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【TPP交渉の行方シリーズ32】自動車交渉でも原産地規則で攻められる日本‐貿易立国も危機に瀕す‐15.04.24(4月-6)

<ベトナムの繊維製品で問題となった原産地規則>
 TPPの中ではRule of Origin(原産地規則)は、ベトナムの繊維で問題となった。ベトナムも繊維製品の原料である布や、糸は中国から輸入している。安い労働力を活かして繊維製品を作り、アメリカに輸出している。アメリカはこれに目をつけ、ベトナムで生産された糸・布でもって作った繊維製品でなければ、関税ゼロの恩恵は受けられないと主張し始めた。TPPに加入していない中国がメリットを享受してはならないというものである。
 ただ、アメリカにとってベトナムの貿易量はわずかであり、たぶん最終局面ではさっさと降りて妥協が成立しているに違いない。

<自動車協議でも攻められる日本>
 ところが、今、日米の二国間の自動車協議で、これで日本が攻められているということが4月10日のINSIDE U.S. TRADEで明らかになった。
 日米自動車協議は、自動車あるいは日本の自動車部品に関する関税2.5%、トラックの25%をどのように削減するかといことで、日本が攻めるべきポジションにあった。ところが、農産物協議ばかりでなく、自動車協議も揉めていると報じられていたことに疑問を感じてはいた。ただ、日本も厳しい安全基準や環境基準が非関税障壁だと攻められているぐらいとしか思っていなかった。ところがいつのまにか攻守所を変えて、自動車についてもアメリカ側が厳しい原産地規則の履行を迫っていたのである。そして、悪いことに秘密交渉とやらで、この事実が少しも表に出てこなかったのだ。

<日本のEPAにもある原産地規制>
 日本が各国とEPAを結んでいる時も、40%以上がその国の製品でなければ、その国の製品として認めないことになっている。これが自由貿易協定の雛形であるNAFTAは62.5%で行われてきている。
 TPPや日米二国間協議におけるアメリカの主張のバックにAFL-CIO(全米労働者総同盟・産業別会議)がいる。NAFTAにより自分たちの5百万人の職を失ったと言われており、それに懲りたAFL-CIO傘下の全米自動車労働者組合(UAW)、統一鉄鋼労働者組合(USW)、機械航空宇宙労働者協会(IAMAW)が、国内の雇用喪失を拒否し、むしろ創出することにこだわったのであろう。NAFTA並の62.5%を要求し、8年後には75%まで徐々に引き上げていくことを求めているという。

<日本の部品工場の海外進出を逆手にとるアメリカ>
 アメリカは日本が急速に原材料・中間財の製造を海外に移転していることを知っている。日本の自動車メーカーのサプライチェーンは、タイに多くあり、インドネシア、中国、韓国にも散らばっている。これらTPPの非参加国から輸入した部品で作った、日本製自動車は日本製品とみなされないことになる。ややこしい計算の仕方も、NAFTAは純コストで計算し、日本はFOB方式ですべての支払う料金を元にしている。FOB価格にするか純コストにするかどうかということでも、せめぎ合いが行われているようである。
 この結果、へたをすると、日本はやむをえず、アジアのTPP非加盟国に換えてアメリカの高い中間財(部品)を使わなければ日本車を造れなくなってしまう。こうなればオバマの狙い通り、TPPでアメリカの仕事を増やし、輸出を増やすことにつながる。どこまでもしたたかなアメリカである。日本の足元を突いてきたのだ。これは、2.5%の関税どころの話ではなく、はるかに重大な問題である。

<自動車業界は原産地規制の厳格化に反対>
 ただこのことについてはアメリカの自動車工業政策協議会(AAPC)も反対している。なぜなら62.5%の原産地規則とそれを検証する事務に悩まされてきたからである。この点については、アメリカの自動車工業界では、労働者側と経営者側の意見がちがっている。しかし、2年後の選挙を見据えて基盤の労組の意に沿って動く民主党議員の要求を聞かなければ、TPAを通せないので、USTRは労組側に立って交渉している。

<TPPのためにどこまで犠牲にするのか>
 これがいかに大事かということは、このルールがなにも自動車だけではなく、日本の全工業製品に適用されるということである。つまり、日本のこの10なり20年間の部品工場の海外移転という変化を見取ったアメリカの賢い要求が、原産地規則の厳格化要求である。ところが、このことは時事通信がちょっと報じただけで、他のマスメディアは何も書かないでいる。産業界もあまり問題視してはいないようである。このことが不思議である。
 私は、農産物ばかりでなく、工業製品の世界でもこれだけ犠牲にしてTPPを纏めなければならないということはとても理解できない。コメまで譲り地方が崩壊し、日本の貿易立国という姿も歪んでいくとしたら、日本は一体どうなってしまうのだろうか。やはり、TPPは断固拒否しかない。