« 二重国籍であることが判明した今は、潔く代表選は辞退すべし ‐説明が二転三転は代表候補者として失格‐ 16.09.14 | メイン | TV中継のお知らせ 国会中継 NHK総合 10月17日(月)11:40~   -16.10.15- »

【TPP交渉の行方シリーズ59】世界文化遺産・和食は日本農業が生み出したもの‐TPPで効率一点張りのアメリカ農産物に席巻されてはたまらない‐16.09.29

 前回、民進党代表選に絡み、もう一つ短いブログを書くと予告したが、蓮舫が圧勝し、野田幹事長指名で、民進党の中は少々混乱しながら・・・、いや少々ではない、大混乱をしながらスタートしているので、この点については論評するのは差し控えたい。
 この臨時国会は、いつもの重要案件として補正予算のほかに、天皇の生前退位にともなう皇室典範の改正問題もあるが、やはり図抜けて大きいのはTPPの承認案件である。

<TPP特委の筆頭理事拝命>
 私は前通常国会でもTPP対策特別委員会委員にはなっていたが、諸般の事情によりたった1回30分しか質問せず、尻切れトンボに終わった。西川公也委員長の暴露本とか、情報公開しない黒塗り資料(ノリ弁当と称される)とかばかりで、なぜ内容の審議をしないのだという苦情も寄せられた。しかし、結果的に承認されず継続審議となった。
 今国会では私が筆頭理事となった。つまり、今まで以上にTPPの行方に大きく関わっているのだ。「TPPを慎重に考える会」の会長として先頭に立って反対してきた私の筆頭理事就任で、民進党もやっと本腰を入れて反対する姿勢を鮮明にした、と報じているマスコミもある。
 ところが、今まで何とかしのいできたのに、私が筆頭理事の時に通されてしまったとなると、私の力不足ということにもなりかねない。そんな濡れ衣を着せられないためにも、きちんと対応していきたいと思っている。

<妥協の産物SBSに生じた調整金問題>
 そうした矢先、一般の国民の皆さんにはなじみが薄いがSBS (Simultaneous Buy and Sell、売買同時入札)による米取引でとんでもない事実が明らかになった。ウルグアイラウンドの結果77万トンのミニマム・アクセス米を外国から輸入しなくてはならなくなったが、そのうちの10万トンは輸入業者(商社)と買受資格者(卸業者)がペアで申込むことになっている。それを指して同時(Simultaneous)と言っている。
 これは、TPPにも絡んで大問題となる。「コメは守った」「国産米以下に安く販売させない」「同量は備蓄米にする」と言っておきながら、7万8,400トンを米国と豪州からSBSで購入するということが決められている。そうすると、外国産米に引っ張られて国産のコメの価格が更に下落することは明らかである。影響が「ゼロ」だと言っている試算もやり直さなければならない。これを放置しておくと米の価格はどんどん下がり、日本の農業はガタガタと崩れていく可能性がある。まさに蟻の一穴となるおそれがある。(これについてはややこしいので別途報告する)

<農業の究極の目標>
 政府も財界も、TPPに備えるのに農産物を少しでも安くということで、効率一点張りのアメリカ型農業を推進して、規模拡大とばかりいっている。小泉進次郎農林部会長は、若さを活かして現場に出かけている点は立派だが、どうも市場メカニズムに任せれば日本農業が強くなると勘違いしているのではないかと心配である。
 私は、役人時代(30代前半)に、アメリカ型農業は資源収奪型で長続きしないと否定し、21世紀は労働生産性を重視する日本型農業が生き残ると論文を書いた。その結果、少々普通の役人の道を踏み外すことになってしまった。
 私の主張は、農業の役割とは何かをよく考えれば、おのずと行き着く結論である。農業は、消費者により良いものを提供することが一番重要である。良いものには安全なもの、おいしいもの、安いものも含まれる。日本の消費者が安さばかりを気にしているとはとても思えない。農業の究極的目標は、健康的な食事を提供することである。

<アメリカの農業は問題だらけ>
 そういった観点からすると世界のおいしい料理は、日本、フランス、中国等である。どこのグルメ本を見ても、アメリカ料理はうまいとか、気の利いたアメリカ料理のレストラン、といった記載は見当たらない。アメリカ農業は規模拡大ばかりで、食の安全性もほったらかしにし、農薬や化学肥料を使い、はたまた地下の化石水を使って今だけの生産量を高めている。地下の化石水がなくなってしまったら灌漑排水ができなくなり、毛細管現象で塩が吹き出し、二度と作物のできない土地が増えてくる。
 今だけ、金だけ、自分だけというのが典型的なアメリカ農業である。私はこれを鉱業的農業(Mining-like Agriculture)と呼んだ。将来の世代のことも消費者のこともあまり考えていない。

<食の安全より長持ちを優先>
 収穫してからもメチャクチャである。リンゴはガス冷蔵させ、いつでも見せかけの新鮮さを保てるようになっている。スーパーに並べて何日もきれいにみせるためポストハーベスト農薬には際限がない。パリ滞在の3年間で、あちこちのコメを食べてみたが、我が家ではアメリカ米は全く使わなくなった。イタリア米もフランス米もスペイン米も皆コクゾウムシが湧いてくるのに、カルフォルニア米だけはいつまでも虫が湧いてこなかったからだ。この格差はポストハーベスト農薬の差から生じている。虫に悪いものは、程度の差こそあれ、人間にも悪いに決まっている。

<化学的農業で「沈黙の秋」の訪れも間近か>
 もっと悪口を言わせてもらえば、食の安全がなっていない。いまだにO-157が問題になるぐらい衛生面では遅れている。こちらは改善すればいいのでまだいいとして、問題は、その恐ろしい化学的農業、工業的農業振りである。
 農薬は空から撒いてそれこそ一網打尽、害虫だけでなくすべての昆虫を殺してしまう。太平洋の流し網漁業は目指す魚だけでなく、海鳥や海亀まで殺すと禁止された。それなら、大平原の生き物全体を死に追いやる空中農薬散布や除草剤の使用こそ禁止すべきだが、全くそうした動きは見られない。生物多様性も何もあったものではない。これでは「沈黙の春」が来てもおかしくない。そこにもってきて、またネオニコチノイド系農薬で、ミツバチが減っている。虫媒により実るトウモロコシや菜種は種を作れず、収穫ゼロの「沈黙の秋」がいつ訪れるかもしれない。

<家畜の世界のドーピング競争>
 人の手がより多く加わった畜産はもっと壊滅的である。成長ホルモンでやたら太らせ、乳量も増やす。人間は筋肉増強等のドーピングが禁止され、オリンピックの出場も禁止されているが、家畜の世界はドーピング競争(?)真っ盛りである。こんなまがい物を食べていては、我々の体が蝕まれるばかりである。抗生物質もふんだんに使われ、その肉を食べた人間は、いざという時に効かなくなる恐れもある。
 その乱れたアメリカ農業が生み出した食がアメリカ料理として世間に受け入れられていないということは、アメリカ農業が根本的に間違っている証拠ではないか。

<日本型農業・和食の普遍性>
 その逆が和食である。数多い料理人の皆さんには悪いが、料理の良し悪しは半分以上素材の良し悪しで決まる。より良い素材、すなわち食材を提供しているのが、日本農業なのだ。丹精込めて作った日本の野菜、果物であり、コメ、つまり質のいい食材。その上に和食は成り立っているのである。つまりは日本型農業のほうがアメリカ型農業より優れており、世界に広まる普遍性があるということだ。
 持続的農業(Sustainable Agriculture)の一つの見本が、篤農家が先祖伝来の農地で、慈しみ育てる日本型農業であり、永続的農業(Permaculture)と呼んでしかるべきものである。ところが、これに当の日本が気付いていない。

<思わぬ詩人の援軍>
 このアメリカ型農業と日本型農業の比較をしている私の文章を読んで、もっと的確な言葉で表現してくれたのが、今は亡き堤清二(詩人:辻井喬)氏である。「農林水産省の篠原さんが書いたとおり、あの無味乾燥なアメリカ食しか生み出せないアメリカ農業は絶対に良いとは思えない」と味方をしてくれた。「自分は旅が好きで、アメリカは気軽に行ける国だ。ただ、旅の楽しみの半分以上はその地域のおいしいものを味わうことである。しかし、アメリカのアイダホ州は芋の産地でも、芋料理があるわけでもない。中西部に延々と続くトウモロコシ畑があっても、うまいトウモロコシ料理があるわけでもない。その意味ではアメリカは悲惨な国である。『どれだけまずいか試してやろう』的な食べ歩き旅行しかできない、と嫌味を言い放った。だから、篠原さんが言う日本型農業のほうが健全で、世界的普遍性があるということに共感を覚える」と対談番組で述べていた。
 さすが詩人、私よりもわかりやすいどぎつい表現が得意である。

<TPPこそ安保法制・憲法改悪より危険>
 「どれだけまずいか試してやろう」的な食べ歩きに対し、日本は地域ごとに特産物がある。これをワンパターンの効率一点張りのものになっていったら、地域特産物は次々に消えていってしまう。このことが全くわかっていない。TPPは日本の町の風景も変え、似た風景ばかりのアメリカの町と同じにしてしまうのだ。
 因果関係を立証するのはむずかしいが、昔はそれほどなかったアトピーや発達障害が激増している。化学的農業の蔓延と無縁ではないのではないかと思う。安倍首相は、やたら日本人の命を守るためと称して安全保障に熱心である。その一方で、TPPで日本農業を壊し、食の安全を度外視してアメリカ産の農産物を食べさせられたら、それこそ日本人の命が危ないことをわかっているのであろうか。
 こういったことを考えると、まさにTPPには大反対せざるを得ない。何度も言っているが、TPPは日本の農業を崩壊させるだけでなく、日本の社会やシステムを全てガタガタにし、安保法制や憲法改正以上に危険なものである。この秋の臨時国会は、TPPを絶対に阻止することに全力を挙げていくつもりである。