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TPP交渉の行方シリーズ その24 米中間選挙の結果、TPPは漂流か決裂か-14.11.09

<6年目の中間選挙は与党ばかり>
 11月6日の新聞各紙は、民主党の敗北を一斉に伝えている。上院も下院も野党共和党が多数を占め、オバマ政権は求心力を失い、レームダックになりつつあると解説している。しかし、これは真実ではない。
 民主主義国の盟主をもって任じるアメリカ国民は、選挙という手段を通じて政権をうまくチェックしている。特に2期目の大統領の中間選挙は、権限を持ち6年経って暴走の気配が生じたり、倦怠感が生まれたりしがちな大統領に対して警告を発すべく、大体は政権与党が敗北しており、与党が議席を伸ばしたことはほとんどない。(例外は、クリントン政権の6年目に下院で共和党が3議席減らしたことだけである)

<有権者のチェック機能の日米格差>
これは気付かれていないが、日本の国政選挙でも2回続けて政権与党が議席を伸ばすことは稀だった。ところが、12年末の衆議院選挙と13年7月の参議院選挙は2回連続して与党自民党が大勝している。民主党政権があまりにひどかったとはいえ、アメリカ人と比べて日本人の方が時の政権をチェックする精神に欠けているせいである。しかし、安倍政権が発足して2年弱の今になり、大半の国民は自民党を勝たせ過ぎたがために、安倍政権が好き勝手放題をしていると気付いているはずである。従って、今総選挙をしたら自民党が3回連続議席を伸ばすことはいくらなんでもありえない。ただ、巷間報じられているとおり、野党共闘ができないままなら、3連勝されてしまうおそれがある。

<アメリカのファスト・トラックに左右される世界の交渉>
 TPPは中間選挙前は動かなかった。いつもアメリカの選挙により国際交渉が大きく左右されてきたが、今もまた繰り返している。どの国も選挙を意識して政治が行われるが、アメリカの場合はその度合いが強い。私は、農林水産省時代、ウルグアイラウンドがアメリカのファスト・トラック(一括承認権限)の期限により交渉日程が、かなり振り回され何度も苦い思いをさせられた。その経験から、交渉の行方を占う時はいつもファスト・トラックとの関連を最優先してみてきた。

<各紙はTPP交渉の加速と予測>
従って、私は、ファスト・トラックのないTPP交渉の停滞も、共和党の勝利と同様に織り込み済みである。それでは、今後どうなるか。私も、何をしでかすかわからないアメリカのことであり、絶対こうなるという予測はできない。ただ、今までの経験から得られた知識をもとに占ってみる。
これまた各紙は、共和党により自由貿易志向が強いから、今まで民主党が反対して通さなかったファスト・トラック(今はTPA“貿易交渉促進権限法”)が共和党多数の上で両院ですんなり通り、TPP交渉が速まると予測している。こうして各紙に「TPP加速」との見出しが躍っている。
 
<加速するのはアメリカの強硬な要求>
しかし、これは正確でない。加速するのはTPP交渉ではなく、企業寄り農業生産者寄りの主張を全面に出す共和党の「関税ゼロ要求」にすぎない。その結果、USTRは妥協の余地が少なくなり、日本もますますアメリカの過大な要求を受けられなくなってしまう。フロマンUSTR代表は、これを予測したのか(あるいは、強い態度で対日交渉に臨んでいると有権者にアピールするためか)、10月の交渉で、米の輸入枠の拡大、乳製品の関税引き下げ等今までになかった要求をし出したと報じられている。さもありなんである。今まで交渉を積み重ねてきたのに今更何を言い出すのか、というのが日本の感覚であるが、アメリカの交渉担当者にそんな常識は屁の河童である。

<交渉は停滞し、漂流するのではないか>
 まず、TPAが通るか否か。民主党はリード上院院内総務が反対していたことも、共和党が自由志向が強いことも事実である。それに対しマコネル共和党院内総務は、自由貿易交渉では一致できると、さっそく誘い水を出している。それでは、共和党が両院を押さえたので、民主党のオバマ大統領にTPPの交渉権限を与えるTPAを通すかというと、事はそう単純ではない。私は、16年の大統領選挙を睨み、敵方民主党の大統領に権限を与えることはないのではないかと思う。そうなると、もうレームダック状態になったオバマ政権と交渉して妥結しても、国会で承認を得られないなら各国は今のオバマ政権と交渉する意味はなくなってしまう。見えてくるのがWTOと同じ「漂流」である。この場合、日本はTPP交渉から脱退するのがベストである。

<TPAが通ったら日本は脱退しか途はなし>
 仮に、アメリカ議会がTPAを通したら、他の何かの重要な対立する政策(例えばオバマケアや移民政策)で大妥協をした証しである。その時は、オバマ大統領はTPP交渉では共和党に完全に振り回されることになり、よく強硬な主張をしだすことが目に見えている。例えば、農産物関税問題では、原点に戻った関税ゼロを主張しだし、日本側はとても応じられなくなる。日本は13年2月24日の嘘だらけの日米共同声明(聖域は確保され、重要5品目は守られるとの約束)が果たせなくなる。この場合も交渉は進まなくなり、同じように漂流しかなくなる。
 APEC首脳会合が11月10、11日、北京で開催され、首脳会合も開かれる。首脳会合前の8日にTPP閣僚会合も開かれた。8日夜に多分、首脳会合前に何もしないわけにはいかないから形式的に開くだけだろうとこの原稿を書いていたら、北京でも何の合意も得られなかったとニュースが入ってきた。公式に次の会合日程を示せず、フロマンUSTR代表だけが、15年2月合意を目指すとまたまた希望的観測を述べている。またいつもの繰り返しである。
民主党は今までTPP閣僚会合には必ず1人は派遣していたが、形式だけの今回の会合には派遣しなかった。これで党費が少し節約できたことになる。

<オバマ与党民主党の敗北と12年末衆院選の民主党敗北の類似性>
 ついでにオバマ大敗北を日本の民主党の12年末選挙の大敗北には、あまりの熱狂的期待後の期待外れによる敗北という点で瓜二つである。黒人初の大統領と初の選挙による政権交代、どちらも期待が大きすぎたのである。それが、失望に変わり、ついに怒りとなってしまったのだ。期待が大きかった分だけ落胆が大きいということである。違いは、オバマはまだ政権の座にあるのに対し、我が民主党は衆議院56名、参議院も合わせ100名余の小政党に成り下がってしまったということである。
 冒頭述べたとおり、アメリカでは両院とも与党が多数を占めることはほとんどない。ニクソン時代はずっと少数与党であり、レーガンの時代も下院はずっと少数与党だった。クリントン時代も3年目以降ずっと両院とも少数与党だったが、それでも実績を上げている。オバマ大統領も開き直って、アッと驚くような大胆な政策を打ち出してくるかもしれない。