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【TPP交渉の行方シリーズ27】 情報開示に取り組み始めたアメリカと頬被りする日本 -議会対策のために背に腹は代えられず-15.04.20(4月-1) 

 今夕〈4/19(日)〉甘利・フロマン日米閣僚会合が開かれる。それは安倍首相が訪米し、辺野古移転問題もあるがTPPについても再び国益を損ねる発言としアメリカに妥協しかねない。このため、今日から連続でTPPについての私の収集した情報をお知らせし私の予見、考えを示していく。

<アメリカ情報公開は当然のこと>
 3月の18日、民主党向けにフロマンUSTR代表とルー財務長官が説明会を開いた。その席でフロマン代表は前例のない前向きな姿勢を示すと言って各議員にTPPの協定の条文を全て開示することを約束し、既に何人かの議員が見ており、多くの議員がその事実を明らかにしている。そのうちの一人Delauro(デローロ)議員(女性)は、「行ってみたところ非公開(confidential)と分類されているだけで、極秘(secret)になっていない」から、議員は誰もが見られるのでTPP協定条文を入手するべきであると勧めている。当然のことである。

<ファスト・トラックと秘密交渉のせめぎあい>
 アメリカの国会議員は日本の国会議員のようになまくらではない。たかが関税の上げ下げぐらいの時はUSTRの役人に任せておいてもよいけれど、アメリカ国内のルールを決めること、例えば特許、環境、労働法制、その他諸々法的制度をなぜUSTRの役人に任せられるのか、それを決めるのは我々であると怒っている。TPPの交渉を全て秘密にしておいて勝手に決め、できあがったものを国会議員が承認するかしないか決めるだけ、というのは許し難いというのだ。つまりファスト・トラックと呼ばれる一括承認のルールはあるけれども、秘密にしっぱなしのままTPPを一括承認するというのは許さない、そんなものは審議できるかとTPA法案の提出を認めていない。
 USTRは600の関係企業、団体等には、関係文を見せながら相談していたけれども、議員はずっと蚊帳の外であった。途中であれこれと口を挟まれると想い切った交渉ができないからである。

<議会対策のために急転直下の協定案文の公開>
 しかし、ここにきてTPA法案を通さなければいけないということで、反対が圧倒的に多い民主党議員を対象に急に熱心に議会対策をし始めた。国会議員の反対ムードを一挙に改善するために、秘密交渉に不満が集中していることを考えて一気に情報開示に踏み切ったようだ。アメリカはいつもやることが勝手である。目的達成のためには、前言を平気で翻すことも全く意に介さない。今回の一人芝居が典型例である。その文章は以下の通りとなっており、完璧に誰もが見ることができるようになっている。当然のことだ。

<USTRの約束>
 政府は国民の代表である国会議員と緊密に協力して我々の目指す野心的な貿易協定を追求している。この協力には以下が含まれている。

・すべての国会議員に対して、交渉テキスト全文へのアクセスを提供する。議員は国会の中で 都合のよい時にテキストを見ることができる。また、しかるべきセキュリティー許可を得た議員のスタッフを伴って閲覧することもできる。

・TPPに関してだけでも1700回近くの議員へのブリーフィングをもってきた。またTTIPやTPA、AGOAその他につ いてもそれ以上行っている。

・国会議員に対して、交渉テキストのナビゲーションのために、TPPの各章の要約版を提供する。

・国会議員に対して、議会の委員会とともに作成した交渉での米国の提案を、交渉テーブルにつく前に見せる。

・(USTRは)議会とともに働き、あらゆる段階において議会のフィードバックをもらい、交渉内容を更新していく。

<しらばっくれる日本政府>
 ところが、このことを先の経済産業委員会で西村康稔内閣副大臣に問い質したが「変わったことは聞いていない、今までと同じだ」といった、しらばっくれた答弁しか返ってきていない。日本の議員たちは、与党自民党の議員の数人ぐらいは見ているのかどうか知らないが、膨大な内容でありとても読みこなしてはいまい。
 こうした時に投資関係(ISDが含まれる重要な部分)が、ウィキリークスでリークされることになり、こんなにひどい内容なのかということで、アメリカでは改めて大問題になっている。私はこの調子でTPP協定条文が開示されればされるほど、大変な問題になっていくのではないかと思っている。そして、4月16日に提出されたTPA法案でも議会に気を遣って交渉妥結の前に大統領が議会に通告しTPPの全文をインターネットに掲載して誰でも見られるように公開することを義務づけている。

<抗議もしない軟弱な姿勢>
 それにもかかわらず日本政府は頬被りしたままであり、少しも情報開示をしようとしない。私はアメリカだけなぜ勝手なことをするのかに対して、なぜ抗議しないのかとも追求した。なぜなら、今まで日本の新聞に交渉内容がよく出るとアメリカ側から小言を言われることのほうが多かったからだ。
 韓国でいかにその秘密性が酷かったかという例がある。
 米韓FTAも同じく秘密裏に行われ、ろくに審議もせずに国会で承認された。皆さんの記憶にはもうなくなっているかもしれないと思うが、採決に当たり李明博大統領が焦って強引にやろうとしたため、野党が怒り催涙弾が飛び交う中で行われた。揉めるのは当然である。国会議員が殆ど内容を知らず、750ページに及ぶ英文のテキストを2時間か3時間で見て、そして採決になったのだという。

<TPPは平成の不平等条約>
事実かどうかわからないが、我々が講師として呼んだソン・ギホ弁護士は、韓国の国会議員達に英語が堪能な人は多くない、だから英語が解らず、従って内容も解らずに賛否を決した、と自嘲気味に話していた。
TPPはアメリカのルールを11ヶ国に押しつける嫌な協定であり、不平等な協定である。情報公開は既にその不平等さが現実に現われている。これではISDといい知財といい、アメリカが縦横無尽に振る舞うのは目に見えている。