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2014年11月19日

大義なき年末解散は国民には大迷惑―争点は強権的な安倍政治の継続か否か―14.11.19

<十分予測できた年内解散>
 突然の解散と言われてはいるが、私は自民党がこの秋には解散の用意を着々としているということに気が付いていた。なぜかと言うといずれも定員3の5つの県が1人減員となっているが、佐賀県では今村雅弘、高知県では福井照を比例区にまわし、徳島県でも新人である福山守を比例区にまわし、その代わり1期生の男性ではただ1人であり政務官として優遇している。ちょっと遅れて山梨でも中谷真一が比例区にまわり、女性の宮川典子と堀内詔子が小選挙区で戦うことで決着しており、残るは福井県だけになっていた。これに対し我が民主党は現職議員がいないにもかかわらず未調整のままだった。
 もうひとつが、情報操作である。評論家やマスコミを使って、年内解散もあるということをまことしやかに流していた。週刊誌もそれに飛びついて、週刊文春などは年内解散を前提として早々と当落予想を掲載したりしていた。だから少なくとも私は去年の段階から自民党が分裂気味の野党を叩きのめすためにも、そして自らの窮地を救い(政治とカネなど)、党勢退潮に歯止めをかけるため、不意打ち的解散に打ってくるということが予想できた。

<付け焼刃の民主党>
 私は、13年秋に、民主党の内部体制のあり方を議論する場で、3回連続で早くなるべく多くの立候補者を用意すべきだということを主張してきた。
 落選議員はもちろん、いろいろな経緯があって党を離れた人たちも含めて、落ち目の民主党で出直したいと言っている人たちには、熨斗を付けて総支部長になっていただくべきなのだ。ところが、それから1年余さっぱり総支部長決定(公認選定)が進まず、解散を取り沙汰される現時点でも130余しか決まっていない。つまり、野党第一党としての責任を全く果たしていないのだ。
 この秋に幹部体制が変わったので、責任者に同じように進言をしていったが、それから1ヶ月以上経っても何も進展しなかった。そして、枝野幹事長が少なくとも150は立てなければと発言し、今にわか仕立で公認を急いでいる。まさに付け焼刃である。

<突然流れが変わった11月上旬>
 解散風は解散の権限を握る安倍首相が日本を発ってから、もっと正確に言うと11月6日、7日(金)から急に吹き荒れ始めた。週末を過ぎ、週明けの10日(月)、11日(火)には公明党が一足先に選挙準備態勢に入り、解散の流れはほぼ確定的な状況になった。地方創生関連法等重要法案がほとんど成立していないというのに、衆議院議員は皆が浮足立ち始めた。
 私が国会議員になってから今回が5回目の選挙となるが、前の野田自爆解散も何の大義もない解散であった。それからするとこじつけ解散以外の何物でもなかったが、2005年8月の小泉郵政解散はそれなりの大儀があった。つまり、今回はそれほどひどい解散だということだ。

<原発再稼動、TPP、集団的自衛権こそ解散の是非を問うべし>
 衆議院の任期満了は4年であるが、平均的な任期は2年半から3年となっている。こんなことを嘆いても始まらないが、小泉選挙の時は1年8ヶ月、今度は2年と、任期半ば解散に2回も出くわすというのは不幸なことである。これでは安定した政治はできない。一番いけないのは後で触れるが、首相の専権で簡単にできる解散(いわゆる7条解散)という仕組みである。
 私は本当に解散をするなら、原発再稼働をするかしないか、TPPを受け容れるか受け容れないか、集団的自衛権の行使を容認するかしないか、このようなことこそ最大のテーマではないかと思っている。

<安倍暴走政治の継続か否かを争点とする>
 しかし、安倍総理は消費増税の先送りで信を問う、と言っている。いつも対応の遅い民主党が11月14日(金)に幹部会を開いて消費増税は凍結でいいという結論に達した。その前に生活・みんな・維新が3党共同で凍結法案を出しており、ほとんど全ての政党が先送りということになる。その前に国民の大半(7~8割)が再度の消費増税に反対しているので、消費増税先送りは何の争点にもならない。
 安倍首相は11月118日に意気軒昂で解散声明をしたが、私には空虚な戯言にしか聞こえなかった。解散の訳は国民にはチンプンカンプンで全く分からないままである。今回の解散は、アベノミクスの是非でも消費増税の是非でもなく、傲慢で強引な安倍政権を継続させるか否かを争点とする以外にない。多分国民の大半はこんなでたらめな解散は良くないと思っているはずである。
 しかし、問題の野党がバラバラでは困る。あまり詳らかにはできないが、私は野党が大同団結していくべきではないかと思いいろいろ水面下で動いている。これもあと1週間の勝負となるとなかなか理想どおりには進まない。信頼できる野党が必要なのはいうまでもない。

<大好きな憲法改正は7条解散をなくすことから始めるべき>
 安倍首相の悲願は憲法9条の改正である。私はそちらの方も反対であるけれども、もし憲法を改正するなら、まず手始めにこのいい加減な7条解散(内閣の助言と承認による解散)に制限を加えることから始めてほしいと思っている。
 日本国憲法を素直に訳すと憲法第69条の下、衆議院に内閣不信任案が提出され、不信任案が通ったか、内閣信任案が否定された時に内閣が総辞職をするか解散することを予定している。つまり内閣が壊れるか、衆議院議員が身分を失うか、のるかそるかの大勝負が本来の姿である。つまり、内閣の暴走を抑えるための不信任案であり、議会が強くなりすぎて内閣の邪魔ばかりするのを抑えるための解散なのに、日本では首相の権限ばかりが強くなりすぎているのだ。それといくら議院内閣制では「首相の大権」や「伝家の宝刀」を与える必要があると言いっても、日本の場合あまりに恣意的に使われているのではなかろうか。今回の理由のない解散がその典型である。
 政治学者は数多くいるが、私はこの歪んだ制度を問題にした者をあまり知らない。私は、時の政権与党が自分の都合のいい時に全衆議院議員の資格を剥奪することが政権強化につながり、政権交代が起きにくくしてしまったと思う。

<イギリスとドイツに学ぶ>
 日本の議院内閣制は多くをイギリスに学んでいる。その本家では、とっくの昔に首相の権限が大きくなりすぎ、頻繁な解散・総選挙が目に余ったことから、任期固定法により、首相の解散権に制限が加えられ、下院議員の任期の5年が基本的には守られることになった。例外として、内閣不信任決議案が可決された時だけ、首相は解散権を行使できる。
 それよりも先にドイツでは、連邦議会下院は、野党提出の不信任案が可決した時か、政府提出の信任動議を否決した時しか解散できなくなっている。
 このような英独の先例に学ばないのはどうしてか不思議である。

2014年11月12日

シドニーのTPP閣僚会議 -14.11.12

(党への報告を先にしてから、ブログにアップしなくてならならなかったため、遅くなってしまいました。)

 10月25日~27日の3日間、シドニーにおいて5か月ぶりにTPP閣僚会合が開催され、出張した。日本の関係者も今会合を山場と位置づけ、多くの農漁業関係者やマスメディア(150人中106人が日本から)が駆けつけた。自民党からもTPP対策委員会の関係者の3人(森山裕、宮腰光弘、吉川貴盛)が出張した。
 主催国オーストラリアのロブ貿易・投資相は「最終段階に入った交渉で『基本的合意』をめざして各国の閣僚が真剣に取り組むように期待する」と異例の事前コメントを出した。しかし、新聞報道されているとおり、知的財産(薬の開発データーの保護期間等)、国有企業(優遇措置の廃止と猶予期間)、環境(生態系の保護等)の分野で日米と新興国との間に依然として対立点があり、6分野13項目でも争点がまとまらなかった。豪が大筋合意から一歩下がった基本的要素合意を目指したが、それすら実現することが出来なかった。
 参加各国は、日米交渉の決着が先だとみているが、甘利・フロマン会談は3日間で最終日(27日)に約50分間行われただけで、ほとんど進展がなかったとみられる。
 ただ、「秘密交渉」ということを理由に、交渉内容は、26日午後のステークホルダー(関係者)会合(篠原出席)と27日の共同記者会見(記者のみ対象)以外は説明が行われず、今回どの程度進展したのか等について相変わらず一切不明である。ルール作りを加速するためには日米の農産品を巡る関税競技の決着が欠かせない中、アメリカが乳製品等の関税について要求したと新聞報道された。また、ステークホルダー会合で質問してもほとんどわからないのはいつもどおりだった。重要品目の聖域確保を求める衆参農林水産委員会決議が守られているのか、少しも見当がつかないのもいつもどおりだった。
 11月の北京のAPEC閣僚会合に合せ、11月8日にTPP閣僚会合が持たれ、また、10日にTPP首脳会合も開催されたが、次回の日程に言及することすらできなかった。
 今回の収穫は、会合の合間の意見交換である。その概要を報告する。

(1) サンダー・レビン米下院議員(民主党、ミシガン州、下院のCommittee on Ways and Meansの重鎮、弟も上院議員)
・名うての自動車議員で、アメリカが自動車について妥協しないように11月4日の中間選挙の1週間前にもかかわらず、監視に来ていたものと思われる。またこのことが何よりの選挙運動になっている模様。(首藤信彦前衆議院議員同席)

・(徳永エリ参議院議員の「米国議会がTPA法案を通じてTPP協定への反映を目指す事項と我が国国内への影響に関する質問主意書」の英訳を渡して、レビン議員の主張する通貨操作(Currency manipulation or intervention)について意見交換せんとするもほとんど反応なし。)
・(そもそもTPPについてほとんど知識がなく、私の方ら環境問題、労働問題等について説明したところ、はじめて聞いたような反応。)
・(レビン議員が少々遅刻した間に、議会スタッフのジェイソン・カーンズ(前USTR)と意見交換。議会スタッフなり秘書が、自動車業界の意向を受け、大物議員の主張として上記通貨操作を主張しているとみられる。)


10月27日、ほとんど見るべきものがないまま、TPP閣僚会合が閉幕した。何らかの進展があった場合、ブルネイ会合以来交流を続けている、NPOのメンバーと今後の対応について意見交換する予定だったが、前述のとおり、シドニー会合前とほとんど状況が変わらなかったので、27日の夜10時までに済ませることができた。
 出張手続開始が遅れたため、帰国に都合のよい便は既に満席となっており、10月28日深夜発が最速で変更が効かない格安チケットだったため、28日1日空白が生じた。27日午後1時の何の内容もない共同記者会見の後直ちに、28日のキャンベラでTPPや日豪EPAの関係国会議員とアポイントとりを開始した。幸いなことに、オーストラリアも国会開会中であり、急なことであったが以下のとおり3党の主要な関係議員と農業大臣のスタッフと意見交換することができた。

(2) ブルース・スコット下院議員(国民党Nationals、下院副議長)
・私自身農民であり、我が党は農業、農村、農民の支持を受けている。
・日豪EPAは、豪の農民にとっては喜ばしいことである。ただ、日本の農民を苦しめることは絶対に避けないといけないと思っている。だから、牛肉と乳製品以外は除外した。
・自由貿易はある程度必要だと思う。現に私はトヨタの大きな車をつい先日買ったが、本当に性能がよい。だから、日本人に我々の農産物を買ってもらいたい。
・TPPについても、我が党はEPAと同じく、日本の農民のことを考えているというスタンスで臨んでいる。
(3) ピーター・ウイッシュ ウイルソン上院議員(緑の党Greens、貿易委員)
   ・ただ自由貿易を全面的に否定しているわけではないが、TPPは反対している。
   ・貿易協定や経済協定は、経済成長や金儲けのことばかりが優先され、環境はないがしろにされる。
   ・特に、食料の安全基準などは低く低くなっていく。TPPも秘密交渉とやらで内容はよくわからないが、その傾向があるので、TPPには反対せざるをえない。
   ・(食べ物の地産地消、旬産旬消、フードマイレージを説明)
    確かに基本的な食べ物は、なるべく近くで作り、直ぐ食べるのがよい。自分の地元のタスマニア島でもそれを売り物にしているレストランがある。近くで生産された食料が体に誰もがすぐわかることであり、食料は自由貿易すべきでないという主張は全く同感だ。
   ・緑の党は、左翼なりリベラルとみなされることが多いが、私は右でも左でもなく第三の道だ。
(Stop TPPネクタイを所望されたのでプレゼント、地元のタスマニアへの訪問を促されるとともにおいしいワインを大使館に届けておくと返礼)
(下院(150)は完全小選挙区制のため1名のみ、上院(76)は州ごとの比例代表のため10名を占め、地方の意見を代弁している)

(4) ケルヴィン・トムソン下院議員(労働党Labor、貿易委員会筆頭理事)
   ・オーストラリアの政策はいつもかなり農民・農業サイドの声が過剰に反映される傾向がある。日豪EPAもその一つだ。
   ・私も我が党も働くものの立場を最優先して政策を考えている。その点で、オーストラリアがいつまでたっても農産物や石炭・鉄鉱石の一次産業ばかり頼るようなのは好ましくないと思っている。
   ・(日本への輸出は、金額ベースで、農産物など6%ぐらいで、他は鉱物資源ばかり、私は元駐日大使のマクレーン氏には、なぜ鉄鋼ぐらいはオーストラリアで造らないか不思議だと指摘して議論したことを紹介)
    製鉄所だけでなく、自動車も三菱が撤退することになっているし、ホールデン(GM)もトヨタもそれに続く。私は豪を1次産業の国のままにしてはならず、仕事を造るためにも第二次産業も振興するように声を上げている。
   ・人口が2200万人で少なく、マーケットとしては小さすぎるのが問題だが、だからといいつつ工業品を日本や韓国から輸入するばかりの国であってはならない。
   ・豪日EPAはどこも反対していないが、豪韓FTAは国会の承認が相当遅れた。ISDが入っているからだ。そこで、日豪FTAよりも先に批准したかった。
   ・豪は、豪米FTAでもISDを拒否したが、今、豪香港投資協定の下、フィリップモリスの子会社が、タバコの広告禁止に対して豪政府を訴えている。アメリカは訴訟大国であり、これを悪用されることは許してはならない。
   ・(米韓FTAで法曹界を中心としてISDが韓国の主権を損ねると大問題になったのに、なぜ韓国はISDにこだわったのかと質問したのに対して)
    豪韓FTAにISDが入らなかったら、国内の反対者から米韓FTAからもISDを削れと言われるのが恐かったのだろう。アメリカはそう簡単に再交渉には応じないからだ。
   ・アメリカは、強引に自らのルールをTPPのルールにしようとしており、これをやすやすと受け入れてはならない。

(5) バーナビィ・ジョイス農業大臣(自由党 Liberal)のスタッフ メリンダ・ハシモト,ジュディス・ラファン
   ・日本は農業分野でも豪に投資をしており、日豪EPAはこうした関係を深めることになり大歓迎している。
   ・牛肉の関税は下がるが、日本には高級牛肉があり、十分に差別化ができ、日本の農家を困らせることにはならない。
   ・(日本の牛肉のかなりの部分は、乳用牛の廃牛であり、この部分はオージービーフと完全に競合する)と反論
   (政治家ではなく、ありきたりの意見交換となった)

 私が突如訪問した、10月28日は、丁度日豪EPAが国会に報告された日と重なった。私が、その夜行便で帰国した後直ちに外務、農林両委員会の連合審査で質問に立つことを話すと、いずれの議員も喜んで素直な意見交換ができた。今後も、このような議員外交を続けていくことが必要だと痛感した次第である。

2014年11月11日

政治家の東京一極集中もひどいが、総理の東京一極集中はもっとひどい-土の匂いのする政治家が激減する中で本当に地方創生が出来るのか-14.11.11

 私は地方創生特別委員会の委員として、11月5日地方創生関係法の締めくくり総括質疑に立った。例によってこの質問には相当時間を費やして資料を作成した。
(関連資料はブログに掲載)

<何でも東京一極集中>
 日本はそもそも一極集中が問題なのである。富も人口も情報も何もかもが東京に集中している。 地方でも、例えば長野で言えば長野、松本、上田等に集中が生じ、中山間地域は限界集落だらけになってきている。こうしたことを直すのは政治の力しかない。それを日本は経済効率一点張りで、集中のメリットを追い求めることを放置し、何も手を打たなかったのである。その結果が、先進国では類例をみない超過密と過疎であり、都市と地方の格差の拡大である。
 ドイツはベルリンを除けば100万都市などごくわずかである。州への分権も進み、人口もきれいに分散が進んでいる。日本と同じく首都集中がみられるのは、フランスのパリぐらいである。

<政治家の東京一極集中>
 日本の東京一極集中でも最も酷いのは政治家の一極集中である。元々東京は25小選挙区、長野は5小選挙区となっている。それは1000万人を超える人口と200万人そこそこの差でありしかたがない。しかし、実際はそれだけではなく、もっと東京一極集中が進んでいるのだ。
 例えば第二次安倍内閣の閣僚の生い立ちを調べるとよくわかる。
 ませた人は小学校の低学年で人生観ができ、人格形成が行なわれてしまうかもしれないが、私のような鈍いのはその形成に大学までかかっているかもしれない。しかし、一般的には中学・高校の多感な時期を過ごした地において、その人の価値観が形成されるのではないか。そこで基準になるのが出身高校である。
 19名の第二次安倍内閣の出身校を見ると、東京が6名、首都圏(神奈川3)が3名と、約半数の9名が東京近郊育ちである。安倍首相:成蹊(私)、麻生副首相:学習院(私)、岸田外相:開成(私)、塩崎厚労相:新宿、宮澤経産相:筑波大学付属、竹下復興相:慶応義塾(私)、山谷国家公安委員長:駒場、甘利TPP担当相:厚木高校、石破地方再生相:慶応義塾(私)と続く。5名が私立の中高一貫高校である。
 実は、私はこの点に気付き、2009年5月に麻生内閣に対して問題提起していた。麻生内閣の時もその点はもっと酷く、17名のうち7名が東京、4名が首都圏(神奈川3・千葉1)で合計11名(65%)もが首都圏いう集中ぶりだった。選挙区は地方でも、ほとんど東京で過ごして成長した人たちが相当いるのである。これでは地方の悩みは本当のところでは汲み取れないのではないか。

<世襲議員はほとんど東京・首都圏育ち>
 元々人口が増大する都市部に多く衆議院議員が偏っているのが、それに加えて選挙区は地方でも、生まれ育ったのが東京という人がゴマンといるのである。つまり2世3世等世襲議員が多いことが、東京育ちの衆議院議員が多いことに繋がっている。ちなみに安倍内閣の8人の2世議員は全員が東京か首都圏育ちである。麻生内閣の時には、塩谷立文科相だけが地元の静岡高校であった。
 政治家はいろいろな階層のいろいろな人たちがなり、広く国民の意見を吸い上げるべきである。子供に継がせるべきではない。仮に子供に跡を継がせるなら、絶対に自分の選挙区の地元の小・中・高校を卒業するように育てて欲しい。そうでなければ東京への偏りは益々ひどくなってしまうと嫌味を付け加えた。
そういえば、鳩山邦夫委員長(福岡6区)も、旧東京教育大学(現筑波大学付属)であり、この範疇に属する。それに対し、地方創生特委の民主党議員5人のうち、渡辺周(静岡6区)、近藤洋介(山形2区)の2人の世襲議員がいるが、2人とも地元の高校(沼津東、山形東)を卒業している。

<急激に世襲が増大する日本の政治家>
 このことを時系列で考えてみると劣化の過程(?)がわかってくる。安倍首相の尊敬する岸信介内閣(約60年前)は一体どうであったか。同じく19人の閣僚のうち東京の高校卒業は3人、首都圏は2人、合計5人(20%)で安倍内閣の半分にすぎない
 それよりもさらに10年ほど前の吉田内閣(1946年)は、15人の閣僚のうち東京の高校卒業は2人(13%)だけにすぎない。また、麻生首相の岳父の鈴木内閣(1980年)の21人のうち、卑属つまり子孫が政治家になっているのが13名もいる。例えば鈴木善幸首相が息子の俊一、娘婿の麻生太郎、両方とも国会議員になっているので2人になる。このようなことは多分世界中で類例が見られないだろう。

<総理の東京一極集中が最もひどい>
 ふと気になったのが、今回初めて表にした歴代総理の東京一極集中度合いである。
 田中角栄首相から現在の安倍晋三首相まで調べてみて私もびっくり仰天することになった。1989年6月誕生した宇野宗助首相までは、全員が東京以外、地方の高校出身だった。
 その後の海部総理が私立の名門東海中学・高校だが、驚いたのはその後、宮澤喜一首相から現在の安倍首相まで、1人を除き全員が東京ないし首都圏の高校卒業だった。羽田孜首相も長野で生まれて育ってはいるが、高校は成城(私)であり、村山富一首相も大分が選挙区であるが、旧東京市立商業・現荒川商業高校の卒業である。
 25年間に生まれた総理のうち、森喜朗首相(石川)以外は全て東京近郊という偏りである。首都圏は、小泉純一郎首相(横須賀)と野田佳彦首相(船橋)の2名。そして意外だが菅直人首相は高校2年まで山口の宇部高校であり、父親の転勤で17歳の時に初めて東京に来たという地方育ちだった。一国のトップの育ちがこれだけ一極集中している例は他の先進国にはありえない。何故こうなるかと言うと、先刻の理由と一致する。村山、森、菅、野田の4人以外はすべて世襲議員が総理の座に就いているからである。残念ながら、その2世以外の議員も実は大半が東京ないし東京近辺育ちだったのである。これでは、本当に地方のことを思った政治をしてほしいといっても少々無理がある。どこか迫力や、真剣度が欠けてしまう。体で覚え、肌で感じなければ地方のために動けないからだ。

<アメリカ大統領の大半は地方育ち>
 これをアメリカの大統領と比べてみると、日本の異常ぶりがよくわかる。
 トルーマン大統領からオバマ大統領まで12人の生い立ちを調べてみると、ケネディーと父・ブッシュがマサチューセッツ州で重なるだけである。あとはすべて違う州であり、なお且つ何のことはない田舎育ちなのだ。
 例えばカーターはジョージア州のピーナッツ農家。レーガンはイリノイ州の中を数回引っ越し、クリントンはアーカンソー州で父親が交通事故死し、母親が再婚して育てられている。息子・ブッシュはコネチカット州のニューヘブンで少々都会育ちというだけである。オバマはハワイ州ホノルルで生まれ、両親が再婚したりして6歳でジャカルタに行き10歳で またハワイに戻りそこで教育を受けている。
つまり、日本のようにワシントンDCの近辺なり、ニューヨーク州の近辺なりで生まれ育った者ばかりが大統領になるといったことはない。また閣僚の大半が東海岸育ちということもありえない。日米トップの生い立ちを比べてみても、いかに日本の政治家の一極集中が異様かわかるというものである

<被選挙権を地元育ちに限定>
 極めて答えにくいだろうが、こんないびつな状況を直すにはどうしたらよいか、石破地方創生担当大臣に聞いたが、答えは当然のごとくきちんとしたのがなかった。代わりに、自分は中学まで鳥取で育った、もし、地方のことに思いを馳せずにいたら、選挙でも当選しない、と苦しい答弁が続いた。そこで私から、地方自治体議員に立候補するには3ヶ月の居住条件がある。国会議員には小・中・高校は地元か最低3年間は地元で働くという経験がない限り、その選挙区では出馬できないという制度にしたらいいのではないか、ときつい提案をしておいた。
 どこかの大学を出て、政治家を養成する塾に行き、縁もゆかりもない所で国会議員になる、いわゆる落下傘は、政治家として相応しくないのではないかと、どぎつい嫌味も付け加えた。

<学んで地方創生のために尽くす>
 ただ、あまりそれだけでは失望させるだけなので、最後に東京近郊育ち議員を救うために、李白と杜甫の比較の話を披露した。
 李白と杜甫は2人とも唐の時代に庶民の気持ちを詩に詠んだ人気の詩人であるが、どちらが偉いかという議論の時に、その論者は李白が偉いという結論を導いている。なぜかというと、杜甫はもともと貧しい生れ育ちで庶民の気持ちがわかり庶民の詩を詠んだ。それに対して李白は大金持ちの立派な家の息子であり、庶民の気持ちなどは体験としてはわからないにもかかわらず、自ら学習して庶民の気持ちになり庶民の詩を読んだからである。
 ということは、東京生まれで東京育ちであるとしても、しっかりと考えて地方創生のために全力を尽くすというなら、その政治家の方が地方生まれの政治家よりも立派ということなので、皆さんも力を合わせて地方創生のためにがんばりましょう、と結んだ。

2014年11月09日

TPP交渉の行方シリーズ その24 米中間選挙の結果、TPPは漂流か決裂か-14.11.09

<6年目の中間選挙は与党ばかり>
 11月6日の新聞各紙は、民主党の敗北を一斉に伝えている。上院も下院も野党共和党が多数を占め、オバマ政権は求心力を失い、レームダックになりつつあると解説している。しかし、これは真実ではない。
 民主主義国の盟主をもって任じるアメリカ国民は、選挙という手段を通じて政権をうまくチェックしている。特に2期目の大統領の中間選挙は、権限を持ち6年経って暴走の気配が生じたり、倦怠感が生まれたりしがちな大統領に対して警告を発すべく、大体は政権与党が敗北しており、与党が議席を伸ばしたことはほとんどない。(例外は、クリントン政権の6年目に下院で共和党が3議席減らしたことだけである)

<有権者のチェック機能の日米格差>
これは気付かれていないが、日本の国政選挙でも2回続けて政権与党が議席を伸ばすことは稀だった。ところが、12年末の衆議院選挙と13年7月の参議院選挙は2回連続して与党自民党が大勝している。民主党政権があまりにひどかったとはいえ、アメリカ人と比べて日本人の方が時の政権をチェックする精神に欠けているせいである。しかし、安倍政権が発足して2年弱の今になり、大半の国民は自民党を勝たせ過ぎたがために、安倍政権が好き勝手放題をしていると気付いているはずである。従って、今総選挙をしたら自民党が3回連続議席を伸ばすことはいくらなんでもありえない。ただ、巷間報じられているとおり、野党共闘ができないままなら、3連勝されてしまうおそれがある。

<アメリカのファスト・トラックに左右される世界の交渉>
 TPPは中間選挙前は動かなかった。いつもアメリカの選挙により国際交渉が大きく左右されてきたが、今もまた繰り返している。どの国も選挙を意識して政治が行われるが、アメリカの場合はその度合いが強い。私は、農林水産省時代、ウルグアイラウンドがアメリカのファスト・トラック(一括承認権限)の期限により交渉日程が、かなり振り回され何度も苦い思いをさせられた。その経験から、交渉の行方を占う時はいつもファスト・トラックとの関連を最優先してみてきた。

<各紙はTPP交渉の加速と予測>
従って、私は、ファスト・トラックのないTPP交渉の停滞も、共和党の勝利と同様に織り込み済みである。それでは、今後どうなるか。私も、何をしでかすかわからないアメリカのことであり、絶対こうなるという予測はできない。ただ、今までの経験から得られた知識をもとに占ってみる。
これまた各紙は、共和党により自由貿易志向が強いから、今まで民主党が反対して通さなかったファスト・トラック(今はTPA“貿易交渉促進権限法”)が共和党多数の上で両院ですんなり通り、TPP交渉が速まると予測している。こうして各紙に「TPP加速」との見出しが躍っている。
 
<加速するのはアメリカの強硬な要求>
しかし、これは正確でない。加速するのはTPP交渉ではなく、企業寄り農業生産者寄りの主張を全面に出す共和党の「関税ゼロ要求」にすぎない。その結果、USTRは妥協の余地が少なくなり、日本もますますアメリカの過大な要求を受けられなくなってしまう。フロマンUSTR代表は、これを予測したのか(あるいは、強い態度で対日交渉に臨んでいると有権者にアピールするためか)、10月の交渉で、米の輸入枠の拡大、乳製品の関税引き下げ等今までになかった要求をし出したと報じられている。さもありなんである。今まで交渉を積み重ねてきたのに今更何を言い出すのか、というのが日本の感覚であるが、アメリカの交渉担当者にそんな常識は屁の河童である。

<交渉は停滞し、漂流するのではないか>
 まず、TPAが通るか否か。民主党はリード上院院内総務が反対していたことも、共和党が自由志向が強いことも事実である。それに対しマコネル共和党院内総務は、自由貿易交渉では一致できると、さっそく誘い水を出している。それでは、共和党が両院を押さえたので、民主党のオバマ大統領にTPPの交渉権限を与えるTPAを通すかというと、事はそう単純ではない。私は、16年の大統領選挙を睨み、敵方民主党の大統領に権限を与えることはないのではないかと思う。そうなると、もうレームダック状態になったオバマ政権と交渉して妥結しても、国会で承認を得られないなら各国は今のオバマ政権と交渉する意味はなくなってしまう。見えてくるのがWTOと同じ「漂流」である。この場合、日本はTPP交渉から脱退するのがベストである。

<TPAが通ったら日本は脱退しか途はなし>
 仮に、アメリカ議会がTPAを通したら、他の何かの重要な対立する政策(例えばオバマケアや移民政策)で大妥協をした証しである。その時は、オバマ大統領はTPP交渉では共和党に完全に振り回されることになり、よく強硬な主張をしだすことが目に見えている。例えば、農産物関税問題では、原点に戻った関税ゼロを主張しだし、日本側はとても応じられなくなる。日本は13年2月24日の嘘だらけの日米共同声明(聖域は確保され、重要5品目は守られるとの約束)が果たせなくなる。この場合も交渉は進まなくなり、同じように漂流しかなくなる。
 APEC首脳会合が11月10、11日、北京で開催され、首脳会合も開かれる。首脳会合前の8日にTPP閣僚会合も開かれた。8日夜に多分、首脳会合前に何もしないわけにはいかないから形式的に開くだけだろうとこの原稿を書いていたら、北京でも何の合意も得られなかったとニュースが入ってきた。公式に次の会合日程を示せず、フロマンUSTR代表だけが、15年2月合意を目指すとまたまた希望的観測を述べている。またいつもの繰り返しである。
民主党は今までTPP閣僚会合には必ず1人は派遣していたが、形式だけの今回の会合には派遣しなかった。これで党費が少し節約できたことになる。

<オバマ与党民主党の敗北と12年末衆院選の民主党敗北の類似性>
 ついでにオバマ大敗北を日本の民主党の12年末選挙の大敗北には、あまりの熱狂的期待後の期待外れによる敗北という点で瓜二つである。黒人初の大統領と初の選挙による政権交代、どちらも期待が大きすぎたのである。それが、失望に変わり、ついに怒りとなってしまったのだ。期待が大きかった分だけ落胆が大きいということである。違いは、オバマはまだ政権の座にあるのに対し、我が民主党は衆議院56名、参議院も合わせ100名余の小政党に成り下がってしまったということである。
 冒頭述べたとおり、アメリカでは両院とも与党が多数を占めることはほとんどない。ニクソン時代はずっと少数与党であり、レーガンの時代も下院はずっと少数与党だった。クリントン時代も3年目以降ずっと両院とも少数与党だったが、それでも実績を上げている。オバマ大統領も開き直って、アッと驚くような大胆な政策を打ち出してくるかもしれない。

2014年11月06日

TPP交渉の行方シリーズ23 アメリカの尊大な要求 -通貨操作と証明(サーティフィケーション)- 14.11.06

<疲れる2泊5日の強行軍>
 10月25日から27日まで3日間にわたり、TPP閣僚会合が開催され、私は民主党の代表として25日と28日の夜行便でシドニーを往復した。28日は朝6時に成田着、10時に外務・農水連合審査で日豪EPAの審議の質問に立つという強行スケジュールだった。

<時間の無駄の閣僚会議>
 閣僚会合自体は、例の秘密保持とやらで、進展したのかしないのか、どこが問題となっているのか少しも分からない。通り一辺倒の共同記者会見が開かれ、簡単なペーパーが1枚配られただけである。国民を馬鹿にした会合であり、これでまとまったから承認を、と言われても誰しもその気になれないのではないか。内容を全く知らされず、議論の余地もなく、まして修正などあり得ないというなら、きっぱりと拒否するしかない。私はこの非民主的な、言ってみれば皆が蔑む北朝鮮的進め方には絶対に承服できない。
 TPP及びその関連の交渉で、ますますアメリカの手前勝手な要求が目につき始めている。最近明らかになった2つを警告のために明らかにしておきたい。

1. 通貨操作
<最初は中国・韓国が標的>
 一つは、currency manipulation or intervention (通貨操作)である。この用語は、中国がかつての日本を凌ぐ対米貿易黒字を続け始めた数年前から、アメリカのシンクタンク、議員が使い始めた。
 通常は、輸出が増え貿易黒字が貯まれば、その国の通貨は高くなり輸出が抑えられる。それをそうならずにいるのは、その国が通貨を安くしてわざと輸出しやすい環境を作っている証拠だ。だからそういう国には相殺関税等の制裁措置を講じてよいという、一見もっともな理屈である。日本の具体的事例にあてはめるとすれば、安倍政権の誕生とともに1ドル75円だったものがみるみる円安となり、1ドル110円前後になっている。おかげで日本の輸出が増え、自動車や家電メーカー(ソニーを除く)は史上最高の収益を上げている。日本円の対ドルレートが75円から100円に下がったとすると、関税が25%下がったと同じであり、輸出しやすくなる。これが意図的な操作により行われたのだから、それを相殺すべく25%の関税をかけてもいいのではないかということである。

 かつて対中国あるいは対韓国に造り上げられた理屈が、今TPP交渉の中で日本に向けられている。今の標的は明らかに日本である。そして、この主張の先頭に立っているのが、ミシガン州第9選挙区、すなわちデトロイトを選挙区とするサンダー・レビン下院議員である。1931年生まれで83才、連続当選を重ね、The Ways and Means Committee の重鎮で、弟カール・レビンは上院議員でもある。

<大物レビン下院議員も質疑にシドニー入り>
 この点については、別稿で詳述するが、今回このレビン下院議員が、1週間後の11月4日に投票日であるというのにシドニーに来るという情報を入手したので、日本を発つ前から、面会を申し込んでおいた。そして30分ほど意見交換することができた。しかし、この問題に直接触れることはなかった。

<スーパー301条の再来>
 日本のマスメディアでは農産物の関税撤廃の話ばかりが報道されるが、もう一つ自動車についての熾烈な交渉が行われている。アメリカは日本がコメについて例外とするなら、アメリカの2.5%(乗用車)と25%(トラック)の関税継続を主張しているらしい。
 それではなかなか通りそうもないため、屁理屈をつけて日本の自動車、その他の国のアメリカへの輸入が増えて困っている輸入品を狙って、いくらでも高関税をかけられる制度を考えていたようだ。こうなると1980年代の日米通商摩擦時代さんざん物議を醸したスーパー301条を思い出される方が多いと思う。日本のあまりに凄まじい輸出洪水に手を焼いたアメリカが、難癖をつけて輸入に歯止めをかけようとしたのである。そして、cross – retaliation (全く関係のない品目に制裁を科す)とやらで、名古屋の小さい電機工具メーカー「マキタ」が槍玉に挙げられ300%の高関税をかけられている。その悪夢の再来である。

<外貨準備保有国が通貨操作国>
 それでは何をもって通貨操作というのか。どうも上記の安倍首相の口先介入は入らないらしい。変換レートを決めているのはあくまで外国為替市場であり、安倍首相の一言の意味のほどは証明できない。それでは合理性に欠けるという声が聞こえてくる。ところがアメリカのシンクタンク、議員、業界はそれほどやわではない。何と外貨準備を多く抱える国が自動的に為替操作国と認定されるというとんでもない基準である。
 少しでも貿易黒字を抱える国が、政府がいざという時のために外貨を保有しているのがケシカランというのである。そうした意図的な保有がなければ、その外貨が市場に出回っていけば、その国の通貨が下がるのに、国が保有して抱え込んでいること自体が通貨操作だというのだ。いってみれば、これは貿易相手国が少しでも貿易黒字を貯めたら、すぐにアメリカにドルを還流しろという脅しである。アメリカの恐るべき高圧的態度である。

2. サーティフィケーション(認証)
 次が、Certification(認証)である。
<国家主権を浸食するISD>
 ISD又はISDS。(Investor-Style Dispute Settlement投資家国家間紛争解決)は、TPPのひな型、米韓FTAで大問題になった。裁判官、弁護士、法律学者等の法曹界は主権侵害であるとネットで自ら意見を述べ、一部の弁護士は表に出て強硬に反対した。2012年初、勢いのあった野党民主党はオバマ大統領と上下両院議長に再交渉すべきとか、自分たちが政権をとったら廃止するとかいう手紙を直接送りつけた。その中で1番問題にされたのはISDである。
 我が国の衆参農林水産委員会決議にもISDは認めるべきでない、という一項目が入っている。

<事後チェックするISD>
 別ブログ(TPP交渉の行方シリーズ11「国家の主権を損ねるISDSは絶対拒否すべし-ISDSで世界はアメリカ多国籍企業の管理体制下におかれる-」2013.10.21)で詳しく述べたので詳述は避けるが、簡単に言うとTPPができた後にアメリカの企業が各国の制度が企業活動を妨げているという理由で国を訴えることができる制度である。大訴訟社会のアメリカから何回も訴えられると、いつの間にか日本のルールがアメリカのルールに同化されていくことになる。そして、日本のまじめな官僚も、アメリカの顔色をうかがって日本に必要な制度や政策を打てなくなってしまう。かくして、日本の実体に合わないルールばかりがはびこり、日本の経済・社会が混乱し活力を失っていく。

<事前に渡すサーティフィケーション>
 ところがこのサーティフィケーションは、いってみればアメリカによる事前審査である。TPP協定に署名し、さらには協定自体が発効していても、アメリカ議会にここがおかしいと指摘されたらその相手国が、そんなことはない(たとえばアメリカ製品がその国の市場で急激にマーケットシェアを獲得)と証明しなければ、その国に対して協定上の特権(関税撤廃など)を認めないというもの。アメリカ議会が対象国の制度をチェックして、協定を阻害しアメリカ製品・サービスの市場参入を拒否しているような制度(例えば地産地消政策)は変更をせまるというようなものであり、国家主権の侵害の程度は、ISDをはるかに上回る。
 つまり、TPPないしアメリカは、国を国と認めず、すべてアメリカの制度にすべしというものである。私が、アメリカは日米構造協議以来、自国の制度を押しつけ続けており、TPPがそれにとどめを刺す協定だと主張する所以である。TPPに入れば、日本はもう経済面では独立国とはいえなくなってしまう。そういう国が集団的自衛権だとか靖国神社といってもどうにもならないのだ。これが、私が真正保守こそ全力を挙げてTPPに反対しなければならないと主張する所以でもある。

<TPPに係るムダをやめよう>
 TPPはもう放棄する以外に、日本が独立を保ち、日本のよき伝統文化を守っていく途は残されていない。多くの人たちが、どうしてこんな大切なことに気がつかないのか、私は不思議でならない。
 今後どうなるのかと思っていたら、APECの開催される11月10、11日前、8,9日にまたTPP閣僚会議を開くという。シドニーには、これが最後の交渉になるかもしれないと、日本から全ジャーナリスト150名の2/3に及び106名の記者が同行したが、彼等もがっかりして帰国したに違いない。TPPは中国包囲網を作るためのものだと言われているのに、その中国でしゃあしゃあとTPPの閣僚会合や首脳会合を開くというのだから、相当無神経であり、中国に対して失礼である。アメリカという国はどこまでも尊大である。