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【TPP交渉の行方シリーズ38】【政僚シリーズ2】 西村内閣府副大臣のTPP情報公開撤回の怪 - 勇み足は出身省経産省のカラーに由来する - 15.05.24

 情報公開については、既にブログに書いたが(TPP交渉の行方シリーズ27 「情報開示に取り組み始めたアメリカと頬被りする日本」15.04.20)、アメリカでは3月18日、フロマンUSTR代表、ルー財務長官等が民主党へ説明に赴き、そこで議員達の袋叩きに合い、大幅な情報公開を約束した。この件について他でも色々議論されたが、私も強く問い質すことにした。

<西村副大臣は情報公開要求につれない答弁>
 しかし、いかんせんTPP担当大臣は甘利大臣であり、内閣府委員会でしか質問できない。だめと分かりつつ、私の所属する経済産業委員会に甘利大臣を呼び出せないかと筆頭理事を通じて掛け合ったが、叶わなかった。そこで仕方なく、副大臣なら他委員会に呼び出せるというルールに従い、50分間たっぷり、TPP、なかでも情報公開について西村副大臣に質問した。
 ところが、西村副大臣はアメリカでも大々的に情報公開をしている訳ではない、日本とアメリカは事情が違うので、一概に同じようなことはできない、となかなか慎重な答弁振りであった。それに対し、私は、情報公開をしなければ日本でも何も進まない、アメリカと日本とで不平等ではないか、ときつく追求した。4月15日のことだ。

<珍しい内閣委と農水委の連合審査>
 それともう一つ農水委、外務委、経産委、内閣委との連合審査の提案である。日豪EPAはほっといたら外務委員会でしか審議されず、さっさと通ってしまう。ところが、日本農業を守るための決議は農林水産委員会で行われている。そこで、昨年秋、私が汗をかいて日豪EPAについて、外務委と農水委の連合審査を行っている。今私は筆頭理事等の役職ではないが、前例を示して(というよりも、正確には若手理事の尻を叩いて)、連合審査を設けるよう働きかけた。その結果、変則的ではあるが農水委と内閣委の連合審査が実現し、やっと甘利大臣を引っ張り出すことができた。私が20分間、甘利大臣にも同じように情報公開についてのみ重点的に質問をした。別途前国会でも提出した情報公開法(議員立法)も提出した。手中的に攻め立てたことが功を奏して、思わぬ成果となって現れてきた。

<西村副大臣の有頂天記者会見>
 その後、5月の連休にアメリカに行ったという西村副大臣が、いきなりTV画面に登場した(5月4日午後3時45分)「テキストへのアクセスを認める方向で検討したい」と、日本もアメリカと同じように国会議員に情報を開示するという記者会見をしているのだ。多分、USTRがアメリカと同じように秘密を守って公開するのであれば仕方ない、と話し合いがついたのだろう。
 ただ、私はこれを見てびっくり仰天しつつ、これでもう実現できなくなるであろうとガックリした。なぜなら、この手の良いことは、甘利大臣が太っ腹で英断を下したとうやうやしく記者会見を開いて公表するのが筋である。それを副大臣が外国で得意になって記者会見などするのは、ルール違反である。心配したとおり、やはりアメリカにいる間(5月7日ロサンゼルス)に発言を全面撤回してしまった。見苦しい限りである。

<日本のルールからはずれる勇み足>
 5月の連休明けの農林水産部門会議で、内閣府の担当者を呼んだところ、担当官はけんもほろろに副大臣発言を全否定したのである。私は「正直な西村副大臣を擁護してやらなければ可哀想ではないか。甘利大臣がいくらダメだと言ったとしても情報公開するほうが正しいのだから」と一応擁護した。西村副大臣も4月15日には防御的な答弁に終始したものの、忸怩たるものがあったのだろう。それが気が軽くなったワシントンで一気に噴出してしまったのだ。甘利大臣だけでなく、菅官房長官も怒りだした。5月12日に農水委の理事会でいくらお詫びをしても後の祭りである。西村副大臣のやり方は、日本の組織の論理からすると大きく外れる。紛れもない勇み足ないし越権行為であり、批判されてしかるべきである。

<緩やかな組織の経産省>
 一口に霞が関の役人といっても、それぞれの役所によって違った役人ができあがる。例えば経産省はスタンドプレーを許す役所である。エネルギー行政などはきちっとしてもらわなければならないけれども、一般的に、民間企業がしっかりしているので、役所は花火を打ち上げていればいいというところもある。才気煥発な役人が出来上がっていく。そういった役所で長年過ごしているとそのカラーが出てきてしまう。
 それに対して財務省の予算、厚生労働の年金、農林水産省の米等は、何事も国がきっちりやらなければならない仕事であり、役人は黒子に徹し軽はずみな発言はできない。そういう仕事ばかりしていると自ずと慎重な役人ができあがる。10年も20年もその役所にいると、国会議員になっても、その母なる役所のカラーをそのまま背負ってきている者が多い。

<管理職未経験が初歩的ミスの遠因>
 西村副大臣は、経産省で14年しか勤めていない。それに加えて、政治家になろうとして飛び出た人である。一般的な経産省の役人以上に、目立とうとするのはやむをえない。その癖がでただけのことなのだ。
 この件は今後の政僚シリーズで詳述するが、霞が関の政策決定システムを肌で感じて身につけるには、やはり○○課長の経験が不可欠である。西村副大臣が気難しい関係者の多い課の課長職を経験していたら、多分こんな初歩的ミスはしなかったに違いない。

<スキャンダル以上に追求すべきTPPの秘密性>
 明らかに閣内不一致であり、厳しく追及されてしかるべき大問題である。TPPは問題ばかり協定であるが国会議員にはもちろんのこと国民にもTPPの内容を知らしめないというのはこの情報公開の世の中に、時代錯誤も甚だしいものである。重要品目の関税引き下げ等について内容が知られたら、とても受け入れられるものではないことが暴露されるからであろう。
 また、12ヶ国のルールを共通化しようというものだが、アメリカだけが国会議員に協定文を見せ、日本では見せないというのはそもそもTPPの本旨にもどることになる。つまりで出しからして不平等なのだ。のっけからこれだけISDS等についてもアメリカだけが特別扱いされるのが目にみえてくる。
 このウルトラ秘密性は閣僚のスキャンダル以上に徹底して追及してよい問題である。ところが、西村副大臣に釈明をさせるだけで罷免要求もせずに尻すぼみに終わってしまったのは残念至極である。