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TPP交渉の行方シリーズ25・兼 アベノミクス農政批判シリーズ7「TPPを格好付けに悪用する日米首脳 -可哀相なのはTPPの中身を何も知らされない国民-」15.02.10

<無責任な御用委員>
 ここ数日、日本農業新聞や全国紙も含めマスコミは農協改革一色である。いつの頃からか農業所得倍増という夢物語が語られ出した。そのためには農政改革が必要であるとされ、いつの間にか農業規制改革にすり替わり、規制改革会議では農業・雇用・医療が目玉となった。その中で農協や農業委員会の改革が叫ばれ、今や農協改革が圧倒的な関心を呼んでいる。
 よく言われているように、全国農協中央会(全中)を法律上のものから一般社団法人にすることが、なぜ規制改革になり農業所得倍増に結びつくのかさっぱりわからない。農協の監査を公認会計士等の外部監査に任すということが、どれだけ農協の改革に役立つのかというのもよくわからない。安倍政権に都合よい人たちばかりが委員となり、立派に期待に応えて政府の方針どおりの答申・提言をまとめている。安倍政権下の御用委員の跋扈は目に余る。農協界から反論があるように、農協の業務全体の監査も行われるので、プロである全中に任せた方が良いという理屈もわからないでもない。しかし、私からするといずれにせよ些細なことである。そんなことにうつつをぬかしている場合ではない。問題はその陰で、国民には何も知らされずにTPP交渉が進展していることである。

<農協改革をよそに秘かに進められる危険なTPP>
 私は何度も言っているが、TPPは何も農産物貿易だけが問題なのではない。他にも大問題が目白押しである。外国の私企業が国を訴え国際投資紛争解決センターで決せられるISD条項は、国家の主権を踏みにじる。また、TPPは日本の伝統文化を無視したアメリカのルールを次々と押し付けるツール(手段)になってしまう。私はこれこそ日本社会を根本から覆す最も危険なことではないかと思っている。
 農協改革に関心を向けられる中で、TPPがこっそり秘密裏に進められている。ところが、こちらの方は、さっぱり見えてこない。

<餌食にされる農産物関税の引き下げ>
 他の分野はどのような内容になっているのかボヤッとしていてわからない。しかし、交渉に入る条件として関税ゼロということが言われたため、TPPというと農産物関税問題ということにされてしまっている。他にも大きな問題が山ほどあるにもかかわらず、農産物関税を槍玉に上げてシングル・イシュー化し、他の重要なことをその間に進めようという悪い魂胆があるのかもしれない。
 驚いたことに「何もなかった」「何も進展がない」と言っていた昨年4月のオバマ訪日時交渉で、日米二国間で相当いろいろな提案がなされていたことが明らかになった。この点でも日本政府は大嘘をついていたことになる。つまり秘密交渉というのは、とりもなおさず国民を騙しての交渉ということになる。
 
<農業規制改革は成長戦略の目玉とならず>
 農協改革については、安倍首相は能弁である。問題となった中東歴訪の際も、わざわざ羽田空港で農協改革についてインタビューを受けている。闘う首相を演出せんとする一種の「やらせ」である。外国に行っている間に農協改革を進めるというのも、各国を歴訪している間に、いつの間にか解散ムードが定着したのと同じ臭いがしてくる。いかにもずるいやり方である。
 しかし、安倍首相はTPPについては国会では質問されたりした時以外は決して語ろうとしない。私が察するに本音はあまり好みではないのであろう。
 当初、薬品のインターネット販売ということが大きく喧伝された。その後、成長戦略とされる3本目の矢は具体的なものが何一つ見えてこない。そこに顔を出してきたのが出てきたのが農業、医療、雇用についての規制改革である。日本は規制があるがために経済成長が妨げられているのであろうか。世界で一番ビジネスをやりやすい環境を造るというのが安倍首相のふれこみであるが、日本が規制だらけの国であるとは日本人も思っていないし、外国も思っていない。まして農業などは各国特々の事情があり、いろいろな保護もなされているし、農産物について関税がゼロなどということはWTOも何一つ言っていない。ここに論理的な無理がある。

<経済成長への期待感の為に使われるTPP>
 こうした中、安倍首相は、その好みではないTPPを巧みに利用している感がある。安倍首相はTPPを、経済成長という期待感を抱かせるための道具と考えているとしか思えない。もっと言えば安倍内閣はもともと期待感だけでもっている内閣にすぎない。ところが、経済対策がうまくいかず、経済も景気も良くならないために、2度目の10%への消費増税も、先送りしなくてはならない羽目に陥っている。安倍政権ができてから、本当に実現したものはあまりない。
 そして最後の拠り所はTPPである。TPP協定ができ、これが発効されれば1年後あるいは3年後には景気は上向く、という期待感を繋ぎとめておくための手段に使われるのである。

<オバマの遺産(レガシー)への固執>
 オバマ政権は、1期目ではアメリカの皆健康保険制度(オバマケア)が実施されている。多分、業績として残るものであろう。ところが中間選挙を経て、上院も下院も多数を占めた共和党が大反対しており、ひっくり返される可能性もある。
 ところが、2期目は半分を過ぎた時点で、何一つ目立った政策が実行されていない。レームダック状態といわれている中一定条件の下、不況移民を3年間強制法を免除する、移民法の改正や、カナダからの石油パイプラインの敷設等の難問を抱えている。これらについては拒否権を発動するとまで言い、共和党との対決姿勢を明らかにしている。
 しかしTPPについては全く逆で、TPA(貿易促進権限)をどうしても通してほしいと共和党に秋波を送っている。TPPを完成させ、オバマ政権の遺産(レガシー)にしたいと言っているのだ。つまり、結局オバマ大統領もTPPを自分の格好づけに使おうとしている点で安倍首相と似たりよったりなのだ。
 結果として、日米両国なかんずく、特にアメリカが大統領選に入る前の決着を急ぎ始めている。だからアメリカからは、カナダが農産物関税についてグズグズ言っているので、カナダを外すべきだという声も聞こえてきている。一方では日本の農産物関税が高いのにそれを維持しようとしているので、日本を外してもいいということまで言い出し始めている。

<日本から祭りが消える>
 これも何回も繰り返し述べてきているが、アメリカの狙いは関税の引き下げにあるのではない。日本のシステムを根底から変えて、アメリカのようにしてしまうことにある。これは、日米構造協議以来のアメリカの姿勢であり、その後も年次改革要望書という形で日本に突きつけられている。郵政改革もそのような文脈のなかで押し付けられてきたものである。
 私はこうした一連の流れの中で、日本社会を最も変えたもののひとつが大規模店舗規制法の撤廃ではないかと思っている。このために全国各地に郊外のスーパー、ショッピングセンターができ、商店街は次々に潰れていっている。このままいくと日本の小さな祭りの大半は消えてしまうことになる。全国各地の小さな祭りや村祭りは神社を中心に農民が行っており、街のお祭りは商店街がお金を出し、人も出し客を呼び込む形で行われてきた。それが農村は消滅寸前であり、商店街がシャッター通り化してしまって、祭りの担い手がいなくなって消えつつある。これでは観光化された大きな祭りが残るだけとなり、日本の庶民が支えてきた小さな村や町の伝統文化が消えていってしまう。

<地方の味も消えていく>
 食堂なども次々に消え、大きな道路の脇には全国チェーンの味もそっけもない店が続くだけである。私が約30年前にアメリカへ留学した時は、日本がこんなまずい食堂しかない国ではなくて良かったと安堵していたものが、今まさに私が忌み嫌ったアメリカと同じようになっている。小さなラーメン屋で、顔馴染みのおじさん、おばさんのいるラーメン屋の味を楽しむことができなくなり、全国画一的なレストランばかりになっている。
 食堂などは各地方に合った、それぞれの個人経営で行われているのが健全なのだ。それを、みな画一化し、全国展開する企業に牛耳られる世の中にしてはならない。TPPを締結していくと、全国展開する日本企業ならまだしも、日本中がアメリカの大きな企業の支店だらけになってしまう恐れがある。これを憂いているのである。

 農協改革の大騒ぎの陰でこっそり進むTPPのことの方がもっと心配である。