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【TPP交渉の行方シリーズ54】TPP特別委員会報告その2―TPPは明らかに国会決議違反―国会の判断の前に篠原孝が判定-16.4.22

<ウソ反TPPポスターに著作権はなし>
 2012年末総選挙で、長野一区では1枚も貼られなかったが、北海道、南九州、東北等で、やたらに貼られた「ウソつかない、TPP断固反対、ブレない―日本を耕す自民党」という悪名高いポスターがある。民主党がTPPを推進するという愚かなマニフェストを掲げていたこともあり、同僚議員はバタバタ討死してしまった。北海道は15人から2人に、九州は10人から2人に減ってしまった。
 私はこのポスターを提示し、まず馳浩文科相に選挙ポスターが著作権の対象となるかどうか問い質した。著作権は①保護期間が50年から70年になり、②親告罪(訴えがあって初めて罪を問われる)だったものが非親告罪(訴えがなくとも取り締まられる)となり、③日本にはない法定損害賠償制度(懲罰的で損害額を大きく上回る)といった大改正が行われる。②が問題で、日本のパロディ等の二次作品の創作意欲がそがれると問題視されている。ただ、非親告罪になるのは、市場目的を持つ海賊版等のみだと、一応歯止めがきいている。
 馳大臣は「個別の事案についてお答えする立場にない・・・」と、まるで刑事局長のようなお決まりの答弁だったが、4月7日のTPP特別委員会で安倍総理は、私はTPP断固反対と言ったことがないとか、知らないとか答えている。私は、少なくとも安倍自民党総裁は訴える資格がないと嫌味を付け加えた。

<次期総選挙で篠原ポスターとして二次使用?>
 ところで、このTPP断固反対、ブレない、を国会議員で一番ピッタリとやっているのは私ではないでしょうか。このNO TPPバッジ、STOP TPPネクタイをしてずっと反対しています。商業目的ではないため非親告罪にはならないようですので、この次の総選挙には一部手直しして私のポスターとして使わせていただきます。こう言ったところで、パネル持ちの小山展弘議員は、私のロゴマークにしている、鍬を担いで走る似顔絵イラストを「日本を耕す」の後に付け加えた。
 TVがどう映し出してくれたか知らないが、篠原さん本当にあのポスター使うんですか、と問い合わせが来たのをみると、私のパロディ(?)はちゃんと通じたようだ。政策ポスターとして本当に使っていいと考えている。

<関税撤廃、関税率削減にみる日米比較>
 牛肉の関税(38.5%)は2014年4月のオバマ大統領訪日時にTBSと読売新聞で報じられたとおり、16年目に9%に下げられることになった。内閣府はわざわざデマ報道だと記者会見までしたが、報道は事実であり、2015年10月の決着の1年半前には既に合意が成立していたのである。数寄屋橋ジローという鮨屋でオバマ・安倍会談が行われたが、文字通り手を「握って」握り鮨を食べていた(鈴木宣弘東大教授の多用する冗談)。だから、甘利大臣はマウイ島でもアトランタでも「行司役に徹する」とか呑気なことを言って、日本の国益の追求をしなかったのである。行司役は、藩基文国連事務総長やグロアOECD事務総長のすることであって、各国の交渉担当大臣のすることではない。

<ガソリン自動車は何十年、水田は何百年>
 牛肉は、まず1年目に11%も下げて27.5%にしたあと、16年目まで徐々に削減して10年目に20%、16年目に9%にすることになっている。セーフガード(輸入が急増した時に輸入制限できる)も、あまり働かないようにされてしまっている。
 これに対し、日本の攻めるべき自動車は、アメリカの関税がもともと2.5%と低いが、牛肉と違って関税引き下げ開始は16年目で撤廃は25年目。トラックにいたっては25%の関税が30年そのままで、30年後に撤廃。誠に気の長い話だ。30年後にガソリン自動車は消えているかもしれないというのに、何と悠長な約束か。
 それに対し、水田は100年前にもあったし、100年後もある。同じ尺度で考えてはならない。つまり、農業こそ100年の単位で考えるべきものであり、自動車と違うのだ。それを取引の材料としている。閣僚の中では平均寿命だとすると、30年後も生き残っているのは丸川珠代環境大臣だけであり、他の男性閣僚は全員80歳以上で生き残っていないと嫌味を付け加えた。牛肉と比べて明らかに譲り過ぎである。

<日本の輸出は自動車でもっている>
 しかし、ひとたび日米貿易収支をみると、自動車で譲るのはむべなるかなといえないこともない。2015年、日本の対米輸出額は15兆円、アメリカからの輸入額は8兆円で、日本の貿易黒字は7兆円。ところが、それを自動車と自動車部品でみると、対米輸出は、それぞれ4.4兆円と2.8兆円。アメリカからの輸入はごくわずかで、合わせた黒字は6.4兆円と、対米貿易黒字の90%も占めている。
 こんなにたくさん輸入してくれている国に関税を下げてもっと買ってくれ、というのはあまり強く言えないのは当然であろう。ある程度の譲歩は仕方ない。(別表「日本とアメリカの貿易の現状」)

<為替操作非難が起きるもっともな理由>
 もう一つ注目すべきは、2010年の貿易黒字4.5兆円が、5年後に2.7兆円増えて7.2兆円になっていることだろう。1ドル88円が121円と33円の円安になったことで急増したのである。物量ではほとんど増えていないのに、為替レートの変動で対米貿易黒字が急増したのである。これだから、トランプ氏は、日本は為替操作していると言いがかりをつけ、クリントン元国務長官まで大統領になったらきちんとした処置をとる、と述べるに至っている。この数字をみるとアメリカ側の指摘を根も葉もないことと言い切るわけにはいかないだろう。逆に言えば、全く関税が下がらないことに対して日本側が静かなのは、33円の円安が関税を30%近く下げたと同じ効果をもたらしていることに他ならない。
 為替操作は、もともと1980年代の対日貿易赤字をはるかに凌ぐ対中貿易赤字におびえたアメリカが、安い元の中国を標的にして言い出したことである。それがいつの間にか日本に向けられ始めた。昨年、中国経済は減速し、二度にわたり元安の措置をとった。うがった見方をする経済評論家は、アメリカが中国と同じように日本を為替操作国と攻撃するようにわざと仕向けた、と解説した。つまり、日米分断である。為替操作は日本ではあまり問題にされないが、貿易赤字国には捨て置けない問題だ。

<農産物でも譲ってしまう日本の軟弱交渉>
 日本が、アメリカが自動車の大お得意先故に譲歩するとしたら、アメリカこそ農産物の大お得意先の日本に譲らなければならない。ところがそうは全くなっていない。
 やはり、為替レートには左右されるが、日本は2015年には1.8兆円もアメリカの農林水産物の輸入超過である。日本の人口は減っているのであり、食料消費量が増えるわけでもなく、もうこれ以上輸入量を増やせないのは明らかだ。そんなことをしたら、国内の生産を圧迫し、農村がますます立ち行かなくなる。それを前述のように大幅な妥協を繰り広げた。一方的譲歩といっても過言ではない。
 林経産大臣からも森山農水大臣からも聞き飽きたきちんと交渉した、国益を守ったというありきたりの答弁しかなかった。

<篠原の国会決議違反判定―全く守られていない>
 短時間なので、私はやり取りよりも国民・視聴者への説明に重点を置いた。
私は12年12月の自民党選挙公約「聖域なき関税撤廃」や13年4月の農林水産委員会の決議に照らした違反ぶりを×印で示して追及した。嘘つきポスターは5つの×。(別表 「政府・自民党は公約や決議を守れたか」参照)

【決議① 農林水産物の重要5品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。(5つの×)】
 まず、除外はなく、例外のみ。つまり、重要5品目もほとんど手を付けられて完璧に守られた品目はない。米韓FTAでコメの16品目は除外していたのと大違いだ。(これは自明のことだが、翌日、玉木議員の質問で、初めて手を付けられていない無傷の品目がないことが大袈裟に取り上げられた。)
 再協議をすべきという決議などどこ吹く風、妥協しっぱなしのまま、逆に7年後に日本だけが米、加、豪、NZ、チリの5カ国と再協議を約束させられる始末である。つまり、7年後にさらに自由化されることを約束させられたようなものだ。

【決議⑥ 農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすること。(5つの×)】
 悲しいかな聖域すらほとんどまともに守れていないのに、日本が怒って退席する交渉場面など全く聞こえてこなかった。まとめたいという一心で国益は外に追いやられていたのである。

【決議⑦ 交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。(5つの×)】
 情報公開は、交渉経緯ペーパーの黒塗り(ノリ弁当)等でそのひどさが明らかになっている。従って、国会決議は守られていないというのが私の判定である。

 このほかに、国民皆保険制度と安倍農政への評価について問い質したが、前者は随所で述べているので省略し、後者は次回に報告する。