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シドニーのTPP閣僚会議 -14.11.12

(党への報告を先にしてから、ブログにアップしなくてならならなかったため、遅くなってしまいました。)

 10月25日~27日の3日間、シドニーにおいて5か月ぶりにTPP閣僚会合が開催され、出張した。日本の関係者も今会合を山場と位置づけ、多くの農漁業関係者やマスメディア(150人中106人が日本から)が駆けつけた。自民党からもTPP対策委員会の関係者の3人(森山裕、宮腰光弘、吉川貴盛)が出張した。
 主催国オーストラリアのロブ貿易・投資相は「最終段階に入った交渉で『基本的合意』をめざして各国の閣僚が真剣に取り組むように期待する」と異例の事前コメントを出した。しかし、新聞報道されているとおり、知的財産(薬の開発データーの保護期間等)、国有企業(優遇措置の廃止と猶予期間)、環境(生態系の保護等)の分野で日米と新興国との間に依然として対立点があり、6分野13項目でも争点がまとまらなかった。豪が大筋合意から一歩下がった基本的要素合意を目指したが、それすら実現することが出来なかった。
 参加各国は、日米交渉の決着が先だとみているが、甘利・フロマン会談は3日間で最終日(27日)に約50分間行われただけで、ほとんど進展がなかったとみられる。
 ただ、「秘密交渉」ということを理由に、交渉内容は、26日午後のステークホルダー(関係者)会合(篠原出席)と27日の共同記者会見(記者のみ対象)以外は説明が行われず、今回どの程度進展したのか等について相変わらず一切不明である。ルール作りを加速するためには日米の農産品を巡る関税競技の決着が欠かせない中、アメリカが乳製品等の関税について要求したと新聞報道された。また、ステークホルダー会合で質問してもほとんどわからないのはいつもどおりだった。重要品目の聖域確保を求める衆参農林水産委員会決議が守られているのか、少しも見当がつかないのもいつもどおりだった。
 11月の北京のAPEC閣僚会合に合せ、11月8日にTPP閣僚会合が持たれ、また、10日にTPP首脳会合も開催されたが、次回の日程に言及することすらできなかった。
 今回の収穫は、会合の合間の意見交換である。その概要を報告する。

(1) サンダー・レビン米下院議員(民主党、ミシガン州、下院のCommittee on Ways and Meansの重鎮、弟も上院議員)
・名うての自動車議員で、アメリカが自動車について妥協しないように11月4日の中間選挙の1週間前にもかかわらず、監視に来ていたものと思われる。またこのことが何よりの選挙運動になっている模様。(首藤信彦前衆議院議員同席)

・(徳永エリ参議院議員の「米国議会がTPA法案を通じてTPP協定への反映を目指す事項と我が国国内への影響に関する質問主意書」の英訳を渡して、レビン議員の主張する通貨操作(Currency manipulation or intervention)について意見交換せんとするもほとんど反応なし。)
・(そもそもTPPについてほとんど知識がなく、私の方ら環境問題、労働問題等について説明したところ、はじめて聞いたような反応。)
・(レビン議員が少々遅刻した間に、議会スタッフのジェイソン・カーンズ(前USTR)と意見交換。議会スタッフなり秘書が、自動車業界の意向を受け、大物議員の主張として上記通貨操作を主張しているとみられる。)


10月27日、ほとんど見るべきものがないまま、TPP閣僚会合が閉幕した。何らかの進展があった場合、ブルネイ会合以来交流を続けている、NPOのメンバーと今後の対応について意見交換する予定だったが、前述のとおり、シドニー会合前とほとんど状況が変わらなかったので、27日の夜10時までに済ませることができた。
 出張手続開始が遅れたため、帰国に都合のよい便は既に満席となっており、10月28日深夜発が最速で変更が効かない格安チケットだったため、28日1日空白が生じた。27日午後1時の何の内容もない共同記者会見の後直ちに、28日のキャンベラでTPPや日豪EPAの関係国会議員とアポイントとりを開始した。幸いなことに、オーストラリアも国会開会中であり、急なことであったが以下のとおり3党の主要な関係議員と農業大臣のスタッフと意見交換することができた。

(2) ブルース・スコット下院議員(国民党Nationals、下院副議長)
・私自身農民であり、我が党は農業、農村、農民の支持を受けている。
・日豪EPAは、豪の農民にとっては喜ばしいことである。ただ、日本の農民を苦しめることは絶対に避けないといけないと思っている。だから、牛肉と乳製品以外は除外した。
・自由貿易はある程度必要だと思う。現に私はトヨタの大きな車をつい先日買ったが、本当に性能がよい。だから、日本人に我々の農産物を買ってもらいたい。
・TPPについても、我が党はEPAと同じく、日本の農民のことを考えているというスタンスで臨んでいる。
(3) ピーター・ウイッシュ ウイルソン上院議員(緑の党Greens、貿易委員)
   ・ただ自由貿易を全面的に否定しているわけではないが、TPPは反対している。
   ・貿易協定や経済協定は、経済成長や金儲けのことばかりが優先され、環境はないがしろにされる。
   ・特に、食料の安全基準などは低く低くなっていく。TPPも秘密交渉とやらで内容はよくわからないが、その傾向があるので、TPPには反対せざるをえない。
   ・(食べ物の地産地消、旬産旬消、フードマイレージを説明)
    確かに基本的な食べ物は、なるべく近くで作り、直ぐ食べるのがよい。自分の地元のタスマニア島でもそれを売り物にしているレストランがある。近くで生産された食料が体に誰もがすぐわかることであり、食料は自由貿易すべきでないという主張は全く同感だ。
   ・緑の党は、左翼なりリベラルとみなされることが多いが、私は右でも左でもなく第三の道だ。
(Stop TPPネクタイを所望されたのでプレゼント、地元のタスマニアへの訪問を促されるとともにおいしいワインを大使館に届けておくと返礼)
(下院(150)は完全小選挙区制のため1名のみ、上院(76)は州ごとの比例代表のため10名を占め、地方の意見を代弁している)

(4) ケルヴィン・トムソン下院議員(労働党Labor、貿易委員会筆頭理事)
   ・オーストラリアの政策はいつもかなり農民・農業サイドの声が過剰に反映される傾向がある。日豪EPAもその一つだ。
   ・私も我が党も働くものの立場を最優先して政策を考えている。その点で、オーストラリアがいつまでたっても農産物や石炭・鉄鉱石の一次産業ばかり頼るようなのは好ましくないと思っている。
   ・(日本への輸出は、金額ベースで、農産物など6%ぐらいで、他は鉱物資源ばかり、私は元駐日大使のマクレーン氏には、なぜ鉄鋼ぐらいはオーストラリアで造らないか不思議だと指摘して議論したことを紹介)
    製鉄所だけでなく、自動車も三菱が撤退することになっているし、ホールデン(GM)もトヨタもそれに続く。私は豪を1次産業の国のままにしてはならず、仕事を造るためにも第二次産業も振興するように声を上げている。
   ・人口が2200万人で少なく、マーケットとしては小さすぎるのが問題だが、だからといいつつ工業品を日本や韓国から輸入するばかりの国であってはならない。
   ・豪日EPAはどこも反対していないが、豪韓FTAは国会の承認が相当遅れた。ISDが入っているからだ。そこで、日豪FTAよりも先に批准したかった。
   ・豪は、豪米FTAでもISDを拒否したが、今、豪香港投資協定の下、フィリップモリスの子会社が、タバコの広告禁止に対して豪政府を訴えている。アメリカは訴訟大国であり、これを悪用されることは許してはならない。
   ・(米韓FTAで法曹界を中心としてISDが韓国の主権を損ねると大問題になったのに、なぜ韓国はISDにこだわったのかと質問したのに対して)
    豪韓FTAにISDが入らなかったら、国内の反対者から米韓FTAからもISDを削れと言われるのが恐かったのだろう。アメリカはそう簡単に再交渉には応じないからだ。
   ・アメリカは、強引に自らのルールをTPPのルールにしようとしており、これをやすやすと受け入れてはならない。

(5) バーナビィ・ジョイス農業大臣(自由党 Liberal)のスタッフ メリンダ・ハシモト,ジュディス・ラファン
   ・日本は農業分野でも豪に投資をしており、日豪EPAはこうした関係を深めることになり大歓迎している。
   ・牛肉の関税は下がるが、日本には高級牛肉があり、十分に差別化ができ、日本の農家を困らせることにはならない。
   ・(日本の牛肉のかなりの部分は、乳用牛の廃牛であり、この部分はオージービーフと完全に競合する)と反論
   (政治家ではなく、ありきたりの意見交換となった)

 私が突如訪問した、10月28日は、丁度日豪EPAが国会に報告された日と重なった。私が、その夜行便で帰国した後直ちに外務、農林両委員会の連合審査で質問に立つことを話すと、いずれの議員も喜んで素直な意見交換ができた。今後も、このような議員外交を続けていくことが必要だと痛感した次第である。