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2015年04月28日

【TPP交渉の行方シリーズ33】TPA法案の行方を予測する- 下院の踏ん張りで是非否決してほしい‐15.04.28(4月-7)

<個人個人の議員が賛否を決められるアメリカ議会>
 共和党は上院下院ともに多数を占め、オバマをレイムダック状態に追い込んでいる。しかし、大統領の権限は強大であり、2年間拒否権等を押さえつつ共和党の政策を実現していこうとしている。そのためには、TPPを2期目のLegacy(遺産)にしようとしているオバマ大統領にまずは恩を売っておくという打算が働いている。マッコーネル共和党院内総務は、中間選挙直後にTPA法案への支援を約束している。
 アメリカは日本と比べて議会には民主主義が定着している。何よりも大きな違いは『党議拘束』がないことである。各議員が自分の価値観、見識に基づいて賛否を決められるのだ。だから、与党民主党のオバマ大統領がいくらTPA法案を通してほしいと願っても、下院の民主党議員の大半が反対し、逆に共和党議員のほうが賛成するという変則的な形になっている。
 アメリカの場合は党の締め付けがないかわりに、次の選挙の前に新聞等で法案への賛否をきちっと報告され、それを元に有権者が投票で判定を下すことになる。だから議会はダイナミックになっていく。

<4月下旬のアメリカ議会の動き>
 こうしたことからTPA法案TPPをめぐるアメリカ議会はかつてないほどの緊張状態におかれている。以下、時系列で追ってみる。

 4/16 
・ハッチ上院財政委員長(共)、ワイデン筆頭理事(民)と
 ライアン下院歳入委員長(共)の3人によるTPA法案が上下両院に提出される
 (提出の前に公聴会が行われる変則的スタートで、
 民主党議員から猛烈に批判される)

 4/22
・上院の財政委員会で審議(mark up)され、20(共14、民6)対6(民6)で可決。
 (本会議で修正案が出され、長時間議論される可能性大)
・為替操作国に対抗課税などを課すきつい制裁を伴う為替操作条項は否決、
 別途法案としてTPA法案に付随される
・118本の修正案が出された。ハッチ委員長はそのうち12本を採決に付し、
  4件が認められ修正される。
 ①大統領貿易権限の人身売買ケース不適用
  (マレーシアをTPPに参加させない) (賛成16、反対10)
 ②米国イスラエル間貿易促進(賛成26、反対0)
 ③議会・政府間協議での製造業製品事項追加(全員賛成)
 ④“Buy American”を弱体化する貿易協定の禁止(全員賛成)

4/22
・下院歳入委員会でも25対13で可決、15の民主党議員で賛成は2のみ。
・実質的な審議は、為替操作法案の1本の修正のみ。24対14で否決
  (ただし本会議で再提案可能)。
・レビン筆頭委員(民、ranking member)の18修正案は、
  ライアン委員長が採決に付するのを拒否

 この後5月上旬は議会が休み、その後上下院の本会議での採決に向け、修正案をめぐり攻防が予想される。両院で可決されると大統領が署名して直ちに発効されることになる。それに対し、下院で否決されると廃案となる。

<最近のファストトラック法案の賛否>
 最近のファストトラック(一括承認条件)法案の採決の経緯を見ると以下のとおりである。

1993年 クリントン政権
  NAFTA法案を共和党の協力により可決、
  これ以降議会は総じてファストトラックの付与にためらう。

1998年 クリントン政権
  95.97、98年と3回にわたりTPAを求める。
  98年には共和党多数の下院で共71が反対、民171も反対(242)して否決、
  民は29しか賛成せず。

2002年 ブッシュ政権
  激しく争われ、2年間費やして215対214という1票差で可決された。
  5年後の2017年に失効。

2011年 オバマ政権・韓・コロンビア・パナマFTA実施法
  民17が賛成、FTAには民25賛成で成立。(注:民の15年TPA賛成は、17や25より下回る根拠)

2014年 オバマ政権化でキャンプ・ボーカス法案(2002年をほぼ踏襲)が提出
  民上院院内総務リードが反対、審議塩漬けで廃案。
  民201中賛成はたった8といわれる。下院院内総務のペロシすら反対。
  共和党も100人以下しか賛成せず。

 2007年にファストトラックが失効して以来、アメリカの政府は議会から通商交渉権限を与えられていない。もともとなかなか授権してもらっていないのが現実であり、オバマ大統領は今回TPA法案が否決されると、任期中にファストトラックをもらえない初めての大統領になるかもしれない。

<採決の前提条件、党議拘束なし>
 そうした中で、私がこれまでにアメリカの新聞、業界紙、TPPに反対するネットワーク等で入手した情報に基づいて、TPA法案の採決を予測すると以下のとおりである。(ただ、TPPを阻止するには残念ながらアメリカ議会がTPA法案を否決してくれることを願う以外になく、私の希望的観測が入ってしまっていることを承知でお読みいただきたい)
 まず、上下院の構成は上院100中、共54・民45・その他1、下院435中、共245・民188・その他2である。従って、TPP法案は日本のようにガチガチの党議拘束で野党共和党が全員賛成すれば簡単に通るのだが、アメリカ議会は民主的なのだ。

<上院は共和党の大半が賛成で可決の可能性>
 民主党の女性大統領候補の1人でもある Elizabeth Warren上院議員はISD等に絶対反対であり、filibuster (議事妨害 アメリカは質問時間の制限がないため、1人で何時間でも質問できる。反対者は審議を延ばし、採決を延ばすためにこの方法をとることができる)を使って抵抗するかもしれないといわれている。このフィリバスターを止めるには60が必要だが、民主党議員はフィリバスターを止めるのに賛成しないとみられ、ウォーレンの長時間質問が行われる可能性が高い。
 しかし、抵抗はそこまでで、共和党の反対者は多くとも茶会の5と製造業州(オハイオ、ペンシルバニア、ミシガン、イリノイ等)の約20のうちの数人に限られると思われる。民主党45のうち、TPA支持者は4分の1にすぎないとされる。委員会では12の賛否は6と6の半々に分かれた。
 こうしたことから票読みをすると、(共54―茶会5-製造業州10≒40賛成、民45―反対31(財政委員等)≒13 → 40+13≒53と)可決の可能性が高い。

<下院は相当僅差>
 問題は下院である。共和党245、民主党188と共和党が戦後史上2番目の圧倒的多数を占めている。可決には半数の218が必要。
 しかし、共和党の保守派(茶会62)は、国家主権(sovereignty)を重視し、ウォーレン上院議員と同様にアメリカ政府、州政府、市が、外国企業に訴えられるISDには反対である。これに雇用喪失を心配する製造業州の約52の中からかなりの反対者が出るとみられる。また、移民問題やキーストン・バイプラン問題で拒否権発効をちらつかせる尊大なオバマ大統領に、これ以上の権限を与えることを潔しとしない議員も多くいる。かくして60近くが反対に回るとみられている。
 一方、労働者、家族農業者、環境団体、消費者団体等を支持母体とする民主党は、大半が反対である。しかし、ビジネス重視するニューデモクラット41と財政支出縮小を唱えるブルードック14の2つのグループは、主張が共和党に近く、ここから数10の賛成が出るといわれている。ただ、レビンをはじめとして2011年に米韓自由貿易協定を支持した多くの長老議員たちも、ファストトラックには反対を表明している。従って、賛成は今のところ15人程度には達しないと見込まれる。こうしたことから票読みすると、(共245-60(茶会・製造州)≒185賛成、民賛成15→185+15=210)否決される可能性が高い。

<今後の修正協議とロビー活動の影響>
 ただ、農業界、保険業界、薬品業界等TPP推進派のロビー活動が繰り広げられており、賛成に回る者が出てくる可能性もある。
 この予測が崩れる第一の可能性は、オバマ政権が何が何でもTPA法案を通すために、民主党議員に大妥協して為替操作と貿易調整支援を大幅に認めることである。これにより懐柔された民主党がなだれを打って賛成に回る。アッという間に成立してしまう。
 そのかわり、日本はアベノミクスの唯一の成功である、円安誘導による輸出拡大が為替操作と判定され、制裁を受けることになる。これでは何のためのTPPかわからなくなり、アベノミクスの矛盾が露呈する。

<共和党保守派の寝返りもありうる>
 この予測が崩れるもう一つの危険は、共和党保守派が賛成に回ることである。
 その言い訳なり大義名分は、アメリカと日本だけが参加しないアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗するためには、日米が共同してTPPを成立させなければならない、というものである。オバマ大統領も「中国のような国ではなく、我々が世界経済のルールを書いているとはっきりさせないといけない」と、保守派の支持を得んとしている。
 非常に情けないことだが、日米が交渉すると二言目にはアメリカに守ってもらっている見返りに、日本が理不尽な妥協をしなければならないという、もっともらしいご託宣が出て来る。こうした交渉は、日米構造協議(2+2)でやればいいのであって、経済まで持ち込むことはごまかしである。もうこんな卑屈な交渉はやめにしなければならない。

2015年04月24日

【TPP交渉の行方シリーズ32】自動車交渉でも原産地規則で攻められる日本‐貿易立国も危機に瀕す‐15.04.24(4月-6)

<ベトナムの繊維製品で問題となった原産地規則>
 TPPの中ではRule of Origin(原産地規則)は、ベトナムの繊維で問題となった。ベトナムも繊維製品の原料である布や、糸は中国から輸入している。安い労働力を活かして繊維製品を作り、アメリカに輸出している。アメリカはこれに目をつけ、ベトナムで生産された糸・布でもって作った繊維製品でなければ、関税ゼロの恩恵は受けられないと主張し始めた。TPPに加入していない中国がメリットを享受してはならないというものである。
 ただ、アメリカにとってベトナムの貿易量はわずかであり、たぶん最終局面ではさっさと降りて妥協が成立しているに違いない。

<自動車協議でも攻められる日本>
 ところが、今、日米の二国間の自動車協議で、これで日本が攻められているということが4月10日のINSIDE U.S. TRADEで明らかになった。
 日米自動車協議は、自動車あるいは日本の自動車部品に関する関税2.5%、トラックの25%をどのように削減するかといことで、日本が攻めるべきポジションにあった。ところが、農産物協議ばかりでなく、自動車協議も揉めていると報じられていたことに疑問を感じてはいた。ただ、日本も厳しい安全基準や環境基準が非関税障壁だと攻められているぐらいとしか思っていなかった。ところがいつのまにか攻守所を変えて、自動車についてもアメリカ側が厳しい原産地規則の履行を迫っていたのである。そして、悪いことに秘密交渉とやらで、この事実が少しも表に出てこなかったのだ。

<日本のEPAにもある原産地規制>
 日本が各国とEPAを結んでいる時も、40%以上がその国の製品でなければ、その国の製品として認めないことになっている。これが自由貿易協定の雛形であるNAFTAは62.5%で行われてきている。
 TPPや日米二国間協議におけるアメリカの主張のバックにAFL-CIO(全米労働者総同盟・産業別会議)がいる。NAFTAにより自分たちの5百万人の職を失ったと言われており、それに懲りたAFL-CIO傘下の全米自動車労働者組合(UAW)、統一鉄鋼労働者組合(USW)、機械航空宇宙労働者協会(IAMAW)が、国内の雇用喪失を拒否し、むしろ創出することにこだわったのであろう。NAFTA並の62.5%を要求し、8年後には75%まで徐々に引き上げていくことを求めているという。

<日本の部品工場の海外進出を逆手にとるアメリカ>
 アメリカは日本が急速に原材料・中間財の製造を海外に移転していることを知っている。日本の自動車メーカーのサプライチェーンは、タイに多くあり、インドネシア、中国、韓国にも散らばっている。これらTPPの非参加国から輸入した部品で作った、日本製自動車は日本製品とみなされないことになる。ややこしい計算の仕方も、NAFTAは純コストで計算し、日本はFOB方式ですべての支払う料金を元にしている。FOB価格にするか純コストにするかどうかということでも、せめぎ合いが行われているようである。
 この結果、へたをすると、日本はやむをえず、アジアのTPP非加盟国に換えてアメリカの高い中間財(部品)を使わなければ日本車を造れなくなってしまう。こうなればオバマの狙い通り、TPPでアメリカの仕事を増やし、輸出を増やすことにつながる。どこまでもしたたかなアメリカである。日本の足元を突いてきたのだ。これは、2.5%の関税どころの話ではなく、はるかに重大な問題である。

<自動車業界は原産地規制の厳格化に反対>
 ただこのことについてはアメリカの自動車工業政策協議会(AAPC)も反対している。なぜなら62.5%の原産地規則とそれを検証する事務に悩まされてきたからである。この点については、アメリカの自動車工業界では、労働者側と経営者側の意見がちがっている。しかし、2年後の選挙を見据えて基盤の労組の意に沿って動く民主党議員の要求を聞かなければ、TPAを通せないので、USTRは労組側に立って交渉している。

<TPPのためにどこまで犠牲にするのか>
 これがいかに大事かということは、このルールがなにも自動車だけではなく、日本の全工業製品に適用されるということである。つまり、日本のこの10なり20年間の部品工場の海外移転という変化を見取ったアメリカの賢い要求が、原産地規則の厳格化要求である。ところが、このことは時事通信がちょっと報じただけで、他のマスメディアは何も書かないでいる。産業界もあまり問題視してはいないようである。このことが不思議である。
 私は、農産物ばかりでなく、工業製品の世界でもこれだけ犠牲にしてTPPを纏めなければならないということはとても理解できない。コメまで譲り地方が崩壊し、日本の貿易立国という姿も歪んでいくとしたら、日本は一体どうなってしまうのだろうか。やはり、TPPは断固拒否しかない。

【TPP交渉の行方シリーズ31】TPPに入った為替(通貨)条項‐国家主権を踏みにじるアメリカの主張‐15.04.24(4月-5)

<かつては中国等が標的>
 為替操作条項については、TPP交渉の行方シリーズその20(14年12月6日)にもうすでに書いているが、これが再びTPAの中に書き込まれている。そもそもこの為替操作というのは中国が「不当に安く評価し、アメリカに輸出洪水をしている。中国はけしからぬ」ということで言われるようになった。1990年代のことで、クルーグマンが後押しした。他に台湾・韓国が為替操作国に認定されたことがある。しかし、日本は対象にされたことはなかった。

<TPPとともに日本が標的>
 ところが最近TPPにからみ、俄然日本が対象にされだしたのである。2013年4月アメリカの自動車業界は日本が意図的に円安にし、日本の自動車メーカーの競争力を高めていると難癖をつけだした。それに応じる形で、レビン下院議員(民主党ミシガン州)が日本が為替操作をしていると公然と批判し、16人のミシガン州選出議員団がTPP交渉でも為替操作についても問題にすべきだと主張し始めた。さらに5月には、アメリカの企業・労働者・農業経営者に公平な場を確保すべきだと言ってディンケル(民主党ミシガン州)・クロフォード(民主党アーカンソー州)等超党派議員団の200人が大統領に書簡を送っている。
 14年になってもマット・ブラウンAAPC会長が、「為替操作によって、最も有用な貿易黒字も台無しになりかねない。TPP最終合意には政治介入でなく、市場が為替レートを決めるという規定が必要だ。外貨保有や外国資産家介入を透明化するよう、日本にだけでなくTPP加盟国に要求し、違反には関税上の優遇措置を最低1年間停止すべきだ」という主張を繰り返した。1ドル78円から120円への円安は関税が40%近く下がったと同じ効果があり、アメリカの嘆きもよくわかる。

<アメリカの通貨当局は反対>
 しかし、流石政府内でも拒否され、オバマ大統領は歯牙にもかけず、イエレンFRB議長も金融政策に支障を来しかねないと拒否している。TPAを通さんがために、全く同じ条文で非常にフワッとした書き方で、TPAには入っているが、政府間ベースで要求されたことはない。当然である。今どきTPPに入れるとなるとこれからまたそのことについて交渉しなければならなくなる。TPAに詳しい規定を入れることも考えられたようだが、抽象的なものにとどまっている。従って、三番目の道、やるなら別途法律をきちんと作らなければならないということになる。

<アベノミクスの否定につながる>
 但しそこが問題で、レビンの案はピーターソン国際研究所の論文に基づいており、序文では経常黒字が存在し、6カ月部分の輸入代金に相当する外貨準備を持つ国がその対象国とされている。そして罰則は、関税をWTO合意水準に戻すこと、それから為替介入をして、この為替を輸出競争力を失う水準になる姿にまでもっていくことになっている。このルールを当てはめると、日本は2005年から2010年の毎年この対象国であり、マレーシアは3年間、ペルーは3年間、シンガポールは1年間対象候補になる。それよりも何よりも、円安誘導で輸出増大しているアベノミクスそのものを否定されることになる。

<ISDに次ぐ国家主権の侵害は受け入れられず>
 4月21日にはルー財務長官が議会幹部に、TPPに為替操作を禁じる強制力のある条項を盛り込もうとすれば、交渉が困難になる、と書簡を送っている。また、ファーガソン ハーバード大教授は、「過去20年間GDPが増えていない日本はある程度仕方がない」と円安を認めている。従ってこのような荒っぽい為替操作条項は、TPPにはとても入る見込みはないとは思われる。4/24の内閣・農水連合審査会で甘利大臣に質したところ、TPPの交渉には持ちこまれていないと明言した。アメリカの学者のほとんどは、自分の首を絞めることになると反対している。
 ただ、将来これが本当に実現するとなると大変なことである。加盟国の国家主権を侵すことになってしまう。こういったことまで妥協してTPAを進めるべきかというと私は甚だ疑問である。

【TPP交渉の行方シリーズ30】フロマンの格好付に手を貸した深夜の日米協議‐コメを譲るのは国会決議違反‐15.04.24(4月-4)

<アメリカの希望により開かれた日米閣僚会合>
 4月19日フロマンUSTR代表が日本に来て、日米閣僚協議、すなわち甘利・フロマンな会合が開かれることはかねてから決まっていたようである。関係者によると、これほどスムーズに事務方の筋書き通り進んだ閣僚会合はなかったという。その後は、事務方を入れずに2人で交渉を続け、合計10時間を超え深夜に及んだが、前回のように甘利大臣が怒って席を立つことはなかった。フロマンが折れ出したのである。アメリカが動かなければ、交渉が動かないのは今も昔も変わらない。
 それもそのはずである。今回の会合は、アメリカのたっての願いで開いたものだからだ。目的はただ一つ、TPA法案を通すために、フロマンが日本でも日米閣僚会合を開き、日本に対してアメリカの要求を突き付けていることを知らしめるためである。

<あの手この手の議会対応>
 TPA法案を通すために既に、情報公開を大幅に認め、民主党反対議員とそのバックにいるAFL-CIO向けに、貿易調整支援法案TAA(Trade Adjustment Assistance)をTPA法案と同時に審議することを約束し、更に日米二国間協議において厳格な原産地規則を要求している。また、レビン等ミシガン州選出議員達がだいぶん前から要求している為替操作条項をTPAに入れている。これら全てTPA法案を通すための大デモンストレーションである。

<変身するTPA法案>
 我々はTPA法案(Trade promotion authority)と言っているけれども、その名前もちゃっかり変えられている。2002年は Bipartisan Trade Promotion Act(超党派貿易促進法)だったが、昨年のキャンプ・ボーカス法案はTrade Priorities Act(貿易優先事項法)となっており、今年4月16日に両院に提出されたハッチ・ライアン法案はthe Bipartisan Congressional Trade Priorities and Accountability Act of 2015 と変わっている。直訳すると2015年貿易優先事項・説明責任法である。
 つまり内容が大きく変わっているのである。その最たるものは、TPAはファストトラック(一括承認権限)を与える法律だと言いながら、実はそうではなく、議会に優先すべき報告事項等を明らかにし、USTRにきちんと説明をさせるという内容になっている。更にひどいのは、ファストトラックをあげる法律は実は、政府の交渉が議会の要件にそぐわなければ、議会がこれを撤回する権利を与えていたのである。まさに羊頭狗肉の法律である。

<安倍・オバマ会談も演出の一つ>
 アメリカはあの手この手でTPAを通そうとしているのである。その一環としてもう一つ重要な役割を果たすと思われるのが、日米首脳会談である。それまでに甘利TPP担当相が言うような「首脳会談で進展を歓迎できる」といったような、前向きな言葉を両首脳から発してもらうためのお膳立てである。あれもこれもすべて、TPPがまとまりTPA通りそうだという空気を意図的に醸成せんとしているのである。政治、特に外交はショー的色彩を帯びてくるが、その最たるものである。

<コメ譲歩は公約違反、国会決議違反>
 こうした中で、コメも粗雑に扱われている。米国側は以前から食用17万5千t、加工用など4万tの計21万5千tの輸入拡大を要求している。これに対して日本は、ミニマムアクセスの枠外で5万t程度に限定する食用米の輸入にとどめんとしており、日米間に大きな隔たりがある。米の消費量は毎年8万tぐらいずつ減り続けている。日本では生産調整をし、米から飼料米にシフトするということをしながら、農家には米を作らないように仕向けている。それにも係わらずアメリカから20万tも輸入しようというのである。明らかに12年の選挙時の「聖域なき関税 撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」という公約の違反であり、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めない」といっていた国会決議にも違反していることになる。
 牛肉や豚肉については細かいことは触れないが、新聞報道によると日豪EPAがレッドライン(譲れぬ最後の線)だといいつつ、それを大幅に上回る妥協をしているらしい。乳製品についても同様である。日本でも畜産物がコメを凌ぐ生産額に達しているが、ここらで譲歩すると北海道や南九州はズタズタになってしまう。ただ一つ手を付けられないでいるのは沖縄絡みの砂糖だけである。

<アベノミクス農政にも矛盾する>
 WTOも関税ゼロなどいっておらず、関税があって当然なのだ。そもそも関税をゼロにするTPPは国境をなくすことであり、とても受け入れられるものではないと思っている。日本の国内の政策、例えば10年で農業所得倍増などという根拠のないアベノミクス農政にことごとく反する結果になる。もうこんなことに振り回されるは最後にしたいものだ。

2015年04月22日

【TPP交渉の行方シリーズ29】TPA成立後にTPP、日米二国間協議が常識- 10ヶ国は一にTPA二に日米協議の成立、そして最後がTPP-15.04.23(4月-3)

<各国とも米にTPAの成立を促す>
 4月16日、やっとTPA法案が提出された。この点について各国は厳しく態度をとっており、TPAが通らなければTPPの妥結はないというのが常識である。
 グローサーNZ貿易担当相は3月15日ワシントンに乗り込み、「TPAを通さないとTPPはWTOドーハラウンドと同じく漂流する(stagnate)。TPA通過までは各国(特に加・NZ)は最後の提案をしないし、TPA未成立を遅延の口実に使う。議会に条文を変えられてはたまらない。TPAを通さないとアメリカは自由貿易について指導力を失う」とアメリカに警告を発した。ロブ豪貿易相も「TPAの目途が立たないとTPPは2017年にずれ込む懸念がある。急がないと(AIIB アジアインフラ投資銀行の設立により)中国主導のルール作りが進むことになる」と、もっと露骨にアメリカに圧力をかけている。

<甘利大臣もかつては正論、しかし今はぐらつく>
 ところが3月6日、大江首席交渉官は、日米二国間協議がTPAに拘わらず、妥結しても良いと失言した。この後甘利TPP担当大臣は「TPPの妥結にも日米二国間協議の合意にもTPAの成立が前提である」と言い直した。「アメリカ政府、議会はTPAを通す最大限の努力をしてほしい」と言い、ファイナンシャルタイムズ紙に「珍しく強気だ」(The rare direct appeal)と論評されている。当然のことである。共和党も一貫してTPA成立前のTPP合意は認めていない。それにもかかわらず、今そこが不鮮明になってきている。

<TPAの次は日米二国間協議>
 日本以外の10交渉国は、TPPの妥結には、一つはTPAの成立は当然として、次に12ヶ国の中で群を抜いて大きな経済大国、日米両国間の協議が整うことにかかっていると主張している。そのとおりであろう。特に農産物輸出国のオーストラリア、NZ、カナダは日本の農産物協議をじっと見守っている。アメリカに適用される関税やその他のルールを即、自分達にも適用せよと迫るのは当然である。

<アメリカから見ると日米二国間協議決着が先>
 しかしアメリカ側の議員に言わせると、TPAを通すには日米二国間協議がアメリカの圧勝のかたちで終わり、TPPの交渉妥結もアメリカの主張が相当通ることを前提としている。
 つまり、日米両国ともお互いにあっちが先だこっちが先だと言い合っているのだ。まずいことにTPAは一括承認する権限を与えている法律にもかかわらず、議会対策のためTPAが求める内容を政府が満たすことができなかった場合には、TPAの手続きを取り止める、という条項が入ってしまった。つまり後で覆すことができるというのだ。
 こんな条文がなくとも、既に米韓FTAではせっかく決まったものをアメリカの議会の主張により再交渉させられている。このように再交渉を勝手にやらされては、相手国はたまったものではない。だから各国ともTPAの成立を主張しているのだ。

<ファストトラックを与えるTPAが交渉阻害要因になりかねず>
 しかし、アメリカはどこまでも勝手である。TPAを通すためには議会のいうことを聞かねばならないということで上記のような無理な矛盾する条文も入っている。この条文が入ったがために、各国が態度を硬化させ、そんないいかげんなファストトラックではとてもTPPを可決できないと、言い張ってくる可能性もある。日本も当然再交渉には応じられないという主張をすべきである。
 日米で交渉が妥結したら、日本の議員が騒いで条文を覆すなどということはしてはならないのは当たり前だからだ。ただそのためには、条文の内容をあらかじめ知っておくことが必要だが、我々国会議員がさっぱり条文を見られない今の状況では、反対せざるを得ない。

<週末の日米閣僚会合もアメリカ議会対策の一環>
 この4月19日(日)20日(月)、二日間にわたって行われた日米二国間協議も、甘利担当大臣の言葉ではないが、とてもすべてが解決するような状況ではない。TPAを通すためにはアメリカ議会に対して甘利・フロマン会談をやり、日米二国間協議も進みつつあるというシグナルを送るための場造りが本音だろう。4月末の日米首脳会談でそこそこ格好のいいことを言うために慌てて二国間会談を行っているだけのような気がする。

<TPAなければ、TPP妥結も二国間協議合意もなし>
 TPAが成立しないままにTPPを妥結することも日米二国間協議をまとめることもしてはならない。
 そのことを先週の経済産業委員会で西村担当副大臣に「TPPも日米二国間交渉も、TPAが成立しなければ絶対ダメだ、と甘利担当大臣は発言しているし、私もその通りだと思うが、それでよいか」と強く問い質したが、答弁ははっきりしなかった。しかし、今現状を見ると甘利大臣も少々なまくらになっており、TPAの成立から一歩後退し、「見通しがきちんとつくこと」と言い出している。その見通しの一つがTPA法案の提出である。しかし、ここが違うのは、昨日のメルマガ・ブログで述べたとおりである。

<TPA法案提出は一歩前進だが成立とは別>
 初期の民主党政権時代は40%に満たない通過率であったが、日本では内閣が法案を提出すれば相当の確率で通る。しかしアメリカの場合は、各議院が簡単に法案を提出できることから1議会1万件も提出される。しかしその通過率は2~5%つまりせいぜい200~500本で、10%になることはない。それを日本の感覚で、提出されたからもうそろそろ成立などと甘い見方をしてはならない。その意味で、4月17日菅官房長官がTPA法案の提出を「前向きな動きを示すもの」と粛々(?)と言うのは、日米両政府の馴れ合い以外の何物でもない。

<TPA未成立下では交渉するな>
 また、上院が通ったから下院もまもなく通るとすぐ言われがちだが、これも違う。ハッチ上院財務委員長は23日には審議を始めると言っており、比較的スムーズにいき、上院は通る可能性が強いが、下院はそう簡単ではない。いや下院はとても通りそうにない。一応両院議員協議会はあるが、日本同様に機能していないので、下院が通らなかったら成立しない。
 だから我々はアメリカ側にピン止めすべく、TPAが通らなければTPP妥結もないし、日米二国間協議の終結はない、と明確に言っておく必要がある。それなしに妥協することは絶対に許すべきではない。

<4月19日、20日の甘利・フロマン協議は日米首脳会談の前座の芝居にすぎず>
 4月19日の午後から始まり、20日には未明まで行われた日米二国間協議も、終わってみればさしたる前進はなかったとみられている。私が推測するに、今回はTPA法案を通しやすくするため、フロマンUSTR代表が日本に出向き、叩きまくっている(?)というポーズをとる必要があり、そのために計算づくで開催されたものだろう。つまり、日米首脳会談前に、交渉の進展を演出したのである。日米両政府とも必死でTPP交渉妥結近しというイメージ作りに奔走している。政治もそして外交もショー的様相を呈してくることが多い。我々は、こんな子供だましに惑わされてはならない。

2015年04月21日

【TPP交渉の行方シリーズ28】TPA法案提出は成立の見通しとは別物-TPAを通すために焦るフロマン-15.04.21(4月-2) 

<TPA法案がやっと提出される>
 与野党の協議はさっぱりまとまらず、2月に提出すると言われていたTPA法案が延び延びになっていた。ところが4月16日、審議もしないのに公聴会を開くという変則的なスタートを切った。拙速な審議に批判が続出しているようである。けれども、ハッチ上院財政委員長(共和党)、ワイデン筆頭理事(民主党)、ライアン下院小委員長(共和党)の3人の協同提案で、且つ上院下院に同時に提出という変則的な形になっている。焦りに焦った上での急ごしらえの提出である。

<民主党の大半が反対・共和党の保守派も反対>
 よく言われているように、民主党には反対が多い。それに対して共和党には賛成が多い。但し、共和党の中でも保守派(ティーパーティー)を中心に反対も数10人いる。
 民主党の反対する理由は、TPPの雛形であるNAFTAにより、正確な数字は分からないが、アメリカの雇用が500万人ほど失わされたことが一番である。民主党の支持団体であるAFL-CIO(アメリカ労働総連盟産業別会議)は挙げて反対している。つまりTPPはオバマ大統領のいうように雇用拡大にはならずむしろ雇用損失につながることを心配しているのだ。この法案に賛成するならば、政治献金もストップすると言って強行な主張を繰り返している。
 共和党は、ISDをはじめとしてアメリカの主権を大きく損ねることを嫌っている。自由貿易どころの話ではないというものであり、極めて真っ当な理由である。
 上院議員の選挙は3分の1ずつ2年毎に行われるが、下院議員選挙は2年毎に行われる。従って下院議員の方が有権者の声に敏感である。民主党でもある程度賛成がおり、ワイデン議員は賛成だったが、地元オレゴンの労働組合等から突き上げをくらい、相当ぐらついていた。

<上院は通っても下院は通る見通しは低い>
 上院特に財政委員会は通り易いと言われている。だからといって上院自体がすんなり通るとは限らないが、共和党が54議席であり、今のところすんなり通ると見込まれている。しかし問題は下院である。2年毎に選挙が行われるので、2016年の大統領選挙と同時に全員が変わることになる。共和党は244、その内ボーナー議員をはじめとしてオバマ大統領に得点させたくない者が60くらいいる、民主党からかなりの数(30近く)の賛成がないと過半数(218)にならないが、ラーソン議員(民)によると今のところ民主党下院議員で賛成するのは10~15で止まっている。最近では2011年民主党はオバマ政権下の韓国・コロンビア・パナマのFTA実施法案には17が賛成しながら、FTAそのものには25が賛成しただけである。今度はそれを下回る可能性もある。
 このままいけば、情報公開によりひどい内容を知った共和党の方からも更に反対者が出る可能性もある。

<民主党への飴、貿易調整支援>
 アメリカ議会ではTPAを通すためにあの手この手の手段が講じられているが、その最たるものは貿易調整支援(TAA:Trade Adjustment Assistance)と言われるものである。労働者が雇用を喪失した場合に、保険、他への職業転換とそのための職業訓練を受ける手当等が支払われるもので、民主党議員に対する懐柔策であることは明らかである。2021年まで有効としているが、共和党は財政支出が嵩むためあまり乗り気でない。

<焦るオバマ大統領>
 ファスト・トラックと呼ばれる一括承認の仕組みには、過去も相当な紆余曲折がある。1998年のクリントン政権時代には与党民主党は29しか賛成せずに否決されている。2002年のブッシュ政権時には民主党は25の賛成でやっと認められたが、それも2007年失効しそのままになっている。その結果、オバマ大統領はファスト・トラックの権限を持ったことのない唯一の大統領であった。
 オバマ大統領はもともとNFTAの見直しを公約にしていたし、通過政策には熱心ではなかった。ところが、今やTPPを2期目の遺産(legacy)にしたいと,盛んにTPAを通そうとしている。

<政府挙げての議会対策>
 従って3月16日の公聴会にもフロマン代表のみならず、ルー財務長官、ビルザック農務長官の3人が出席している。農産物貿易問題があるから、ビルザック農務長官が出席するのは当然であるが、ルー財務長官は、にわかに大問題となりつつある通貨操作条項についての説明をしなければならないために出席した。
 詳細は別稿に譲るが、通貨操作条項は主としては共和党保守派に対する配慮である。前述のとおり、情報公開についても今まで頑なに拒んでいたものを、一気に公開するといった方向に転換した。TAAを含め全てTPAを通さんがためであり、アメリカ政府を挙げて議会対策をし始めている。しかし、私にはあまりに拙速で、遅きに失しているような気がするが、それでも国会決議や選挙公約もなんのその、勝手に妥協を重ねる日本政府よりも誠意がある対応である。

<アメリカの法案成立率は僅か2~5%>
 しかし、TPA法案の提出と通過は全く別物である。2014年の中間選挙で上下両院とも共和党が半数を占め、議会のねじれは解決したが、大統領と議会与党は別という日本ではあり得ないねじれが生じている。アメリカも法案の成立のためには上下両院の可決が必要なのは、日本と同じだが、オバマ政権下ではねじれがあったとはいえ、第113議会期(2013~14年)では、成立は200弱に留まり、1990年代の各議会期(2年間の成立法案400~500本)と比べると、「最も生産性の低い議会」と言われてきた。
 また、三権分立の徹底するアメリカは、法案提出権は議員にあり、毎会期1万本近く提出される。TPA法案は昨年は提出者の名をとりキャンプ・ボーカス法案と呼ばれ、今はハッチ・ワイデン法案と通称されている。ところが、提出法案に対する成立率は僅か2~5%に過ぎず、日本とは比較にならない。
 日本政府は、TPAが完全に両院を通過しなくとも、成立の見通しがつけばよいなどと軟弱なことを言い出しているが、法案を提出したからといって成立の見通しが立ったとは全く言えないことを肝に銘じないとならない。

2015年04月20日

【TPP交渉の行方シリーズ27】 情報開示に取り組み始めたアメリカと頬被りする日本 -議会対策のために背に腹は代えられず-15.04.20(4月-1) 

 今夕〈4/19(日)〉甘利・フロマン日米閣僚会合が開かれる。それは安倍首相が訪米し、辺野古移転問題もあるがTPPについても再び国益を損ねる発言としアメリカに妥協しかねない。このため、今日から連続でTPPについての私の収集した情報をお知らせし私の予見、考えを示していく。

<アメリカ情報公開は当然のこと>
 3月の18日、民主党向けにフロマンUSTR代表とルー財務長官が説明会を開いた。その席でフロマン代表は前例のない前向きな姿勢を示すと言って各議員にTPPの協定の条文を全て開示することを約束し、既に何人かの議員が見ており、多くの議員がその事実を明らかにしている。そのうちの一人Delauro(デローロ)議員(女性)は、「行ってみたところ非公開(confidential)と分類されているだけで、極秘(secret)になっていない」から、議員は誰もが見られるのでTPP協定条文を入手するべきであると勧めている。当然のことである。

<ファスト・トラックと秘密交渉のせめぎあい>
 アメリカの国会議員は日本の国会議員のようになまくらではない。たかが関税の上げ下げぐらいの時はUSTRの役人に任せておいてもよいけれど、アメリカ国内のルールを決めること、例えば特許、環境、労働法制、その他諸々法的制度をなぜUSTRの役人に任せられるのか、それを決めるのは我々であると怒っている。TPPの交渉を全て秘密にしておいて勝手に決め、できあがったものを国会議員が承認するかしないか決めるだけ、というのは許し難いというのだ。つまりファスト・トラックと呼ばれる一括承認のルールはあるけれども、秘密にしっぱなしのままTPPを一括承認するというのは許さない、そんなものは審議できるかとTPA法案の提出を認めていない。
 USTRは600の関係企業、団体等には、関係文を見せながら相談していたけれども、議員はずっと蚊帳の外であった。途中であれこれと口を挟まれると想い切った交渉ができないからである。

<議会対策のために急転直下の協定案文の公開>
 しかし、ここにきてTPA法案を通さなければいけないということで、反対が圧倒的に多い民主党議員を対象に急に熱心に議会対策をし始めた。国会議員の反対ムードを一挙に改善するために、秘密交渉に不満が集中していることを考えて一気に情報開示に踏み切ったようだ。アメリカはいつもやることが勝手である。目的達成のためには、前言を平気で翻すことも全く意に介さない。今回の一人芝居が典型例である。その文章は以下の通りとなっており、完璧に誰もが見ることができるようになっている。当然のことだ。

<USTRの約束>
 政府は国民の代表である国会議員と緊密に協力して我々の目指す野心的な貿易協定を追求している。この協力には以下が含まれている。

・すべての国会議員に対して、交渉テキスト全文へのアクセスを提供する。議員は国会の中で 都合のよい時にテキストを見ることができる。また、しかるべきセキュリティー許可を得た議員のスタッフを伴って閲覧することもできる。

・TPPに関してだけでも1700回近くの議員へのブリーフィングをもってきた。またTTIPやTPA、AGOAその他につ いてもそれ以上行っている。

・国会議員に対して、交渉テキストのナビゲーションのために、TPPの各章の要約版を提供する。

・国会議員に対して、議会の委員会とともに作成した交渉での米国の提案を、交渉テーブルにつく前に見せる。

・(USTRは)議会とともに働き、あらゆる段階において議会のフィードバックをもらい、交渉内容を更新していく。

<しらばっくれる日本政府>
 ところが、このことを先の経済産業委員会で西村康稔内閣副大臣に問い質したが「変わったことは聞いていない、今までと同じだ」といった、しらばっくれた答弁しか返ってきていない。日本の議員たちは、与党自民党の議員の数人ぐらいは見ているのかどうか知らないが、膨大な内容でありとても読みこなしてはいまい。
 こうした時に投資関係(ISDが含まれる重要な部分)が、ウィキリークスでリークされることになり、こんなにひどい内容なのかということで、アメリカでは改めて大問題になっている。私はこの調子でTPP協定条文が開示されればされるほど、大変な問題になっていくのではないかと思っている。そして、4月16日に提出されたTPA法案でも議会に気を遣って交渉妥結の前に大統領が議会に通告しTPPの全文をインターネットに掲載して誰でも見られるように公開することを義務づけている。

<抗議もしない軟弱な姿勢>
 それにもかかわらず日本政府は頬被りしたままであり、少しも情報開示をしようとしない。私はアメリカだけなぜ勝手なことをするのかに対して、なぜ抗議しないのかとも追求した。なぜなら、今まで日本の新聞に交渉内容がよく出るとアメリカ側から小言を言われることのほうが多かったからだ。
 韓国でいかにその秘密性が酷かったかという例がある。
 米韓FTAも同じく秘密裏に行われ、ろくに審議もせずに国会で承認された。皆さんの記憶にはもうなくなっているかもしれないと思うが、採決に当たり李明博大統領が焦って強引にやろうとしたため、野党が怒り催涙弾が飛び交う中で行われた。揉めるのは当然である。国会議員が殆ど内容を知らず、750ページに及ぶ英文のテキストを2時間か3時間で見て、そして採決になったのだという。

<TPPは平成の不平等条約>
事実かどうかわからないが、我々が講師として呼んだソン・ギホ弁護士は、韓国の国会議員達に英語が堪能な人は多くない、だから英語が解らず、従って内容も解らずに賛否を決した、と自嘲気味に話していた。
TPPはアメリカのルールを11ヶ国に押しつける嫌な協定であり、不平等な協定である。情報公開は既にその不平等さが現実に現われている。これではISDといい知財といい、アメリカが縦横無尽に振る舞うのは目に見えている。

2015年04月19日

【TPP交渉の行方シリーズ26】 山岸一雄「大勝軒」社長に見る日本の美風 -TPPで日本の食をアメリカ化されてはたまらない- 15.04.19

<ファーストフードの席巻は許さず>
 私は「TPP絶対反対」で相変わらず「NO!TPP」バッジと「STOP TPP」ネクタイを締めて活動をしている。よく例に出すのは、このまま放っておくと日本の味が失われ、ほとんどの食堂が全国チェーンの食堂になってしまうということである。それも日本の全国チェーンならまだしも、マクドナルド、デニーズ、ケンタッキー・フライドチキンに代表されるように、アメリカのファーストフードに席巻されてはたまらない。

<竹馬の友が拒絶反応を示したアメリカの外食>
 1977年の年末、私の中学の同級生2人がアメリカ留学中の私を頼って遊びに来たが、最後にもうアメリカの食堂にいくのは嫌だと言い出した。味も合わなかったようだが、チップの関係があったり、何よりも嫌だったのは「wait to be seated」ということで、入口で待たされ、ウェイターかウェイトレスに席へ連れて行かれることだった。まずい上に「ヘイ、いらっしゃい」「ありがとうございました。またどうぞ」という掛け声もなく、つまらないというのだ。最後のディズニーランド近くのホテルでは2人ともゴネて外出せず、母から私への土産として預かってきた野沢菜をハサミで切って酒の肴にして過ごす羽目になった。優しい二人は、せっかくの母の土産を食べてしまったことを母には内緒にしておいてくれと懇願した。

<アメリカのファーストフード>
 もうその当時からアメリカは全国チェーン店の味もそっけもない店ばかりになっていたのである。味も画一的な上に、「おもてなし」の精神が全く欠けていた。マクドナルドは接客マニュアルが徹底しており、「次何にいたしますか」といったロボット的対応はできるが、心の通うようなことなど会話は望むべくもない。14年7月には、中国の取引工場で期限切れ鶏肉の使用が発覚し、アジアを中心に売り上げが減少した。その後、異物混入も相次いで表面化したため、日本マクドナルドは、15年の赤字が380億円となることを明らかにし、131店舗を閉鎖すると発表した。日本では今後拒否反応がますます激しくなるだろう。一度失った信頼はなかなか取り戻せないものだ。

<故郷の誇り山岸一雄大勝軒社長>
 その正反対が山岸一雄大勝軒社長の生き方である。私には面識がなかった。しかし、私と同じ小学校の区域、中野市壁田で生まれ、隣りの山ノ内町で育ち、穂波中学卒業後東京へ行き、ラーメン屋で修業し独立。つけ麺を考案し、東池袋で大繁盛することになった。その独特の味で弟子を100人つくり、「暖簾分け」をした。キャノンの御手洗富士夫会長等多くのファンをとりこにした独特のレシピも平気で公開した。何事につけ故郷を依怙贔屓することもあるが、それ以上に私はこうした山岸社長の生き様に共鳴し、親近感を持ち続けてきた。

<TPPに対峙する山岸社長の日本式生き方>
 大勝軒の成功もTPPを推進する産業競争力会議や規制改革会議の手になると全く違った展開になる。まず、つけ麺のスープの味で特許を取り、全国チェーンを築き上げ、世界に日本の和食の味を輸出することになる。
 ところがラーメンの神様は、全く真逆の生き方をした。自分の味が広まってほしいと思ったのだろう。秘密にして自分だけ富を得ることになど興味がなく、レシピを公開し、次々と弟子を造っていった。地元紙「北信ローカル」に、掲載された幼馴染みの宮入廣司さんの追悼の記は、山岸さんがガリ版刷りの学級新聞を放課後に先生に代わって作り、みんなをまとめていこうとするリーダーシップのある人だった、と伝えている。
 御弟子さんたちに惜しみなく自分の極意を伝えた。みんなが幸せになるように考えていたのだろう。80余年の天寿を全うし、先日行われた通夜には、そうした弟子たちのラーメン店の幟(のぼり)が50本以上立ち並んだという。

<信州流・フランス流対アメリカ流>
 山岸社長は北信州で育まれた日本人の優しい精神を持ち続けた人だったのであり、アメリカの押し付けるグローバリゼーションなどには見向きもしなかったのだ。暖簾分けという日本の美風をそのまま守り続けたのである。
 ちなみにフランス人の三ツ星レストランは有名だが、当然のごとく三ツ星レストランのチェーン店はない。味はその店のものであり、その時のものである。アメリカのアングロサクソン流が世界の標準からずれているのである。和食が世界文化遺産となった今、我々は日本流を貫き日本の味文化を守り育てることに意を注がなければならない。

<個人企業が消えていく!>
 世間では、日本人から企業家精神(enterpreneurship)が失われているとよく言われている。例えば、流通業界では、スーパー、コンビニが席巻し、個人営業の小さな八百屋、魚屋、肉屋、呉服屋、雑貨屋等の○○屋が次々と消えていった。
 かくしてまずは横から横へ物を流す流通業界から個人経営が消え、次に外食、そして製造業に及んでいく。最も大規模が相応しくない農業の世界でも、ひたすら規模拡大を求める財界農政が暴走している。
これでは食の世界でもどこでも起業家精神が発揮できまい。気が付いてみたら、世界を股に展開する多国籍企業だけの世界が待っているかもしれない。食の世界くらいはどこの店も独特の味と雰囲気があり、カウンターの向こうにいるおじさんと世間話をしながら食事をし、「またおいで下さい」と言われて帰りたいということだ。

<TPPから日本の食を守る>
 2012年に米韓FTAが発効後、 韓国政府も食堂こそ小企業、個人営業に向いているので、中小企業の育成業種として支援しようとした。韓国風焼肉屋くらいは残そうとする政策に対して、アメリカが米韓FTA違反だとクレームを付けたのである。

<沈みゆく大国アメリカにみる病恨>
私は最近、『ルポ 貧困大国アメリカ』で08年に日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した堤未果氏の力作『沈みゆく大国アメリカ』(堤未果、集英社新書)を一気に読み上げた。オバマケアが保険業界と医薬品業界の儲けにつながるように作り上げられ、それがアメリカを根底から腐らせている。そして次の標的は日本であり、TPPをきっかけにして、日本の医療界になだれ込んでくると警告を発している。
 そしてその中に食品をめぐる恐ろしい話も紹介されている。
 フードスタンプというアメリカ独特の低所得者向けの福祉政策がある。これが人道支援、生活保護の為と、受給要件を緩めて低所得者だけでなく中流にまで拡大された。これで利益を得たのはファーストフード業界、加工食品企業、ウォルマート、そしてカード手数料の入るウォール街の銀行だった。ただ、『ファーストフードが世界を喰いつくす』がとっくの昔に多国籍外食産業の凄まじい強欲さを指摘していた。

<日本とアメリカを同じにしてはならない>
 14年に発表されたハーバード大学公衆衛生大学院の報告によると、過去12年でアメリカ国内貧富の格差は、収入格差でなく栄養格差に行き着いたという。いわゆるジャンクフードが主食化した低所得者層の栄養状況や健康状態は悪化の一途を辿っている。おまけに病気になっても無保険で、ろくな治療が受けられないアメリカは、もう沈みゆく国でしかないというのが結論である。
 日本がTPPを受け入れ、このままアメリカ化していくと、日本には二度と山岸一雄社長のような人が生まれなくなってしまい、食の世界もセブンイレブンやローソンまがいばかりになってしまうのではないかと危惧している。

2015年04月13日

長期低落傾向を脱するには組織も政策も大改革が必要 -立ち位置を明確化し、党名変更を- 15.04.13

 民主党は、14年末選挙においても候補者を立てられず、73議席しか得ることができず、政権交代へ向けて「道遠し」という感が否めなかった。今回の統一地方選挙でも長期低落傾向に歯止めがかけられなかったことを反省せねばならない。

<なかなかできない民主党県議>
 羽田孜元首相が私を政界に誘った時に「民主党はもともと国政政党だ」と述べていた。事実、私が03年衆議院選挙に出馬したときは、長野1区には長野市区に倉田竜彦県議が1人、他には民主党県議はいなかった。長野市区では07年に私が全面的に援助して高島陽子県議を誕生させた。
 北沢俊美県連代表から、中野下高井区で「地元中の地元に民主党県議を作れ」と発破をかけられた。07年中高地区に山本良一氏、11年に宮川好正氏を擁立したがいずれも僅差で敗れてしまった。11年には長野市区でも、倉田県議の他に倉野立人氏と金沢敦志氏を立てたが、残念ながら私が3.11の東日本大震災で長野へ帰れず、二人とも惜敗している。その間にせっかくの高島県議が、北沢防衛相の立候補した10年の参院選で長野県連を飛ばして出馬し、以後民主党長野県連とは縁が切れている。

<県都で10人中10位の当選>
 そして迎えたのが、私にとっては3度目の県議選である。7期28年務めた倉田県議の不出馬により、急遽立候補していただいた埋橋茂人候補が8,536票(10人中10位)を得て、やっと当選することができた。埋橋候補の出馬宣言は2月10日ととんでもない出遅れであったが、経済連(全農)の本部長を務め、農協の職員の労組・農団労委員長の経験もあったことから、農協組織と連合の推薦を受け県都に民主党の議席を確保できたことは喜ばなければならない。私は「農政は国政で篠原、県政で埋橋」とPRし続けた。
 10人の長野市区では私の票数(篠原票 61,441、民主比例 37,853)から割算したら4人の民主党県議がいてもいいぐらいなのだが、なかなかそのようにはいかない。中高地区でははじめて推薦した小林東一郎氏が当選した。

<言い出しっぺなのに女性候補を擁立できず>
 残念だったのは、女性候補を擁立できなかったことである。そもそも私が、参議院・衆議院にも女性候補を、そして県議選にも女性候補を、ということでいつものようにペーパーを書いて男女共同参画委員会や幹部をけしかけていた。詳細な経緯は省くが、海江田代表下で民主党再編のために設置された党改革創生会議(船橋洋一座長(元朝日新聞論読主幹)、山口二郎副座長(元北大・現法大教授))で私の意見がそのまま採用され、民主党は男女共同参画政党を標榜して来るべき統一地方選挙には積極的に女性候補を立てることになった。具体的には県庁所在地選挙区(私の原案では10人区以上の巨大区だったが、大体同じ)に女性候補を立てることが目玉となっていた。
 言い出しっぺなので、私は必死で女性候補擁立を画策したが、最終的には女性候補の擁立を見送らざるをえなかった。男女共同参画等の関係者に合わせる顔がない。

<低すぎる投票率、多すぎる無投票>
 民主党がだらしないという一語に集約されてしまうが、引き続いての投票率の低さは惨澹たるものである。長野県は前回比5.27%減で戦後最後の48.92%と初めて50%を割り込んだ。全国でみても960の選挙区のうち、1/3にあたる321選挙区が無投票であり、全体でも21.94%の501人が無投票で当選している。
 各県でみると香川県は15人が定数の高松市が無投票だったことから、何と41人中27人(65.8%)も無投票当選している。わが長野県は58人中15人(25.8%)が無投票で、私の選挙区でも唯一1人区の飯水地区は3回連続無投票である。1人区は現職の地盤が固まりすぎ無投票になりがちであり、長野県は1人区が多く、無投票が多いのは仕方ないことかもしれないが、好ましくないことである。
 
<足腰が弱い民主党>
 地方議員が少ないということは、まさに民主党の足腰の弱さの表われである。このご時世に民主党公認で出ていただく方には、感謝感激しなければいけない。このことは13年民主党の内部で議論したときに私が重ねて主張したが、当時の選挙関係幹部は、さっぱり公認を増やさなかった。そこを狙われて14年末の総選挙をぶつけられ、敗北を重ねた。
 国会議員選挙でもこの体たらくだから、県議選になれば尚更である。前回選挙の民主党の356議席を下回る345人(前回は771人)しか公認候補は擁立できず、当選は264人にとどまった。長野県でも自民党の20人に対して民主党公認は5人、推薦が6人である。そのうち公認で当選は2人と、3人も落選し、推薦の当選も5人にとどまった。かつて羽田民主党と言われた長野県でこの結果では、政権交代どころの話ではない。一方、自民党は今回選挙で21県で単独過半数を確保したという。国会同様、都道府県議会も1強多弱が定着してしまっている。

<民主党再生には思い切った変革が必要>
 民主党の長期低落傾向には何の変化もみられなかった。14年末総選挙と同様、安倍政権に疑問を呈する有権者の受け皿になれず、共産党にとって代わられているのだ。もともと共産党の強い長野では8人と自民党16人の半分に達している。私は民主党が再出発するには13年初の一連のブログで書いたとおり、野田元首相等は民主党を辞めてもらい、党名を変えるぐらいの大改革以外にはないと思っている。そして政策的には、安保、農政、労働法制、原発等で、安倍政権を対峙する明確な方針を打ち出していくことである。

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