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【TPP交渉の行方シリーズ30】フロマンの格好付に手を貸した深夜の日米協議‐コメを譲るのは国会決議違反‐15.04.24(4月-4)

<アメリカの希望により開かれた日米閣僚会合>
 4月19日フロマンUSTR代表が日本に来て、日米閣僚協議、すなわち甘利・フロマンな会合が開かれることはかねてから決まっていたようである。関係者によると、これほどスムーズに事務方の筋書き通り進んだ閣僚会合はなかったという。その後は、事務方を入れずに2人で交渉を続け、合計10時間を超え深夜に及んだが、前回のように甘利大臣が怒って席を立つことはなかった。フロマンが折れ出したのである。アメリカが動かなければ、交渉が動かないのは今も昔も変わらない。
 それもそのはずである。今回の会合は、アメリカのたっての願いで開いたものだからだ。目的はただ一つ、TPA法案を通すために、フロマンが日本でも日米閣僚会合を開き、日本に対してアメリカの要求を突き付けていることを知らしめるためである。

<あの手この手の議会対応>
 TPA法案を通すために既に、情報公開を大幅に認め、民主党反対議員とそのバックにいるAFL-CIO向けに、貿易調整支援法案TAA(Trade Adjustment Assistance)をTPA法案と同時に審議することを約束し、更に日米二国間協議において厳格な原産地規則を要求している。また、レビン等ミシガン州選出議員達がだいぶん前から要求している為替操作条項をTPAに入れている。これら全てTPA法案を通すための大デモンストレーションである。

<変身するTPA法案>
 我々はTPA法案(Trade promotion authority)と言っているけれども、その名前もちゃっかり変えられている。2002年は Bipartisan Trade Promotion Act(超党派貿易促進法)だったが、昨年のキャンプ・ボーカス法案はTrade Priorities Act(貿易優先事項法)となっており、今年4月16日に両院に提出されたハッチ・ライアン法案はthe Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015 と変わっている。直訳すると2015年貿易優先事項・説明責任法である。
 つまり内容が大きく変わっているのである。その最たるものは、TPAはファストトラック(一括承認権限)を与える法律だと言いながら、実はそうではなく、議会に優先すべき報告事項等を明らかにし、USTRにきちんと説明をさせるという内容になっている。更にひどいのは、ファストトラックをあげる法律は実は、政府の交渉が議会の要件にそぐわなければ、議会がこれを撤回する権利を与えていたのである。まさに羊頭狗肉の法律である。

<安倍・オバマ会談も演出の一つ>
 アメリカはあの手この手でTPAを通そうとしているのである。その一環としてもう一つ重要な役割を果たすと思われるのが、日米首脳会談である。それまでに甘利TPP担当相が言うような「首脳会談で進展を歓迎できる」といったような、前向きな言葉を両首脳から発してもらうためのお膳立てである。あれもこれもすべて、TPPがまとまりTPA通りそうだという空気を意図的に醸成せんとしているのである。政治、特に外交はショー的色彩を帯びてくるが、その最たるものである。

<コメ譲歩は公約違反、国会決議違反>
 こうした中で、コメも粗雑に扱われている。米国側は以前から食用17万5千t、加工用など4万tの計21万5千tの輸入拡大を要求している。これに対して日本は、ミニマムアクセスの枠外で5万t程度に限定する食用米の輸入にとどめんとしており、日米間に大きな隔たりがある。米の消費量は毎年8万tぐらいずつ減り続けている。日本では生産調整をし、米から飼料米にシフトするということをしながら、農家には米を作らないように仕向けている。それにも係わらずアメリカから20万tも輸入しようというのである。明らかに12年の選挙時の「聖域なき関税 撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」という公約の違反であり、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」といっていた国会決議にも違反していることになる。
 牛肉や豚肉については細かいことは触れないが、新聞報道によると日豪EPAがレッドライン(譲れぬ最後の線)だといいつつ、それを大幅に上回る妥協をしているらしい。乳製品についても同様である。日本でも畜産物がコメを凌ぐ生産額に達しているが、ここらで譲歩すると北海道や南九州はズタズタになってしまう。ただ一つ手を付けられないでいるのは沖縄絡みの砂糖だけである。

<アベノミクス農政にも矛盾する>
 WTOも関税ゼロなどいっておらず、関税があって当然なのだ。そもそも関税をゼロにするTPPは国境をなくすことであり、とても受け入れられるものではないと思っている。日本の国内の政策、例えば10年で農業所得倍増などという根拠のないアベノミクス農政にことごとく反する結果になる。もうこんなことに振り回されるは最後にしたいものだ。