« 【アベノミクス農政批判シリーズ 9】官(邸)強(自民)党弱一強多弱は国民や農民の声の無視につながる- 政策決定システムが国民から離れていく危険 -15.03.20 | メイン | 長期低落傾向を脱するには組織も政策も大改革が必要 -立ち位置を明確化し、党名変更を- 15.04.13 »

【集団的自衛権シリーズ4】国民の大半は集団的自衛権の行使は望まず -いつの間にか集団的米衛権・他衛権に変わってしまう危険-15.03.25

<漠然とした不安を抱く国民>
 3月21日、新聞各紙は一斉に自公両党の安全保障協議が正式合意したことを報じた。国の根幹を揺るがす大きなことになるかもしれないからだ。しかし、国民は日本の自衛隊が今後どういう役割を担っていくのかさっぱりわからないのではないか。私が週末開くミニ集会には様々な国政の課題が取沙汰され、核心を突いた指摘も受けるが、本件について細かいことは聞かれたことが一度もない。「保秘義務」とやらでさっぱり情報が流れてこないTPPと比べると、抽象的情報量は桁違いに多いのに、肝腎のところが不明確だからだ。これでは、海外で武力を行使しないという原則がなし崩しにされることに対し、不安になるには当然である。

<集団的「米衛権」から集団的「他衛権」へ>
 私は、少々荒っぽいが「集団的自衛権とは、アメリカが戦争を始めたら一緒に戦うこと」と説明してきた。ところが、最近はアメリカだけでなく、やれオーストラリアも同じだとか、他の国も入るとか拡大してきている。いくら後方支援に限定するといっても、いつかは解釈が拡大され戦闘に手を染めなくなるかもしれない。その前の与党協議の間ですら、もう徐々に拡大解釈されているのだから、いざという時には「歯止め」など効くはずがない。つまり、細かい条件を法律で定めたところで、何の役にも立たないということだ。
 集団的自衛権が今でさえ「集団的米衛権(アメリカを守ること)」になりかけているとういうのに、更に進んで「集団的他衛権(他国を守ること)」にまで拡がっている。それこそ「切れ目のない」拡大が持ち受けているだけである。

<各紙にみる見出しの違い>
 私の手許にある新聞の一面の見出しを拾ってみる。
信毎:「自衛隊活動拡大法制化へ。安保5分野自公が骨格合意。歯止め持ち越し
朝日:「自衛隊海外派遣拡大へ。憲法解釈の変更法制化。自公、安保枠組合意。
    (解説)世界の警察、米を肩代わり
読売:「自衛隊活動5分野で拡充。自公安保法制正式合意。
    (憲法考)制約だらけから転換」

<見出しに透けてみえる各紙の安全保障観>
  見出しだけでも、各紙の主張がそのまま反映している。各紙共通しているのは、自衛隊海外派遣なり活動が拡大されることだが、その表現振りからして意図が透けてみえる。
読売は明らかに今回の流れを歓迎している。国民の不安を承知した上で「海外派遣」と言わず「自衛隊活動」と言いくるめ、「拡大」と言わず「拡充」だと誤魔化している。加えて、コラム「憲法考」では、憲法第9条の制約があるという前提に立ち、「制約だらけから転換」は、いいことだと読者を誘導している。
  反対にあくまで否定的なのが朝日である。「自衛隊海外派遣拡大」と正直に伝え、憲法改正せずに「憲法解釈変更を法制化」するのは問題だと批判している。解説では、世界の警察官として振舞うアメリカを肩代わりせんとしていると懸念を表明している。見出し一つをとっても対立軸が明らかである。

<主張の違いは民主主義国の証し>
 我が愛すべき郷土の良心的新聞、信毎は自衛隊活動の用語は読売と同じだが、「拡大」だとし、「歯止め持ち越し」と、やはり今後の雪崩を打った解釈の拡大や自衛隊の海外活動の拡大を心配している。朝日等よりである東京は、社説で「『専守』変質を憂う」と否定し、サンケイは逆に「『仲間を守る国』への前進だ 実効ある条文作りをめざせ」と自衛隊の海外派遣を積極的に支持し、毎日(「どんな国にしたいのか」)と日経(「なお宿題が山積みだ」)は、疑問を投げかけている。この違いは、原発についても概ね当てはまり、朝日・毎日・東京は否定的で読売・サンケイ・日経はイケイケドンドンである。
 私はこのように各紙の主張の違いがあることは、日本が極めて健全であることを示しており、結構なことだと思う。ところが、もう一つの重要課題であるTPPについてだけは、全紙が推進なのは異様である。私が戦前に全紙が戦争に加担したのと同じく、「経済拡大戦争」にこぞって提灯記事を書いていると批判する所以である。

<何でもありのごった煮合意内容>
  集団的自衛権の言葉ばかりが先行しているが、実は中味はもっと広い。合意の全文は、治安維持任務の追加、周辺の拡大、米軍以外への支援、他国軍を後方支援する恒久法の制定、PKO活動を国連決議以外に拡大等幅広い分野にまたがっている。
 14年7月1日の閣議決定は、我が国の安保政策についての宣言のようなものだった、今回の与党合意は連休明けとされる法案提出を意識した技術的なものにすぎず、日本の国のあり様は何も示していない。それにもかかわらず、安倍政権は統一地方選を終えたらすぐドタバタと審議して、すべての法案を一気に通すつもりである。


<国民は性急な議論を支持せず>
  こうした動きに国民は納得していない。いくら後方支援に限り戦闘活動はしないと言訳しても、国民は信用できないでいるのだ。安倍首相は12年末と14年末の2度の総選挙で圧勝したから、国民の負託を受けていると言い張る。しかし、選挙に勝ったからといって、何でもやっていいというものではない。
 毎日新聞の3月14、15日に行われた調査では、52%が今国会での成立に反対している。支持は32%にすぎない。他紙も大体同じ数字である。政治は何よりもこうした国民の民意を重視しなければならない。
 
<日本の評判を落としてはならず>
 国際社会は何も日本の自衛隊の海外派遣を要請していないことだ。正確にいうとアメリカは自国に都合のいい後方支援だけはしてほしいと願っている。だからその限りにおいて歓迎である。このため5月の連休中の安倍首相の訪米時に、池田首相以来54年振りの米議会演説が用意されているという。いわばご褒美である。
 それに対し中国や東南アジアの周辺国は日本の自衛隊の海外活動には懸念を示しつつ、注視している。いくら第二次世界大戦後70年といっても、大戦中の日本軍の活動を忘れていない。その前に明確に警告を発したのが世界の火薬庫、中東である。今回の安倍中東歴訪、2億ドル援助発言等に対しても、イスラム国は過剰に反応した。イスラムでも何でもテロには厳格に対処しなければならないのは当然だが、わざと誘発するような行動にでることはない。
 今後の日本の自衛隊の動きによっては、日本がアメリカと同じ眼でみられるようになってしまうおそれがある。日本の信頼を損なわないような慎み深い行動が必要である。

<アメリカの一部の声に応ずる必要なし>
 日本は海外で血を流すことを拒否し続けた立派な国であり、それゆえに戦禍に巻き込まれることはなかった。この70年の間に平和国家日本のイメージがすっかり世界に定着している。こうした姿勢が国際的に大きく批判されることはない。
 アメリカの一部だけが湾岸戦争の折に金だけ出して人を出さないことに対し、「Show the Flag」と言って批判した。イラクに侵攻されたクェートが感謝を述べた対象国に日本が入っていなかった。この二つががトラウマになって、集団的自衛権を認めんとする一連の動きが始まったともいわれている。しかし、事実は異なる。アメリカの声は、毎度おなじみのいわゆるジャパン・ハンドラー(日本の専門家)の声であって、アメリカの大勢ではない。アメリカはむしろ、日本が軍事大国にならないことを望んでいる。
 もし、日本が朝日の心配するとおり、世界でアメリカの肩代わりをし出したら、アメリカはすぐブレーキをかけてくるだろう。例えば、前述の安倍首相の米議会演説に対し、米退役軍人の有力団体は戦争中の日本の過ちを安倍首相が明確に認めるように注文をつけている。
 いずれにしても、安倍政権は長野のこの辺りの言葉でいうと「ちょんこづいている」(調子に乗り過ぎている)。国会が民主党を中心に自制を求めていかねばなるまい。