなきを祈り、日系人に対しことの他気を使ってくれ、かつ私のようなその他大勢の議員に対しても真剣に忠告してくれるマクダーモッド議員にそれこそ惚れ惚れした。その後、必ず出席するつもりでいたのに1回は私の不注意で、もう1回は関係者の無粋な対応により、2回続けてワシントンには行けず、重大な約束違反をしてしまった。今日は、その償いも含めた訪問だった。