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【TPP交渉の行方シリーズ29】TPA成立後にTPP、日米二国間協議が常識- 10ヶ国は一にTPA二に日米協議の成立、そして最後がTPP-15.04.23(4月-3)

<各国とも米にTPAの成立を促す>
 4月16日、やっとTPA法案が提出された。この点について各国は厳しく態度をとっており、TPAが通らなければTPPの妥結はないというのが常識である。
 グローサーNZ貿易担当相は3月15日ワシントンに乗り込み、「TPAを通さないとTPPはWTOドーハラウンドと同じく漂流する(stagnate)。TPA通過までは各国(特に加・NZ)は最後の提案をしないし、TPA未成立を遅延の口実に使う。議会に条文を変えられてはたまらない。TPAを通さないとアメリカは自由貿易について指導力を失う」とアメリカに警告を発した。ロブ豪貿易相も「TPAの目途が立たないとTPPは2017年にずれ込む懸念がある。急がないと(AIIB アジアインフラ投資銀行の設立により)中国主導のルール作りが進むことになる」と、もっと露骨にアメリカに圧力をかけている。

<甘利大臣もかつては正論、しかし今はぐらつく>
 ところが3月6日、大江首席交渉官は、日米二国間協議がTPAに拘わらず、妥結しても良いと失言した。この後甘利TPP担当大臣は「TPPの妥結にも日米二国間協議の合意にもTPAの成立が前提である」と言い直した。「アメリカ政府、議会はTPAを通す最大限の努力をしてほしい」と言い、ファイナンシャルタイムズ紙に「珍しく強気だ」(The rare direct appeal)と論評されている。当然のことである。共和党も一貫してTPA成立前のTPP合意は認めていない。それにもかかわらず、今そこが不鮮明になってきている。

<TPAの次は日米二国間協議>
 日本以外の10交渉国は、TPPの妥結には、一つはTPAの成立は当然として、次に12ヶ国の中で群を抜いて大きな経済大国、日米両国間の協議が整うことにかかっていると主張している。そのとおりであろう。特に農産物輸出国のオーストラリア、NZ、カナダは日本の農産物協議をじっと見守っている。アメリカに適用される関税やその他のルールを即、自分達にも適用せよと迫るのは当然である。

<アメリカから見ると日米二国間協議決着が先>
 しかしアメリカ側の議員に言わせると、TPAを通すには日米二国間協議がアメリカの圧勝のかたちで終わり、TPPの交渉妥結もアメリカの主張が相当通ることを前提としている。
 つまり、日米両国ともお互いにあっちが先だこっちが先だと言い合っているのだ。まずいことにTPAは一括承認する権限を与えている法律にもかかわらず、議会対策のためTPAが求める内容を政府が満たすことができなかった場合には、TPAの手続きを取り止める、という条項が入ってしまった。つまり後で覆すことができるというのだ。
 こんな条文がなくとも、既に米韓FTAではせっかく決まったものをアメリカの議会の主張により再交渉させられている。このように再交渉を勝手にやらされては、相手国はたまったものではない。だから各国ともTPAの成立を主張しているのだ。

<ファストトラックを与えるTPAが交渉阻害要因になりかねず>
 しかし、アメリカはどこまでも勝手である。TPAを通すためには議会のいうことを聞かねばならないということで上記のような無理な矛盾する条文も入っている。この条文が入ったがために、各国が態度を硬化させ、そんないいかげんなファストトラックではとてもTPPを可決できないと、言い張ってくる可能性もある。日本も当然再交渉には応じられないという主張をすべきである。
 日米で交渉が妥結したら、日本の議員が騒いで条文を覆すなどということはしてはならないのは当たり前だからだ。ただそのためには、条文の内容をあらかじめ知っておくことが必要だが、我々国会議員がさっぱり条文を見られない今の状況では、反対せざるを得ない。

<週末の日米閣僚会合もアメリカ議会対策の一環>
 この4月19日(日)20日(月)、二日間にわたって行われた日米二国間協議も、甘利担当大臣の言葉ではないが、とてもすべてが解決するような状況ではない。TPAを通すためにはアメリカ議会に対して甘利・フロマン会談をやり、日米二国間協議も進みつつあるというシグナルを送るための場造りが本音だろう。4月末の日米首脳会談でそこそこ格好のいいことを言うために慌てて二国間会談を行っているだけのような気がする。

<TPAなければ、TPP妥結も二国間協議合意もなし>
 TPAが成立しないままにTPPを妥結することも日米二国間協議をまとめることもしてはならない。
 そのことを先週の経済産業委員会で西村担当副大臣に「TPPも日米二国間交渉も、TPAが成立しなければ絶対ダメだ、と甘利担当大臣は発言しているし、私もその通りだと思うが、それでよいか」と強く問い質したが、答弁ははっきりしなかった。しかし、今現状を見ると甘利大臣も少々なまくらになっており、TPAの成立から一歩後退し、「見通しがきちんとつくこと」と言い出している。その見通しの一つがTPA法案の提出である。しかし、ここが違うのは、昨日のメルマガ・ブログで述べたとおりである。

<TPA法案提出は一歩前進だが成立とは別>
 初期の民主党政権時代は40%に満たない通過率であったが、日本では内閣が法案を提出すれば相当の確率で通る。しかしアメリカの場合は、各議院が簡単に法案を提出できることから1議会1万件も提出される。しかしその通過率は2~5%つまりせいぜい200~500本で、10%になることはない。それを日本の感覚で、提出されたからもうそろそろ成立などと甘い見方をしてはならない。その意味で、4月17日菅官房長官がTPA法案の提出を「前向きな動きを示すもの」と粛々(?)と言うのは、日米両政府の馴れ合い以外の何物でもない。

<TPA未成立下では交渉するな>
 また、上院が通ったから下院もまもなく通るとすぐ言われがちだが、これも違う。ハッチ上院財務委員長は23日には審議を始めると言っており、比較的スムーズにいき、上院は通る可能性が強いが、下院はそう簡単ではない。いや下院はとても通りそうにない。一応両院議員協議会はあるが、日本同様に機能していないので、下院が通らなかったら成立しない。
 だから我々はアメリカ側にピン止めすべく、TPAが通らなければTPP妥結もないし、日米二国間協議の終結はない、と明確に言っておく必要がある。それなしに妥協することは絶対に許すべきではない。

<4月19日、20日の甘利・フロマン協議は日米首脳会談の前座の芝居にすぎず>
 4月19日の午後から始まり、20日には未明まで行われた日米二国間協議も、終わってみればさしたる前進はなかったとみられている。私が推測するに、今回はTPA法案を通しやすくするため、フロマンUSTR代表が日本に出向き、叩きまくっている(?)というポーズをとる必要があり、そのために計算づくで開催されたものだろう。つまり、日米首脳会談前に、交渉の進展を演出したのである。日米両政府とも必死でTPP交渉妥結近しというイメージ作りに奔走している。政治もそして外交もショー的様相を呈してくることが多い。我々は、こんな子供だましに惑わされてはならない。