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【政僚シリーズ3】橋下徹市長政界引退宣言にみる政治家の出所進退 -潔い「去り際の美学」を示してほしい- 15.05.25

<潔い政界引退>
 5月17日、大阪都構想をめぐる住民投票が僅差で反対多数となり、7年半にわたって繰り広げられた「橋下劇場」政治は一段落した。橋下大阪市長は、不利と伝えられた事前の世論調査結果を得意の土俵際のパフォーマンスにより巻き返しを図ったのか「賛成多数にならなかったら政界を引退する」と発言して無党派層取り込みを図った。
 結果は、大阪市民が大阪都(大阪市がなくなること)を受け入れるところにならず、橋下市長は、選挙前の約束どおり、即座に政界引退表明をしている。しかし、差は僅か1万700票余だった。そうした中、この潔い出所進退は見上げたものである。笑顔で記者会見するあたりは、政治生命を堵けたという大阪都構想も、所詮ゲーム感覚でやっていたのかもしれないが、これで完全に政治の世界から身を引くのだとしたら心より歓迎したい。小泉首相ばりの劇場型政治で振り回されるのはあまり好ましくないからである。

<納得できる地方行政の効率化>
 橋下大阪市長の言い分のうち、地方分権の重要性を訴える部分、特に政令市と道府県のダブりを解消すべしという点はよく理解できる。ただ、従軍慰安婦を巡るどぎつい発言や、脱原発を唱えて格好いいことを言っていたかと思ったら、いつの間にかころっと寝返って、大飯原発の再稼動を容認したりする政治姿勢は、とても私の許容範囲を超えていた。
 記者会見で、「7年半税金で好き勝手させてもらったことに感謝する。私利私欲の弁護士に戻る。民主主義はすばらしい」といつもの橋下節が炸裂した。橋下市長が認めるとおり、大阪都構想のメリットが十分に大阪市民に浸透しなかった。また、その手法が性急すぎることも否定される原因の一つとなった。
 政治はプロセスも大切だが、もっと重要なのは結果である。大風呂敷を畳み、消え去るのが当然である。

<芸術家の華も10年、演技者たる政治家の華も10年>
 政治家の出所進退で印象に残っているのは、同じエコロジスト仲間の中村敦夫元参議院議員の「国会議員たるものそんなに長くやれるものではない。政治も演技であり、一流の演技を続けられるのはせいぜい10年くらいだ」という指摘である。芸術家もいつかは人によって違うが、10年ぐらいが旬の時で、それ以降は惰性でやっているだけだという。中村さんは、「こんな消耗する仕事(政治家)を20年も30年もやっている者の気がしれない。いい加減にやっているからできるのだ」と笑いながら言ってのけた。そして、俳優10年、キャスター10年の後、参議院議員10年(2期12年)の予定が、2期目の当選がかなわず引退した。その後俳優に戻り、今も朝ドラの『まれ』の頑固じいさんの役で健在である。

<欧米社会の政治のトップは2期8年が常識>
 そういえば、いつぞやアメリカの大統領の政治歴を調べたところ、ジョンソンとフォードの2人(若い大統領の補佐役の副大統領から大統領になった)を除き、15年~16年の政治生活の後に大統領になっている(「米・仏にみる国のトップの資格と選び方」(11年8/23)別表「歴代アメリカ大統領の前歴・職歴」)。中村さんの指摘どおり気の張る政治、まして世界を動かす超大国のトップはそれほど長くやれるものではないと得心した。
 欧米社会では2期8年が大統領なり首相の任期になっている。あのプーチンですら2期8年大統領をやり、その後メドベージェフに渡し、また復帰している。日本の知事や市長の多選がひどすぎるのだ。橋下弁護士が政界に転じて7年半、飽きっぽい有権者も離れつつあるようであり、丁度いい潮時かもしれない。

<理解に苦しむ居座り元総理>
 首長が長過ぎるのとは正反対に、日本のトップはくるくる変わりすぎである。そのせいか、かつては元首相の衆議院議員がごろごろいた。ところが小泉首相が中曽根・宮沢両大先輩に引導を渡した後は少なくなった。羽田首相は、二大政党制を目指す政権交代を見届けて引退した。海部首相のように落選して政治生活を閉じている人もいる。
 それに対し、細川・村山・小泉・福田・鳩山の5人の首相は、次の衆議院選挙で引退している。従って今は元首相の国会議員は、自民党では麻生副総理1人、民主党には菅・野田の2人がいる。消費税増税やTPPだとやはり大風呂敷を広げて自らの功名に走り、日本に初めて訪れた二大政党制を崩した張本人であり、橋下大阪市長以上に退陣してしかるべき政治家である。2人とも顧問か懲罰委員会ぐらいしか居場所がない。余力があるなら元首相として院外で活動してもらったほうがずっと世の中のためになる。好例が、細川・小泉の2人の元首相の脱原発運動である。

<気になるワンポイントリリーフ発言>
 ただ気がかりなのは、「自分のような政治家は、ワンポイントリリーフでいいのだ。私は7年半自分なりにやれることはやってきた。政治家冥利につきる」という思わせ振りなセリフである。
 私からすると、大衆受け狙いの演出の臭いがしてならない。なぜなら、あれだけ大阪都にならなければ大阪は沈むばかりだと言っていたのに、記者会見では自分のことばかりで、少しも大阪の将来に関するフレーズは聞こえてこない。ひょっとすると元々大阪都構想などどうでもよく、前述のようにやたら敵を造って政治ゲームを楽しんだだけではないかと疑いたくなる。茶髪とサングラスの目立ちたがりの弁護士が、TVの人気者に飽き足らず選んだのが、政治の世界だっただけかもしれない。今回の住民投票は、橋下徹の人気投票ではなかったが・・・。

<二度目の嘘はあるまじき>
 一部マスコミは、既に安倍首相が内閣改造で民間大臣に任命して、政界復帰などと報じている。維新の会の松野頼久新代表も、23日に「政治家をやる目的がなくなった。また『これだけはやらなければならない』という目的が見えた時、戻ってくる可能性がある」と希望的観測を述べている。
 来年の参議院選挙に合わせて、安倍首相からの懇請を口実に「国政レベルでは憲法改正という私の仕事が残っている」とか言って政界にまた復帰してくるシナリオも考えられないではない。平成の時代のTV番組の申し子で、独特の弁舌とキャラで政界の風雲児に昇りつめたのだ。周りが放っておかない可能性もある。大阪府知事選も2万%ないと煙に巻きながら出馬している前科もある。
 しかし、これだけ好き勝手に日本の政界、特に関西政界を翻弄したのである。去る時は鮮やかに去ってほしい。やることがなくなった政界にしがみつく元首相や政策が失敗したり、選挙に負けても責任をとらない政治家に、「去り際の美学」の見本を示すべく、政治ばかりでなくTVのレギュラーにも出ることなく、ごく普通の弁護士として余生を過ごしてほしいと願っている。