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【集団的自衛権シリーズ5】荒っぽすぎる安保法制論議 -答弁が支離滅裂で国民への説明たりえず- 15.06.01

 鳴り物入りで安保法制議論が始まった。今国会4本ある重要広範議案の大トリの登場である。本会議の報告期間(5/26火曜日)と質疑を経て、5月27日(水)、28日(木)と総理入り(TV中継入り)で始まり、岸田外相の答弁をめぐり29日(金)は審議が中断、6月1日(月)に3度目の総理入りで行われる。
(5月30、31日にメルマガ・ブログ作成)

 私はというと、党の役職はほとんどやっていないが、経済産業委と環境委の2つの省を抱える常任委員会に所属し、農水委は度々差し替え質問を頼まれるため質問で忙しく、中継を見る機会はほとんどない。後からTVニュースで問題となった揉めた部分を見て、あとは新聞とネットで追いかけるしかない。

<一本調子の質問に対し誠意に欠ける答弁>
 はっきり言って、予想したとおり論議は極めて低調であり、質問はありきたりの一本調子、答弁はまともに答えず支離滅裂で、安倍首相の一方的、喋りまくりが目立つだけである。きちんと説明しようという誠意がみられない。そこに品のないヤジまで飛び出す。
 そこで安全保障問題を1980年の内閣総合安全保障関係閣僚会議担当室以来それなりに意識的に追いかけてきたと自負(?)する私が、読者の皆さん用にも、そして私の頭の整理用にも問題点を順次明らかにし、あるべき日本の安全保障政策を考えてみたい。

<大きな論点、問題は憲法9条>
 まさに憲法9条の問題である。1項で自衛のための自衛権は認めているが、2項で海外派兵を前提とする軍隊と交戦権を認めていない。ところが、14年7月1日の閣議決定で、解釈によりこの大原則を崩し、それと今回10本の法律で一挙になし崩しにしようというものである。その意味では日本の安全保障政策の根幹を揺るがす大変革なのだ。

<順序が違う>
 従って、こんな如何わしい法律を一挙に提出してちょろまかして変えるのではなく、やるなら正々堂々と憲法改正してから、それで認められたら一つひとつ丁寧に細部を決めていくべきである。
 よく世界の動きが急であり、そんな悠長なことはしていられないと言うが、今日本にそれほど差し迫った危機はない。北朝鮮、中国と危機煽ぎ、先を急ぐ勢力が多くなっただけである。この点は憲法改正を主張し、自民党にも大きな影響を与えてきた小林節慶大教授が明確に指摘している。順序がなっていないのだ。

<日米防衛協力指針が安保法制の先を行くプラン>
 14年7月1日に閣議決定した頃は、14年末の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定に間に合わせるため、秋の臨時国会で法律の整備をしないとならないと説明していた。ところが臨時国会にはそんな法律は一つも提出されず、今から考えると消費増税を延期して解散するためだけのものだった。
 その結果、日米防衛協力協議は延期された。ところが4月下旬の訪米のお土産に、ガイドライン、TPPの妥協、辺野古移転が差し出され、そのお蔭で池田首相以来54年振りの米議会での演説という機会を与えたと思われる。しかし、このインチキが国会ではほとんど追及されていない。何より国会、国民軽視は法律改正の前(4月27日)にガイドラインを先に作ってしまったことなのだ。
 私から言わせると日米安保条約の実施規定ともいうべきガイドラインこそ、国会で念入りな審議が必要なのだ。なぜならば、内容が法律を先取りし、かつ安保条約を改定しているようなものだからである。

<日米安保条約を日本の法律より優先したガイドライン>
 ガイドラインでは自衛隊の米軍支援が大幅に拡大されている。まず、自衛隊の活動範囲が日本の近辺なり周辺のアジア・太平洋から世界中に拡大された。地理的制約がなくなってしまったのである。それに加えて、後方支援の活動地域も「非戦闘地域」から「現に戦闘行為が行われている現場以外」に拡大されている。
 それにも関わらず、イラク特措法下において非戦闘地域も大した変わりはないと言い張っている。そして極めつけは他国のことでも日本の「存立危機事態」となる場合は集団的自衛権の行使を認めることである。
 簡単に言えば、アメリカが戦い始めたらどこでも出掛けて一緒に戦うということなのだ。憲法の大原則「専守防衛」を大きく逸脱していることは明らかである。

<切れ目なく戦争を可能とする法制整備>
一気に改正される10本の法律を一応記しておく

  1. 自衛隊法(武器使用基準の大幅緩和)
  2. 武力攻撃事態法(新設する存立危機事態法対応)
  3. 周辺事態法(地理的概念をなくし重要事態影響法へ改定)
  4. 国連平和維持(PKO)法(PKO活動以外の活動でも参加可能に)
  5. 米国行動関連措置法 (2と同じ)
  6. 海上輸送規制法 (2と同じ)
  7. 捕虜取り扱い法 (2と同じ)
  8. 特定公共施設利用法(米軍以外の外国軍隊も対象)
  9. 船舶検査活動法(日本周辺海域に限らず適用可能)
  10. 国家安全保障会議設置法(存立危機事態なども審議対象に)

これら既存法の改正案を一括して「平和安全法制整備法案」と称している。法案提出直前になって安保法制から突然平和が付け加えられた。野党はこれに対し、「戦争法案」だと言い、安倍首相は「無責任なレッテル貼りは全くの誤りだ」と反論。入口から火花が散っている。
 これともう一つ全くの新法“国際平和支援法(国際紛争に対処する他国等の「後方支援」を随時可能とする)”、これも「国際軍事協力法」と変えるべきだと皮肉られている。
 PKO法案一つですら1992年に衆参で193時間にわたって審議され、やっと成立したのに、安倍首相は提出前の米議会の演説で、全ての法律を今国会中で夏までに成立させると約束した。これも法案提出前に外国に成立を約束するなど国民軽視・国会軽視だとはなから問題にされている。しかし前述どおり、もっとひどいのはガイドラインの先走りである。