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嘘で塗り固められた「信を問う参院選」 - 消費増税再延期の飴と2つの争点(憲法改正、TPP)隠し - 16.06.13

<高飛車な安倍vs.低姿勢の竹下>
 安倍総理はつくづく勝ち気で我がままな人である。
 自らの失敗をほとんど認めようとしない。国会の審議でも少しもすまないという気持ちが見られず、答弁なのに高姿勢で高飛車である。小泉首相あたりからスタイルが変になったが、今はその極みに達している。反撃しようと身構えているのがよくわかる。ののしり合いになることが度々ある。

 その点、背も低かったが、腰はもっと低かった竹下登首相が懐かしい。ただ、「国会答弁は、言語明瞭意味不明瞭」と自らのたまっていたとおり、聞いていて少しも面白くなかった。そこには、国会答弁などひたすら低姿勢で体よく乗り切れればいい、という万年与党の慢心があった。そう言えば、菅直人総理は、1番きちんと論戦できたのは、橋本龍太郎総理だと最近のひどいやりとりを嘆いていた。

<いい加減な選挙演説>
 国民が注視している国会論戦さえすれ違いのでたらめなやりとりなのだから、選挙の論戦になるともっとひどくなる。一方的にまくし立てる街頭演説などは言いたい放題となる。
 アベノミクスが成功していたら、堂々と消費増税できたはずである。二度と延期しないと断言していたものを、「経済状況がなってないから」と、しゃあしゃあと延期した。見通しが狂ったとも、すみませんとも言わず、「新しい判断」という珍語を編み出して居丈高である。14年11月には衆議院解散の理由にした消費税がらみの政策変更だが、今回はむきが悪いのだろう、沈黙している。
 国民は、税金は少しでも安い方がいいので、別に評価はしなくとも、あえて批判の声を挙げていないだけなのである。安倍政治はよく見ると、選挙を意識した政策が多く、大半は嘘ばかりである。

<ひたすら隠す憲法改正>
 まず、1番に挙げられるごまかしは、本当の狙いを隠していることである。衆参ダブル選挙で圧勝し憲法改正を、と意気込んでいたのに、大義名分がなく諦めた。ところが、今度はコロッと変わって憲法のケの字も出てこない。よく言われる封印である、14年末総選挙もアベノミクスを問うなどと言っておきながら、次の国会では安保体制を強引に推し進めた。
 明らかな公約破りだが、マスコミも国民もこの点をあまり問題にしない。逆に民主党がマニフェストにない消費増税やTPPに手を突っ込んだことがよく取り上げられる。安倍総理の民主党政権に対する悪口に、そのまま乗っけられてしまっている。

<日本の一時の口約束と1年かけた公約>
 アメリカの大統領選は2年もかけて論戦をするので、候補者の政策が自然と炙り出されてくる。なおかつ何回も繰り返されるので、知らず知らずのうちに国民周知の公約となっていく。例えば、トランプの日本の軍事面での役割分担要求、TPPはダメ協定で認められず、といった類である。だから、そうした公約は大統領になっても簡単には覆せない。それにひきかえ日本は、選挙直前の捏造した口約束ばかりであり、守られるはずがない。仕組み上の問題もあるが、要は国民が与党に舐められているのだ。

<安保法制は強気にアピール>
 安倍総理は改憲はおくびにも出さない代わりに、安保体制で日米同盟が強化されたと攻勢に出ている。オバマ大統領の広島訪問を成果としてちゃっかりアピールしている。日米同盟強化の証しだというが、事実は大きく異なる。
 アメリカの外交戦略はしたたかである。2008年のプラハの「核なき世界」演説の後、退陣直前の日本主催のサミットに合わせた広島訪問はとうに織り込み済みだったはずである。だから、ケリー国務長官の広島訪問でアメリカ国内のタカ派の反応を見て、それほど反感がなかったことから決断しただけのことである。日本の対米外交の勝利でも何でもない。
 本当は核軍縮をもっと進めたかったのだろうが、本体のほうはうまくいかなかった。

<やたらと急ぐTPP承認>
 もう一つの争点は、TPPである。ところが、こっちはもっとしらばっくれている。
 マレーシアを除き、主要国はどこもTPPを承認していない。一番推進してきたニュージーランドでさえ、アメリカの様子見である。それを安倍内閣は前通常国会で承認しようと目論んでいた。民進党は内容の議論をほとんどせずにもっぱらTPP特委の西川公也委員長の(だとされる)本の内容ばかりを責め立てた。更に交渉経緯等の情報開示も執拗に求めた結果、「黒塗りノリ弁当」なる新語もできた。政府の秘密性が問題にされ、結局、承認されなかった。あまり好ましい審議とは言えないが、ひとまず、延期させることに成功した。

<頬被りするTPP>
 安倍総理は、発効前に対策予算をつけてTPPはもう済んだことにして参院選に臨むつもりだったが、そうは問屋が卸さなかった。
 自民党から聞こえてくる話によると、国対関係者の大半が先送りせざるを得ないという中、安倍総理1人がひたすら前国会での承認をせかしたという。圧倒的多数を誇る政府与党は、安保法制と同じく強行採決もできたが、それは参院選を前にあまりに危険すぎたようだ。だから、私は反TPPの象徴的候補として鎌谷一也さんに出てもらうことにした。TPPを争点にしないとならないからだ。遅ればせながら、6月上旬になってやっと民進党の反TPPビラができ上がった。

<アメリカの承認はいつになるか見通し立たず>
 三本目の矢、成長戦略にさしたるものがなく、その柱に昇格(?)したのがTPPである。TPPは百害あって利はほんの少ししかない。オバマ大統領はTPPを遺産(legacy)にしたいと言い、承認を自分の任期中にと願っていたが、アメリカの政界スケジュールがそれを許すような状況にない。少なくとも11月の大統領選前はありえない。
 クリントン大統領は「私の目指した」(つまり国務長官時代に交渉を始めた)TPPにするために再交渉を要求するだろう。トランプ大統領は「TPPをすべてチャラにして、交渉しなおせ」と命ずるか承認せずに葬り去るかもしれない。

<次期大統領の方針に合わせるべし>
 巷間、安倍総理は総裁の任期が2期6年という自民党のルールを変えて、2020年のオリンピックを自ら迎える算段だと言われている。日米同盟を重視する安倍総理ならば長期戦略を掲げなければならない。となると次期大統領にどのように合わせていくかが最重要課題となる。その2人の候補がTPPはダメだと言っているのを、日本だけが承認して、どう日米同盟関係を維持していくのだろうか。
 甘利TPP担当相は、再三にわたり「再交渉には絶対に応じない」と強調してきている。それを盾に再交渉に応じず、アメリカに承認を求める気なら、それはそれで立派な方針である。だとすれば、日米は確実に対立しないとならなくなる。それで通せるならいいが、いままでの流れからすれば、日本が全面的に妥協し、TPPの修正を受け入れなければならなくなるのではないか。ベストはTPPの漂流であり、消滅である。

<オバマと一緒に退陣するつもりなのか?>
 もし、安倍総理がオバマ大統領と合わせて一緒に退陣するつもりならば、TPPを二人共通の遺産にしようとしているのが理解できないわけではない。つまり、レイムダック同士で成果を上げようと、示し合わせているなら仕方ない面もある。しかし、あまりに自分勝手であり、その場しのぎである。一国の長として日米同盟に混乱を招くような格好付けは許されることではない。