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2016年12月26日

【年金シリーズ1】 年金抑制法(マスコミ)は問題だらけ -将来年金確保は“出る”を押さえ“入り”を増やす以外なし- 16.12.26 【12/29追加】ご意見メールをいただき、<団塊世代を・・・

<少子高齢化のあおりをもろに受ける年金>
 今臨時国会3つの強行採決とよくいわれるが、悪質さからいくとカジノ法が図抜けており、次が審議時間が全く足らない点でTPP、そして一番まともなのが年金法である。
 政府与党はいつも美辞麗句を使い、国民を騙くらかす。「将来年金水準確保法」と名付けたが、いつものとおり詐称の疑いが濃い。何よりの証拠に度重なる野党の要求にもかかわらず、ついに明確な将来の年金水準は示さなかった。ただ、だからといって野党が「年金カット法」と決めつけるには少々後ろめたさが残る。そうした中、多くの新聞は「年金抑制法」と呼んでいた。これが穏当かもしれない。
 なぜならば、賦課方式(現役世代が年金を支える)でいくと、高齢化で今後高齢者は増え、少子化で働く世代が減り、このまま放っておいたら将来の年金は危うくなるのが目に見えているからだ。だから何とか制度を変えるなりして、年金給付をある程度抑制していかないと将来世代の年金が危うくなる。

<受給開始年齢を遅らせる改定もそれほど効果なし>
 そのため、わかりやすいことだが、各国とも一様に年金受給開始年齢を引き上げてきており、今は日本では国民年金(基礎年金)は65歳とされている。また会社員、公務員などの厚生年金は定年後の特別措置として男性は62歳、女性は60歳から前倒しして受給できるが、今後は段階的に引き上げられ、男性は2025年度までに、女性は2030年度までに65歳以上になる。
 諸外国でもアメリカが66歳から67歳に、ドイツは65歳から67歳に引き上げられることになっている。

<マクロ経済スライドも機能せず>
 この他に少々ややこしいが「マクロ経済スライド」がある。少子高齢化の影響で年金の被保険者(加入者)が減少し、平均寿命が延びることから、年金給付額にマクロ経済全体の変化を反映させ自動的に調整させる機能を持った制度である。日本では04年の改正により導入された。
 年金給付額が大体年1%ぐらい下がり、減少することが予想されたが、物価水準が低迷するなどデフレが続いたため、2014年度まで一度も実施されなかった。

<政府説明と安倍総理の驕り>
 そこでもっと柔軟に下げ、将来世代の給付水準を確保するために考えられたのが次の2点の改正である。
① 賃金が物価より大きく下回る場合に、賃金が下がるのに合わせて年金を下げる。(「賃金・物価スライド」と呼ぶ)
② マクロ経済スライドでは年金は下がらない場合でも、前年の未調整分も含めて下げられるようにする。

 この2つが「カット」だといって我々野党は「年金カット法」と決めつけた。これに対して安倍総理はいつも以上に「私の述べたことをご理解いただけないようであれば、何時間やっても同じである」と放言した。いくら考え方が異なるとはいえ、国会審議の冒瀆である。

<まっとうな改正>
① 低年金や無年金で生活困窮のおそれがあることが問題となった。後者については、25年間の保険料の納入期間を10年に短縮して受給者を増やす措置が、今国会の別の法改正で実現している。当然のことだが野党は賛成している(よく民進党は反対ばかりしているといわれるが、8~9割は賛成している)。これで、40~50万人が救われることになる。
② 国民年金第一号被保険者(自営業者や農家の主婦)の産前産後の4か月の保険料が免除されることになった。法律上この改正により20万人ほどが新たな対象となる。この財源として国民年金保険料を月々100円引き上げることになった。
③ 500人以下の企業も、労使の合意で企業年金で短時間労働への適用拡大を可能にする。

 このように、誰しも納得のいく改正もなされている。

<世界への長寿国のお寒い年金制度>
 過去20年間で高齢者の生活保護が倍増し、ついに高齢の割合が5割を超えた。日本の高齢化率は2014年で26.7%と、アメリカ14.5%、イギリス17.5%、ドイツ21.2%等を大きく上回るが、年金制度は他の国よりも制度的に見劣りする。
 老後の年金を現役時の給料と比べて、どれくらい貰えるかを示す「所得代替率」(年金の平均受給額を所得で割ったのもの)は、35.1%とOECD加盟34ヶ国中、下から5位と低く、退職して年金生活になると収入は働いていた時の3分の1に下がる。ちなみにOECD平均は52.9%と5割を超えている。オランダが90.5%と最高で、イギリスは21.6%と最低である。

<減る年金>
 政府は当初、影響額を計算すらしていなかった。野党の試算要求に対して、2週間遅れて慌てて出してきた。
 今の年金額は3%(月平均6万5000円が、2000円)下がるが、2043年には基礎年金が7%(5000円)増えると説明した。それに対して野党側は、月7万2000円ほどの高齢者の基礎的な支出も賄いきれないのにカットするのは問題、今後100年は年金カット法案が一度も発動しない場合という前提の計算は無意味だ、将来の7%増も賃金上昇年1.3%が続くという現実離れした算定をしている、として攻撃した。これに対して塩崎厚労相も将来世代の年金は増えない、と苦しい答弁をせざるをえなかった。
 民進党の計算で過去10年間の物価と賃金に年金抑制法を当てはめると、率にして5.2%減、国民年金は年4万円、厚生年金は年14万円減ってしまう。一度減らした年金は元に戻らず、年金が物価に比べて減り続ける。ここが問題なのだ。
 
<70歳受給開始年齢等の大胆な改革が必要>
 私は正直なところ、年金財政のひっ迫を回避する妙案がなかなか見つからない中で、政府が努力していることは認めなければならない。いかんせん野党にも明確な対案がない以上、あげつらうばかりでは先に進まない。ただ、政府はもっとデータをきちんと示して国民に丁寧に説明する必要がある。
 国は、2004年の法改正時に「100年安心」の年金制度だと吹聴したが、どう考えてもそんな安心をしていられない。かといって、よくいわれる「積み立て方式」(自分で納めた分が戻ってくる)への変換はおいそれとできる話ではない。私のような一度も厚生労働委員会に所属したことのない素人目から見ると、出るほうを押さえ、入るほうを増やすという当たり前のことを考えるしかあるまい。
 すなわち、世界有数の長寿国であり、70歳前後は元気な人が多い。だから、年金支給開始年齢を思い切って70歳に引き上げ、それまできっちり働いてもらい、その間に保険料も払ってもらったらよいのではないか。また、今回の税改正でもまた配偶者控除は廃止されなかったが、女性も働いて保険料を払ってもらい、保険料収入を増やすことも一案のような気がする。

【追加】<団塊世代をお荷物扱いするな>
 前述のとおり、政府(厚労省)は2043年に「マクロ経済スライド」をしなくてすむようになると説明する。何のことはない。我々団塊世代が95歳近くになり、皆いなくなっているというだけの話だ。こんな予測なら私にもすぐできる。年金問題なり社会保障を論ずると、いつも団塊世代が邪魔者・厄介者として登場する。馬鹿にした話である。
 団塊世代は、まさに高度経済成長の先兵として働き、今高齢者入りしている。それを役に立たなくなったからといって蔑ろにする風潮に腹が立ってくる。アメリカの薬品企業は団塊世代に高い薬をたくさん使わせて一儲けしようとしているが、長生きさせて絞り取ろうとしている。それを日本国政府はお荷物扱いしだしたのだ。
 年老いたら家族にも迷惑かけず国家にも負担をかけず、さっさとこの世を去りたいと、大半の人が願っている。長野のピンコロ地蔵(死ぬまでピンピンしてコロリと死ねる)がその象徴である。団塊世代の皆さん、せいぜい健康に気をつけ、長生きして、政府の鼻をあかしてやりましょう!

2016年12月23日

ほとんど成果なしの安倍・プーチン会談 -共同経済活動は漁業から始めるのがベスト- 16.12.23

<ロシア、プーチンが一枚も二枚も上手>
 私は、安倍経済外交の度重なる破綻の原因は、官邸に巣食う経産官僚(政治に媚びる官僚「政僚」)の策動と批判したが、15,16日の北方領土交渉は期待していた。そして、少しでも進展してほしいと願っていたが、残念ながら全く期待はずれに終わってしまった。やはり、こうした外交は大国ロシアが、そして長くクレムリンの主を維持しているプーチンの方が一枚も二枚も上手(うわて)であった。日本国内では数の力でやりたい放題の安倍総理も、ゴリ押しできない厳しい国際政治の洗礼を受けたことになる。

<安倍晋太郎を意識した北方領土返還交渉>
 私は批判は控える。なぜなら、70年の上ほとんど進展していないこの手の懸案は、長期安定政権でしか手が付けられない。もしも9年も安倍総理がトップの座に居座るとするならば、憲法改正などではなく、北方領土返還こそ成し遂げてほしいと思うからだ。そうでなかったら、とっとと退陣してもらわなければならない。相手も8年(2000年~08年)2代目大統領をやり、また2012年に4代目として復帰した強者(つわもの)である。
 マスコミは安倍政治の源流に祖父岸信介を出す。しかし、父安倍晋太郎を意識していないはずはない。なぜならば、安倍外相の時に秘書官として政治に関わり出し、その時に対ロ外交を経験しているからである。私も一度か二度だけだが、山口県出身の農水省の先輩に連れられて、病状が思わしくない安倍外相の勉強会にお邪魔したことがある。気付かなかったが、そこに晋三秘書官もいた可能性が高い。私は後々自民党の有力政治家のこの手の会合に行くことが多くなったが、そのはしりだったかもしれない。

<父のやり残した仕事の仕上げは見上げた心情>
 その子息安倍晋三が、志半ばで亡くなった父君の遺志を意識して政治をやらないわけがない。その証拠に、遅刻常習犯のプーチンの到着が遅れている間に父の墓参りをしている。親子の心情としてよくわかることであり、私は美しいことだと思う。
 私は、日本を壊すTPPや何の必要性もない憲法9条改正には大反対だが、北方領土返還交渉はむしろ手伝いたいぐらいの気持ちで応援していた。日米同盟が日本外交の基軸といいつつ、あまり気の合わないオバマ大統領とはそれほど会わず、プーチン大統領との会談が15回を数えるのは、北方領土返還を成し遂げようという素直な気持ちの表れだろう。

<日本を制裁解除の道具として利用せんとしたプーチン>
 途中まではうまくいっていたに違いない。クリミア半島の併合により経済制裁を受け、G8からも外されたロシアにとって、日本はそこに穴を開ける糸口と考えてくれるかもしれない好都合な存在である。西側諸国が挙ってソチ冬季五輪の開会式をボイコットする中、安倍総理だけは出席した。ロシアも日本にはアメリカのきついタガははまっているが、北方領土返還絡みの経済協力まで止めることはできないと踏んでいたに違いない。

<「北のサウジアラビア」の「東方シフト」>
 プーチンは2期8年のルールに従い一旦は大統領の座を退き首相になっていた。ただその間もメドベージェフとのタンデム体制では、実質的にはトップリーダーだった。2012年から始まった2回目(3期目)の4代目大統領として満を持して外交を展開している。
 2000年からの1回目は原油高に支えられ、経済も好調だったことから、強気の外交を展開した。その高飛車な資源外交振りは、原油を背景に我が物顔に振舞うのが似ていることから「北のサウジアラビア」と羨ましがられた。
 ところが北米のシェールガス開発や原油の生産増等による原油安により、一気に立場が悪くなった。かつてのソ連邦諸国が皆西側になびくことに苛立っていたプーチンは大ユーラシア主義を掲げて「東方シフト」を展開し、アジアにそしてシベリアに目を向けざるを得なくなった。2013年12月大統領教書演説で、シベリア、極東開発が21世紀の国家的プロジェクトだと訴えた。そのため中国をも利用せんと接近し、警戒しつつも良好な関係を維持している。

<プーチンにも2018年選挙が待っている>
 そして次は日本である。日本の経済力と技術力がシベリアにはなんとしても不可欠である。アジアの経済成長に引っ張られ、オバマも大西洋から太平洋へのリバランスを唱えた。プーチンもそのアジアの象徴的存在の日本国の安倍になびくのは当然だった。ただ、プーチンの狙いはあくまでも日本の金が先であり、8項目の経済協力プランだけは高く評価していた。平和条約や北方領土返還はその後の話にすぎなかった。何故ならば、2018年には2期目を迎える選挙が控えている。クリミア半島を取り返し、支持率をのばすプーチンも、北方領土はいかに遠くにあろうとはいえ、下手に妥協すると国民はそっぽを向く。だから今は動きにくい。

<トランプ出現と原油安がプーチンの外交姿勢を変える>
 そこにもってきて、プーチンに盛んに秋波を送るトランプ大統領の出現である。12月15日、安倍・プーチンの首脳会談の日にEUの対ロ経済制裁の半年間の延期が発表された。その点では、EUの動きを打ち消す日ロ共同経済活動の値打ちは十分にある。プーチンはこれを知っての訪日だった可能性もある。しかし、アメリカがロシアに対して宥和的態度をとらんとしている中では、日本の制裁解除や西側諸国との仲直りの窓口としての役割は大きく低下する。
 経済大国日本の価値は依然として残る。ただし、OPECが減産に公言するなど、原油安に一応の歯止めがかかりそうである。再び豊富な石油・ガス資源を背景にして、資源外交が展開できる可能性が出てきた。従って、ここでも日本のロシア(プーチン)側から見た利用価値は大きく低下する。
 つまり、国際政治情勢も原油を巡る経済情勢も、ここ数ヶ月で大きな変化をみせ、タイミングが悪かったのである。もしもクリントンが勝利し、引き続き原油安が続いたなら展開は変わっていただろう。国際政治のパワーバランスが見事に反映されたのが今回の安倍・プーチン首脳会談である。北方領土返還交渉にはならず、昔からある共同経済活動という、どうといったことのない結果しか生み出せなかったのは、このためである。

<ロシアに戻ったクリミア半島>
 ロシアは19世紀半ば、クリミア戦争で敗北した。この去就はロシアにとって重要だった。そのクリミア半島はフルシチョフの時代にウクライナに編入したものである。それをプーチンは強引に取り返した。外野がいくら国民投票がおかしいなどとクレームをつけても、NATOにも加盟せんとするウクライナに帰属させておくわけにはいかないというプーチンの決意は固い。
 そんなに甘くないが、プーチンは領土の返還をクリミアで経験しているのであり、時間をかければ少しずつ返還することはありうる。札ビラで頬を叩いたりしてロシアの誇りを傷つけてはならない。ロシアの国際的立場と経済情勢をよく見ながら、今後も粘り強い外交に展開していかなければならない。

<漁業の共同活動から始めて協力の見本を造る>
 何れにしろロシアは日本の金ばかりではなく、地域資源を活用して島を振興するノウハウに期待している。国後・択捉も共同で開発していけばよい。北方四島の日ロ協力と大国同士の経済協力の見本をすべきである。どちらの法律を適用するかなどということに拘っていては先に進めない。その点では、漁業が一番てっとり早い。
 北方四島周辺は世界有数の好漁場である。漁業民族日本にとって大切な漁場であり、資源管理もルーズなロシア漁民に管理を任せておいては、海の貴重な漁業資源も枯渇しかねない。漁獲したところで、行き先は日本人の腹の中であり、利益がロシアにも十分行き渡る。一刻も早く手を打つべく、漁業から共同経済活動を始めていく必要がある。

2016年12月13日

狂ったカジノリゾートは百害あって一利なし-外国人観光客を呼ぶなら農村リゾートに投資すべし― 16.12.13

<姑息な会期延長に乗じた審議入り>
 安倍政権の目玉は何といっても三本の矢だった。一本目の矢の金融緩和は成功し、円安となり輸出企業は史上最高収益を上げ株価は上がった。しかし、2本目の矢の財政出動は、いかんせん財政難でうまくいかなかった。期待の三本目の矢の経済成長戦略は、何一つなく、いつの間にかTPPがその中心となっていた。
 ところが、それもトランプ勝利で完全に吹っ飛んだ。そこに突如出現したのがカジノである。酷いことに6時間だけの審議で強行採決してしまった。議員提案として既に提出されていたものを、11月26日の強行採決で衆議院を通過した年金法(野党は「年金カット法」政府は「将来年金水準確保法」と呼ぶ)を通すため、11月30日に閉会のところを2週間延長して12月14日までとなったのに乗じての、いわば「騙し討ち」である。3つの強行採決の中で最も酷い。

<何でTPPの代わりがカジノなのか>
 あまりにばかばかしくて、空いた口が塞がらない。TPPは、政府は13兆円のGDP押し上げ効果があるというが、根拠に乏しい。それでも一応、そんなものなのかなぁと思わせないこともない。ところが、カジノで日本の景気を浮上させたり、経済成長の引き金になるなどということは、どう転んでも考えられない。そうだとするなら、TPPも所詮ギャンブルだったにすぎないというのか。
 だから、あの安倍政権ベッタリの産経や読売でさえも反対し、5大全国紙すべてが否定的な社説を書いた。当然である。これは5大全国紙がTPPを最初からこぞって盲目的に支持しているのと大違いである。
 私は役員をしている他の会合が重なり、民進党の2度の議論に参加できなかったが、出席したら以下のように迷(?)発言する予定だった。

<党内会合で用意した未発表発言>
1. 大体民進党は野党なのに、旗幟を鮮明にしないから国民の支持を得られない。十分な理由がなくとも、三分の理ぐらいあったら反対してよい。それを5大全国紙が皆反対し、国民の半数以上が反対するカジノを賛成するなどもってのほかだ。国民の声をバックに政府のおかしな政策を突っついていくのが野党の大切な役目。それを発揮しないで何の野党第一党か。

2. そもそも政治はギャンブルかもしれない。まともな仕事をやめて、危険の大きい政治の道に入るなどまさにギャンブル。だから政治家がギャンブル好きだったり、気がひかれるのはよくわかる。しかし、それは自分の密やかな趣味にとどめるべきで、国民を巻き込んではならない。

 大体今この場にいる者は、悪しき勝者だから議員になっていられる。落選して途方に暮れている元同僚も数多くいる。まさにギャンブルの敗者ともいえる。国民の大半を敗者にしてはならない。
 ギャンブルの依存症、多重債務問題、マネーロンダリング、やくざの裏金、青少年への悪影響等問題だらけだ。こんな法案は、TPPや年金法以上にとんでもないもの。反対以外にない。

<物造りを忘れたアメリカの凋落>
 アメリカは1987年に始まったガット・ウルグアイ・ラウンドでは、新3分野と呼ばれる知的財産権、海外投資、サービスを重要視して交渉を行った。日本もEUも農産物関税の削減が問題だったが、アメリカは将来の金目となる分野に目がくらみ、肝心要の「物造り」製造業を蔑ろにしたのである。そして、国際投資協定も目指したが、フランスの反対で頓挫してしまった。その後もドーハラウンドでも同じ戦略で臨んだがうまくいず、目をつけたのがTPPだった。
 今、アメリカの製造業は、象徴的存在である自動車産業すらガタガタであり、気をはいているのは軍事関連産業(その延長所の航空機産業)、IT産業、医薬品・医療機器ぐらいである。国家は、物を横から横へ流したり、金をいじくりまわして儲けるだけでは成り立たない。国民が必要とするものを国民が汗水たらして造り、経済を造り上げて行くのが王道である。
 過激と思われるトランプの一連の発言はこの根本に戻ったものであり、アメリカ国民にも支持される理由がある。

<日本の国柄に合わないカジノ>
 そうした地道な産業の対極にあるのがバクチ産業でありカジノである。世界中に勤勉な日本人という声価がある中で、カジノにうつつを抜かすというのは、世界からの日本の評価を低めることにしかならない。
 いくらTPP発効の見込みがなくなったからといって、アベノミクス三本の矢の最後の経済成長戦略の柱がカジノではみっともないかぎりである。こんなもので経済成長などというのは邪道もいいところである。アメリカでもヨーロッパでもカジノは飽和状態である。そういえば地方競馬、競輪、競艇も売上が減っているという。私もアメリカのラスベガス、リノ、アジアのマカオ、シンガポールのカジノにも足を踏み入れた。こんな所で数億円を費やした故浜田幸一衆議院議員や大王製紙の御曹司の気が知れず、日本になくてよかったと安堵したものである。

<地方創生ならカジノより「農村リゾート」>
 突如観光立国が叫ばれだし、都市の外国人観光逆の目標が2千万人がまたまた膨れ上がって、20年に4千万人、30年に6千万人いる。そこでもう一つの集客にカジノをと気を出した。しかし、日本にギャンブル目当てで観光に来る人は一体何人いるのだろうか。そもそも「美しい国」(安倍総理の著書のタイトル)に厚化粧のカジノや大型リゾート施設はミスマッチである。観光はいいとしてもっと他にある。その一つが日本の美しい自然、そしてほとんどの人が気づいていないが美しい農村である。ところが、貧弱な農政で農村が衰退し、荒れ放題であることが悲しい。日本のなんてことない農村を歩き回れるようにしたほうがずっと効果的である。地方創生というなら、お台場(東京)、山下埠頭(横浜)、夢洲(大阪)ではなく「農村リゾート」であるべきだ。

<江戸末期も今も外国人にとって日本の魅力は美しい国日本>
 日本旅館、そして農家民宿で暖かい日本人の心からの「おもてなし」に触れれば、日本のファンがもっともっと増えるに違いない。日本の半自然、つまり日本人が手を加えた町や田んぼの調和のとれた美しさに目を見張ったのは江戸から明治にかけて訪れた人たちである。一様に絶賛している。そしてその流れは今野変わらない。
 最近でいえば、私の記憶では20~30年前のオーストラリア大使夫人が気づいて日本の地方をよく回っていた。変わってところでは川勝平太静岡県知事も日本は「ガーデン・アイランド(庭園の列島)」と日本の国の美しさを強調している。

<大型アホバカリゾートの二の舞はごめんだ>
 私はカジノ法案騒ぎで、30年前を思い出した。中曽根内閣は民活とやらを喧伝し、名前も同じく「リゾート法」(総合保養地整備法)を推進した。その時建設省の担当補佐が増田寛也(後の岩手県知事)で、農林水産省の窓口は篠原企業振興課補佐の私で、何回も各省折衝をしたのを覚えている。
 当時私はモノ書きが始まり、各地に講演を頼まれていた。そこで「大型アホバカリゾート」は成功せず、すぐに瓦解すると言って回った。役人の分際なので活字にはしなかったが、10年も20年も経った頃、あちこちの関係者が語呂のよかった「大型アホバカリゾート」という罵り言葉を覚えていてくれ「篠原さんの予測どおりとなった」と声をかけられた。宮崎のシーガイア(フェニックス)、福島の磐梯等ほとんど失敗した。
 今回のカジノ解禁法も総合型リゾート法(IR)とぞっとするような同じ名前で呼ばれる。政府の内需拡大政策、観光振興(今は外国人目当ても)、地域振興(今は地方創生)等も瓜二つである。まるでデジャヴ(既視感)そのものである。
 日本から「大型アホバカリゾート」が消えたと同じく「狂ったカジノリゾート」は百害あって一利なしである。

2016年12月07日

【TPP交渉の行方シリーズ68】【政僚シリーズ4】安倍官邸の経済優先外交は頓挫の連続 -経産省・経団連に振り回される悪癖は改めないとならず- 16.12.07

<思いがけない英国のEU離脱とトランプ勝利>
 日本の社会保障制度が、アメリカのTPPを奇貨とした国民健康保険制度の狙い撃ちにより、破綻をきたすかもしれないことは随所で述べてきた。
 しかし、その前に地球儀俯瞰外交と銘打って展開してきた安倍外交が綻びを露にし出した。安倍政権の責任ではないが、まずはイギリスのEUからの離脱がある。世界はまさかイギリスがいくら難民受け入れが嫌だといっても、グローバリゼーションに背を向けるとは思わなかった。今回のトランプ勝利と同じく、残留を予測したイギリスの世論調査も当てにならなかったのである。この間違いは、何事も高飛車にやり出したキャメロン首相の甘い見通しに端を発する。EU離脱を国民投票にかけると宣言してしまったのである。この傲慢な姿勢が安倍総理にダブって見えてくる。

<功を焦ってクリントン詣でのフライング>
 安倍外交の見苦しい失態の一つは、9月の国連総会の折、クリントン候補とのみ会談していたことである。いかなる国も他国の政治への口出しは御法度である。国政選挙には中立を保つのが常識である。それを熾烈な大統領選を繰り広げている中で片方だけと会談するというのは、異様に映る。安倍総理は当時のマスメディアのクリントン勝利確実予測を鵜呑みにしてしまったのだろう。
 10月17日のTPP特別委員会では、すぐ退陣するオバマ大統領に合わせてTPPになど同調せず、TPP反対だという2人の大統領候補に合わせてTPPの承認を見送るべきだと質した。安倍総理は2020年までやって東京オリンピックを自ら総理として迎えたいというなら、同じく2020年まで大統領を務める者に合わせないでどうするのか。例によって、まさかオバマ大統領と一緒に退陣するのか、と嫌みを付け加えた。

<信頼関係構築直後のTPP離脱表明>
 11月17日には、世界の首脳の中でたった1人、まだ現職はオバマ大統領だというのに、トランプタワーでの安倍・トランプ会談となった。いくら9月のクリントンへの肩入れの穴埋めをしようと焦るにしてもオバマ政権がカンカンになって怒った。外交上の非礼である。それでももう過去には囚われずに新大統領との関係を築いたほうがいいと即断即決したというなら、それも仕方なかろう。
 しかし、ここでも腰が定まらない。2人の親密な会談後、信頼関係ができたとご満悦な安倍総理を尻目に、トランプは21日ビデオで大統領就任の日にTPPから離脱する、と明言した。2人の会談はTPP等の主要課題の腹合わせについては、何の意味もなかったことが明らかとなった。

<意地と見栄の支離滅裂外交>
 ベトナムとマレーシアは国会の手続きを中止した。逆にNZは、せめてNZぐらいが承認手続きを終了させなければTPPは死んでしまう、と危機感を募らせ、61対57の僅差で唐突に受け入れ体制を整えた。ところがTPPを推進してきたキー首相が突然辞任してここでもTPPは漂流状態になった。
 そして問題の日本である。NZと同じくTPP承認手続きを終了し、アメリカに自由貿易の大切さを訴えていく、と参議院の審議を継続中である。一体何のための慣例を無視したpresident elect(次期大統領)トランプとの会談だったのだろうか。昔の恋人(?)オバマに白い眼で見られ、新しい相手にコケにされているのである。絶対に再交渉しないと言い続けたにもかかわらず、これで二国間FTA交渉などにしゃあしゃあと応じるとしたら、それこそ屈辱である。

<アメリカに追随する一方で敵対する不思議>
 安倍総理は、TPPは経済だけでなく、対中国の安全保障上重要な意味を持つと言い出している。前々からTPPの賛成者がしたり顔でのたまわっていたことである。しかし、その対中外交でも、遠いヨーロッパから英仏独等が皆出資国となっているのに、アメリカの説得に負けてAIIB(アジアインフラ投資銀行)に入らなかった。TPPでもAIIBでも、アメリカのいう対中国包囲網に盲目的に従い、世界の動きを見誤ったのである。
 ところが、これだけアメリカに追随しておきながら、TPPを離脱するというトランプにTPPを承認してケンカを売っているのである。やることなすこと矛盾だらけである。

<国際問題にならないのが不思議な萩生田失言>
 我々のTPP強行採決への抗議を「田舎プロレス」と称した萩生田官房副長官は、安倍総理をして「お坊っちゃまにしては不良との付き合い方が上手い」と、ゴマをすっている。一国の大統領にならんとする者を不良呼ばわりしているのである。私は、国際的に糾弾されても仕方のない失言だと思っている。外交上の礼儀をわきまえていないのだ。
 アメリカ・中国・ロシアの間で右往左往し、ひたすら「金だけ、今だけ、自国だけ」で立ち回る日本の国際的信用はガタ落ちである。

<環境そっちのけで世界から失笑>
 それが最も顕著なのは環境分野である。環境汚染もなんのその、まだ依然として発展途上国だと経済成長だけを追い求めていた中国が、16年9月2日、オバマ・習近平会談でパリ協定への参加を決定した。PM2.5も深刻で、北京では風のない日はマスクが必要になるほど大気汚染がひどくなったという事情もあるが、中国は明らかに「責任ある大国」を指向し始めたのである。それを日本は、TPPにことかけて、パリ協定の承認が発効に間に合わなかった。
 1997年、京都会議(COP3)を主催して、不十分ながら地球温暖化防止策の第一歩を主導した、かつての日本の面影は消え失せてしまった。GDPを100兆円増やすほうが気になり、CO2の排出を抑えて地球環境を保全することは二の次になっているのだ。

<ベトナムの賢明な原発断念>
 経済優先の前のめりの一つに原発輸出がある。私は政権与党の12年、ベトナムとヨルダンとの原子力協定にも反対した。大事故を起こし、その後始末もせずに輸出することなど到底考えられないからだ。これにより私は全役職を剥奪(?)されている。
 東南アジア最初の原発となるはずだったが、資金不足を理由に断念した。しかし、有害物質の垂れ流しによる魚の大量死にベトネム社会が衝撃を受け、ベトナム国民が放射能汚染にも恐れをなしたからである。経産省や経団連のイケイケドンドンスタイルは、国際的にはもう通用しなくなっているのは明らかである。
 ところが、核拡散の可能性が高いインドとも原子力協定を結ばんとしている。唯一の被爆国の上に大原発事故も経験したのに、平然と「死の灰(放射能汚染)の商人」にならんとしているのだ。パリ協定の遅れといい、なり振り構わぬ原発輸出といい、日本は世界にモラルを問われている。この辺りで、安倍総理にも目を覚ましてもらわないとならない。

<間違いの元凶・官邸の経産官僚>
 安倍総理は若くして小泉総理に幹事長に抜擢され、政界の階段を駆け上がり、官房長官以外に大臣を経験せず、当選5回で総理になってしまった。つまり、○○省のトップとして1つの分野の政治をこなす経験をしていない。
 このため、私の推測だが、祖父・岸信介を尊敬するあまり、岸の在籍した商工省、つまり今の経産省を我が出身母体のごとく錯覚し、そこに引っ張られているようにみえる。総理は全省庁を束ね、日本の国益を追求しなければならないのに、TPPに固執し、パリ協定を後回しにして原発輸出を突出させ、経産省や経済界の意向に沿うようなことばかりに気をとられている。そして次々と見込み違いをしている。
 一連の安倍経済外交の完敗は、官邸に巣食う経産官僚の過剰介入に起因していると思われる面がある。
 元経産省の今井尚哉総理秘書官(政務)、長谷川榮一広報官が官邸入りするなど、完全に復活したお友達人事は、政界だけにとどまらず、官邸にまで広まっており、経産省に汚染された官邸となっている。

<正当な外交に戻るべし>
 北朝鮮の拉致被害者問題は胸のバッジだけでほったらかしにしておきながら、南スーダンの駆け付け警護にはしつこくこだわるなど、相変わらずバランスを欠く外交のオンパレードである。どこかで歯車が狂い始めている。
 安倍総理は今、12月15日のプーチン大統領との会談で頭がいっぱいだろうが、ロシアもそれほど柔軟な対応をしてはくれまい。ただ、2013年10月、日本の総理として10年ぶりにモスクワを訪れた安倍総理は、父・安倍晋太郎外相が取り組み始めた北方領土返還交渉には並々ならぬ決意で臨んでいるに違いない。プーチンの狙いは「東方シフト」(ヨーロッパからアジアに目を向ける)の一環として、北方領土の譲歩の見返りに日本の経済力がある。 
 今度は、経産省や経団連の尻を叩いて日ロ経済協力を推進し、対中ガードにも使い、アメリカ一辺倒から離脱したらよい。
 私は、8日後の安倍政権の北方領土返還交渉を心底より応援し、成功を祈っている。

【このブログを書いているところに、安倍総理の年末の真珠湾訪問とオバマ会談が報じられた。これで、ミスだらけの外交の失地を回復してほしいものだ。】

2016年12月05日

ミニ集会開催のお知らせ

日頃より篠原孝の諸活動にご支援賜りましてありがとうございます。
近日開催予定の車座集会の日程をお知らせいたします。
皆様お誘い合わせの上ご参加くださいますよう、よろしくお願いいたします。

国政の報告をさせていただくとともに、皆様方のお声も聞かせていただきたいと願っております。
「集団的自衛権」「TPP交渉と農政問題」「原発の是非や再稼動問題」「安保法制問題」など、様々な課題につきまして皆様方のご意見を伺いながら今後の国政について共に考えていきたいと思います。
万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加ください。
(概ね1時間程度を予定しております)

12/10(土)
【山ノ内町 土橋集会】
時間:17時より
会場:土橋公会堂 (山ノ内町夜間瀬10983-2の隣)

【山ノ内町 下須賀川集会】
時間:18時15分より
会場:下須賀川生活改善センター (山ノ内町夜間瀬8945)

12/11(日)
【長野市 坂中集会】
時間:18時より
会場:坂中公民館 (長野市坂中1787-2の向かい)
ゲスト:埋橋茂人 県議会議員

12/17(土)
【長野市 伺去集会】
時間:18時より
会場:伺去公民館 (長野市伺去194-2の南)
ゲスト:埋橋茂人 県議会議員

12/18(日)
【長野市 川中島町本町集会】
時間:17時より
会場:本町公民館 (長野市川中島町上氷鉋956-10の北)

※日程は変更になる場合がございます。
※駐車場のご用意のない会場もございます。


【終了した集会】
お集まりいただきありがとうございました。

11/06(日)
 小布施町 千両集会
11/13(日)
 長野市 若穂川田大門塚本集会
11/19(土)
 中野市 譜代集会