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押し寄せる近づく地球温暖化 ‐ 成長は諦めて地球をいたわる生き方に転換すべし ‐ 15.12.30

<雪の降る前に出てきた蕗の薹>
12月上旬、長野市篠ノ井塩崎地区を訪問した折、日当たりのよい庭先に蕗の薹が出ていたのには仰天した。1月末でも2月中旬でもない。12月上旬のことだ。雪が解ける頃に出てくるのに、雪が降る前に出てきたのだ。地球温暖化が「忍び寄る」どころではなく、もっと凄い勢いで「押し寄せ」てきていることが実感できる。12月28日現在、北信州のスキー場にも雪がなく、かき入れ時の年末年始にスキーができない恐れがある。

<目に見えてきた地球温暖化の悪影響>
 気温の変化は我々にはよくわからない。体感というものは実は鈍感なのだ。目に見えるようにならないと気が付かない。目に見えるものに雪があり、積雪量が急激に減っているのに気付く。これがヨーロッパアルプスやグリーンランドだと氷河の後退である。そして南の島々だと海面の上昇である。
 長野県の北部地方にも、昔は猪などいなかった。鹿と違い、豚と同じく短足なので、冬の雪の中で歩けなくなり住みつけなかったのだ。ところが、雪が少なくなると時を同じくして北上し、今は各地で畑や田んぼを荒らし回っている。中山間地域の農民を悩ます鳥獣害の中にも地球温暖化が色濃く影響を及ぼしている。つまり、あちこちに急激な変化が現れてきているのだ。

<目に見えないものは恐ろしい>
 目に見えないものは恐ろしい。その一つが放射能だが、もう一つがCO2(炭酸ガス)だ。
 中国の北京では排気ガスのあまりの酷さに12月19日に4段階で1番酷い「赤色警報」が出て、学校が22日まで3日間も休校になった。PM2.5といい、日本人は「中国はひどいなぁ」と横目で見ているが、つい昨日の日本でも光化学スモッグで休校になっていたのである。そして四日市ぜんそく、水俣病など四大公害病が発生していた。自然環境はおろか人間の命よりも、金儲け・経済成長を優先し造りまくり売りまくっていたのだ。

<アメリカに馬鹿にされていた日本の公害>
 1976年、私がアメリカ留学した時の語学スクールで、ジョークを言う時間があり、先生は公害大国日本をネタに見本を示した。

『東京に旅行に行って間違ってカメラを近くのドブ川に落としてしまった。せっかくの思い出がダメになったと落胆していたが、なんと現像がすんでいて節約できた』
 
というのがブラックジョークである。それだけ日本の川が化学物質の垂れ流しで汚染されているというのだ。事実、工業地帯はドブ川となりすごい臭いが漂っていた。もちろん空気も汚れ切っており、今の中国とどっこいどっこいだったのだ。

<議長国フランスの見事なさばき>
 その後も静かに進んでいるのが、CO2の排出による気温の上昇である。12月12日、パリで国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は、2020年から実施を目指す新たな枠組み、「パリ協定」を採択した。1997年の京都議定書に中国、インド、アメリカ等が参加せずに実効性を欠いたが、パリ協定は196の国・地域すべてが参加する画期的な条約(協定)となった。 
 さすが交渉ごとに慣れた議長国フランスである。オランド大統領が「史上初の全世界(ユニバーサル)な協定」と自画自賛するように、先進国と発展途上国の差をほぼ取っ払った。うまくいった理由の一つに、世界一の排出国中国の危機感がある。
もちろん、目標達成の義務化は見送られたし、削減水準が足りず、21世紀末に本当に目標どおり気温上昇を2度未満に抑えられるかという問題を含んでいるが、世界全体で削減を約束した意義は大きい。各国は今後パリ協定をないがしろにはできない。

<アメリカと中国が妥協して妥結>
 新興国だからといって野放図にCO2を排出していったら、北京でも上海でも赤色警報が出っぱなしになってしまう。
 先進国だけが勝手に汚しておいて、後進国にも同じ義務を押しつけるのは受け入れられないという理屈はもっともなことであるが、それではいつまでも地球は破壊の途をまっしぐらに進むだけである。習近平主席は、オバマ大統領と歩調を合わせて妥協したのである。
 一方、オバマも産業界の圧力により火力発電規制に反対する共和党が議会で多数を占めている。それに対して、削減は義務でなく、各国が目標を定めて削減の取り組みを国連委に報告し、自主的に削減するだけの行政協定にすぎず、議会の承認は不要だとして、CO2の排出削減に取り組む覚悟を決めた。

<遅れる日本の対応>
 こうして、世界の第1位と2位の排出国が手を握ったのだ。ところが、日本は成長神話にとりつかれ、13年に自国の都市・京都が冠についた京都議定書から離脱している。そして今回も日本が交渉を先導する場面は全くなく、環境団体からは存在が薄いどころではなく、「ない」と酷評された。
 それに加え、2030年までに13年レベルから26%減らす、という目標にはごまかしが含まれている。13年は福島第一原発事故で火力発電が増え、CO2の排出量が増えた時であり、基準年としては不適当なのだ。つまり、下げ幅を大きく見せることができる。各国が自主的に削減目標を設定できるというからくりを悪用している。こうした所で真剣味に欠ける日本の姿が露呈し、世界から白い眼で見られることになる。

<世界は脱石炭火力に向かう>
 原発事故という予期せぬ(本当はできた)出来事であったが、日本は最もCO2排出量の多い石炭火力の割合が5ポイント増えて30%と高くなった。原発再稼動の見通しが立ちにくいので、今後も減らす気配がない。それに対し世界は炭素税の導入に向き始めた。こうした動きに敏感に反応した投資家は、化石燃料から投資を引き下げる「ダイベストメント(投資撤退)」を始めている。そして、石炭を「座礁資産」とも呼び、投資の対象にしなくなっている。それにもかかわらず経済大国・高度経済成長の夢を捨て切れない産業界が、石炭火力規制強化に反対している。見苦しい限りだ。

<世界から取り残される日本>
 EU諸国も真剣に取り組み始めている。ドイツは脱原発を着実に進めながら、CO2削減にも意欲的に取り組んでいる。イギリスは26年までに石炭火力発電を全廃すると決め、オランダも議会が段階的に閉鎖する議案を可決している。EUは90年比で40%減というのに、日本は90年比にすると18%減と、低すぎる目標でしらばっくれている。世界の環境NGOはこんな見え見えのごまかしに欺されない。
 挙句の果てに、川内に続いて高浜原発の再稼動である。CO2を減らすためにやはり原発に頼るしかないと言い出す恐れもある。これでは世界のはぐれ者、笑われ者である。

<低成長に向けて社会のシステムを大転換する必要がある>
 日本はこうした不誠実な態度を改め、率先してCO2削減に努めるべきである。幸いにして(又は不幸なことに)石油も石炭もないに等しい。あるのは太陽、風、川、活火山、つまり再生可能エネルギー源だけである。「必要は発明の母」という。化石エネルギーのない日本こそ再生可能エネルギーに頼らざるをえない国なのだ。真剣に取り組めば技術革新が進む。CO2を大量に排出する産業構造を改めて、環境に優しい国造りに猛進する時である。
 先頃公開された外交文書によると、1979年に訪中した大平首相との会議で、鄧小平副首相が、中国が一家に1台の自家用車を持つようになれば地球がもたないと予言していたという。今その危険な時を迎えているのだ。中国で日本車の売れ行きが史上最高となったと浮かれている時ではない。中国の大気汚染は偏西風に乗って日本にPM2.5や酸性雨をもたらすことになる。つまり対岸の火事を拱手傍観しているわけにはいかないのだ。もうこれ以上地球を傷めつけることなく、成長・経済拡大から脱却しなければならない。原発もTPPも過去の遺物として葬り去る時なのだ。