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【TPP交渉の行方シリーズ45】沈みゆく大国アメリカに追随するな-日本の医療制度は死守すべし--15.8.28

<エバーグリーニングに代表される疑わしい特許>
 特許を金科玉条のように言うが、その実体は怪し気なものが多い。
 まず、研究開発に手を抜いて本当に新しい薬は少ないとも言われている。エバーグリー二ングとは、既存の物にちょっと手を加えて新しい特許にし、いつまでも特許が続くことを揶揄して使われる業界用語である。
 次によく膨大な研究開発投資を回収するには特許期間やデータ保存期間を長くしておかないとならないといわれる。ところが実態はノバルティス社の高血圧治療薬「ディオバン」(一般名:バルサルタン)の臨床研究や副作用等に関する治験データには手を抜いたりして、かなりいい加減に新薬が作られている。日本の大学もノバルティス社から多額の研究費の寄付をもらっている。ここにも電力会社と原子力研究者の「原子力村」と呼ばれる癒着と同じ構造がみられる。

<研究開発より喧伝販売に熱心な薬業界>
 その代わりTVのコマーシャルをはじめとしてマーケティングのほうがずっと金がかかっているとも言われている。これも不明確だ、大ヒット薬を作るため、新薬の開発よりも販売促進のほうにずっと多額の金を使っているのが実態であるともいわれている。そしてそれがそのまま高価格に反映され、割りを喰うのは消費者ということになる。誰しも健康を第一と考えるからであり、その心境にうまくつけ込んでいるのだ。
 その結果、前述のように医薬品メーカーが他のメーカーと比べて飛び抜けた高収益をあげている。どうやら薬九層倍は日本だけのことではないようである。

<国家と民間企業が手を組み国策企業となった医療関連産業>
 医療にはアメリカを除き国家が大きく関与している。オバマ・ケアもないよりはましだが、民間の保険会社が運営母体である。その結果、医療関連産業が関与してうごめくことになり、政治献金も他の業界をはるかにしのぐ巨大な業界となっている。アメリカのNPO(Open Secret)によると、医薬関連企業が断トツであり、これに保険業界が続く。(TPP推進派の議員に巨額の政治献金が送られていたことは『企業献金が後押ししたTPA採決 - 15.07.07 ‐ 』で指摘したとおりである)つまり、アメリカの医療は政治にまみれ、金にまみれて混乱を極める業界となり、国民を不幸にしている。
 医療関連産業は自動車産業に代わるアメリカの代表的産業になりつつあるのかもしれない。

<アメリカの医療制度は世界が認めるダメ制度>
 国連はFTAにより薬価が上昇すると見込んでいる。特許の権利が幅広く認められるからである。頭痛が歯にも効くと新たな特許となる(用法特許)、錠剤が粉剤になっても新しい特許となる(製法特許)。日本では「物」にしか特許が認められていないが、アメリカでは診断方法、治療方法、手術方法にまで特許が認められるという。こんなに特許にがんじ絡めにされたら、医療費は高くなっていくばかりである。もともとアメリカの薬は平均で日本の3倍といわれており、アメリカの医療支出が200兆円を超えて世界一となるのは上述のような構造的欠陥があるからである。それを日本に押しつけられてはたまらない。

<1日8万円の薬の保険適用>
  8月26日、中央社会保険医療協議会でC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(米ギリアド・サイエンシズ社 一般名=レジパスビル・ソホスブビル配合剤)の保険適用が決まった。1錠8万171円、12週間1日1錠飲み続けたところ、約150人全員がC型肝炎ウイルスを体から排除できたという。ただ問題は約600万円を超える価格である。患者にとっては喉から手がでるほどほしい薬。治療が進めばその後の治療費は不要となる(重症化予防)ので、国費で治療費を助成しても元がとれる。いいことづくめである。
 しかし、問題は高価格が適正かどうかなのだ。中川俊男委員(日本医師会副会長、TPP会合にいつも出席している)は、価格決定の手法が不透明として、保険適用の決定見送りを求めた。当然の意見である。日本にもC型肝炎ウイルス感染者は150万人いると推定さている。仮に100万人がこの薬の治療をうけるとなると、薬代は6兆7000億円に達する。ジェネリックになると何分の1になるかわからないが、素人の私にはいくら開発に金がかかり製造にも金がかかるといっても、法外な価格としか思えない。もう、アメリカの高価格薬の日本の国民皆保険への浸透は着々と進んでいるのだ。野放図に社会保険費が増大することは抑えなければなるまい。そのためには、特許のあり方、薬価の決定は国民に納得いくものとしなければならない。

<ISDも医療崩壊に一役買うおそれ>
 問題のISDは医療・特許の世界にも乱用され始めている。カナダ政府が子供用てんかん薬(ストラテラ)の特許を無効にしたことを訴えられ、また、医療総合企業センチュリオンには政府が決めた金額以外は患者から受け取ってはならない、という保険法を提訴されている。アメリカがISDもフルに使って世界の医療業界の支配に乗り出しているのだ。
 8月27日、世界一の製薬会社ファイザーが医薬品の重い副作用約200例を国に報告していなかったとして、厚生労働省は医薬品医療機器法に基づき、業務改善命令を出す方針を定めた、と各紙が報じている。売る事には熱心だが、副作用には知らん顔。5年間も遅れたものもあるという。しかし、今は従う気配があっても、ISDSで、自分の商売を邪魔されたと訴え、日本に確立した制度の改善を迫ってくる可能性がある。

<「ベン・ケーシー」から「ドクター・ハウス」による洗脳>
 テレビ放映が始まって10年ぐらいは日本のテレビはアメリカのドラマで占領され、我々団塊世代は、「ベン・ケーシー」「ドクター・キルディア」といった医者ものを見て育っている。今も「ER緊急救命室」「ドクター・ハウス」などが放映されている。病気をドラマで見せられ、間のコマーシャルでアフラックのアヒルばかり見せられていると不安になり、知らず知らずのうちに医療保険にすがるようになってしまうのかもしれない。まさにあの手この手の拡販戦略であり、それに乗せられる日本人が多くいることは誠に悲しむべきことである。

<医薬品の研究開発投資は日本の責務>
 医療費の支出は高齢化に伴ってウナギのぼりである。ところが日本の医薬品業界は、アメリカの特許にすがるだけで自らの研究開発を怠ってきている。日本一の企業 武田も世界第12位にすぎない。これだけ薬好き(?)の日本人という大きな需要があるにもかかわらず、企業努力をしてこなかったのだ。おまけに政府もアメリカのNIHを傍目で見ながら、医療産業を成長産業として捉えることなく、それこそ放置してきた。民主党政権で医療、農業、グリーンを成長産業として位置付け、やっと遅ればせながら日本医療研究開発機構(AMED)が発足した。発展途上国が成果を得るのに長くかかる医療関係開発投資をするには無理がある。日本は先進国として医療関係の研究に力を注ぐ義務がある。

<沈みゆく大国の轍を踏むな>
 07年マイケル・ムーアがアメリカの医療業界の問題を「SiCKO シッコ」で警告し、08年に大統領になったオバマが、共和党の反対を押し切ってオバマ・ケアを実現させ、やっとアメリカも国の医療保険への関与が始まった。しかし、違憲訴訟を起こされたり、アメリカの破産者の60%以上が高額医療費要求によると言われたり、あまりうまくいっていない。
 巷では、堤未果の秀作『沈みゆく大国アメリカ』の第2弾(-逃げ切れ!日本の医療-)も多くの人々に読まれている。堤は、第一弾に続き、アメリカの惨憺たる医療の実態を浮き彫りにし、その返す刀で日本の国民健康保険制度の死守を訴えている。TPPには参加してはならず、データ保護期間を8年にして仲介役を果たすなどという恥ずかしい交渉をしてはバチが当たる。
 『沈んでしまった小国日本』(?)にしないためにもTPPは葬り去らなければならない。

<日本国を守る前に日本の命と暮らしを覆す安倍政権>
 アメリカはアフラックの一件で日本の制度をアメリカの都合のいいように変えることにまんまと成功したといえる。もっともこんなことをおめおめと受け入れる国は、日本以外ない。安倍首相は軍事的にはタカ派的態度をとっているが、私にはTPPで日本の大事なものを次々とアメリカに売り飛ばしているとしか思えない。その代表的事例がコメであり、国民皆保険である。日本国を外国から守ると言いながら、実は日本人の命と暮らしを根底から覆そうとしている。まさに本末転倒である。     
(以上特許と医療の3回シリーズを終了)