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2016年02月29日

【選挙制度シリーズ4】 宮崎謙介議員よりも甘利TPP担当相の議員辞職が先 -不倫辞職よりあっせん利得辞職- 16.02.29

<好対照の宮崎前衆議院議員とサンダース上院議員>
 私は「被選挙年齢は引き下げでなく引き上げが必要」(【選挙制度シリーズ1】16年2月18日)で、例えば国会議員は40歳以上に引き上げるべきだと述べた。そして、平均寿命が伸びた今、それから30年やっても70歳ではないかとも付け加えた。日米に今、2つの例がみられる。35歳の「育休不倫」で議員辞職した宮崎謙介前衆議院議員と74歳のバーニー・サンダース上院議員である。

<育休宣言と不倫の矛盾>
 宮崎前議員は、東京生まれで早大高等学院から早大商学部に進み、日本生命に入社、26歳で学生の就職活動支援を行う会社を設立、京都3区から衆議院選に出馬し、当選2期目である。追い打ちをかけるようで悪いが、まさに私が若輩者を国会議員にすべきではないという典型的事例である。昔懐かしい3高(高身長・高学歴・高収入)、188cmの若きイケメンをいとも簡単に国会議員にしてしまった。
 女性に優しいのだろう、宮崎前議員は突然国会議員も育休を取ると宣言し、男女共同参画を進める世間から拍手喝采を浴びた。しかし、その優しさは出産という大変な状況の妻だけでなく、その他の若い女性にも向けられていた。国会議員の育休宣言とはかけ離れた行動である。

<自民党2012年問題>
 2009年に一挙に143人の新人議員を誕生させた民主党が、政権を10年ぐらいは担うと思ったのだろう、60歳以上の実力派自民党議員の多くが引退してしまった。そして2012年、自民党では一挙に若手議員が誕生した。その大半が2014年に2期目の当選を果たし、適性を欠く軽率発言や行動が噴出する。いわゆる「自民党2012年問題」である。新規公開株による利殖行為、「戦争に行きたくない」は利己的等の発言で自民党を離党した武藤貴也議員(36歳)も、当選2回で宮崎前議員の同期である。2人とも30歳そこそこで国会議員になっている。やはりなってはならない人たちなのだ。

<目の肥えた有権者が選んだプロ政治家>
 一方のサンダース議員がバーモント州バーリントン市長を2期務めた後で、下院議員になったのは1991年、50歳の時である。日本の自民党にあるクローニンの会(50歳を超えて国会議員になった者の会)のメンバーの有資格者でもある。その後、2007年に上院議員となり2期目の途中である。大統領選出馬のため2015年4月に民主党入りしたが、ずっと無所属で自らの政策を主張してきている。周りはその首尾一貫した姿勢を支持しているのだ。東部13州の目の肥えた有権者が育てた、重みのある議員であり、隣州・ニューハンプシャー州の勝利につながっている。サンダース議員は、日本のように若ければいいという上っ面な風潮では存在しないプロ政治家である。

<宮崎議員の国会復帰はありえず>
 宮崎議員のスキャンダルは、甘利経済財政相のあっせん利得処罰法違反にならんとするスキャンダルに続き、政界に波紋を投げかけた。いずれも週刊文春の記事がきっかけである。日本の政界を動かしているのは週刊文春ではないかと思うほどの活躍である。
 宮崎前議員は2月10日、甘利前大臣以上に素早く議員辞職してしまった。今まで不倫で総理や閣僚を辞任したことはあっても、議員辞職まではなかった。目立たんとしたとしか思えない育休宣言故のものである。議員辞職記者会見で、再び国会議員に、などとのたまわっていたが、有権者はそんなことは許さないだろう。あまりに言行不一致が過ぎる。そして何よりも罪なのは、せっかくの男性育休の気勢を削がれてしまったことである。

<甘利大臣の議員辞職が先>
 宮崎前議員の陰に隠れて、睡眠障害とやらで国会にも出てこない甘利前大臣を忘れてはならない。甘利前大臣については、ブログで「一事が万事で、業者が渡した50万円を大臣室でポケットに入れるような政治家に日本の国益を守る交渉ができるはずがない」と述べた(【TPP交渉の行方シリーズ51】TPP阻止もアメリカ頼みの悲しさ、16年2月10日)。国益を守ることもなく、大臣室で私腹を肥やしていた罪は、宮崎議員よりずっと重い。私はこちらこそ即刻議員辞職すべきものと思う。

<甘利前大臣に甘くしてはならず>
 1月28日の記者会見で「政治家の美学」などとのたまわっていたが、美学を持つ政治家なら大臣室で50万円を受け取ったりすることはないはずである。醜いのだ。鈴木宗男元衆議院議員は、毎年100万円の献金を受け取った「やまりん」から、違法伐採問題になった年にだけ400万円を受け取ったことで、あっせん利得罪に問われ、刑が確定し、公民権が停止され議員辞職している。それを甘利前大臣が罪に問われなかったら、あっせん利得処罰法はザル法のそしりを免れない。
 甘利前大臣ばかりでなく、300万円の金を私用に使ったり、高級車を要求した2人の元秘書の証人喚問要求は当然である。甘利前大臣も事実関係を把握して証明すると答弁している。司直の手に委ねるのは当然として、国会でも問題にしていかなければならない。

<降って湧いた京都3区の補欠選挙>
 宮崎議員は、念願の育休をずっと取り続けられる身分となった。一方で、京都3区の補欠選挙が北海道5区と同日(4月24日)に行われる運びとなった。こちらには民主党のイケメン、泉健太議員(比例復活)がおり、補欠選挙に出馬する。ナイスガイであり、確実に当選してもらわなければならない。これにより、北神圭朗議員が繰り上げ当選してくる。彼もまた民主党の将来を担う大物議員であり、民主党にはささやかながら順風が吹いてきている。

2016年02月18日

開催のお知らせ 『しのはら孝 2016年 中高国政報告会』

残寒の候、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 日頃から民主党及び篠原孝の政治活動にご支援を賜り厚く御礼申し上げます。
 下記の通り『しのはら孝 2016年 中高国政報告会』を開催いたします。
 つきましては、ご支援いただいている皆様にご参加いただき、新年の活動を力強くスタートさせたいと願っておりますので、万障お繰り合わせの上、ご来臨の栄を賜りますようご案内申し上げます。

『しのはら孝 2016年 中高国政報告会』

◆日時 2016年2月27日(土)              
 午後5時30分
 ゲスト:原口一博 衆議院議員・元総務大臣
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 ゲスト:杉尾秀哉 元TBSキャスター
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◆会場 中野勤労者福祉センター 
 長野県中野市三好町1-4-27
 電話 0269-22-5354


※日時等変更になる場合がございます。


しのはら孝事務所(民主党長野県第1区総支部)
電話 026-229-5777

2016年02月15日

【選挙制度シリーズ3】格差対応で左と右に分かれるアメリカの大統領選 -日本では格差がなぜ問題にならないのか- 16.02.15

<世襲がはびこり硬直的な日本の政界>
 アメリカ大統領選の火ぶたが切って落とされた。アメリカの銃社会や金融資本主義の跋扈をみるにつけ、狂いつつある変な国ではないかと思うことが度々ある。しかし、大統領選挙の民主主義的プロセスをみると、やはりきちんとした大国だと見直すことが多い。今回はその感を特に強くしている。総裁選に野田聖子を出馬させないように圧力をかけて無投票再選に持ち込む、安倍ジョンウン体制(?)の国とは段違いである。
 日本ほど世襲政治がはびこっている国はないという。国政でいえば4代目が小坂憲次、鳩山邦夫、古屋圭司、林芳正、小泉進次郎と5家あり、3代目となると今をときめく安倍家、岸家をはじめとして数えきれないくらいである。これが地方政界になると親子代々市長を務めるとかもっとひどい例がみられる。これが日本の国政を歪め、停滞させることは明らかである。

<アメリカにも世襲がはびこり始めたのか?>
 それがアメリカにも波及して、ブッシュ家で父子2代にわたって大統領となり、その弟のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事まで大統領候補に名乗りを上げている。かつてのケネディ王朝ならぬブッシュ王朝の出現である。クリントンも夫の代役でなく、妻も大統領選出馬となった。さすがの新興国アメリカも建国200年も経つと社会も停滞してしまうのだろうと思っていた。
 ところがどっこい、アメリカの健全な精神は健在である。ワシントンの既成政治家への不信が高まり、弟君も奥様も苦戦を強いられている。国民は新しいアウトサイダーの血を求めているのだ。日本では極めて古典的な金銭感覚の小渕優子議員が、あれだけのスキャンダルの中でも悠々と再選されてくるのと大違いである。伝統・権威に弱い日本とそうしたものに背を向け、進取なるものを求めるアメリカとの違いが如実に現れている。

<サンダースの出現は必然>
 ピケティではないが資本主義は必然的に格差を生み出す。資本主義の権化の国アメリカで、格差が急激に増大しつつある。政治はそれを是正する必要があるが、アメリカではむしろ促進する新自由主義が幅を効かしている。
 そこに彗星のごとく現れたのがサンダース上院議員である。74歳と大統領選の候補の中では最高齢だが、政策や主張は最も若々しい。前号のとおり格差是正を全面に打ち出している。日本と同じ国営の国民健康保険制度、自給15ドルの最低賃金、公立大学の授業料の無償化、大手金融機関への増税等を全面に押し出し、若者の共感を得て支持率を伸ばしている。大企業に有利で格差を生み出すだけのTPPには最初から大反対である。アメリカには社会主義や共産主義を極度に嫌う風潮があるにもかかわらず、支持を増やしつつある。
 サンダースは自らを民主社会主義者とうたい、旗幟を鮮明にしている。バーモント州の人口4万人のバーリントン市の市長を2期8年務め、組織運営のノウハウを身につけている。その後下院議員、上院議員を無所属のまま20年以上務めている。サンダースへの共感が隣りのニューハンプシャーだけでなく、全米に広まっている。だから、白人が大半で保守的なアイオワ州でも、クリントンに0.2%の差まで肉迫したのだ。

<日本は格差に鈍感で動きがみられず>
 1%のウォール街の金持ちが99%の富を得る、といわれるアメリカほどでないにしても、日本でも格差は徐々に拡大している。日本経済の停滞を打破するためのマイナス金利の導入が思わぬ波紋を投げかけ、ずっと続いた株高も崩れかけている。それでも他の国と比べ日本は安全とかで日本円買いが進み、円高になりつつある。安倍内閣の株高目くらまし経済政策は破綻の寸前である。
 ところが、日本ではまたアベノミクスに欺され、安倍内閣の高支持率が続いている。日本ではアメリカと異なり経済的困窮が政治に結びつかないままであり、参院選も今は反安保法制一色である。野党はTPP、低賃金等の格差を生む政策こそ問題にすべきと思うが、どうもそうなっていない。

<耳障りのいい保守・国砕主義が頭を持ち上げる>
 安倍首相は、日本を取り戻すといった強気なキャッチフレーズを多用する。しかし、強い国を目指す点ではアメリカのほうが日本より上であり、その筆頭はトランプである。「アメリカは貿易でも軍隊でも勝っていない」と苛立ち、ニューハンプシャー州の予備選勝利の後「貿易で中国と日本をやっつけ、メキシコにも勝つ」と息まいていた。経済不安へのトランプ流の政策アピールである。TPPも他国に譲り過ぎたと反対し「アメリカを再び偉大な国にしていこう」と国民の胸元をくすぐっている。
 安倍首相が民主党政権時代と比べて経済が強くなったとやたら自慢するのは同根である。つまり、日米両国で政治が混乱して極端な右・保守勢力が頭を持ち上げてきているのだ。あまり好ましいことではない。

<政治は玄人に任せるか、新鮮な素人がいいか>
 トランプは政治には全くの素人である。かつてもアイアコッカ・フォード社長のように事業家が大統領選出馬の噂になったし、ロス・ペローのように実際に挑んだ者もいるが、ここまで生き残った例はない。隣国韓国でも李明博は現代建設社長から大統領になったが、アメリカでも不動産王の大統領が誕生する可能性もなきにしもあらずである。

<アメリカ国民の大統領を選ぶ基準>
 ところが、アメリカ国民には全く別の基準で大統領(候補)を選ぼうという動きもみられる。既成政治家をいぶかしい目で見る一方、やはり一国の舵取りは、組織を動かす経験者でなけらばならないという玄人的感覚である。オバマは上院の1期目で大統領になったが、国民は経験不足のトップの危うさを学んだからである。それまでは、大半が知事経験者であり、1州を束ねた経験が重要視されていたのだ。
 トランプは会社を破産させたりしたこともあるが、企業経営で成功しており、国家の経営も任せられるとみられているのだ。共和党の討論会で、劣勢のブッシュが知事経験のない非主流の保守強硬派・クルーズと主流派若手・ルビオを経験不足と攻撃しているのも、こうした国民の視点を意識してのことである。

<安倍内閣高支持率の不思議>
 序盤は人気投票的な要素が多く、クリントンといいブッシュといい党の主流の大物政治家が押しなべて苦戦している。アメリカ国民は明らかに変革を求めているからだ。ただ、最後には妥当な主流派(すなわちエスタブリッシュメント)が巻き返してくるかもしれない。指名レースの山場となる3月1日のスーパーチューズデーまで、アメリカの大統領選から目が離せない。
 一方日本は、安倍内閣の政策の大半(原発再稼動・安保法制等)は支持されていないというのに、内閣支持率だけは50%を超えるという不思議な状態が続いている。これをいうと民主党がだらしないから、という答えが返ってくるが、私には反論のしようがない。
 日本でも参議院選挙に向けて大きなうねりを起こしたいが、永田町では岡田代表が石の地蔵さんよろしく動かず、ますます閉塞状態に陥っている。何とかしないとならないと苦闘の日々が続いている。

2016年02月10日

【TPP交渉の行方シリーズ51】TPP阻止もアメリカ頼みの悲しさ -甘利TPP担当相の辞任は当然か?- 16.02.10

 民主党は1月、『突貫作業でTPPは支持できない、問題あり』の中間報告をまとめた。

<民主党はTPP反対を明確化>
 遅い対応だが、12年末の総選挙のように推進などと愚かなマニフェストを作っていた時と比べるとかなり「まし」になった。とはいえ、さっさとTPP批准反対と明確に打ち出していけばいいのに、まだ腰が引けている。しかし、我々反対している者の努力と3回の選挙の大敗北に懲りて、さすがの上層部も方針として反対していくことはほぼ決めている。どうしても打ち出せないのは、例によって幹部のなまくらな姿勢故である。
 私がカナダのバンクーバーに出張中の1月19日に中間報告をまとめたのは、一つには1月25日の岡田代表の代表質問に備えるためでもあった。ところが、質問は32に及ぶ政策項目に触れたというのに、14年秋の閉会中審査の予算委員会と並んで再びTPPに一言も触れなかった。
 2011年の秋にTPPを巡り大議論をした折、当然岡田代表(当時は役職なし)は賛成、私などは反対。その時賛成したので、今も反対するのはイヤらしい。私は反TPPを明確に打ち出していけば、2007年ほどではないにしろ32の1人区でかなり勝てると思っているが、いくら進言しても動こうとしない。

<私の海外出張中に閣僚スキャンダルが飛び出すジンクス?>
 ところが、私のバンクーバー滞在中(1/15~22)に、またもや週刊文春(1/21発表)で現職閣僚・甘利明経済財政相のスキャンダルが暴露された。14年秋に私がシドニーのTPP閣僚会合に出張していた時には、西川公也農水相の何のことはないスキャンダルがなんと3つの週刊誌に掲載された。今回は甘利TPP担当相のあっせん利得罪も立件されんとする大スキャンダルである。閣僚として重さと罪深さでは前回の比ではない。私は、日本の新聞のコピーをバンクーバーで読みながら、これは辞任しかないだろう、と直感した。週刊文春の記事は凄まじい内容だったが、甘利大臣はそれにもかかわらずスイスのダボス会議に出張した。

<甘利大臣辞任は当然>
 日本的な決着として、甘利大臣はずっと交渉担当だったのだから、せめて2月4日のニュージーランドでの署名会合を花道に退陣と思いきや、予算委員会が始まる前の1月28日の記者会見で涙を浮かべながら辞任してしまった。
 私は、この交渉をまとめることだけしか念頭になくて担当し、交渉で国益を守るための最後の努力もせずに行司役に徹した、などとのたまう甘利大臣は、それだけで辞任に値すると述べてきた。それにもかかわらず、日本のマスメディアは逆に難しい交渉をまとめた功労者などともてはやしていた。

<50万円を平気で胸にしまう政治家が国益を追求するか>
 私はこうした論調に歯ぎしりしていたところだった。残酷なようだが、こういうのを「天網恢々疎にして漏らさず」というのだろう。農民を不安に陥れ、国益を無視してTPP交渉をまとめるという功名心に走った甘利大臣に天罰が下ったともいえる。
 私は、ひたすら妥協するだけだった交渉経緯を徹底的に糾弾して辞任に追い込むべきと思っていた。14年秋の臨時国会では、私は農林水産委員会の筆頭理事として、西川大臣の県庁勤め時代の不起訴案件などを国会で取り上げなかった。しかし、甘利大臣は許すわけにいかなかった。
 大臣室で50万円を平然ともらい「いい人ばかりと付き合っていては選挙に勝てない」と開き直る政治家が、日本の国益を賭して必死で交渉していたとは農民でなくとも信じまい。一事が万事なのだ。

<再びアメリカ頼りのTPP粉砕>
 日本では、TPPの署名は終わったし、後はTPP特別委員会で条約(協定)の批准と関連法の成立を待つばかりという雰囲気である。後任に石原伸晃元幹事長が就き、甘利辞任の日に認証式も済ませている。安倍首相は代表質問の答弁でかばう素振りをしながら、影では電撃辞任で潔さを示して国民を騙すシナリオを描いていたに違いない。石原新大臣は予算委員会でにわか勉強の成果よろしく荒っぽい答弁の最中である。最悪の妥協をした甘利前大臣がいなくなり、何もわからない石原新大臣の核心からはずれっぱなしの答弁に納得するわけにはいかない。
 日本では、いくら国会で頑張っても多勢に無勢、最後は多数決で可決されてしまう。そして、TPA法案が通らないかもしれなかったのと同じく、TPP粉砕の頼りはまたもやアメリカである。そして、なんと幸運なことに今回も希望がないわけではない。

<民主・共和両党の上位2人ともTPP反対>
 アメリカの大統領予備選は2月1日のアイオワ州の予備選で火蓋が切られたが、予想通り混戦模様である。民主党はサンダースが予想以上に善戦し、クリントンに0.2%差に迫った。一方、共和党はトランプが圧倒的に優勢というマスコミや世論調査の予想の中、党内きってのタカ派のクルーズが1位となり、トランプが2位になる番狂わせとなった。
 政治が混乱すると大衆は右や左の極端に流れるという好例がアメリカでも出現した。サンダースは自ら社会民主主義者と名乗り、格差是正を前面に出し、若者のアンチ・ワシントン(既成政治家)の支持を広く受けている。最低賃金時給15ドル、公立大学の授業料無償化等を掲げ、TPPは大企業のためにしかならないとして、最初から大反対である。クリントンも自分の求めた水準ではないとして反対している。
 一方、右のクルーズ、トランプともにISD等の軟弱な規定を嫌い、もともと反対している。トランプは例の調子で、シボレーは東京で1台も走っていないのに、日本は何百万台もアメリカに輸出している、我々を犠牲にして他国を豊にするバカげた協定だ、と大反対している。
 かくして、アイオワ州の両党の1、2位4人ともすべてTPPに反対している。

<共和党重鎮も審議促進の意思なし>
 これではいくらオバマ大統領が自分の2期目の遺産(legacy)として年内の批准を目論んでも、そうは問屋がおろすまい。2月2日、オバマ大統領は野党共和党指導部に早期承認を求めた。それに対しマコネル上院院内総務は、TPPの審議は大統領選後への先送り意向を示している。また、かつてTPA法案を支持したハッチ上院財政委員長も議会で承認されるには何年もかかると冷たい態度である。
 アメリカでは国際貿易委員会(ITC)の経済的影響の分析結果が5月中旬に提出され、その後にしか審議に入れない。しかし、7月には夏休みに入る。一方大統領選は佳境に入っていく。ずるいやり方をして大統領選後の交代前の旧議会での一挙承認もありうるが、やはり新しい議員でなければ公正を欠く。どう見ても17年以降でないと審議されまい。
 さらに次々期大統領選に照準を合わせたライアン下院議長は、当初はTPPの審議に応ずる気配をみせていたが、今や慎重な姿勢に転じている。

<日本の政治の信用を低めた甘利金銭スキャンダル>
 日本では、甘利大臣の辞任はTPPの国会審議・批准にそれほど大きな影響を与えないとタカを括った見方が一般的だが、他国は日本の成り行きを注視しているに違いない。なぜならば、途中参加で何の具体的提案もせず、ひたすら妥協を繰り返してまとめることだけに腐心する異様な交渉者(甘利大臣)の姿勢は各国には奇異に映っていた。特にマウイ島でアトランタで大交渉国が行きながらろくに光章もせずにいることが不思議がられていた。
 そこに突然の金銭スキャンダルによる辞任は、驚き以外の何物でもない。TPP妥結へのこだわりの原因を、業界団体の「菓子折りの入った紙袋と封筒」の故と疑って見られている可能性が高い。
 いずれにしても、穢れた担当により決着をみたTPPが、清く正しいものであるはずがない。スポーツ界においては、ドーピングなど不正をして得た記録は取り消されている。国の命運を決するTPPの交渉の傍ら、大臣室で金を受け取っていたのだ。そして、秘書がフィリピンパブで接待を受けていたのである。交渉結果をすんなり認めるわけにはいかない。

<日本でも今国会の審議入りは認められず>
 安保法制は、アメリカの意のままに日本の自衛隊が海外に派遣され、戦争に巻き込まれるという危険をはらんでいる。しかし、アメリカが日本を攻撃する手段とはならない。ところが、TPPは日本から富を略奪する道具となる危険なものである。だからこそアメリカもきれいごとを言いつつ、日本を抱き込んだのだ。
 本文の日本語訳だけでも2000ページ、精査もろくにできずに2月4日に署名されてしまったが、これから数ヶ月かけて国会議員にも国民にもきちんと説明してもらわねばならない。学者・研究者に専門的に中身を吟味してもらいたい。内容も知らずにずっと提灯記事を書き続けてきた五大紙も2000ページという膨大な内容を読みこなし、自分達の主張の検証をする義務がある。それにはもっと時間が必要である。
 カナダの新政権が条文をしっかり検討する姿勢を見せていることを見習わねばならない。ずっと秘密交渉にしてきた異様な協定である。日本もそう簡単に審議させるわけにはいかない。
 また、いい加減極まりない影響試算もやり直させなければならない。

2016年02月09日

【選挙制度シリーズ2】参議院比例区にみる自律的在職年数制限 -奨励(女性議員を増やす)と制限の組み合わせを工夫する- 16.02.09(2.17修正)

<欧米では、首長は2期8年の制限>
 欧米先進国では、大統領、知事、首長等には2期8年の制限がある。アメリカの大統領が典型であり、プーチンですら一応ルールに則り、一旦引いてまた復活している。権力は腐敗(暴走)するからで、自ずと歯止めをかけなければならない。人事から何まで1人の思いのままになり、周りに茶坊主しかいなくなってしまうからである。
 日本にはこうした期数制度はないが、私は、人口5万ぐらいの市(町村)のトップが4期も5期もやるのは民主主義に反するし、不謹慎だと思っている。上田埼玉県知事のように多選知事を問題にして出馬し、且つ多選禁止を自分で決めたのに、そのルールを破って4期目を平然と勤めている者もいる。極端に人口の少ない小さな村で、それほど多くの人材に恵まれていないことから、長期にわたって同一人物が村長を勤めた場合などは仕方ないかもしれないが、通常の場合は、長くてもせいぜい3期に留め、4期もするのは不謹慎である。これを貫徹したのは最近では片山善博前鳥取県知事と嘉田由紀子前滋賀県知事である。

<当選9回(永年勤続25年)以上にひしめく有力議員>
 前号の永年勤続25年の任期終了で引退、を民主党の議員にあてはめてみると、なかなか本人たちが納得しないだろうし、党自体が弱体化してしまうことが分かってくる。当選12回の菅直人元首相、横路孝弘元議長、10回の川端達夫副議長はいいとして、当選9回の赤松広隆元副議長、岡田克也代表、大畠章宏副代表、高木義明国対委員長の4人の重鎮が表彰を受けたばかりであり、今党を担っているところである。更に次の25年表彰に控えている当選8回組が枝野幸男、玄葉光一郎、前原誠司と、これから代表(ないし総理)を狙う政治家である。これが与党自民党だと30名に及ぶ多くの有力政治家がひしめいている。
 日本と似て政治家を長くやる者が多いのはフランス、イギリス等EU諸国、短い代表が韓国で、3期、4期と続ける者はほとんどいない。ちなみに、アメリカの大統領の中央政界での前歴は意外に短く、平均18年にすぎない。つまり、そう長くやらなくとも政治はできるということでもある(本件に関しては2011.8.23「自民党時代の総理の条件」、「米・仏にみる国のトップの資格と選び方」参照)。
 長年やると中曽根康弘のような大政治家を生むが、一方で甘利明のような堕落した政治家もできてしまう。どこかに歯止めが必要である。
 このメルマガ・ブログの推稿を重ねている中、2月6日、畏友大畠章弘前素交会会長から今期限りで政界引退のメールをいただいた。本文にもあるとおり、当選9回、経済産業大臣、国土交通大臣、民主党幹事長を務めた方であり、年齢は68歳、まだまだやれる年齢である。

<合理的な「2期12年で交代」する参議院比例区のルール>
 よくしたもので、国会議員の在職数制限が慣習上自ずと決まっているケースがみられる。参議院の比例区の議員である。今は少なくなったが中央官庁出身の業界丸抱え(?)の議員は、大体ほとんど例外なく2期12年で次の者に交代していた。局長ないし次官経験者であり、年齢もかなり高齢になっていることもあるが、人材はいくらでもいるのであり、本人の資質というより、その組織出身のしかるべき者なら誰でもよかったからである。
 このことは、労組出身の議員についてもあてはまる。内藤正光元参議院議員はNTT・情報労連の代表で、当時は異例の若さだったが、2期12年で交代した。また、長野県連に所属している津田弥太郎、柳沢光美両参議院議員は、体力気力とも十分なのに残念ながらこのルールに則り今期限りで引退する。これはまさに自然発生的に生まれた合理的ルールである。
 ほとんど業界代表ばかりで成り立つ自民党の参議院比例区でも、70歳以上を公認しないのも、このルールの延長線上にある。ただ、山東昭子(7回)のような大衆票(?)だけで当選するいわゆるタレント議員は例外となっているが、これまた合理的な例外である。彼女が独自に集票し、自民党全体の票の上増しに貢献するからである。

<2人区のgolden seat>
 地方の人口減により、2016年の参院選から我が長野県と宮城県・新潟県の3県が2人区から1人区になる。従って新人の杉尾秀哉(民主党)と2期目を目指す若林健太(自民党)の一騎打ちの熾烈な選挙となる。
 こういっては何だが、参議院の2人区以上の地方区は、ほとんど選挙らしい選挙はやってこなかったといってもよい。自民・民主の2大政党になりかかったここ20年余は、特に2人区ではgolden seat(黄金の椅子)と呼ばれて羨ましがられてきた。なぜなら共産党は当選できないし、公明党は自民党を応援するだけなので、結果はどこでも自民・民主が座席を分け合ってきたからである。
 3人区以上は大都市の浮動票に振り回されるので、それなりに疲れる選挙戦を強いられる。共産・公明も当選の芽があり、近年の関西地区では維新が幅をきかすからだ。だから、2013年の5人区東京地方区の大河原雅子、鈴木寛の共倒れのようなことも起こる。

<見事な大久保勉議員の引き際>
 私の記憶では、2人区時代の群馬で自民党が2議席独占したのを最後に、それ以降はずっと自・民で議席を分け合ってきた。2010年に小沢代表が強引に民主党で2人を擁立したが、どこも2議席は獲れなかった。ただ、いずれか一方が当選できるという余裕があったし、比例区の票に連動して民主票を多少掘り起こしただろう。ところが、野党に転落した2013年には民主党の衰退も極まり、宮城(岡崎トミ子)、京都(北神圭朗)、兵庫(辻泰弘)ではそれぞれ、みんな・共産党・維新に敗れている。
 そういう意味では、2人区以上の複数区は誰であろうと当選できる点で、比例区の組織代表と何ら変わるところがない。それならば、同じルール、つまり2期12年で交代すべきともいえる。その点で、今回福岡地方区の大久保勉参議院議員が54歳という若さにもかかわらず、2期12年で引退表明したのは、上記のことを意識したものであり、敬意を表さずにはいられない。

<年代別格差是正は必要か>
 新陣代謝というと、定年制が出てくる。一つの考え方かもしれないが、被選挙権も引き下げて若者を含め、幅広い各年齢層の代表が必要だという観点からすると、高齢化が進んだ今、70代や80代の気持ちを直接代弁する者がいてしかるべきである。だから、各国でも議員の定年制のある国はほとんどない。
 今、衆議院では1936年生まれの亀井静香80歳が最高齢で、1986年生まれの最年少鈴木貴子30歳との差は丁度50年ある。そこで年代別の議員数と人口構成で比較して表にまとめてみた。(別紙 年齢階層別議員数)

働き盛りの50代が151人と1番多く、次に40代121人、60代110人となっており、いずれも人口構成よりも多く、極めてまっとうといえる。それに対し、20代は0人、30代53人だが、70歳を以上は26人と数が少ない。人口構成と比較してみると、70歳以上は79人少なく、20代の59人よりずっと乖離が大きく、70代こそ優先して議員になってもらわないとならないことになる。それを70歳以上は公認しないなどということがまかり通っている。被選挙権の年齢の引き下げをいうならば、70歳以上を排除する風潮こそ改めなければならない。

<女性議員のクォーター制導入>
 一方で、男女共同参画の立場から女性議員の数を増やすために、クォーター制度導入が叫ばれている。卑近な例では韓国の比例区は、奇数の順位は女性と法律で決められている。放っておいたら男性ばかりになってしまうからである。私は大賛成であるが、日本で今すぐ法定化は難しい。
 長くなるのでやめるが、これは衆議院では各党が比例の1位を女性として優遇することですぐ一応の解決はできると思っている。また、参議院では、上述の黄金の椅子の2人区以上で女性候補を擁立し、更に比例区の当選確実なグループ代表の3分の1を女性にすれば、いとも簡単に増やすことができる。この点については、私は3年前に詳細な提言をまとめているが、別の機会に紹介する。
 都道府県議については、2012年の民主党大敗北の後、民主党改革創成会議(船橋洋一座長)にまとめていただいた民主党立て直しのための報告で、県庁所在地の選挙区で女性候補を擁立すべしと提言をいただいている。こうしたことを地道に実行していく以外にない。

<果てしなく続く代表の格差是正>
 ここまでくると、人口比の格差、すなわち一票の重みの格差にだけ拘泥して「違憲状態」「違憲」とあげつらうのはおかしいと分かってもらえるのではないか。考え方によっては、男女別格差の方がはるかに大きいのに、二の次にしている。北欧ではむしろこれらの格差是正こそ重視され、女性議員が急増した。
 まじめに代表格差を考えたら際限がなくなる。例えば人口緻密地帯ですぐに議員と会える人と、ひと山越えていかないと議員に会えない人とでは政策実現の機会格差が大きいのではないか。また、高齢化が進んだ今、75歳以上の後期高齢者のクォーター制が必要ということになってしまう。
 代表格差の是正を含め、選挙制度の改革はどこに落としどころを探していくか、一工夫も二工夫も必要である。
3回目は、今、緊急の課題の一票の重み格差是正のための衆議院の定数削減について私の考えを報告する。

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